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乾漆の技法使い動物彫刻 松本の大曽根さん展示

ミニブタ「チャコ」の彫刻について話す大曽根さん=松本市筑摩のギャラリー石榴で

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 松本市中山の彫刻家大曽根俊輔さん(41)の動物をテーマにした乾漆彫刻展が、同市筑摩のギャラリー石榴(せきりゅう)で開かれている。ブラジルバクや皇帝ペンギンなど八点が並び、ギャラリーの薄井みゆきオーナー(39)は「お子さんにも、目の肥えた美術ファンにも楽しんでもらえる」と来場を呼びかける。二十六日まで。

 気持ちよさそうに眠っているアルプス公園(同市蟻ケ崎)のミニブタ「チャコ」、どっしりと立ち黒色が美しい市内酪農家のホルスタイン牛「黒光」。実在の動物をモデルにした彫刻で、皮膚のしわや質感までリアルに表現されており、今にも動きだしそうだ。

 大曽根さんは東京芸術大大学院・文化財保存学専攻修了後、美術院の国宝修理所で文化財修復の仕事に十一年間従事した。そこで多くの古仏に触れた経験を創作に生かしている。

ホルスタイン牛「黒光」の彫刻=松本市筑摩のギャラリー石榴で

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 乾漆は、奈良時代の仏像制作に多く用いられたアジア固有の技法。乾漆には二種類あり、脱活乾漆は粘土などの原型に麻布をかけて、原型を取り出し、内部に補強の木材を入れて像を形作る。木心乾漆は像のおよその形を木でつくる。

 どちらも表面の細かい仕上げは、木くずを漆と小麦粉で混ぜて練り合わせた木屎(こくそ)漆をつけて調整する。

 有名な乾漆像は、国宝の興福寺阿修羅像。ただ手間と費用がかかることから、平安時代以降は木彫が仏像制作の主流になっていく。

 大曽根さんは「乾漆だといろんな表情が出せる」と話す。木彫は木を削っていく引き算の作業だが、乾漆は木屎漆をつけるという足し算の作業もできる。「足し引きができ、木彫と比べて肉感が出せ、自分にあっていた」と語る。

 彫刻にするのは、直感でいいと思った個性的な動物。「この動物の種類が良いというより、この子自体が良いという感覚」と言う。できるだけ直接訪れ、遠くは静岡県東伊豆町の熱川バナナワニ園のマナティや、名古屋市の名古屋港水族館の皇帝ペンギンを取材した。

 薄井オーナーは「この豚、この牛ならではの個性がにじみ出ている。図鑑などで表現される動物像とは、ひと味違う作品」と評する。午前十時から午後六時。月・火曜休み。観覧無料。

 (松本貴明)

 

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