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野毛・武蔵屋、69年の歴史に幕 最後は「一杯屋」に

社会 神奈川新聞  2015年08月01日 03:00

69年の歴史が閉じる日も笑顔で店内を回る木村喜久代さん =横浜市中区
69年の歴史が閉じる日も笑顔で店内を回る木村喜久代さん =横浜市中区

 「三杯屋」として知られた横浜・野毛の老舗居酒屋・武蔵屋が31日、常連客らに惜しまれながら69年の歴史に幕を閉じた。「コップ酒3杯まで」と頑固に守り続けたが、別れを告げる長い列ができたことで最後限りの「一杯屋」に。店主の木村喜久代さん(93)は「本当に皆さんのおかげ。お客さまがいいからここまで来られた」と一筋の涙をぬぐった。

 午後2時すぎには常連客ら約20人が列をなし、7時40分に閉店を伝える張り紙が出されるまでほぼ満席が続いた。この日は日本酒1杯とタマネギの酢漬け、おから、赤飯の特別メニュー。昭和の雰囲気が残る店内で、変わらぬ味をかみしめていた。

 客の肩書がどうであろうと、誰もが3杯までと決まっていた。飲み過ぎを気遣う先代のこだわりだった。閉店まで店内に残った常連客の男性(70)は「先代から3杯で帰れえと何回も言われた。その後を受け継いでくれたおばちゃん、長い間どうもありがとう」と拍手で惜しんだ。

 看板を掲げないのも流儀だった。1杯しか提供できなかった最後の日、引き戸には喜久代さんの文字で感謝の言葉とともに「一杯屋店主」と書かれていた。


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