松竹新派特別公演「華岡青洲の妻」が昨日8月19日に埼玉・戸田市文化会館で開幕した。
有吉佐和子が手がけた「華岡青洲の妻」は、麻酔薬の完成に執念を燃やす外科医・華岡青洲を軸に、その妻・加恵と母・於継の争いや、家族の思いを描く物語。今回の巡業では、於継役を
水谷は開幕に際し、過去に杉村春子が何度も演じた於継役について触れ、「杉村春子先生をお手本に、今度こそ自分の於継をお見せしたい」と意気込みを語った。上演時間は途中休憩を含む約3時間10分を予定。本作は福島、宮城、岩手、秋田、群馬、広島、岐阜ほか各地を巡演する。
水谷八重子コメント
「華岡青洲の妻」という有吉佐和子先生の名作ですから、何より脚本が面白い。青洲の母・於継は息子が遊学中に自ら頼んで嫁にもらった加恵に愛情を注ぎますが、息子が帰還するとたちまち嫁に対する態度を一変させ、嫁姑の闘いが始まります。人はこれほど簡単に変われるのものなのかと幾度となく自問しながら、稽古を重ねてまいりました。杉村春子先生をお手本に、今度こそ自分の於継をお見せしたい。
波乃久里子コメント
青洲の妹・小陸は二十八歳位から演じている若い役ですが、今でも勤めることができるのは歌舞伎や新派の特権。作者の有吉先生が「小陸は屋根の上の目よ」とおっしゃっていましたが、家族の確執を俯瞰して見守る面白い役。一番好きな役です。喜多村緑郎さんと河合雪之丞さんが歌舞伎から劇団新派に移籍されて、名作が新たな配役で生まれ変わりました。これを機に、新派のお客様を全国に増やしたい。
河合雪之丞コメント
青洲の妻の加恵は、新派に移籍した時に初めて演じた役で思い入れがあります。お客様に役者としての成長をお見せしたい。嫁入りした良家のお嬢さんが苦労を重ね、青洲の妻として変化してゆく。女方としてどのように加恵の変容をお見せするのか。それがテーマです。今回の舞台をご覧になったお客様が、ちょっと無理をしてでも東京や大阪に新派の舞台を観に行こうと思って下さるように、お客様の裾野を広げたい。
喜多村緑郎コメント
喜多村緑郎襲名から二年が経ちましたが、また一からスタートという気持ちでおります。師匠の猿翁が全国のお客様に東京と同じ面白い作品をお見せしたいと、過酷なスケジュールの巡業をこなしていました。この作品も本当に素晴らしいので、全国のお客様に感動していただけるよう、必死に勤めたい。愛する家族の確執の板挟みになるのは難しい役ですが、青洲は神輿に乗っているような存在。小さな起伏も細やかに演じたい。