流体機械設計と流体解析シミュレーション

流体機械設計と流体解析シミュレーションを行っている株式会社ターボブレードの社長である林 正基の日々について記載しています

ロケットエンジン用液体酸素ターボポンプの大流量側での安定した運転シミュレーション結果

2018年05月23日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジン用液体酸素ターボポンプの大流量側での安定した運転シミュレーションの解析結果図です。

次図はインデューサーとインペラの流れ表面の圧力分布を見たものですが、大流量でのインデュサーへの入口相対速度のベクトル方向がインデューサー羽根入り口角度に対して軸方向への傾きが大きすぎる流入状態のためインデューサー羽根の通常は負圧面にもろに衝突して負圧面入口の広い範囲が圧力が高くなっています。

大流量でのインデューサー負圧面への入口相対速度ベクトルのぶつかりは、その下流側にも大きな影響を与えてしまい、次の図のようにインデューサーとインペラのボス面に広範囲の低圧領域を発生させています。

この低圧領域はキャビテーションノ発生領域となるため、ロケットエンジン用ターボポンプでは設計点以外の大流量側での運転を制限することとなりますが、今回の流体解析シミュレーションでは運転全範囲の特性を取るようにしています。

次図は液体酸素ターボポンプの入口配管から液体酸素ターボポンプ本体、ポンプ吐出配管、燃焼室上部液体酸素チャンバー、ノズル入口までが流体解析シミュレーション範囲として解析計算が正常に出来て流れが問題なく流れている様子を見れているものです。

次図は全流体流れ範囲での流れを3次元矢印付き流線群で表示したものを別角度から見ています。

次が今回の液体酸素ターボポンプの流体解析シミュレーションモデルの外観です。

四角い枠は流体解析領域を示しています。

次は今回の流体解析シミュレーションの解析計算モニタリング画面ですが、ほぼ解析モニタリング設定値が収束している最終の様子です。

現在は今回の液体酸素ターボポンプの最大流量付近流れ解析から進んで、設計点付近の解析計算に入っていますので近々結果をお見せ出来るでしょう。

<今日の流れ>

今日は最近の課題である「1000℃付近の耐熱鋼に対する非線形熱解析計算での時間依存による構造部の安全率と変位を求める手法」の確立を勉強しています。


ロケットエンジン用ギアードターボポンプの設計を進行中

2018年05月22日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジン用ギアードターボポンプの試験的な設計を進行中です。

このロケットエンジン用ギアードターボポンプは高速型の圧力複式2段軸流タービンの動力をギア機構で減速して液体酸素ポンプとケロシンポンプを駆動する方式です。

液体酸素ポンプインペラとケロシンインペラはひとつの軸で繋がっていて同じ回転数で回ります。

よって液体酸素ポンプの吐出圧よりも圧力がより必要なケロシンポンプインペラの羽根は直径が大きくなり、比速度低い設計となります。

ケロシンポンプの設計流量が少なめの場合はケロシンポンプインペラが1段では低比速度タイプになり過ぎる懸念があるため、2つのポンプの1軸を変更して、同軸2軸式に変更してギア減速比がケロシンポンプインペラでは異なるギア構成に変更します。

タービンからの減速機箱の全体構造が少し複雑となるため、減速ギアボックスが単純な構造となるように現在設計検討しています。

このギアードターボポンプは横軸式でも縦軸式でもロケットエンジン機側に取り付け出来ますが、軸の危険速度や振動を考えると縦軸式が良いですが、ギアの潤滑を考えると横軸式が均等にギア潤滑し易いように思われ、横か縦か迷うところです。

ギア潤滑が問題なければ圧倒的に縦軸式がポンプへの入口配管、噴射部へのポンプ吐出配管取り回しタービン出口排気配管、危険速度や振動への対処、などで有利です。

<今日の流れ>

今日は熱応力に対する時間依存での材料強度の変化が構造の安全率や変位に及ぼす影響について検討しています。

 


最近設計したターボファンジェットエンジンの追加画像

2018年05月21日 | 宇宙航空産業機械

最近設計したターボファンジェットエンジンの追加画像です。

ターボファンエンジンバイパス比は12ほどになる、高バイパス比ターボファンジェットエンジンです。

ガス発生機部の圧力比は12ほどとなり、熱効率は33%となります。

ターボファン部の効率は90%ほどと高くなっており、優秀なファン羽根部となっています。

<今日の流れ>

今日は設計作業を中心とした予定を立てています。


最近設計したターボファンジェットエンジン

2018年05月20日 | 宇宙航空産業機械

最近設計したターボファンジェットエンジンの姿です。

非常にバイパス比の大きなターボファンジェットエンジンになります。

ガス発生機コア部分の流体構造は、斜流初段+軸流3段+遠心1段のコンプレッサーとそれを駆動する2段の軸流ガスタービンとなっています。

ターボファンの回転するファン羽根は1段の軸流ガスタービンの動力をギアで減速して駆動されています。

次は、ターボファンエンジンに前部と後部のケーシングを付けた状態です。

<今日の流れ>

今は深夜の1時であるため今日はどうするかまだきめていません。

午前中には会社に出て模様替えをしたいとは思っています。

結局会社には出ず(いつものことですが)自宅でYoutubeでのエンジニアリング関係の動画を見ることで今日も終わりそうです。

世界の最先端のエンジニアリングは3次元CADを中心としたバーチャル製造システムへとすごいスピードで進化していることを感じて、それに少しでも追いつけるようなエンジニアリング体制の構築をすることが自分的には今の最大の興味の対象となりました。


ロケットエンジン用液体酸素ターボポンプとケロシンターボポンプの同時運転シミュレーションの追加結果図

2018年05月19日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジン用液体酸素ターボポンプとケロシンターボポンプの同時運転シミュレーションの追加結果図です。

次は、縦軸2軸式のターボポンプのそれぞれに流れる液体酸素とケロシンをポンプ付近を拡大して流れの3次元矢印表示を見た図です。

次図は、液体酸素ターボポンプのインデューサーとインペラの流れ面の圧力分布図です。

今回の液体酸素ターボポンプとケロシンターボポンプの同時運転流れ解析の初回計算では、液体酸素ターボポンプの液体酸素の流量が非常に少量であり、それは次図のポンプインデューサーの入口部に流れが滞っている流れ矢印表示からも分かります。

この液体酸素ポンプインデューサー入口での流れの停滞の理由は現時点で分からないため、新たに液体酸素ポンプ単体での運転時シミュレーションを開始しており、その解析結果を近々お見せできるでしょう。

次図は、ケロシンターボポンプのインデューサーとインペラの圧力分布図です。

現状のケロシンターボポンプの最終ケロシン吐出口と想定している燃焼室冷却通路の出口円筒面積では絞りとして少ないこととなり、設計点よりも過大な流量がこの解析ではケロシンポンプに流れているためケロシンポンプインデューサーでは軸方向流速が速くなり、入口速度三角形は相対流入入口角度が過大となるためインデューサー羽根負圧面にもろにぶつかることで負圧面圧力が大きくなり、圧力面にはあまり流れないことが流れ面の圧力分布コンター表示から見て取れます。

もう一つの疑問点はインペラシュラウド部の圧力がかなり低くなっている点です。

シュラウドの入口と出口にはラビリンス的な部分が有りますが、それにしても低すぎるように思います。

このケロシンターボポンプも単体運転でのシミュレーションを流量ゼロから最大流量まで最低5点ほどの定格回転数での流量ー圧力線(P-Q線)を取る解析計算を進めていますので、それらの結果から色々とはっきりするでしょう。

次図は、噴射ノズル側から全体の流れを見たものです。

このようなターボポンプの流体種類と回転数の異なる2台のポンプの同時運転解析シミュレーションは高度な流体解析となるので、各種の検証は必要です。

次図は、上斜め方向から見た流れ状態図です。

このような、なるべく実際の運転に近いシミュレーション手法の確立を益々ロケット設計の多方面で進めることで、Digital Twin と呼ばれる設計上流側で性能、安全、価格、製造や実験・運転、に関わる問題点を解決していくエンジニアリングを、我が社ではまず独自のロケット設計で構築していきます。

<今日の流れ>

今日は自宅でYoutubeにある最先端のエンジニアリングに関係した世界の事例を色々と見ています。

Youtubeで世界中の色々なエンジニアリング関係会社の動画事例を見ることが出来ることは、それら会社に視察しなくても大事な点を凝縮して見ていることになると考えられます。


ロケットエンジン用液体酸素ターボポンプとケロシンターボポンプの同時運転シミュレーションが一応可能となる

2018年05月18日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジン用液体酸素ターボポンプとケロシンターボポンプの同時運転シミュレーションが一応可能となりました。

次図のように液体酸素ターボポンプからの液体酸素の流れは燃焼室上部の液体酸素チャンバーから噴射ノズル入口までがシミュレーション出来ており、同時に運転されているケロシンターボポンプからのケロシンの流れが再生冷却ノズルスカートへと燃焼室冷却領域へ充分な量として流れています。

ケロシンの流れはノズルスカート冷却通路ではケロシン入口側に偏って流れています。それへの対処として冷却通路での均等流れガイド構造を追加で考えていきます。

液体酸素の流れは、液体酸素噴射ノズル入口部の通過面積を絞りすぎたためか、わずかな流量しか流れておらず、その点を変更した再解析が必要となります。

液体酸素ポンプ単体での通路を含む流れ解析も進めていますので、それにより詳しい液体酸素ポンプの特性が出るでしょう。

次が解析計算終了時の解析モニタリング画面の様子ですが、ほとんどのモニタリングパラメーターは収束しましたが一部収束していないのでそれが液体酸素ポンプの流量が少ない原因となっているようです。

<今日の流れ>

今日は、設計済みジェットエンジンの性能解析計算値を吟味してまとめる作業を行います。


ロケットエンジン燃焼室的な形状での非線形熱解析を行ってみました

2018年05月17日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジンの燃焼室的な形状を3次元CADで作成して、それの素材表面の各部に別々に温度設定を行い、非線形熱解析を行ってみました。

大まかにノズル内壁には1000℃以上の熱分布を与え、外壁には100℃以上の分布を与えてみました。

次は解析計算後の応力分布を示しています。

次は変位の分布です。

次は断面で見た応力分布です。

次は断面で見た変位分布です。

次図はひずみを示しています。

次は安全率の分布です。

<今日の流れ>

今日は昨日の夜から体調が悪くなり、朝方はあまり良くなかったので会社をお休みしました。

熱は無いのですが、どうもお腹の調子が悪いことと連動した疲れのようなだるさでスッキリしない感じです。

自宅で休んでいますが、ずっと寝ているわけではなく、ノートパソコンでネットは見ています。

家にいると夕方になるほどに心が重たくなるようですから、毎日会社に出て皆といっしょに仕事をすることは体と心にも自分にとって良い癒しですね。

そういうことで会社の皆にはいつも感謝しています。

 


ロケットエンジン液体酸素ターボポンプ最大流量でのインデューサーとインペラの流れ状態

2018年05月16日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジンの液体酸素ターボポンプが最大流量で運転している場合のインデューサーとインペラの流れ面の解析結果状態図です。

次図はインデューサーとインペラの流れ面での流体速度分布を示しています。

次図はインデューサーとインペラでの翼面圧力分布を示しています。

最大流量を流して入口流速が速いためか、インデューサー出口での圧力降下が気になります。

インデューサー円錐形状ボス面でも後流に行くほどに圧力が下がっているのがやはり気になります。

インデューサーでの圧力面と負圧面の圧力分布が設計点付近とは逆のパターンになっているように思われ、原因を考察していきます。

設計点付近でのこのような液体酸素ポンプ流れ解析が問題なく結果が出た場合は、さらに設計点でのキャビテーション解析に入ることとなります。

キャビテーション解析の結果次第では、何度もインデューサー形状を修正してキャビ発生をぎりぎりまで抑える作業を行う必要が出来てきます。

<今日の流れ>

今日は午後からの来客での打合せまでは、最近設計したジェットエンジンの解析結果の見直しとまとめを行います。


ロケットエンジン用液体酸素ターボポンプの最大流量での流体解析シミュレーションが無事終了

2018年05月15日 | 宇宙航空産業機械

液体酸素ターボポンプの最大流量での流体解析シミュレーションが無事終了しました。

次図の解析モデルのようにポンプ吐出管出口はノズルではなく、燃焼室上部液体酸素チャンバーの入口までの通路抵抗がほとんど無い境界条件とすることで、この液体酸素ポンプの最大流量付近での流体解析結果値を求めることが出来ています。

次は解析計算モニタリング画面で解析計算が収束した計算終了時のデータ画面です。

解析計算モニタリングしている入口出口での圧力・流量やインペラ部のモーメント値などが安定した収束となっています。

次図は、液体酸素のポンプ廻りの流れをベクトル矢印で見たものです。

次図は、液体酸素ポンプ本体部に近づいて液体酸素流れの様子を矢印付き流線で見たものです。

以上の液体酸素ターボポンプの最大流量での流れ状態は解析シミュレーション出来ましたので、次の段階は液体酸素ポンプ出口の後に調圧弁や噴射ノズルに相当する絞り部を付けて、流量に対する圧力の特性P-Q線図を作る解析作業となります。

<今日の流れ>

午前中は用事があり、昼から会社に出ています。

今日はSolid Works Simulation Premium を使って非線形静解析にてターボ機械の熱応力に対するクリープ変形解析をどのように進めるべきか学習をしています。

この検討結果はロケット燃焼器の壁面の熱変形破壊の解析に役に立つでしょう。


既存ロケットを第2段に使用してみた小型人工衛星キューブサット衛星軌道投入用ロケットの構想図

2018年05月14日 | 宇宙航空産業機械

既存ロケットを第2段に使用してみた小型人工衛星キューブサットを軌道に投入するためのロケットの構想図です。

勝手な構想図なので計算などの根拠はなく、とりあえずの超小型衛星軌道投入ロケットを短期間で安く作れそうに思って考えてみました。

1段目のロケットは1TP4N型ターボポンプ使用の推力12トンとなります。

<今日の流れ>

少々風邪気味で熱が出たので、なぜか朝方に目が覚めています。

もう一度寝なくちゃ・・・

朝も無事に起きれて普通に出社出来ました。

体調はまだ完全ではありませんが、今日の作業として滋賀県向けオープンクロスフロー水車の基本設計を行います。

<今日の技術的な検討>

今日は余裕があれば、縦軸1軸式ロケットエンジンターボポンプ(回転数2万回転、上部にインデューサー付き液体酸素ターボポンプ、中段にケロシンターボポンプ2段(斜流+遠心)、一番下にタービン軸流単段衝動又は速度複式2段)の子午面断面計画図の作成に入ります。

1軸式ターボポンプを設計する場合の気になる点は、ケロシンターボポンプの羽根を適切な比速度とするための2段化によるケロシンターボポンプの効率の低下の問題と2段化による製作金額の増加の問題。

1軸式では主軸が長いことによる1次危険速度の値の問題があり、剛性軸なら軸がかなり太くなり弾性軸なら細くなりますが、剛性軸とするか弾性軸とするかの違いでインペラの流体子午面形状に与える大きな違いがあり、自分としては1次危険速度が定格回転数よりも大きい値となる剛性軸を選択することが全運転数範囲で安全であることから剛性軸としたいが、流体部子午面形状が主軸太さにより高効率化には厳しい形状となることの問題。

2段ケロシンターボポンプ部の効率が低いと、それを駆動するタービンには高効率1段ケロシンポンプを使う場合のタービンよりも余計な燃料を消費するので、それが小さい燃料パーセントであっても、その余計な燃料分の重さはCS衛星などを搭載出来ないこととなり、それが打ち上げ受注金額にも少なからず影響を与えること。

1軸式ターボポンプの安全性の問題では液体酸素とケロシンがシールを隔てて直ぐ近くに存在する危険性などによる液体酸素シール部の多重シール化と、ケロシンとの接触を確実に防ぐシールタイプの選択と既存シールが使えるか否かでの製作金額の問題。

上部にある液体酸素ポンプの下部に背面組み合わせでケロシンターボポンプインペラを配置する場合はインペラ軸方向スラスト発生をある程度相殺出来るがケロシンインペラ背面は圧力が高くなり液体酸素ポンプ側にシールを通してケロシンが漏れやすくなり液体酸素漏洩と接触すれば危険であること。

液体酸素ポンプの下部にケロシンターボポンプの入口を付けるとその部分ケロシン圧力は低いので液体酸素ポンプ側に漏れるケロシンは防ぎ易くなるが、液体酸素ポンプインペラとケロシンポンプインペラの軸方向流体スラスト力は同時に上向きにかかり、スラスト力が大きい場合はスラストを減らす有効な手段、例えばインペラ背面翼、インペラ背面釣り合いラビリンス部、インペラ背面圧力抜き穴などを適応して流体解析で有効にスラスト力が減っているかどうかを確認する必要があります。

以上の1軸式ターボポンプの性能と安全性と製作金額の廉価化がうまく釣り合う基本設計を行う予定ですが、同時にタービン1台でケロシンターボポンプと液体酸素ターボポンプの両方をギアード(歯車伝達)で駆動する型式のターボポンプ基本設計も進行中です。

近々にギアードターボポンプの基本設計のベースとなる構造をもつターボポンプを造り、ここに載せる予定です。