消える内航船、静かに進む「海の物流危機」

船員の過半数が50歳超でも「外国人はノー」

航海士や機関士になるには国家資格の海技士免許が必要で、船の大きさや航行区域に応じて1~6級に分かれている。小型の内航船であれば6級から乗ることができ、4級を持っていれば比較的大きな船の船長になれるが、免許取得には乗船履歴などの条件をクリアする必要がある。

内航船員を養成する代表的な教育機関に海技教育機構があり、中学卒業者を対象にした海上技術学校4校と、高校卒業者以上を対象とする海上技術短期大学校3校、海技大学校を擁する。技術学校では3年の修業期間終了後に6カ月の乗船実習を受けると、4級の航海士か機関士の免許を取得できる。短大も乗船実習を含め2年で同様の免許が取得可能だ。

同機構では“士官候補生”の内航船員を毎年330~380人程度送り出している。技術学校、短大とも志願者は募集定員を上回っており、これまでのところ船員希望の若者を確保できていないわけではない。

船員1年目の手取りは月25万円

そもそも船員は高給取りだ。「船員1年目でも乗船中の月給は手当込みで手取り25万円程度」(海技教育機構の遠藤敏伸・募集就職課長)。貨物船の場合、勤務形態は3カ月乗船、1カ月陸上休暇のサイクルが基本で、乗船中は賄い付きなので食費もかからない。「海が好き、給料がいい、まとまった休みが取れる点を志望動機に挙げる生徒が多い」(同)という。

国土交通省の試算によると、60歳以上の船員が今後5年間で退職する場合には毎年1200人程度の新規就業者が必要という。海技教育機構の定員増が検討されているほか、水産系高校から内航船員希望者を募ったり、社会人経験者を対象とした6級取得養成制度を設けたりすることで、退職者の補充を急いでいる。

女性船員の育成も課題だ。内航海運の女性船員比率は2%にすぎず、貨物船ではさらにその比率は下がる。貨物の積みおろしの際には力仕事が必要な上、伝統的な男性職場のため採用する側も敬遠しがちだ。しかし、11年前から女性船員を定期的に作用してきた協同商船の福田正海専務は「結婚を機に辞めることも多いが、いずれは女性船員だけで1隻運航させたい」と採用に積極的な事業者も登場している。

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  • NO NAME19340de8364b
    給料が割に合わないと辞めてしまう→給料が割に合う様に払う。その為に売値を上げる。

    これで良い気がする。
    売値が高ければ、人的コスト下げられるし。
    up71
    down11
    2018/10/28 09:02
  • NO NAMEc855583b58b5
    内航船員は良いぞ〜
    内航船に職員(機関士)で乗っていた。3ヶ月乗って1ヶ月休み、年収は同年代平均の2倍超。船は職員(指揮監督者)と部員(作業員)の仕事がキッチリ区別されていて職員が力仕事などをやることはまず無い。部員の仕事を見て船員が3K職と思われている。ま事故があったときは職員が全責任を負い部員は免責されるけどね。
    嫁と付き合って居た頃は嫁を入港先に呼び寄せてデートしていたよ。旅費は俺持ち。子供が小学校に上がった頃に嫁が「家に居てほしい」と言うので陸の仕事に就いた。機関士はエンジンとか電機の技術を持っているからツブシがきくんだよね。給料は下がったが、それまでの蓄えを嫁がうまく運用して利益を出しているのでいままでとトントンの年収。子供が大きくなったらまた内航船に乗る予定。船員不足だから海技士免許を持っていると職にあぶれる事がない。
    up64
    down8
    2018/10/28 12:10
  • 世知辛ぇ。da0414c72b53
    運搬業だけじゃない。職人業も、みんなが嫌っている汚れ仕事や力仕事はどれも危機的状況だと思います。お値段以上メイドインジャパンを作るために職人達は人件費の削減と時間にいつも悩まされている。人が嫌がる仕事でただでさえ高給料が取り柄の仕事が給料下げられたらせっかく大金はたいて勉強して資格取ったのに辞めていく人もいるし。若手は入っても5年に2、3人。入っても給料と割に合わないと辞めていく。日本はオワコンだと思う今日この頃。
    up59
    down4
    2018/10/28 08:31
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