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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 ホトトギスの聞きなしは「特許許可局」の方が今では有名だが、古さでいえば「テッペンカケタカ」の方であろう。なぜ、「テッペンカケタカ」なのか。言い伝えがおもしろい

▼もとはといえば、同じ野鳥のモズのせいらしい。ホトトギスとモズはかつて仲良しだったそうだが、ある日、モズはホトトギスに何か大きな借りをつくってしまい、それを返済する代わりにカエルやバッタなどのエサを小枝に掛けておくことを約束してしまった

▼約束をちゃんと守らせるために、ホトトギスはモズに「(エサを)テッペンカケタカ」とか「トッテカケタカ」と催促して鳴くのだそうだ。エサを串刺しにしておくモズの「はやにえ」の習性はホトトギスへの借財返済の一部だったか

▼事実はホトトギスのためではないらしい。大阪市立大の西田有佑特任講師(進化生態学)らの最近の研究によると、「はやにえ」は繁殖期に雄が雌に求愛する際、より魅力的にさえずるための「栄養食」の役割があることが分かったそうだ

▼「はやにえ」をたくさん食べる雄はその栄養によって速くさえずることができ、その効果で雌をよりひきつけ、つがいになる確率が高くなるという。不気味なカエルの串刺しにまさかそんなロマンチックな理由があったとは

▼モズの聞きなしは「キチキチ」。「はやにえ」の効果を「吉吉」と鳴いているのかもしれぬ。

 

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