「丸山が電話に出ない。孤立させるのではなく、再生のチャンスを」丸山穂高議員への辞職勧告に元経産官僚が涙の訴え

 17日、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党、共産党、社会保障を立て直す国民会議、社民党が丸山穂高議員に対する辞職勧告決議案を国会に提出した。丸山議員を除名処分とし、辞職を促してきた維新の協力要請に応じた形だ。一方、共同提案を持ちかけていた与党側は慎重な姿勢で、態度を保留した。

 その丸山議員に対し、同日放送のAbemaTV『AbemaPrime』で「まず、一緒に診断を受けてみよう。一人じゃない。アルコールの問題を抱えている人は日本に何百万人といる。そういう仲間と一緒に道を歩んでみないか」と涙を浮かべて呼びかけたのが、元経産官僚の宇佐美典也氏だ。宇佐美氏は丸山議員と同じく東京大学経済学部に学び、経済産業省でも1年先輩に当たる。
 今回の決議案の内容について宇佐美氏は「これまでの辞職勧告決議は、違法行為や不正行為が伴っていた。しかし今回は言論に対してのもの。もちろん戦争発言は憲法の趣旨に反しているが、単に糾弾するだけの決議案なら、言論の自由を保障した憲法の趣旨に反していると思う。私は彼に責任を取らせないといけないと思うし、辞職すべきだとも思っている。ただ、辞職した後の道が見えなければ辞職はできない。そして、彼の問題発言の背景には、お酒の問題があったことは間違いない。そこも含め、"あなたの将来のためにも議員を辞めたほうが良い"というメッセージを伴った決議案にすべきだった」と指摘する。

 「今まで週刊誌に報じられたものもあるが、周りが隠してきたものもある。お酒を飲むと強気になってトラブルを起こすというようなことは学生時代から聞いていたし、経産省に入ってからもお酒絡みのトラブルで2か月間くらい普通の仕事をしていない時期もあった。経産省を辞めた原因の一つだと思う。2016年に禁酒宣言をしたのでやめたと思ったわけだが、今回のことで飲んでいたことが期せずして分かった。彼がアルコール依存症かどうか、医師の診断もないので現時点ではわからないが、飲み始めると止まらない"ビンジドリンカー"であることは間違いないと思う。本人は反省していると言っているが、本当に覚えているかどうかは疑問だ。"いつでもやめられるんだ"と言って、自分が依存症であることを否認するケースは多い。だから映像や音声が残っていたのは、彼にとっては良いことだと思う。プロが介入し、治療や回復に向けて説得するチャンスだ。ここで孤立させてしませば、その働きかけが困難になってしまう。少なくとも、医師の診断を受けかせてから除名処分にするべきだったと思う」。
 
 経産省を退職後、ギャンブル依存症問題もコミットしてきた宇佐美氏。自身もギャンブル依存症に悩んだ経験を明かし、涙を堪えながら、次のように訴えた。

 「私は大学4年生の時にパチンコにハマってしまい、経産省の内定をもらっていたのに留年してしまった。それでも経産省は"働きながらでいいから残りの単位を取れ。仕事で返してくれればそれでいい"とチャンスを与えてくれた。だから僕なりに克服し、どこまで仕事で返せたかは分からないが、一生懸命に働いた。そして、それが今に繋がっている。依存症の人というのは、周りに相談しても、大抵の場合"お前がしっかりしないから"と言われてしまう。でも、そんなことは本人が一番よく分かっているし、後悔もしている。だからこそ、蜘蛛の糸を垂らすことが組織として大事だと思う。やはり依存症の人が希望を断ち切られたら、依存していた対象に戻るしかない。日本維新の会は今まで"ちゃんと依存症対策をやるからカジノを作っても大丈夫"と言い続けた党。大嘘じゃないかと思う。身内の中にそういう疑いのある人が出てきたの場合どう対応すればいいのか、という模範を示し、社会の理解を深めるべきだ。それなのに維新は真逆のことをやっている。除名し、批判し、辞職勧告した。彼を排除し、どんどん孤立に追い込んでいる。今、丸山に電話しても通じない、出ない。どうしろというのか。もう酒を飲むか死ぬかしか道がないかもしれない。それは自民党も同様だ。あるいは、ギャンブル依存症を根拠に、国会でさんざんカジノに反対してきたは野党はどうなのか。かつて堀江メール問題で辞職した永田寿康という議員がいた。彼もそういうチャンスが与えられず、精神病になって最終的には自殺してしまった。彼は民主党の議員だった。立憲民主党の人たちは、あのときに何も学ばなかったのか。責任と向き合わせると同時に再生のチャンスを与えるということが依存症対策で最も大事なこと。やはりここは維新が中心となって、辞職勧告決議案を修正するなりして、ちゃんと責任をもって対応してほしい」。
 テレビ朝日政治部デスクの足立直紀氏は「国会議員というのは有権者に与えられた身分なので、まずは自分で律しなさいというのが与野党問わず基本。だからこそ維新も除名にした段階で一段落、"あとは自分で辞めろよ"ということだと思っていた。ところが批判が止まなかったことから、都構想実現への流れを断ち切られたくないという考えがあったと思う。松井一郎代表に"何とかならないか"と言われた遠藤国対委員長が動き出し、立憲に相談が行き、立憲が野党に持ちかけるという形でトントン拍子で決まっていった。果たして野党の中で、議員の身分を奪うという重要性について、どれだけどこまで吟味したのかというのは甚だ疑問に感じているし、維新としても除名したから関係ないではなく、ちゃんと責任を取るところまで面倒を見なければいけないと思う」と話す。

 その上で与野党の温度差について「今までに辞職勧告決議案が可決された議員は4人いるが、いずれも辞めなかった。丸山議員も辞めないとなると、国会の権威にも関わる。また、自民党が慎重なのは、国会議員の身分が憲法でも保障されている以上、それを奪うということは非常に重いという認識があり、これまで刑事事件に発展するようなケースでしか提出していない。丸山議員は小選挙区で6万人以上の有権者に選ばれた国会議員。発言自体は問題だが、辞職勧告にまで持っていくのは違うだろうという考えだ。もしそれが乱発されるようなら、今後も失言やスキャンダルで出すことになってしまう。与党であれば、野党の議員に対し"あいつ辞めさせたいから出しちゃえ"ということも可能になる。だから自民党としては慎重なスタンスだ」と説明した。
 作家の乙武洋匡氏は「国会議員であるべきはないとしっかりと意思表示をし、彼にも理解させ、私人に戻ったところで、"ただ、お前の人生、このままほっとくわけにはいかない。党職員という立場でやり直さないか"というのが然るべき順序なのではないか。それをせずに、いきなりなんとかしようというのは、有権者の理解も得られないのではないか」と話していた。

 決議案の扱いは、週明けの21日に議院運営委員会で協議される見通しとなっている。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
 

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