二〇〇四年に、二回目の日朝首脳会談が平壌で行われて十五周年を迎えた。日朝関係は停滞し、首脳会談も拉致被害者の追加帰国も実現していない。対北朝鮮外交を見直し、進展につなげたい。
最初の会談が実現したのは〇二年だった。当時の小泉純一郎首相に対し、金正日(キムジョンイル)総書記が拉致を認め謝罪、五人の帰国が実現した。
〇四年の会談では、北朝鮮側が真相究明のための調査を再開すると明言したものの、成果のないまま今日まで来てしまった。
最近、安倍晋三首相は、「条件をつけず、虚心坦懐(たんかい)に話をしたい」と、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に首脳会談を呼びかけているが、実現のメドは立っていない。
時間の経過で、拉致被害者本人だけでなく、家族の高齢化も進み、健康を害する人もいる。
なぜこの間、首脳会談ができなかったのか。最大の原因は「圧力」に頼り過ぎたことだ。圧力を最大化すれば、北朝鮮側が折れ、対話を求めてくると考えたのだろう。実際は、そうならなかった。
北朝鮮は、海外に労働者を派遣するなどして外貨を稼ぎ、むしろ経済発展を遂げた。
日本は独自に厳しい制裁を科してきたものの、効果は限定的だった。日朝間の交易はほぼゼロとなり、北朝鮮に対する日本の影響力は、かえって低下してしまった。
もう一つの原因は、日本政府が拉致という人道問題と、核・ミサイルという安全保障問題を、同列に扱っていることではないか。
二月の米朝首脳会談が物別れに終わり、核・ミサイル問題の解決は長期化が避けられない。
米国は自国民が北朝鮮に身柄を拘束された際、政府高官が訪朝して早期の帰国を実現している。
菅義偉(すがよしひで)官房長官(拉致問題担当相兼務)は「(拉致の)認定の有無にかかわらず、被害者全員の帰国に向けて取り組む」と述べているが、より柔軟な対応が必要だ。
米国との関係も課題だ。安倍首相は、北朝鮮に対して圧力から対話に揺れ動くトランプ政権に同調してきた。
これでは、北朝鮮側も警戒して日朝首脳会談には乗ってこない。日本が独自に判断して交渉に当たる気概を、安倍首相に求めたい。
一四年の日朝ストックホルム合意に基づき北朝鮮が設置した再調査委員会は、調査結果を出しているという。受け取った後、現地で徹底的に点検をしてはどうか。
過去十五年間の反省に立ち、新たな一歩を踏み出してほしい。
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