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安倍御用言論人のウソ「消費増税延期」説を信じるな/倉山満



製造業や中小企業までが増税賛成…死にたいのか?


 かつて、政治家や官僚が誤りそうになった時、厳しく意見を述べるのが財界人の役割だった。実際、識見を持った財界人がいた。

 絶頂期には、「財界四天王」と呼ばれる人たちがいた。別名、「小林中(あたる)と三人の子分たち」である。その三人の子分とは、桜田武経団連会長(日清紡社長)、永野重雄商工会議所会頭(富士製鉄社長)、水野成夫経済同友会幹事(産経新聞社長)。いわゆる経済三団体の長である。そして小林自身は、日本開発銀行やアラビア石油などの社長も頼まれて務めたが、「一介の素浪人」を名乗っていた。愛国財界人なので、権力者に己の信じた正しいことを伝えるのが使命と心得ていたからだ。

 吉田茂内閣末期。造船疑獄で吉田首相は政権に見苦しくしがみついていた。これを見かねた小林は三人の子分を引きつれ、退陣勧告に赴いた。20歳以上も年上で恩人の吉田に向かって、「アンタ、老害だからやめろ」と言いに行ったのだ。ほどなくして、吉田は身を引いた。

 池田勇人に対しては、「お前の政治資金など全額みてやるから、高度経済成長をやれ!」と要求した。池田も心得たもので、喜んで飛びついた。池田自身も財界人や官僚、学者などあらゆる人の話を聞き、自身が勉強して高度経済成長が日本に必要だと確信していたからだ。小林に言われるまでもなく、反対派の政治家や官僚を説得していった。

 ところが今や、この状況で製造業や中小企業の経営者までが増税に賛成だ。死にたいのか? 自分の仕事もわかっていないのか?

 今の日本がダメな国なのは、金持ちに識見がないからだ。これからは教養がある人間が金を儲けて、正しく使うしかない。

憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。’96年中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員として、’15年まで同大学で日本国憲法を教える。’12年、希望日本研究所所長を務める。同年、コンテンツ配信サービス「倉山塾」を開講、翌年には「チャンネルくらら」を開局し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を展開。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数
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