@chablis777  
シャブリ

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(カスミ)♪「可哀想だよお月さん」
♪「なんでこの世の幸福は」
♪「ああ みんなそっぽを向くんだろ」
なつは 東京・新宿にいました。
(カスミ)ありがとうございました。
どうも… ありがとうございました。
ねえ もしかして あなたは…?
(なつ)お久しぶりです。
(雪之助)いや~ いかった!
あなたの歌声はね すばらしいです!
どうも ありがとうございます。(雪次郎)すいませんお酒に酔ったみたいで…。ああ… いいんですよ。
あなたは 確か 咲坊の…。
はい。 奥原咲太郎の妹です。
兄が 今 どこにいるか知りませんか?
知らないわね。
そうですか…。
ちょっと お酒につきあってくれる?えっ?
♪~
寒くないですか? そんな格好して。
ちゃんと 挨拶…。
(カスミ)あっ こんばんは。(亜矢美)あら カスミねえさん いらっしゃい。
はい こっちよ!お客さん 連れてきたのよ。
(亜矢美)まあ うれしい お客様。いらっしゃいませ アッハハ…。
いらっしゃい。おばんです。
あっ… おばんです ハハハハ…。
どうぞ。
なつは 亜矢美さんとの出会いの意味をまだ知りませんでした。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(雪次郎)父ちゃん… もうやめれって。 な。
心配すんな 雪次郎。
ここ どこよ? 新宿だべ お前…。
もう分かったって…。
北海道からじゃ 遠かったでしょう。はい。
おでん 好きなの言って。遠慮しなくていいのよ私のおごりだからね。(亜矢美)じゃあねおすすめの このばくだん 食べてよ。
すいません。あの~ 私 熱かんにして下さい。
お~ はいはい。それは もう 出さなくていいですから!
出しますわよ。 商売 商売!え~…。
レミちゃんも 好きなの言って。はい。 それじゃ…はんぺん 大根 ちくわぶ コンニャク卵 ツミレ がんもどき!
分かんないけど 全部入れときます。あ~ お願いします。
今日は ステージの帰り?
そう クラブ メランコリー。
この3人はね私の歌を聴きに来てくれたのよ。
おねえさんの古くからのお知り合い?
人を捜して 私を訪ねてきたのよ。
あら 人捜し?はい。
子どもの頃に生き別れたお兄さんですって。
それがね 私と同じムーランルージュで働いていたんだって。
去年の夏ごろよね 捜しに来てたのはそのお兄さんを。
はい。 その時 兄には会えたんですけどまた今は どこにいるか分からなくなって。
(カスミ)だからね 今度はお兄さんのそばで暮らすために東京に出てきたんだって。
いや 兄にとっては迷惑になるだけかもしれませんけど…。
(カスミ)名前 何ていうんだっけ?
奥原なつです。
あっ 兄の名前は奥原咲太郎です。
(カスミ)ムーランルージュじゃ咲坊って呼ばれてた子なのよ。
はい 熱かん…。あ~…。やめれって いや もう…。
あっ もう…。なみなみ… ついで下さい。いや もう あっ もう…。
あのね 女将…女将 あの この子はね なっちゃんね本当に苦労したんだわ。(亜矢美)そうなの?
おじさん いいって…そったらこと ないから。
(雪之助)ある。 あるべ!子どもの頃によ北海道の牧場に預けられてさこれがね そこにいたのは なんとまあ人の苦労を 苦労とも思わねえようなおっかない開拓者のじいさんでな牛のね… 牛の乳搾り できなきゃ学校に行くなって言われてたんだよ。
いや もう いつの話してんだべ。
(雪之助)なっちゃん なっちゃん…あれだべ あの~ ほらつらくなってよ牧場を飛び出したことあったべ?
おじさん…。(雪之助)あったべ!
あったけど…。(雪之助)あったべ! ほら あの東京のお兄さんに会いたくなってよ飛び出したことあったべや?ところが…ところがですよ 女将… 女将!
ん… はい?その兄さんってのがねこれ 会ってみたら もう これろくでもねえやつでな…。
(亜矢美)あら…。警察のね やっかいになるようなやつだったんですよ!もう やめれって!
なっちゃんに失礼だべそったらこと言ったら!別に いいから。
なっちゃん あれだよな…お兄さん 川村屋に借金残してんだべ?その借金 返すためにねなっちゃんは 皿洗い川村屋でやってるんです。
いや おじさん それは違うっしょ!
そういうことにも なるべさ。おい 雪次郎!お前 支えてやれ!うん…。
分かったか? 雪次郎 お前…。おっ…!あっ!
おじさん…? えっ…?支えなきゃなんねえのは そっちだべよ…。
しょうがねえな もう…飲み過ぎだべ 弱えのに…。
あっ すいません もう帰ります。
北海道?いや… 川村屋です。
寮があるんで…すいません ごちそうさまでした。
気を付けてね。はい。
ごちそうさまでした。すいません ごちそうさまでした。
(雪之助)寒い… 寒い…。
えっ…?咲ちゃんにさ…。
咲ちゃん?
お兄さんに 私にも返すように言ってよ。
兄は あなたにもお金を借りてるんですか?
お金じゃない…。
私の心よ。はい?
心の操!真心を一晩 貸したままだから…。
返してもらうわよ。
さっぱり分かんねえ…。
ごめんね。
知らせに来てくれたのね おねえさん。
あとは 亜矢美ちゃん次第よ。
♪~
すいません 佐知子さん。(佐知子)何が?
せっかく 一人で部屋を使ってたのに…。
私も 最初は相部屋だったのよ。
だから 気にしないで。
佐知子さんみたいな人で いかった。
私も あなたで よかったわ。
困ったことがあれば 何でも言ってね。
ありがとうございます。
咲ちゃんからは何も聞いてない… わよね?
私のこと。
咲ちゃん?
そりゃ 言えないか…。
えっ?
あっ なっちゃん 早えなあ。
遅いよ。どうしても 早く目が覚めちゃって布団の中で我慢してたんだから。
う~ん 牛が恋しい…。
そうか。おじさん 大丈夫?
さっき 目 覚めて二日酔いで苦しんでるわ。
水 持ってこいって。
父ちゃん…。・(雪之助の声)
あっ おはようございます。
おはよう。 早起きで偉いわね。
いや 癖なんです。
あっ 自分でやります…。
あのさ…。はい?
これ 少ないけど…お兄さんに渡してくれる?
えっ?
少しでも 足しになればと思って。
えっ 何ですか? これ。
お金よ。えっ なして お金を…?
力になりたいからでしょ。
私からじゃ 遠慮して受け取ってくれないかもしれないからあなたから渡してあげて。 ね。
あっ あの… 兄と 何かあったんですか?
ハッ… やだ…まだ ないわよ。
まだ…?えっ もしかして 兄はあなたにも 借りがあるんですか?
借りなんてないわよ。
私と咲ちゃんは 同志だもの。
同志?
この新宿で ずっと 一緒に強く生きていこうって誓ったの。
ハッ… やだ…。
やだ…。
兄って どんな人なんでしょう…。
怖…。
こんにちは。はい ご苦労さん。
(戸が開く音)
(咲太郎)ただいま!
咲太郎…。何だよ しけた面して。
相変わらず不景気か?
神武景気も ここまでは届かないか。
ま 元気出しなって 母ちゃん。
あ… おでん 出来たばっかりだけど食べるかい?
うん。 風車のおでん 久しぶりだなあ。
あんた また 新宿に戻ってきたの?
ここしか帰る所がないだろ。
で 今は何やってんの?
今? 今は 新劇の劇団 手伝ってんだ。
(亜矢美)新劇?
昨日が千秋楽だったんだ。
ちっとも もうからないけどうん… 役者は いいんだよ。
あっ ほら ムーランルージュも最後の方は新劇みたいだって言われてたろ?
うん…。
やっぱり そっか まだ知らないか…。
えっ?
それで帰ってきたってわけじゃないんだ。
何の話だ?
(ため息)
あんたの妹 新宿に来てるよ。北海道から。
えっ なつが!
あんたを捜してる。
今度は こっちで暮らすために出てきたらしいよ。
何で?
今更 俺なんか…。
あれは… 追い出されたんだね。
えっ… 北海道をか?
まず 卵を こうやって白っぽくなるまで泡立てる。それから さっきの粉ももう一回 ふっとけよ。
はい! 分かりました!
(光子)なつさん。はい。
これから忙しくなるから今のうち ごはん食べておきなさい。
はい。
俺のせいか…!?
俺のせいで なつは一人で東京に来たのか…!
妹さんはね 北海道でそれは それは 苦労してきたらしいよ。
いや そんなことはないだろう!
去年の夏に会った時は幸せだって言ってたよ。
一緒にいた おばさんだって…。お前が そう言わせたんだろうが。
♪~
熱いよ 熱いよ…!
何だ まだ泡立て終わらないのか。
早く粉もふってバターは 湯煎にかけとけよ。
はい…。
なつよ 何だか 咲太郎に勘違いされているみたいだけどもうじき 会えるかもしれないよ。


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