『竹島―もうひとつの日韓関係史―』(池内敏著)の終わり近くに次の文章がある。 仮にICJへの提訴が実現すれば日本が勝つ、と素朴に感じている人たちも少なくないだろう。「勝つ」とはいったいどういう状態を指すのだろう。争いごとの調停なのだから、結論が100対0になることはありえない。何らかのかたちでの譲歩が必須となる。・・・・・・・・いずれ強いられる譲歩であれば、どのような譲歩が可能なのか、提訴する前から冷静に自省する必要がありはしないか。強いられる譲歩と主体的な譲歩と、いずれを選択すべきだろうか。(P253)
国際司法裁判所は裁判をする、つまり判決を下す機関だ。実際、過去には多くの領土紛争において、その領土はA国のものだとかB国のものだという判決を下している。調停をする機関だというわけではない。したがって、裁判の過程で何か譲歩をするという行為は、ひょっとしたら成り行きに応じて例外的にそうすることはあるかも知れないが、通常の裁判の過程では出てこない。双方の国がその土地は自国の領土だといって争うのだから、答えは100か0だ。上の文章は国際司法裁判所のことを全く分かっていない・・・・・・・・・・・・ とりあえずそういうふうに言いたくなる。 しかし、短絡的に反応してはいけないだろう。池内さんは竹島問題を深く研究している人だ。国際司法裁判所の仕事など十分に御存知のはずだ。にもかかわらず、普通の理解と全く異なることをおっしゃるのには何か深い意味があるのだろう。良く文意を考えてみる必要がある。 考えて見た。 やっぱり分からん。本当に上の文章のとおりにお考えなのかも知れない。 だとすれば、池内さんの竹島問題というものに対する姿勢は良く分かる。大方の日本人の感覚とは相容れないことだろう。池内さんの本はこういう考えを基礎にして書かれているということに注意が必要です。 |
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コメント(4)
私も意図が分かりません。氏は「日韓は隣人同士なのだから不本意でも相互に譲歩して解決すべし」みたいなことをおっしゃっていたと思うのですが、あちらさんが交渉を拒んでいる以上、「強いられる譲歩」に頼るしかないじゃないかと思います。ICJへの付託に反対なのかそうでないかもよく分からない文章です。勝つと審理も始まらない前からきめてかかるなよ、と言いたいのでしょうか?(精一杯の好意的解釈)
蛇足ですが、ICJで係争エリアを分割する「100対0」でない判決が出たことはあることにはあります。ただEEZ境界に関するものが多く(例:サンピエール・ミクロン島)、島の領有権では正直寡聞にして存じません。
2016/2/12(金) 午後 7:30 [ h2b ] 返信する
池内さんは「互いに譲歩し合って解決すべきだ」という信念がお有りのようですよね。そういうふうになるためには、日本が一方的に有利であってはいけないですね。どっちもどっちでなければならないので、史料もそういう眼で見がちである・・・・・・・ということなのでしょうかねえ。
ところで、EEZ争いでは「100対0」ではない判決もあることはあるのですね。ただし、やはり例外的なもののようですね。
2016/2/12(金) 午後 8:18 [ Chaamiey ] 返信する
大陸棚やEEZなどの海洋境界については衡平の原則や当事国の関連事情が影響するので、「100:0」にならない場合があります。
しかしh2bさんのいうとおり、領土裁判では「100:0」の判決が出ます。「100:0」以外の事例は私も知りません。
好意的に読むなら、池内氏が「国際司法裁判所ではなく仲裁裁判という譲歩」を指摘しているような気がしないではありません。
国際司法裁判所は厳密に国際法を適用する裁判所なため、竹島問題では衡平の原則の適用は期待できません。
しかし仲裁裁判は厳密に国際法を順守する義務はなく、衡平の原則や当事国の事情が判決に影響する可能性があります。
そのために韓国が裁判に同意する可能性が、国際司法裁判所への提訴よりも仲裁裁判への提訴の方が高い、という事情があります。
ええ、独島研究の論文で同じような内容を読みました。
2016/2/12(金) 午後 10:55 [ mam*to*o*1 ] 返信する
仲裁裁判はそういうものですか。だとすると竹島の解決には不向きですね。竹島は白黒をはっきりさせることが何より大事だと考えます。※個人の感想です。
2016/2/13(土) 午前 6:45 [ Chaamiey ] 返信する