兄・咲太郎と、その母のような亜矢美に激昂気味となったなつ。
追いかけてきた兄にきちんと謝り、川村屋にも頭を下げて明日からも働かせてもらうと告げます。
「さっきはごめんなさい。お兄ちゃんを責める資格は、私にはないわ。もう大丈夫だから。会えてよかった」
そう言い切るなつ。
こういうきっちりと謝るところ、大事ですよね。
ヒロインの気が強いくらいで、生意気だの謝らないだの感謝が足りないだの、しょうもない叩きをする視聴者がいます。
『半分、青い。』でも同様の叩きが見られました。
楡野鈴愛も、奥原なつも、そんなことはありません。
仮にそう解釈する人がいるとすれば、見過ごしているか、敢えて見落としているか、偏見が無意識のうちに出ているだけでしょう。
時間を気にしない男・咲太郎
なつは、川村屋では幸せに働いていて、兄の借金とは関係ないとキッパリ言い切ります。
彼女には、ウェットなところがありません。
誤解を解くにせよ、スッキリキッパリしています。そこが個性であり、北海道で身につけたものでしょう。
咲太郎はそんななつともっと話したいと、川村屋まで付いてきます。
遅い時間に戸惑うなつ。
しかもさっちゃん(=佐知子)に挨拶したいって言うんだから困ります。
こやつ……これが妹だからまだしも、そうでないなら完全にプレイボーイじゃないですか。
結局、なつの気遣いにより、「雪月」親子の部屋に向かいます。
雪次郎が出迎え、そこには雪之助もまだいました。
あーっ、犯人はこいつです!
誤解の震源地はこいつです!
今日はしらふの雪之助。銀座で東京の流行を確認してきたそうです。
これからはパフェよりもクリームソーダという結論に至るのでした。ほほう。
北海道から来たというだけで雪次郎と険悪であったわけですが、江戸っ子はそんなことをいつまでも引きずらねえよ。
というわけで、バター煎餅を食べて太鼓判を押します。
マッチポンプ雪之助ェェ!!
「是非とも北海道土産に!」
「北海道には行きたくねえ!」
そう言われると、ムッこう言い返す咲太郎。
あ、引きずっていたね。江戸っ子らしいなぁ。
典型的な江戸っ子は、ともかく機嫌がコロコロ変わるもんです。
『いだてん』の古今亭志ん生や播磨屋もそうでしょ?
なつが苦労して追い出されたと咲太郎が語ると、雪之助が即座に否定にかかります。
「誰から聞いたんだそんなこと! そんなこと言ったらバチが当たるぞ!」
お前だよ!
犯人は、お前なんだよっ!
ったく、記憶がなくなるタイプの酔っ払いですね。とよババアと妙子が必死で泥水を止める図式が見えて来ます。
そこでなつはようやく、夢を叶えるために上京したと告げることができました。
咲太郎は、新劇をやっていると語ります。性格が奥ゆかしいから制作なんだそうで。
おいおいおいっ!
夜中にさっちゃんに挨拶――とあがりこむ男のドコが奥ゆかしいんすかっ!
真顔でサラリと言うセリフがいちいち面白い。
大森氏のセンスが光っていますね。
咲太郎によると、最近はチェーホフの『桜の園』を上演したそうです。
それぞれの夢
話の流れから、なつが演劇部員だったと雪次郎から聞き、再び誤解する咲太郎。
夢は女優になることだと言い切りおった。
「兄ちゃんに任せろ!」
もう、咲太郎がこういうセリフを吐くことそのものが、ギャグなんですよね。
これが昭和のお調子者。全然頼りにならんの~。
なつは、漫画映画が夢だと訂正すると、今度はディズニーみたいなもんかと納得。
「子供が見るものだろ、あんなの」
「子供の夢を作りたい!」
咲太郎の言葉に、なつはきっちりと反論します。
泰樹はよくわかっていない。
野上は芸術ではない落書き呼ばわりする。
そして咲太郎は子供向けとバッサリ。
よいと思います。
主人公が目指すものがどういう偏見にさらされていたのか。そこをきっちりと迫り、だからこそ、その昇華を目指す過程がわかるのです。
当時のテーマにあった偏見を、御都合主義的にこねくり回し、適当にぶん投げる。
その結果、文化史すら破壊していたNHK大阪の駄作『わろてんか』と前作****にはなかった――そんな要素です。
一方、咲太郎の夢はムーランルージュの再建でした。
「マダムに借金をしたのに、まだそんなこと言ってる」
なつは突っ込みますが、咲太郎はめげません。
自分を救ってくれたあの人。つまりは亜矢美を舞台に立たせたいのだと。
きっと彼の中で、舞台にいる彼女は女神のように美しかったのでしょう。
そういう女性が自分を救ってくれた。我が子のように可愛がってくれている。その恩義に報いたい。
んー、咲太郎!
なかなか泣かせるじゃないか!
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