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固有領土論異説 (1)

「「竹島は日本固有の領土である」論」(池内敏氏)について
 
1 前書き
名古屋大学の池内敏教授が「「竹島は日本固有の領土である」論」という表題の論文を書いておられる(一般財団法人歴史科学協議会の会誌『歴史評論』785(20159月号))。
 その結論としては、竹島が日本固有の領土だという主張は「放棄すべき対象でしかない」のだそうであるが、その結論に至る考察では、外務省が「日本固有の領土」というときにその内容は二種類があると説明されているのが特徴的です。一つは、「歴史的に古い時代から日本のものである」という意味での用い方で、この論文で池内教授はこれを「素朴な「日本固有の領土」論」と名付けている。もう一つは、1905年1月28日の竹島の領土編入が国際法秩序に則って正当になされたという前提に立つならば、1905年1月28日より前に竹島が韓国によって支配された史実が証明されない限り「日本固有の領土」なのだという固有領土論だとして、池内教授はこれを「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」と名付けている。そして、外務省はこの二つの固有領土論を国内向けと韓国向けに使い分けているとおっしゃる。
 今回、この池内教授の論文に対して意見を述べて見たいと思う。
 

2 論文の要約
 まずは、今回の論文を要約して見る。項目名は原文のままです。
 
<以下、要約>
はじめに
 最近の中学校地理の検定済み教科書では、北方領土、竹島、尖閣諸島いずれについても「日本固有の領土」と表現されているが、それがどういう意味内容を指すか良く分からない。北方領土については「かつては多くの日本人がくらしていた日本固有の領土」という説明があるので、中学生が「歴史的に古い時代から日本のものであった」というのが「日本固有の領土」の意味だと理解しても責められない。 
 
一 日韓両政府間の見解往復
1953年から1965年までの間に日韓の政府間で竹島領有権論争の文書が往復された際、日本側の第4回文書(1962)で初めて「日本固有の領土」という文言が現われたがこれは「素朴な「日本固有の領土」論」である。
 
二 「学問的外皮論」の成立と「素朴論」
「素朴な「日本固有の領土」論」がいつごろから「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」に変わったかというと、外交青書における「日本固有の領土」の英文翻訳として、従来は主に「an integral part of Japan」と表現されて来たものが、平成20年に外務省が初めて竹島パンフレツトを刊行して竹島の主張に力を入れ始めた際のその英訳が「an inherent territory of Japan」となっているので、これが転換点なのであろう。一つの推測であるが、竹島問題における「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」は極めて近年になって強調されるようになったものだ。
 
 竹島問題における「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」は、「1905年以前に韓国が竹島を支配した事実が有効に示されなければ「日本の固有領土」とする主張が成立する」という論理構造になっている。そうであれば、竹島が1905年以前に既に韓国の領土だったとする韓国側の主張を論破する必要はあっても、1905年より前に日本領だったとする論証を積極的になす必然性は全くない。1905年1月28日における日本領編入の事実さえきちんと明らかにすれば良いからである。
 ところが外務省ホームページの小冊子『竹島』(26p)では、「韓国側からは、我が国が竹島を実効的に支配し、領有権を再確認した1905年より前に、韓国が同島を実効的に支配していたことを示す明確な根拠は提示されていません」というように「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」を強調しながら、一方で「我が国は遅くとも17世紀半ばには竹島の領有権を確立していました」と前近代に竹島が既に日本領であったことの論証(「素朴な「日本固有の領土」論」)にもこだわり続けている。
 
 日本政府は1962年に韓国に示した第4回日本政府見解において「韓国が島根県告示より以前から竹島を有効に経営していたということが立証されない限り、かかる議論は全く根拠がなく」と述べたが、「素朴な「日本固有の領土」論」に立ちつつもこのように「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」と良く似通った論理構造の主張を述べた最大の理由は、19051月の竹島日本領編入行為それ自体の正当性が争われたところにある。この言い方は、こうした類の論争を回避するための立論である。とすれば、竹島問題において「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」が強調されるのも、同種の論争を回避するための手段ではなかったか。ここで回避された論争とは、竹島の日本領編入は日本による韓国植民地化の歴史過程における強制的な編入であったか否かとする論争であり、20世紀初頭の日韓関係史を日本人としてどのように見据えるかという歴史認識問題と不可分のものである。そうした歴史認識問題を回避するために「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」は近年になって新たに導入された。
 「我が国は遅くとも17世紀半ばには竹島の領有権を確立していました」という「素朴な「日本固有の領土」論」は今日の歴史学の実証水準に照らすと完璧に破綻している。しかし、「素朴な「日本固有の領土」論」は「固有の領土」という言葉を浸透させるには有用であり、それを残すことによって、竹島が日本領であることについての国民的合意は素朴な感覚に依拠しながら容易に獲得され広がりを持つことになる。
 いわば、「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」は韓国に対する防衛線を張る議論として、「素朴な「日本固有の領土」論」は日本国民における竹島を日本領とする合意形成を求めるものとして役割分担をしている。ここに両論の併存が放置される理由があり、外務省が実証的に破綻した「17世紀半ばには竹島の領有権を確立」との説に固執する理由もそこにある。
 
おわりに
次のAB二つの例に見られるように、かつての日本政府見解の論理は現在も踏襲されている。
A しかし、開国以前の日本には国際法の適用は無いので、当時にあっては、実際に日本で日本の領土と考え、日本の領土として取り扱い、他の国がそれを争わなければ、それで領有するには十分であったと認められる。(日本政府見解第2回)
B 閣議決定に続く島根県告示は、日本が近代国家として、竹島を領有する意思を再確認し、これを日本の近代行政区分の中に編入し、このことを公示したものであって、それに続く一連の事実は、竹島に対する実効的な占有及び経営による主権の行使を示すものにほかならない。(日本政府見解第4回)
 
しかし、江戸時代の松島(今日の竹島)の政治的な処理に関わる歴史的事実は、2000年代に入ってから詳細に明らかになった。それらの史実をきちんと直視できればABのような主張を未だに繰り返すことはありえない。近年の着実な成果を無視して旧態依然の主張を繰り返す動向がなくならないことは遺憾であり、こうした旧態依然たる態度が「素朴な「日本固有の領土」論」と「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」を併存させる根源であり、竹島問題はもちろん、日本の近現代史の歩みから日本人の目をそらせる役割を果たしている。だから「日本固有の領土」という主張は放棄すべき対象でしかない。
 
<要約終わり>





3 要約の要約
 さて、この論文は、日本政府(外務省)のいう竹島の「固有領土」主張には二種類があるという認識が前提となっている。一つは「歴史的に古い時代から日本のものであった」という「素朴な「日本固有の領土」論」で、もう一つは、日本の竹島領土編入より前に竹島が韓国によって支配された史実が証明されない限り「日本固有の領土」なのだという「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」ですね。その二つを日本政府(外務省)は主張しているのだという。


 そして、「素朴な「日本固有の領土」論」は最近の研究によって完全に破綻している、と指摘される。一方、「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」に対してはどういう評価なのか、直接的には今一つ読み取れない。しかし、「学問的外皮をまとった「日本固有の領土」論」は「竹島の日本領編入は日本による韓国植民地化の歴史過程における強制的な編入であったか否かとする論争」、ひいては「20世紀初頭の日韓関係史を日本人としてどのように見据えるかという歴史認識問題と不可分」の議論を回避するためのものだという指摘から見ると、このような論は取るべきではないという否定的な評価になるのだろう。最終結論として、「日本固有の領土」という主張自体を放棄すべきだとされていることからもそれは分かる。要するに、この論文は、竹島固有領土論は外務省が取る二つの観点のいずれから見ても間違いだから即刻中止すべきという批判です。


 



(続く)

 
 

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