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♪~
(杉本)お前 何度言ったら分かるんだ!仕事は 見て覚えるんだ。いちいち 指示待つな。
本当に やる気あんのか?(雪次郎)はい!
お前のやる気は 返事だけなんだよ。
はい!
(なつ)頑張れ…。
(咲太郎)俺のせいか…!?
俺のせいで なつは一人で東京に来たのか…!
(亜矢美)北海道で 妹さんはそれは それは 苦労してきたらしいよ。
いや そんなことはないだろう!
去年の夏に会った時は幸せだって言ってたよ。
一緒にいた おばさんだって…。バカ! お前が そう言わせたんだろうが。
かわいそうにねえ… 小さい時から牧場で さんざん こき使われてもう 朝から晩まで 牛の乳搾りだ…。
あっ… 手が しばれるわとか言ってると乳も搾れねえで 学校なんか行くんでねえ。ピシピシピシ~ッて…。
ひでえ…。
それじゃ 孤児院より ひでえじゃねえか!
で やっと大人になってお前に会いに来たわけだ。
どこにいるんだ? なつは。
川村屋。
誰かの借金を返すために皿洗いをしてるらしいよ。
えっ…。
どうしたもんかねえ…このまんまじゃねえ人間のクズだわな!
分かってるよ!
チクショー…。
許せねえ…。
北海道め…。
許さねえ!
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
その日の閉店後 なつは店の片づけを手伝っていました。
(戸が開く音)あっ すいません 今日…。
なつ!
遅くなって悪かったな。
お兄ちゃん!なつ お前を迎えに来たんだ。
どういうこと?(佐知子)咲ちゃん!
お~ さっちゃん! 元気か?うん。 久しぶり…。
咲ちゃんも元気そうで よかった。ああ 俺は元気だよ。
すいません 佐知子さんちょっと いいですか?
ごめん さっちゃん。 また今度。妹が すねてるから。
すねてないけど!あっ 妹のことは知ってるよね?
もちろん。 一緒の部屋にいるから。
そうなんだ?心配しないでね。
なっちゃんのことは自分の妹だと思って大事にするから。
あの ちょっと…。優しいだろ さっちゃんは。
ちょっと待ってよ お兄ちゃん!
それより 今 どこで何してんのさ?
今は とにかく急いでお前を迎えに来たんだよ。
えっ?(光子)どういうことなの?
あ マダム…。お久しぶりね。
マダム 俺の借金と妹は何の関係もないだろ!
どういう意味かしら?お兄ちゃん…。
妹を働かせるなんて 川村屋のマダムも随分あこぎなまね するもんですね。
はあ?
これを!何?
返済金です。
また1万円だけですけど…。
これからは 必ず 毎月返しに来ますよ。
そのかわり 妹は解放してもらいます。ねえ ちょっと待って。
妹が ここにいると知って慌てて返しに来たわけ?
相変わらずね。
妹は連れていきます。どうぞ。
えっ ちょっ… お兄ちゃん!
なっちゃん お兄ちゃんって…。
誰だ? こいつは。
あっ 雪次郎君。北海道から一緒に来た 私の友達。
北海道?小畑雪次郎です!
なっちゃんのお兄さんですか?
何だ? お前。(雪次郎)えっ?
何で なつを追っかけてきたんだ!?
いや 追いかけてきたわけでは…。お兄ちゃん やめてよ!
何を さっきから勘違いしてんのさ!
なつ とにかく ここを出よう。
お兄ちゃんと 一緒に行こう。
えっ?いいですね? マダム。
だから お好きにどうぞ。
別に なつさんを ここに縛りつけてるわけではありませんからね。
(野上)それどころか保護してるようなものですよ。
行こう なつ!
連れてって今度は あなたが 妹を不幸にするの?
あなたは今のなつさんの何を知ってるの?
何をしてあげられるというの?
あなたは 今 何をしてるのですか?
新劇の劇団の制作部にいます。
それで なつさんを幸せにできるの?なつさんの生活を保証できるの?
(野上)マダムに 借金も返しながら。
だけど…。(光子)これから この先どうやって妹と生きてゆくつもりなんですか?
いいんです!
マダムは 兄の何を知ってるんですか!
すいません…。
なっちゃん…。
そうね… 私は 何も知らないわね。
なんてことを…。
すいません あの…少しだけ 兄と話をさせて下さい。
お好きに どうぞ。戻ってこなくていいですよ。
すいません…。
行こう なつ。
お兄ちゃん ちょっと待って!
どこ行くの?
俺の家だ… もう心配ないよ。
何がさ?
何なのよ もう! やっと会えたのに…。
何なの? マダムに あんなこと言って…。
何て言うか… 話に ついてけないべさ!
お前… すっかり 北海道に染まったな。
言葉は しょうがないしょ。言葉だけじゃねえ…。
何か… 苦労が 顔に にじみ出てる。
聞きようによっては 失礼だからね それ。
悪かった。 すまん このとおりだ。
ねえ やめてよ…お兄ちゃんが謝ることなんてないから。
俺のせいで 皿洗いなんかさせて…。
だから…さっきから勘違いしてるみたいだけど何も お兄ちゃんのためじゃないから!
分かった。 とりあえず行こう。
話は そこでだ。
お兄ちゃんの家って どこ?
もう そこだ。
なつ…なつに会わせたい人がいるんだ。
誰?話は会ってから。
そこは…。
(戸が開く音)
連れてきたよ。
あっ いらっしゃい。 おばんでござんす。
ここは 歌手の煙カスミさんと…。
咲太郎 お店閉めちゃおっか。うん うん…。
えっ いいのか?いいの いいの いいの… 早く…。
分かった。
なつさんおなか すいてらっしゃるでしょ? ね。
咲太郎 咲太郎! 今日はさ 奥の座敷で3人で ごはん食べましょうよ。
ああ いいね そうするか。
なつ 奥行こう。
待ってよ お兄ちゃん…。
いい加減にしてや!どうした? なつ。
こんな大人の人まで…。えっ?
ここで 一緒に暮らしてるってこと?
まあ そういうことだ…。
ねえ 言うよ! 私 言っちゃうからね!うん 何でも言ってくれ。
この人のために言うよ!ん 何?
去年の夏休み 浅草で会った踊り子の人はお兄ちゃんに よろしくって言ってたよ!
また いつでも遊びにおいでって!朝まで 一緒にいたんでしょ!?
ああ マリーのことか?
それから煙カスミさんと 一緒にいた人も…。
あっ 土間レミ子ちゃんね。 付き人の。そうです。
その人が お兄ちゃんに返してだって!何を?
心の操! 真心だって!
何だ? それ。知らんわ そったらこと!
それから 佐知子さんは…。あ~ 待て! 分かった!
言いたいことは分かった。違うよ。 それは勘違いだ。
いや 勘違いさせてんのはお兄ちゃんでしょ!
あ~ まあ 落ち着け! 落ち着けって…。ねえ もうバカでしょ 咲太郎ね。
困っちゃうわよね アッハハハ…。
何で そんな落ち着いてるんですか?
あっ… あっ まさか えっ… 妬くとか?うん? うん?
バカ この人は違うよ。
この人は 俺の母ちゃんだ。
えっ?まあ 母ちゃんみたいなもんっていうか岸川亜矢美って元ムーランルージュの踊り子だ。
今から ゆっくり話すよ。
あっ…。
(藤田)咲太郎は戦後のマーケットでうろうろしてるところを助けたんだ。
それは ありがとうございました。
助けたのは俺じゃねえ。
戦前から ムーランで踊ってた岸川亜矢美っていう踊り子だ。
あっ ああっ あ~っちっち…!
あなたが そだったんですか…。
あっ まあね…。
そうか… 藤正親分や角筈屋書店の社長から聞いてたか。
でも それなら どして歌手の煙カスミさんはあなたのことを隠してたんですか?
えっ?去年 東京にお兄ちゃんを捜しに来た時もそだったしこの間も あなたのことを私に隠してましたよね?
あ… それは 私に気を遣ってくれたんじゃないの? うん…。
どうしてですか?う~ん…。
あれ どうしてかしら? アハハハハ…。
なつ そんなことは どうだっていいだろう会えたんだから。
それより なつここで お前も 一緒に暮らさないか?えっ?
なつさえ よければここに住んでいいんだよ。
私も一緒に?
もし よければなんだけど…。
狭いんだけどさ 上に2部屋あるから。
生活の面倒は 俺が見るよ。
なんとかする。 俺に任せろ。
バカ! お前の そのなんとかってのが一番信用できないの。
だから こうなってんでしょ。
いや なんとかするしかないだろう!どうやって?
だから… なつのために働くよ。
食べてけんのか? 新劇で。ほかの仕事も探すよ。
私が なんとかします。
そのなんとかだって 当てにならないだろ。
やっと この店を借りて生活してるくせに。
とにかくさ ここに いてもらってさんで 食べていければいいんでしょう?
食べさせられんのかよ?
あっ おでん 毎日食べれんじゃない ねえ。
あっ 何だったらここで働いてもらってもいいわよ。
客も ろくに来ない こんな所で働いて どうするんだよ。
こんな かわいい子 来てくれたらお客さん いっぱい来ちゃうわ。
おい 俺の妹を 商売に使おうってのかよ。
ちょっと手伝ってもらうだけでしょ。
あっ その方がねここに いやすいわよ。 ねえ?
嫌です…。
やめて下さい…。えっ?
2人して 私をバカにしないで下さい。
バカになんかしてないから。何言ってんだよ?
私は もう 一人で生きられます。
ここは 私とは何の関係もないとこですから。
帰ります。
えっ…?
ちょっ… おい なつ… なつ!
おい なつ!
なつ! なつ… 待てよ!
どうしたんだ? なつ。
お兄ちゃんは私と千遥を捨てたんでしょ。
それで楽しかったんでしょ? ずっと…。
死ぬほど心配してたのに…私と千遥のことは とっくに忘れて…もう関係なかったんでしょ!
なつ…。
♪~