@chablis777  
シャブリ

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(雪次郎)人が いっぱいだわ。(なつ)ねえ~。
昭和31年 東京・新宿です。
新宿は 戦後の焼け跡から復興しデパートや飲食店 大型書店や映画館さまざまな娯楽施設が立ち並ぶ文化の中心地戦前の浅草に代わって新しい庶民の街になっていました。
なつは まだ 雪残る北海道を旅立ち新しい春を迎えに来たのです。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
採用試験の6月までの間なつは 川村屋にお世話になることになりました。
(雪之助)すっかり変わったな。角筈という町名もなくなって…。
あ… けど 今も 同じ場所に川村屋があるだけで ほっとする。
さあ 行くべ。うん。
(野上)いらっしゃいませ。
あ… 野上さん!えっ?
いや… ハハハ お懐かしい!ちょっ… ちょっと やめて下さい。
あっ 北海道の?
ええ… 小畑です。
小畑雪之助です。
あまりに老けてて 分かりませんでした。
ハハハハ…。
野上さんはびっくりするぐらい 変わらないですね!
苦労は 顔に出さない主義なんです。
ア~ハッハッハッハ…!
この人はね 大正元年からこの川村屋にいる小僧から たたき上げの店員さんだ。私も よく叱られた。
お久しぶりです。
あ~ なっちゃんは知ってますよね?これは 私のせがれです。
小畑雪次郎です!よろしくお願いします!
今日から よろしくお願いいたします!よろしくお願いします。
声が… 声が…。
何ですか? 店先で。
どこでも 頭を下げれば礼儀になると思ったら大間違いですよ。
(3人)失礼しました!
この椅子 すげえな…。
(光子)いらっしゃい。マダム!
いや いや いや… 光子ちゃんかい?
アッハッハッハッ… 立派になられて。
ご無沙汰しております。
いや~ 光子ちゃんあのころ まだ かれんな少女だったもね。
(せきばらい)今は マダムです。
あっ 失礼しました。
マダム これが せがれの雪次郎です。
小畑雪次郎です!よろしくお願いします!
お父様のように立派な菓子職人になれるようしっかり ここで修業して下さい。
はい!いや~ マダム私は まだそんな立派な菓子職人じゃないですよ。
マダムの気遣いを無にすることはございません。
失礼しました。
どうぞ お掛けになって。
それで 奥原なつさんは…。はい。
あなたは ここで働く気はあるの?
それは… 本当に いいんでしょうか?
ほかに やりたいことがあるのよね?
漫画映画でしたっけ?
はい。(光子)その会社の試験は いつなの?
6月に 臨時採用の試験があるそうです。
そう… それまでは どこかで生活しなくちゃいけないでしょ?
ただし そういう中途半端な人をお客様の前に出すわけにはいかないのでちゅう房で 皿洗いでもしてもらいます。それで よければ。
いすぎるくらいです!
ありがとうございます! 助かります。
まあ それにしても なつさんが 絵をね…。
川村屋には 昔から絵描きのような芸術家がたくさん集まってきますもね。
ええ。 先代の祖母が好きでしたからね。
なつさんは どんな絵を描くのかしら。
あっ 見ますか?えっ? 是非 見たいわ。
是非! マダムの目で確かめて下さい。
なるほど… 漫画ね これは。
はい。 私がなりたいアニメーターはその絵に 命を吹き込むんです。
命?はい。
漫画は 紙の上で 物語を描きますが漫画映画は 絵が物語を演じるんです。
アニメーターは 役者と同じように物語を 絵で演じる人なんです。
なっちゃん そんなら演劇部の経験 生かせるね!
そだといいけど…。
そんなら 東京の演劇もたくさん見た方がいいよ。
お前は 修業に生かせ。
どうやって?
どうやってもよ!
マダムは どう思いますか?(光子)えっ?
私に できると思いますか?
マダムに聞いて どうするんです。
そうですよね…。
不安を 誰かの言葉で解消するのはよくないわ。
その不安と戦わないと。
はい。
(光子)そういう人なら 私も応援します。
ありがとうございます。
マダム あなたは先代のマダムの意志を立派に継がれたんですね。
いや… 安心しました。
なつさん この新宿もある意味 北海道と同じように開拓者が集まる所なのよ。
開拓者が?(光子)ええ。文化の開拓者…。あなたのように 新しいことに挑戦したいという若い人たちがこれから どんどん集まってくると思うわ。
この川村屋もそんな新宿でありたいと思ってる。
ここから あなたも頑張りなさい。
はい!
ようこそ 開拓者の街へ。
皆さん 手を休めずちょっと聞いて下さい。
明日から 見習いとして ここに入る小畑雪次郎君です。
よろしくお願いします!
それから 奥原なつさんです。
ここで 雑用をしてもらいます。
奥原なつです。どうぞ よろしくお願いします。
それから 戦前の川村屋で修業をされていた 小畑さんです。
小畑雪之助です。雪次郎の父でございます。
え~ この なつの後見人でもあります。
どうか 2人をよろしくお願いいたします。
戦後 お店を再開した時から職人たちの職長をしてもらっている杉本さんです。
杉本平助です。(雪之助)お世話になります。どうか せがれを厳しくご指導下さい。
お願いします!
ま ここは 軍隊じゃないからそう かたくならずに。
よかった。よかったじゃない!
はい!
あっ マダム。ん?
私 お土産持ってきたんです。
お土産?はい。
うちの牧場で作ったバターです!
(光子)北海道のバター?
これをインド風バターカリーに使って下さい!
えっ?そのために わざわざ北海道から持ってきたの?はい。
あっ…。
うん 大丈夫です。 腐ってません。
これを うちのカレーに?
是非 カリーに!
♪~
うわ~…。
う~ん…。
うまそう!
懐かしいもなあ川村屋の香りだ。
今日は特別ですよ。
あのバターではお客様には出せませんから。
賄いとして調理しました。まかない?
従業員が食べる食事だ。
じゃ 野上さんも食べて下さいね十勝のバターカリー。
それは どうなんでしょう…。
川村屋の味にはなりませんから。
落書きが芸術にはならないように。
ハッハッハッハッハ…。
♪~
まあ おいしい!
はい。 いいバターですよ これは…。
うん… うめえ!
このカリーはね 先代のマダム…今のマダムのおばあさんにあたるマダムがその昔 インドの独立運動をしていたインド人革命家を助けたことからここで作られるようになったんだわ。
インド人の革命家?そう。
その革命家は イギリス政府に追われて日本へ逃げてきたんだわ。
そこで マダムは その革命家を川村屋にかくまった。
そのインド人がこのカリーを伝えたんだわ。
(雪次郎)本場のカリーを伝えたのか…。
いわば これは 命懸けで守ったマダムのカリーだ。
革命が生み出した 川村屋の味だ。それが 今も こうして残ってる。
すごい…。
名物となるものはねその店の… その人間の覚悟だ。
その覚悟を今のマダムも受け継いでるんですね。
だから あんなに強くて優しいんだ…。
そんなマダムに私の兄は 借金をしたんです。
カリーじゃなくて 借りを作ったか。ハハハハ…。
それは 別に言わなくていいべさ。あ~ すまん すまん すまん。
あの おじさん 歌を聴きに行きませんか?
歌かい?
去年の夏 母さんと聴いたんです。
兄と同じムーランルージュにいた人の歌で…お兄ちゃんのことを 何か新しい情報 知ってるかもしれんから。
♪「赤い夕陽がガードを染めて」
♪「ビルの向こうに沈んだら」
♪「街にゃネオンの花が咲く」
♪「おいら貧しい靴みがき」
♪「ああ 夜になっても帰れない」
(レミ子)「ねえ おじさん磨かせておくれよ」
「ほら まだこれっぽっちさ」
「てんでしけてんだ」
「え お父さん? 死んじゃった…」
「お母さん 病気なんだ…」
(拍手)
♪「墨に汚れたポケットのぞきゃ」
なつは その歌を聴きながら靴磨きをして兄や妹と過ごした あのころを懐かしく思い出していたようです。
でもな 東京は街も人も すっかり変わったぞ。
♪「つらいのさ」
なつよ 気を付けろ。


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