大瀬良にまたもひねられ、借金が増えた。守りが乱れ、ロメロが踏ん張れない。ファンは言いたいこともあるだろう。そんな試合だからこそ、知っておいてもらいたいことを書く。
中日の失策は高橋の捕球ミスと京田の悪送球を加えても16。これはリーグ最少であり、最多は首位に立つ広島の37である。中日は決して守りから崩れて下位に低迷しているわけではない。
敗戦投手になったロメロにも、目に見える収穫があった。5回。1死から左前打を打たれた鈴木の二盗を阻んだ。加藤バズーカが刺してくれたのではない。ロメロがけん制球を投げ、ビシエドから遊撃の堂上へ。引き返そうとした鈴木を、堂上が全力で追い、タッチした(記録は盗塁刺)。ロメロの登板中に盗塁を許したケースは4度あるが、うち3度はロメロ-ビシエド-二塁と渡る間に、走者は振り返ろうともせずに全力で二塁を盗むというパターンだった。
ロメロとしてはおびき出すためにわざと右足を高く上げて一塁に投げていたのだが、日本野球はそこを逆に突く。打者に投げればそれもよし。一塁に投げられても迷わず走れ。そうすれば二塁は奪えるという考えだ。
「足を上げてタンケ(ビシエド)から二塁に投げるのと、クイック(モーション)で加藤が二塁に投げるの、どっちが速いか。その2つでしたが、今日は違ったでしょ?」とは佐藤チーフスコアラー。右足を高く上げないけん制球を習得し、使い始めた。ロメロを諭し、練習させたのは阿波野投手コーチだ。
「広島には狙われていたから。そこ(けん制球)は落ち着いてやってくれた」。3度の内訳は巨人・丸(4月10日)、広島・菊池涼(25日)、同・野間(5月8日)。いつまでもフリーパスではない。成果は出たが、また負けた。その通り。でも負ければ同じとは思わない。守る。防ぐ。しのぐ。そこから攻勢に転じるのが野球の醍醐味(だいごみ)ではないか。