アルコール添加の是非

純米酒と本醸造



 よく漫画などで、本醸造はアルコール添加をしているまやかしの酒だと言われていますが、実際はどうなのでしょう。

 まず、本醸造というカテゴリーについて検証してみたいと思います。

 本醸造とは、精米歩合70%以下で醸造用アルコールの添加が原料米の重量の10%以内で造られたお酒です。

醸造アルコールの種類

 では、この醸造用アルコールというのは一体何か、灘酒研究会の出版している「灘の酒用語集」をひも解いてみると。

1 澱粉を糖化したものを発酵蒸留したもの。

2 廃糖(砂糖の生成の時に出るかす)を発酵、蒸留したもの。

3 海外から輸入した粗留アルコールを輸入し、これを蒸留精製したもの

と一口に醸造用アルコールといっても3つの種類があることが分かります。
1や2は素性がわかりますが、3等はどういう原料から造られているかよくわかりませんね、おそらく、何かの蒸留酒を造る際に出てくる使い物にならない部分ではないかと想像できますが、これはこれからの調査を待たなければなりません。
 しかし、ただ一つ言える事は醸造用アルコールと一口にいっても色々あるという事です。

 アル添反対派の意見で最も多いのが伝統的な作り方からは外れているという事です。ただ、これは一概にそうではなく、大昔から柱焼酎と言われるアルコール添加は存在していました。
 これは、現在のように清潔な醸造設備や細菌学が発達していなかった昔に、腐造を防ぐ一つの手段だったのです。

 さて、現在では、どうかというとアルコール添加をするというのには二つの側面があります。

生産コスト削減のためのアルコール添加


 一つはアルコール添加反対派の言うように、生産コストを下げるためです。

 パック酒のほとんどはこういう低コスト化の為のアルコール添加をしていますが、これを悪と片付けてしまうのはいささか単純です。

 味はどうでもいいから2リットル1,000円前後の酒が欲しい、という人がいる限り、そういう酒はなくならないし、人の価値観はそれぞれですので、お酒にそれだけのお金をかけるのはもったいないと考える人がいても、それは悪ではないと思います。
 ただ、そうしたお良質のお酒を駆逐するという事になれば、これは問題です。

酒質向上の為のアルコール添加

 次の側面が酒質という点です。
 辛口に仕上げる場合、純米酒で日本酒度を上げるのは酵母の体力次第という事もあり、難しいという問題があります、

 つまり、日本酒度はアルコールとその他のエキス分の比率で決まりますので、発酵が進むにつれて、日本酒度はあがっていくのです。
 しかし、アルコール度数があがるとそれだけ、酵母にとって劣悪な環境になっていくわけで、そういう環境の中でも発酵を続けるよう酵母の体力が必要なのですが、なにぶん生き物相手の事ですので、ある程度、それは運まかせというとろになってしまうのです。

 したがって、途中でアルコール添加をして日本酒度を上げる事ができる本醸造のほうが、通常のアルコール度数のお酒を造る場合は圧倒的に造りやすいのです。

 特に新潟のような淡麗辛口のお酒を造る産地では、圧倒的に本醸造の生産が多いし、同じ蔵の純米酒と飲みくらべると、本醸造のほうが美味しい場合が多いのです。

 それから香りです、現在の全国新酒鑑評会に出品されるお酒のほとんどが、アルコール添加をしている本醸造の大吟醸です。
 これは、新酒のうちでも飲み安いすっきりとしたお酒に仕上げるためにアルコールを添加しているという点もありますが、香りを引き出すためにアルコールを添加しているという点も見逃せません。

 吟醸香の主な成分はエステルという物質てずが、エステルは実は非常にエチルアルコールに溶け安く、本醸造の方が、純米よりも香りを出すのに有利なのです。

 こうした事情の中では、アルコール添加を良とするか悪とするかはもう個人の主観でしかなくなってしまいます。


 ワインの世界でも、葡萄の糖分が足りない時は糖を添加しますし、酸が足りない時に人工的に酸を添加する事さえ認められています。
 さらにアルコール添加で言うならば、シェリーやマディラ、ポートワインなどの酒精強化ワインなどの存在も問題になります。


 しかし、伝統的な造りの純米酒を残さないといけないのも事実です。

 さて、あなたは、日本酒のアルコール添加についてどう考えますか?

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