長い連休が終わった。休めた人、休めなかった人それぞれだろうが、この時期は心身の好不調に心を配りたい。
とりわけ警戒が必要なのは感染症への対応だ。人びとが国内外を活発に行き来した直後であり、油断はできない。
日本は4年前に世界保健機関から、土着のウイルスは姿を消したと認定されたが、今年は過去10年で最多となる400人超の患者が確認されている。フィリピンやベトナムなど海外で罹患(りかん)した「持ち込み例」をきっかけに、小規模な集団感染が起きているとみられる。
世界各地でも流行しており、かつて撲滅を宣言した米ニューヨーク市では数百人の患者が発生。4月に市長が非常事態宣言を出すに至った。
14年に国内で流行したデング熱は、その後も毎年200人以上の持ち込み例が見つかる。日本にはウイルスを媒介する蚊がいて、再び流行が起きてもおかしくない。15年に韓国で死者38人を含む約180人の患者を出した中東呼吸器症候群(MERS)にも注意が必要だ。
感染しても症状が出ないケースや、潜伏期間の長い病気もある。空港など水際での監視で防ぎきれるわけではない、という前提に立たねばならない。
持ち込みが予想される感染症の情報や動向を病院・診療所で共有し、疑われる患者が受診したときには、関係機関と連携して速やかに対応する。そんな態勢を地域で整えたい。診察経験がなく、当初は病気に気づかない可能性もある。院内感染を想定した訓練も求められよう。
心配なのは持ち込み感染だけではない。13年以来の流行を続ける風疹は、今年、東京を中心に患者数が1千人を超えた。妊娠中に感染すれば胎児に障害が出ることがあり、米疾病対策センターが、予防接種や罹患歴のない妊婦は日本に渡航しないよう呼びかけるほどだ。
予防接種を一時期、女性に限っていた影響で、患者の多くは成人男性だ。厚生労働省は40~57歳を対象に、抗体検査をしたうえでワクチンを原則無料で受けられるようにした。
米国でのはしかの流行も、ワクチンの未接種者が大勢いたことが原因だという。抗体を持つ人の割合を維持することの大切さを裏づける話で、そのためにも一人ひとりが知識と意識の双方を高める必要がある。
観光か労働かを問わず、日本に来る外国人は増え続け、東京五輪などの大きなイベントも控える。日本の市民だけでなく来日外国人の健康を守り、安心な社会をつくるうえでも、感染症対策の重要性は増している。
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