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2019-05-20

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・ネガティブなことを言いたいのではないから、
 そのへんまちがって受け取らないようにね。

 昨夜の井上尚弥のボクシングの試合、観た? 
 「なんだ、あれは?!」と思ったよね。
 この前2試合も、1ラウンドでKOしているんだけど、
 下馬評によれば、昨日の対戦相手のロドリゲスは、
 これまでにない強い選手だっていうじゃない。
 試合開始前から、1ラウンドが終わるまでは、
 井上尚弥本人でもないのに、怖かったもん。
 井上選手も試合終了後、リング上のコメントで
 「1ラウンド終わったときには、じぶんでも、
 どうなることか予測できない状態でした」と、
 正直な感想を語っていた。
 でも、2ラウンド、モンスターとあだ名される力で、
 19戦無敗でやってきた最強の敵をマットに沈めた。
 いままでにも時代のボクシングヒーローがいたが、
 井上尚弥は、どのヒーロー以上の怪物に思える。
 すべての団体のチャンピオンを集めて、
 だれがいちばん強いのかを決めるトーナメントの、
 これは準決勝だったので、決勝のもう1試合がある。
 それが、あらためてたのしみになった。
 ボクシングを観戦するシロウトでもあるぼくにも、
 井上尚弥がどれだけ怪物なのかがよくわかった。

 それでも、とすぐに思ったことが、テーマだ。
 永遠には勝たない、ずっと強いままではいられない。
 もうちょっと強さが少なかったら、
 きっとこんなことは思わなかったのだろうが、
 とんでもなく強いと知ってしまったせいで、
 「これは永遠じゃない」と考えてしまったのである。
 長い間、永遠であるかのように強さを発揮しても、
 少し弱くなる時が来て、だいぶん弱くなっていく。
 イチロー選手の引退の年だったからだろうか、
 春が夏になって、やがて秋を迎え冬になることが、
 逃げることもできない自然な流れなのだと知る。

 人は生まれて、いろいろあって、老いて死ぬ。
 いいも悪いもなく、怪物と呼ばれる人間でも同じだ。
 「あはれ」という概念は、ほんとうに見事である。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
スポーツの場合は引退という死を迎えて、再び生きるのか。


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