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2018年12月30日

福島第一原発事故に対する「除染」の結果生じた汚染土の「処分」方針について

神奈川県消費者団体連絡会
事務局長 丸山 善弘

2011年3月11日、東京電力福島第一原発事故が起き、拡散した放射能により17都県におよぶ広範な地域が汚染されました。膨大に発生した汚染土を持て余した国は、最大2,200万立米の汚染土のうち、「最終処分量の低減を図る」という名目で、8,000ベクレル/キログラム以下のものを、「遮蔽および飛散・流出の防止」を行った上で、全国の公共事業や農地造成で利用できるとして計画しています。また汚染土を「再生資材」と言い換え、地域住民にすら十分に知らせず再利用するための実証実験も進められています。

 

原子力発電所の解体等によって発生する金属やコンクリートを、人々が日常生活を営む一般社会で建設資材などとしてリサイクルすることを想定して作られているのが「原子炉等規制法」であり、この基準は1kgあたり100ベクレルです。本来の放射性廃棄物のリサイクル基準はこの100ベクレルであるにも関わらず、環境省は福島第一原発事故の対策として作られ、焼却や埋め立て処分のための基準を記した「放射性物質汚染対処特措法」の基準である8,000ベクレルを、行き場のない大量の汚染土を「リサイクル」という名目をつけて処理するための数値として持ち出しました。

元々は使用目的や管理者が明確で長期間掘り返されない道路や防波堤などの公共工事に限定されると説明していたのですが、2017年2月の非公開会合で公園や緑地もこの使用目的に加えてしまいました。

8,000 ベクレル/ kg 以下の汚染土を公共事業の構造基盤に利用することは、降雨、 浸食、災害などによる環境中への大量放出が懸念され、工事においては、工事従事者や通行人も被ばくしてしまいます。

方針では工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間ミリシーベルト以下になるよう、除染土1キログラムに含まれる放射性セシウム濃度を制限するとし、具体的にはくぼ地をならす作業に1年間継続して関わる場合、汚染土1キログラム当たり5,000ベクレル以下、1年のうち半年なら8,000ベクレル以下が基準となり、最終的に厚さ50センチ以上の別の土で覆うとしています。

問題なのは、国が結果として「工事中の作業員や周辺住民の被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下であれば被曝させても問題ない」と考えてしまっていることです。

 

このような、なし崩しでの汚染土の利用目的の拡大の続きにあるのが今回の農地造成への利用方針ではないでしょうか。そもそも「農業ができるように」と除染を行ってきたはずなのに、その汚染土を農業にまで使うのであれば、いったいあれだけの規模で莫大な費用を掛けた「除染」は何だったのでしょうか。

「食用作物には使わない」とはしていますが、これまで緊急の基準を一般化し、リサイクル基準も使用目的も後付けでどんどん変更している経過を見れば、手放しで信用できるものではありません。

 

福島第一原発事故に対する「除染」の結果生じた汚染土の「処分」方針は撤回を求めます。

 

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