建設中に決壊したラオスのダムは、日本の資金によるものだった――韓国叩きに終始するメディアが報じるべきこと

志葉玲

ダム建設に韓国企業が加わっていたことで、韓国叩きの“燃料”に

LAOS ATTAPEU DAM COLLAPSE

ダムの決壊で村が水没、家の屋上に避難した住民たち。(写真/時事通信社)

 今年7月、東南アジアのラオスで起きたダム決壊事故。メコン河の支流セコン川水系に建設中のセピアン・セナムノイ・ダムの貯水池に設置した補助ダムが崩壊し、あふれ出た膨大な水が下流の6 の村を直撃。のべ13の村が浸水する大惨事となった。  現地報道によれば、数十人が死亡、約100人以上が行方不明、約6000人が家を失ったとされるが、調査も困難であるため詳しい状況は確認されていない。このセピアン・セナムノイ・ダム事業を実施している合弁会社にはSK建設などの韓国企業が加わっていたため、日本でも保守系メディアが大きく取り上げ、韓国企業を批判した。  ネット上でも、韓国叩きの“燃料”としてネット右翼たちが大いに盛りあがった。だが問題のダムには、日本の公的機関や民間企業も資金面で関与しているのだという。

決壊したダムは日本の資金によるものだった

 日本の資金がどのようにセピアン・セナムノイ・ダム事業に関わっているのか。東南アジアでの開発と人権について政策提言を行うNPO「メコン・ウォッチ」の木口由香事務局長がこう解説する。 「同事業を実施しているのは、タイと韓国の民間企業、ラオスの国営企業による合弁会社です。この合弁会社に協調融資するタイ銀行団のうち、クルンシィ・アユタヤ銀行は現在、2017年末の時点で株式の76.88%を三菱UFJ銀行が保有し、三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下にあります。融資決定は統合前となりますが、現経営陣には最高経営責任者(CEO)をはじめ多数の日本人が加わっています」  GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もセピアン・セナムノイ・ダム事業に関わっている。 「GPIFは、クルンタイ銀行の株を時価総額で約14億8265万円の株を保有しています。また、GPIFは、合弁会社を構成するラオス国営企業に融資をしている韓国輸出入銀行の債権も時価総額で約62億6814万円を保有しています。つまり、私たちの年金が金融機関などを通しこのような企業活動を支えているのです」(木口さん)
次のページ 
安全や権利を無視したラオスの性急なダム開発
1
2
PC_middleRec_left
PC_middleRec_right
関連記事
おすすめ記事
ダム偏重政策が招いた「肱川大水害」。今こそダム建設継続より肱川の河道改修に全力を投じよ
日本同様、“食えない弁護士”が韓国でも増加。そんな中「社内弁護士」の需要が高まる
ハゲは「飲んで」ケアする時代!超カンタン5秒の薄毛対策
PR(株式会社PBJグループ)
1日たった30分携帯ゲームをするだけで英語が上達した方法
PR(株式会社It's)
サウジで建設中のスペイン製高速鉄道、またしてもトラブル発覚でさらに1年以上遅れる可能性が浮上!
一生に一度の検査で、がんの遺伝的傾向を調べる
PR(株式会社ユーグレナ)
外壁塗装の業者選びでハズせない3つのポイント
PR(ヌリカエ)
死者50人を出した倉敷市真備地区の被害の要因!? 高梁川上流・河本ダムの「異常放水」
「投資しているだけ」は無責任――ラオスのダム決壊事故と日本の関係、国際社会の視点から問う
「叩き易き」を叩くだけの空気が蔓延する社会。なぜメディアも検察も「一番大きな疑惑」を追及しないのか
ダム操作のルールに固執して事前放流せず、「確信犯的な殺人だ」と住民怒りの声
52歳、980円で夜まで半端ない活力!
PR(協和発酵バイオ株式会社)
ダムを境に被害が分かれていた肱川大水害。復興進まぬ肱川水系調査で判明
電気も通らないモザンビークの村に日本人が銀行を設立!
肱川大水害は、愛媛県と国土交通省の60年に及ぶダム偏重治水事業「肱川方式」の失敗が招いた災害
PC_fotterRec_left
PC_foterRec_right