消える内航船、静かに進む「海の物流危機」

船員の過半数が50歳超でも「外国人はノー」

荷主からコスト削減目的で外国人船員の採用を求める声が出たことがある。しかし、「日本人船員とのコミュニケーションの問題や、混雑した港を航行する技術が必要なため、外国人船員(の採用)は難しい」(内航海運大手)として、現在そうした要望は出ていない。

もっとも、内航海運業界内でも船員不足の状況は一律ではない。これには特有の契約形態が影響している。

運送事業者は「オペレーター」と呼ばれ、元請けのほかに2次、3次の下請け事業者がいる。オペレーターは自社保有船のほかに、貸渡事業者(オーナー)から船員ごと船を借り、請け負った貨物を運送する。荷主はオペレーターに運賃を、オペレーターはオーナーに用船料を支払う多重構造になっている。

貸渡事業者の6割が「一杯船主」

オペレーターは2018年3月時点で1515事業者おり、主に荷主である石油元売り会社や鉄鋼会社などの系列に属する上位60事業者が総輸送量の8割を契約している。一方、オーナーも1470事業者いるが、その6割程度が主に小型船を1隻のみ保有する「一杯船主」だ。

大型船を複数保有するなど事業規模の比較的大きいオペレーターやオーナーは、船内環境を含めた待遇の良さをアピールできるため、「船員採用ではそれほど苦労していない」(内航海運大手)。海技教育機構の卒業生も大手事業者を中心に入社していく。

内航船は女性船員の育成も課題になっている(写真:協同商船)

深刻なのは一杯船主を含めた小規模事業者だ。国交省の調査では船舶1~2隻、船員20人未満の事業者では50歳以上の比率が6割を占め、60歳以上の船員も34%に達している。こうした小規模事業者の中には、「とうちゃん船長、かあちゃん機関長」と呼ばれてきた家族、親族だけで運航するオーナーも存在する。

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  • NO NAME19340de8364b
    給料が割に合わないと辞めてしまう→給料が割に合う様に払う。その為に売値を上げる。

    これで良い気がする。
    売値が高ければ、人的コスト下げられるし。
    up71
    down11
    2018/10/28 09:02
  • NO NAMEc855583b58b5
    内航船員は良いぞ〜
    内航船に職員(機関士)で乗っていた。3ヶ月乗って1ヶ月休み、年収は同年代平均の2倍超。船は職員(指揮監督者)と部員(作業員)の仕事がキッチリ区別されていて職員が力仕事などをやることはまず無い。部員の仕事を見て船員が3K職と思われている。ま事故があったときは職員が全責任を負い部員は免責されるけどね。
    嫁と付き合って居た頃は嫁を入港先に呼び寄せてデートしていたよ。旅費は俺持ち。子供が小学校に上がった頃に嫁が「家に居てほしい」と言うので陸の仕事に就いた。機関士はエンジンとか電機の技術を持っているからツブシがきくんだよね。給料は下がったが、それまでの蓄えを嫁がうまく運用して利益を出しているのでいままでとトントンの年収。子供が大きくなったらまた内航船に乗る予定。船員不足だから海技士免許を持っていると職にあぶれる事がない。
    up64
    down8
    2018/10/28 12:10
  • 世知辛ぇ。da0414c72b53
    運搬業だけじゃない。職人業も、みんなが嫌っている汚れ仕事や力仕事はどれも危機的状況だと思います。お値段以上メイドインジャパンを作るために職人達は人件費の削減と時間にいつも悩まされている。人が嫌がる仕事でただでさえ高給料が取り柄の仕事が給料下げられたらせっかく大金はたいて勉強して資格取ったのに辞めていく人もいるし。若手は入っても5年に2、3人。入っても給料と割に合わないと辞めていく。日本はオワコンだと思う今日この頃。
    up59
    down4
    2018/10/28 08:31
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