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この作品 「■私は夢見りあむが嫌いだった」 は「アイドルマスターシンデレラガールズ」「夢見りあむ」等のタグがつけられた作品です。

夢見りあむへのクソデカ感情を処理しきれなかったファンの女が増田に投稿したブログと...

柿村こけら

■私は夢見りあむが嫌いだった

柿村こけら

2019年4月23日 20:13
夢見りあむへのクソデカ感情を処理しきれなかったファンの女が増田に投稿したブログというテイで書いたりあむ観です
■私は夢見りあむが嫌いだった



 アイドルの夢見りあむっているじゃないですか。346プロ所属の。最近結構バラエティとか出てるし、見たことある人は多いと思う。髪ピンクで、他のアイドルよりも(外見的な意味で)目立つし。

 私は彼女のことが嫌いだった。

 私は女だけど、女子アイドルも男子アイドルも大好きだから346プロのアイドルにだって応援してる子はたくさんいる。誰とは言わないけど。正直かわいい系のアイドルは大好きだから、いつも通りだったら夢見りあむのことだって好きになって、現場入って、UO折ってたと思う。
 でも違った。なんでって、私は夢見りあむを前から知っていたから。
 本人の公式プロフィール(http://346production……/talent/202/)にも書いてある通り、彼女の趣味は現場参戦だ。私は以前に彼女をとあるアイドルの現場で見たことがあった。その時は目立つ女の子だな、程度にしか思っていなかったけど。なにせ派手な髪色をしていて、ファッションも特徴的だから嫌でも彼女のことは認識してしまったのだ。ああいうファッションの子は彼女以外にもいたけれど、彼女は「オーラ」みたいなものがあったように思う。
 まあオーラとかあったから346プロにスカウトされて、今アイドルやってるんだと思うけど。

 夢見りあむはいつも厚底のスニーカーで現場に入って(そういうファッションが好みだっていうのもあるけど、背が低いからっていうのもあると思う)派手な髪色で、サイリウムを振り回して、笑っていた。ライブ中の彼女は楽しそうで目を引かれた。可愛いなあと思った。それと同時に恨めしいとも思った。私がどれだけおしゃれをして現場に入っても、あんな自由なファッションで現場に来る可愛い女の子を超えることはできない。
 くだらない嫉妬だというのはわかっている。ブスのひがみだと思われてもいいし、夢見りあむと比べれば私はブスなのでひがんでいるのは事実だからだ。
 別に推しに認知してもらいたいとは思ってないなんて言っても結局それは建前で、ライブ後のチェキ会でツーショ撮るときに「また来てくれたんだ、ありがとう」って言われたいじゃんそりゃ。こっちだって決して安くないお金を払ってるわけだし。そういうこと言うと絶対叩かれるけどさ〜!
 その点夢見りあむはただのオタクだった時から現場でもああいうファッションだったし、そりゃ推しに認知されるっつーもんですよ。推しに「りあむちゃんまた来てくれたんだ!」とか言われてる夢見りあむ。私もあんなファッションできたら、夢見りあむみたいに推しに認知してもらえるだろうかって思った。無理だけど。

 私はきっと、私にできないことを素でやってのける夢見りあむのことが心底羨ましかったんだと思う。

 髪をピンクに染めるのも、ゆめかわ系?のファッションをするのも、厚底スニーカーで歩くのも、世間体を気にしてたらできやしない。可愛いと思った、やってみたいと思った。あんな風になれたらって、思った。でもできなかった。好奇の視線に晒されるのは嫌だったから。後ろ指をさされたら怖かったから。ザコメンタルの女っていうレッテルを貼られるのが嫌だったから。
 でも夢見りあむはそんなこと気にしない。彼女は自分がやりたいから髪を染めて、可愛い格好をして現場に入って、いちオタクとしてサイリウムを振る。それが彼女のやりたいことだから。
 現場で夢見りあむを見る度に、彼女のことを羨ましいと思う気持ちが増していった。ずるい、ずるいよ。私も夢見りあむになりたかった! そんなことを、ずっと思った。でも私は、夢見りあむじゃない。

 就活のために、ちょっと茶髪にしてた髪を黒染めした。SNSで揶揄される「テンプレ就活女子」になって、歩きにくいパンプスを履いて就活をした。特に興味もない事業をやってる企業にESを出して、お祈りメールを何回も貰った。きっとこの間にも夢見りあむはピンクの髪で、好きな服を着て、視線が高くなる厚底スニーカーを履いて、現場に入っているんだろう。履歴書じゃなくてファンレターを書いているんだろう。ずるい。ずるいなあ、と、思った。
 靴擦れの痕に絆創膏を貼りながら、家でめちゃくちゃ泣いた。
 結局、そこそこ給料も良くてブラック企業じゃない、会社帰りになんとかライブハウスに入れそうなところに入社した。就活の間現場に入るのは自重していたけど、就職先が決まってすぐに私は入り慣れた現場に入った。

 夢見りあむはいなかった。

 このアイドルは夢見りあむの最推しだったはずだ。他の子ならともかく、この子のライブに彼女が顔を出さないわけがない。今日はいつものチェキだけじゃなくってデカチェキとサインチェキまであるんだから、彼女のファンなら何がなんでも入るだろう。夢見りあむが担降りした? まさか。あの、すぐにSNSでライブの感想を上げるような熱心な女がそんなことをするわけがない。折角推しのサインをもらえるっていうのに、私の心の中は夢見りあむのことでいっぱいだった。
 その後ライブハウスを出てすぐ、私は夢見りあむがアイドルになったことを知った。
 私がしたくもない就活をしている間に、彼女はステージの上に立つ側へと行ってしまったのだ。やっぱり、ずるいと思った。私が一方的に彼女を羨んで、恨んでいる間に、夢見りあむは、彼女が一番好きだった物を手に入れていた。私にはできないことを、またやっていた。
 夢見りあむがアイドルになったと知って、彼女がステージに立っている姿を見てはイライラした。私が好きでもないスーツを着ている裏で、夢見りあむは可愛いアイドル衣装を着ている。羨ましいを通り越して、嫌いになった。憎んでいた。346プロ所属のアイドルの中には、まだ大きなステージに立ったことがない子もいて。私の推してるアイドルにもそういう子がいて。あの子より先に夢見りあむが人気になったらどうしようなんて、そんなことばかり思っていた。UOをどれだけ折っても満たされない。アイドルの現場って、こんな辛かったっけ? 解らなくなった。
 会社で嫌なことがあったらそれを発散するために現場に入っていたけど、現場に入っても苦しかった。私の振ってるサイリウムが、推しに届かなかったらなんて思った。そんなことを思いながら迎えた公演で、シークレットゲストとして現れたのが、夢見りあむだった。は? 嘘でしょ? は?? あんなに見ないようにしてきたアイドル姿の夢見りあむを? 今から見る羽目になる?? 意味わかんねー?? でも最前だからここで出たくね〜!! でも夢見りあむ見たくね〜!!!! って思った。中座なんてしたくなかったけど、中座したかった。アイドルをやっている夢見りあむを見たら、○してしまうかもとさえ思った。それくらい、夢見りあむの顔なんてみたくなかった。一人のアイドルとして、私の推しアイドルと絡む夢見りあむなんて、見たくなかった。

 けれど、舞台に上がった夢見りあむは、間違いなく、「アイドル」だった。

 拙いながらも振りを頑張って、ぎこちない笑顔で笑って、「オタク! ありがとな!」とか言ってくる夢見りあむが、そこにいた。私がずっとずっと嫌っていた女のはずだった。私にないものを全部持ってる、そんな女のことを、私はずっと嫌っていた。でも今、私が嫌いな女は私の推しと同じ「アイドル」で、私がずっと、ずっと応援してきた偶像そのものだった。

 アンコールのときに折ろうと思っていたUOを、折った。
 りあむのために、折った。

 いやさ〜正直さ〜? ここまできたらもう羨ましいとか思うのもバカみたいだなって思うよね〜???? 私はりあむを一方的に知って、一方的に恨んでたけど、りあむは私のことなんて知らないし、私が何をしてるかなんてのも知らない。そう思ったら、今までの私がめちゃくちゃバカだな〜! って思ってきちゃった。
 過去の私へ  りあむはめちゃくちゃいいオンナです  今の私より
 って感じだもん。UOを折った甲斐があったと思う。あの時ステージでファンサをしていた彼女が私の折ったUOに気付いたかどうかなんて解んないけど、気付いてなくたって別にいい。アイドルを応援するのなんて、結局は自己満足に過ぎないのだから。

 今年も346プロ恒例の総選挙が始まった。
 私は、りあむに入れようと思う。
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