大弦小弦

[大弦小弦]かつて本紙は男子大学生を「君」付けで書いていた…

2019年5月20日 07:46

 かつて本紙は男子大学生を「君」付けで書いていた。女性は「さん」。「性別も情報」という考えだった

▼高校生と中学生の男子を「さん」に変えたのは2016年、小学生は18年。就学前はもともと「ちゃん」で、全ての年代で男女の敬称が同じになった。言葉を換えれば、踏み絵を迫らなくなった。戸籍上の性別に違和感を抱く人が苦しさを共有してくれるようになっているのだから、メディアには応える義務がある

▼読売テレビが報道番組内の企画が不適切だったと謝罪した。店員から常連客の性別が分からないと相談を受け、胸を触り、保険証を撮影して「正真正銘の男」と報告した

▼正真正銘の男って何だ。私たちには分類し、分かった気になり、安心したい習性があるのだろう。しかし、性のあり方は限りなく多様で、多様なまま受け入れるのみ。内面に踏み込んで「判定」する権利も、もちろんない

▼常連客自身は取材を了承していた。とはいえ、放送すれば別の悩める当事者にも届き、傷つける。局側には想像力が欠けていた。コメンテーターが番組内で即座に人権問題だと批判したことだけが救いだった

▼LGBT法連合会が3月に公表した「LGBT報道ガイドライン」は「取材者は『自分は理解がある』などと思い込まず、謙虚に学ぶ」ことを求める。学びはずっと続く。(阿部岳)

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