名古屋大学池内敏教授の新刊『日本人の朝鮮観はいかにして形成されたか』(叢書東アジアの近現代史第3巻)という本が出版されている。 目次は次のようになっている。 第1章 大君の外交 第2章 「武威」の国 第3章 元禄竹島一件 第4章 漂流と送還 第5章 出身地を詐称する漂流民 第6章 ひとの交流 第7章 絵画とモノ 第8章 史実と脚色 第9章 十九世紀の鬱陵島 第10章 竹島の日本領編入 第11章 韓国皇太子の鳥取訪問前後 第12章 「鮮人」考 第13章 細井肇の和訳した『海游録』 終章「鎖国」と朝鮮観 本の内容は、題名にあるように、目次にある13の題材を通じて日本人のいろいろな朝鮮観について論じてある。その中に「第3章 元禄竹島一件」、「第9章 十九世紀の鬱陵島」、「第10章竹島の日本領編入」という竹島関連の3項目がある。とは言っても、本書は領土問題を論ずるという趣旨ではないので、これらの章も領有権論争という構えではなく、他の章と同様に、日本と朝鮮との間にはこのような史実があったのだということを説明する趣旨で書かれている。 「第3章 元禄竹島一件」では、安龍福事件を受けて幕府から朝鮮人の竹島渡航を禁止するように朝鮮と交渉することを命じられた対馬藩のいろいろな思惑と具体的な交渉の様子が詳述されている。それはそれで面白いのだが、竹島領有権論争の観点から特に言いたいことはない。 「第9章 十九世紀の鬱陵島」では、明治以降の日本人の鬱陵島進出の状況や、江戸幕府が八右衛門事件(天保竹島一件)の結果として公布した竹島(鬱陵島)への渡海禁止令に、竹島は「元禄のときに朝鮮国にお渡しになった」島だという説明があったために、幕末以降の日本人の間に「竹島(鬱陵島)はもともとは日本の領土だったのだ」という意識が広がって竹島開拓論議が活発になったことなどが述べられている。ここでも、竹島領有権論争の観点から特に言いたいことはない。 「第10章 竹島の日本領編入」(p228~243)では、(今の)竹島の歴史が簡略に綴られていて、元禄竹島一件、天保竹島一件から説き起し、1905年の竹島の日本領編入の閣議決定、編入後の竹島における隠岐から来た漁業者と鬱陵島から来た漁業者の競合などが語られる。この章では、竹島領有権について論ずるという趣旨ではないにしても、竹島問題の議論にも関連する意見がいくつも述べられている。いずれも同氏の過去の著作などで取り上げられたことがあるものだと思うが、第10章からいくつか拾ってコメントして見たい。 |
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