目次 [とじる]
帰らない夫
そのころ、スヤはチュニックを妊婦服として着用していました。その姿で、東京にいるんですね。
播磨屋は、足袋と奮闘中です。そしてここでハッとします。
「妊婦ぅ!」
気づいた播磨屋は、慌てながら、なんで言わねえかなと江戸っ子らしく怒り、そして
「これはどうもおめでとうございます」
と続けます。
スヤは、あの人なりに考えがあってのかもしれないと口止めを頼みます。
すると、アイツが来ました。
美川です。
「金栗氏なら、帰ってきませんよ〜」
秋葉という弟子曰く、下関から東京まで1200キロを走る計画を立てていたんだとか。
スヤ宛の手紙にも、一言もない。しかも、ランニング本の出版記念講演会までしているそうで。
絵を描きます、とうだうだしている美川に、スヤは激怒をぶつけます。
いくらなんでもひた隠しにしなくてもいい!
妊娠出産を東京では大家さんしか知らないなんて!
もうすぐ臨月なのに!
「美川に言ってもしょうがなかばってん(3回)、夏には帰る」
と書いてきたいたそうです。
「ねえ美川さん、どぎゃん思います?」
どう答えろっていうんだか。
美川は、金栗四三の日記を取り出してきます。わー、サイテー。
そこを読めば、彼の葛藤がわかるって……いや、やっていいことと悪いことを区別しなよ。
倫理観の欠落が辛いわー。
夢で会えたら
「2月7日、スヤの夢ばみる」
そう音読し始めたところで、スヤがひったくります。
「自分で読みます!」
もう、美川のことはスペンサーライフルで狙撃していいよ、スヤさん。
あ、大河違いですね。
そこにあるのは、スヤが出てきた祝勝会の夢だそうです。
恩師に囲まれ、金メダル祝いをしていたんだって。皆に囲まれて、幸せに乾杯をしていたんだってさ。
そういう夢を見るのって、いいことですかね……目覚めたあと、虚しくならんかい?
スヤが西洋ドレスをきて登場します。
おっ、このための夢か?
晴れてスヤを紹介し、祝福を受ける夢を見た。
夢はエエから、そろそろ現実を見ろよ……無駄に長い場面です。
スヤの支援に答えるのに、金メダルほどふさわしいものにしたいようで。
覚醒後、妻子のために夢を叶えると誓ったそうです。
「はっ、夢ですと? 赤子の理屈でまったく話にもなり申さぬ」
と、『真田丸』の直江兼続と、『なつぞら』の夕見子なら絶対に突っ込むと思うんです……すまん、別の作品の話をして。
ベイビー誕生ですね
スヤが熊本へ向けて播磨屋を出立した直後、家に戻ってくる金栗。
「ばば〜〜〜!』
ばば〜じゃねえよ!
ツッコミどころがあり過ぎるよ。走っても遅いわーーーー!!
「スヤ〜〜! スヤ〜〜〜!」
後悔先に立たずですなぁ。
と思ったら間に合いました。駆け込み乗車です。
「さすが金栗選手、市電より速かね」
「スヤぁ、スヤぁ〜〜!」
「なんね?」
ようやく体の調子を聞いてくる金栗。悪かったら来ていないと返します。
そして金メダルのように、安産祈願お守りを渡しました。
思わず笑い出すスヤ。
「泊まらんね?」
「帰ります」
夏には熊本へ帰ると言い出す金栗。
このあと、スヤは吸って吸って吐いて吐いて……夫のマラソンとあわせて、出産するのでした。
大正8年4月28日、長男・正明誕生。
この夏、金栗は1200キロを走破しました。しかし、熊本には帰っておりません。
「ひでえ父親ですな」
美濃部も突っ込む。これは、お前がいうなって話でもありますが。
当時の父親の倫理観に期待しちゃダメですね。
下関までは来たと、幾江に実次が謝罪しています。
「もうよかです」
「逆らわずして勝つ!」
「調子にのるな、このあんぽんたんが」
そう言い切る幾江。
聞けば、金栗から届く手紙の宛名がおかしいんだそうです。
以前は幾江殿&スヤ殿でした。
最近は宛先が別れるようになり、しまいには、幾江殿、正明、そしてスヤ宛当ての手紙は解読できないのです。
しかも幾江の手紙には絵しか描いていない。しかも足袋です。
なんでこんな行動してんのか……意味不明。
当時の父親の倫理観なんか期待していません。
『西郷どん』のように、薩摩にあった男尊女卑を無視されてもそれはそれで、問題がある。
とはいえ……これはクドカン氏らしからぬ失態です。
日記や手紙を準拠にしてはいるのでしょうが、自分勝手であって魅力的とは思えない。
美川、小梅、美濃部あたりは、どうしようもなく身勝手ですが、愛嬌があります。
金栗からは感じられなくなって来ました。
むしろ甘えすら感じます。
綾瀬はるかさんに思い切り甘えたい。
そういう人をヨシヨシとしているような、そういう何かすら感じるのです。
金栗がうっすら嫌いになってしまいそうで……。
話を聞く奴、聞かない奴
播磨屋は足袋をゴム底にすることだけは、断っています。
それでは一日も持たないと言い出す金栗。
足袋の裏をゴムに変えたら、それはもはや運動靴だ。
足袋職人に頼むな、靴職人に行けと、辛作は追い払おうとするのですが。
播磨屋さんに勝るシューズはない!と言い、ますます怒らせる金栗です。
シューズならシューズメーカーに行け!
そうなりますわね。人の話を聞け!
そのころ東京の道は、自動車の普及に伴い舗装されつつありまして。
人力車の清も足が痛いと愚痴っております。
彼は、ヤクザもの徳重との和解案を出して来ます。
メンツの問題で、寄席にさえあがらなければいい、と美濃部に伝えます。
ほとぼりがさめるまで、東京から出て行けってことです。
期間は一年。まあまあ寛大……でしょうかね。一年間無職になるって、そりゃねえよ!
全部、小梅と美川が悪いんです。
「寄席に出られねえんじゃ東京にいてもしょうがねえ」
美濃部はそうさっぱり流します。
しかも、小梅は苦労した仲だから恨みはねえ。
いろんな奴がいていいんじゃねえか、だと。
いい奴だな〜、お前は〜!
「腐るなよ」
清公がそう心配し、出世払いでいいと酒をおごります。
「俺が出世すると思ってんのかい」
とつっこまれるも、清は引きません。
「出世すると言ってくれるのはお前だけだよ」
感極まって美濃部が言うと、
「きっとうまくなるよ!」
清公がそう励ましてから、逃げるように告げるのです。
ちょうどヤクザもの徳重がやってきており「走れ!」とその場から逃されるのでした。
ヤクザが褌を見せつつ大立ち回りをする中、逃げるハメになってしまう美濃部。
清が身を呈して庇ってくれます。
雨の中、逃げる美濃部。
その脚で東京を離れ、二つ目の円菊というのですが……いや、そうじゃないそうです。本人でも曖昧なほど記憶が錯綜しているようですね。
ここで、結婚の話をしたらと美津子に言い出すと、五りんが言い、自分にはフラがあると言い出すのでした。
フラはさておき、古今亭志ん生が彼を家に置いているのには何か理由があるようです。
駅伝vsマラソン、女子体育三国志
大正8年、第一次世界大戦終結。
金栗は新たな難題に挑みます。
「駅伝」vs「マラソン」
日光から東京まで、130キロのレース。
金栗はマラソンで、相手は数人で引き継ぐ駅伝となります。
異種格闘技のような勝負で、持久力の限界に挑むんだそうです。
そこへ、播磨屋が足袋を持ってきます。
ゴム足袋でした。
旅のせいで完走できなかったと言われたくねえ。
そう言い切って励まし、江戸っ子は去って行きます。
一方、女子体育は三国志状態になっておりました。
可児がサングラスをかけ、2年半ぶりに帰国したってよ。
アメリカかぶれになった可児は、うっとうしい口調で、女子は大臀筋の発育が盛んだと言い出します。
女であることに自信を持て、と言い出します。
「私は女だ! それがどうした!」
……な、なんなんでしょう……このカオスは。
嘉納のスタジアム計画も進んでおりません。
神宮スタジアム――世界に恥じないものを作り、オリンピックだと言い切るのです。
金栗は、レースを完走していました。
130キロ20時間連続マラソンで、駅伝には負けたそうです。それもそうでしょう、という感想です。
ここで辛作に謝る金栗。
「勝った……勝ったぞ! あんたは負けたが俺は勝った。最後まで一足でもった!」
播磨屋vs130キロで勝ったって。感動する播磨屋辛作です。
ある意味、彼は金メダリストになりますからね。
「もう、日本に走る道はなか。燃え尽きた」
そうしみじみと語る金栗。
そんな中、嘉納宛てにフランスから郵便が届きます。
督促状かと思っていたら、クーベルタンからの親書でした。
1920年――8年ぶりのオリンピック開催するという知らせでした。
MVP:清公と美濃部孝蔵
よくやった。これでこそ江戸っ子でえ。
そう言いたくなる、派手な立ち回りでした。
あんたはよくやったよ!
逆MVP:美川
隅田川にちょっと沈んで来い、な?
総評
はじめに断っておきます。
本作に不満がない方は、お引き取りください。
私は見切ったら、きっちり見切ります。
基本的に「表裏比興の者」なんじゃああ!
『あさが来た』然り。『八重の桜』然り。
前半はいい。しかし後半はダメ。
そういう悲しい作品があるものですよ。
初めから腐りきっていた作品とは、比較にならないほど良いとはいえ……。
嫌な予感がしてきました。
はい、今、私の気持ちは『ポプテピピック』のランボー回くらい荒れ果てています。
ついでに言いますと、先々週くらいから予兆はあったような。
「見ろこの騒動を。今年は『西郷どん』じゃない『いだてん』だ。戦争は終わったんだ」
「何も終わっちゃいない! 何も終わっちゃいないんだ! 俺にとって大河との戦争は続いたままなんだァ!」
まだ5月だぞ、おい!
愕然としたまま、残り時間を数えてしまった。
あれほどよい走り出しで感動してしていたのに、嫌な予感が湧いてくる。
書いている本人が一番苦しいかもしれんだろ。
ランボーなりポプ子になりきっていても話が進まないので、マトメてみましょう。
ちょっとポプ子ぽいのは、許してください。
1.さてはアンチだなオメー
これ。実は薄々感づいていたんですけれども。
クドカン氏は、オリンピックにさほど興味がありませんよね?
むしろ苦手では?
それはそれで構いません。隠し通せていれば、の話ですが。
落語パートとの落差が激しい。
落語パートを削れという意見もありますが、個人的には落語パートだけでもういいと思ってしまうのです。
2.予算が削られたの?
そこまで破綻はしていないけれども、ストックホルムオリンピックあたりと比べると、ディテールの描きこみが雑になってきています。
予算が削られてはいませんか?
3.こういうベタな感動場面、ありだっけ?
綾瀬はるかさんが妊娠出産する健気な妻。
そういう王道要素をべたべたと入れてきたら、そりゃ盛り上がるでしょう。
しかし、これは果たして、ひねってくるクドカン先生の作風でしょうか?
これは個人的な好みもあるっちゃそうですが、出産シーンにここまで尺を使う意義を感じません。
夢然り。
フィクションにおいて、出産を取り上げること。それにもセオリーがあります。
そこまで大仰に妊娠出産を取り上げない作風なのに、出てくるのはどういうことか?
それは赤ん坊が死ぬ。出生に疑義がある。受け狙い。
そのあたりでは?
大河『真田丸』で話題になった「ナレなんちゃら」という概念がありましたが、三谷氏のように癖と作風が確立していれば、盛り上げセオリーなんて破っても構わないのです。
改めて繰り返します。
クドカン氏って、こんなベタな受け狙いをしましたっけ?
子供が生まれました、めでたい。そんなこと当たり前ですよね?
4.ディテールが甘くなっている
出産の盛り上げ方については、もう繰り返す必要性はないと思います。
ただ、その一方で雑になっているところはありませんか?
伏線としてわざと雑にしていると思われる箇所もあります。
そうではないところが出てきました。
金栗の力走がそうでしょう。
ストックホルム五輪であの失敗をして、そこをどう克服したのか?
足袋は十分です。
問題は、スタミナ補給です。
炎天下でひたすら走った描写では、ちょっと弱いと思います。もう少し丁寧に描けませんか?
チームメートも描き分けがあまりうまくなくて、モブになりそうです。
期待値が高いことは認めます。
クドカン氏の越えるべきハードルが高いことは、当然でしょう。
それがどうにもおかしい。違和感がぬぐえないのです。
5. 体育会系のノリが嫌だ……
今週、一番ガッツポーズをしたのは、ナレーターでひどい父だと突っ込まれた金栗のところかもしれません。
「何も終わっちゃいない! 何も終わっちゃいないんだ! 俺にとって奴らとの戦争は続いたままなんだァ!」
そう叫びそうになったのは、金栗以下、アスリートの身勝手さを痛感してしまったからです。
スヤへの態度も大概ですが、それ以外でもあまりに一方的でしょう。
播磨屋辛作とは結果的に和解しているものの、自分の都合を押し付けすぎていませんかね。
真面目に説得する気、話を聞く気あるのか?
嘉納もそうです。
無責任だとは思っていましたが、威圧感のある怒鳴りっぷりと自分の目標しか考えていない。
女子体育もそう。
当事者の声を受け付ける気がない。
それぞれの流儀を振り回すだけです。
こういうのは先週から、うっすらそういうところを感じていたんですが……過去を思い出してつらいものがあります。
オラァー、運動部ぅーーーー!!
授業を潰す。応援に駆り出す。
そういうことを平気でやらかす。スポーツの結果に一喜一憂しろと強制してくる。
その一方で、文化系活動で受賞しても、白けきっておったなーーーー!!
あの頃の学校に流れていた空気が終わらねえ!
これは個人的な感情ですね、すみません。
まぁ、そんなこんなでオリンピックもそのせいで興味が湧いてきません。
感動を押し付けおって、知らん!
そういう苦い気持ちが湧いてくるのです。
これは古代ギリシャ以来の伝統だと知って、ほっとしたクチですよ。
体育会系のノリが嫌いな者にとって、本作は地獄みがうっすらと出てきた。
ゆえにポプ子になってしまったのでした。
かなり書き直しが入っているらしい。
そういう情報は伝わってきます。
厳しいことは書いたものの、美川と小梅には笑いました。
落語パートは文句なし。
百点満点で百二十点くらいつけたいくらいです。
スポーツパートも、あまりに場当たり的で失敗する前振りであるならば、それはそれですごいことだとは思います。
ただ、やっぱりこう言いたくなります。
これがあなたの全力ですか?
そうではありませんよね?
最近の『いだてん』叩きが止まりません。
私もそこに加わるなんて、心の底から嫌なんですが。
◆1ケタ視聴率が続き低迷する「いだてん」NHK部長が改善策を逆質問
◆『いだてん』の難局 大河ドラマ史上最低視聴率を招いた理由|NEWSポストセブン
◆すでに万策尽きた? NHK会長の『いだてん』低視聴率打開策“逆質問”に記者も固まる
さて、ここで私としても逆に伺いたい。
企画時点で、ナゼ止めようと思わなかったのか?
失敗はわかりきったことでしたよね?
失敗の結果、看板を背負った脚本家や主演にも傷を負わせてしまう――。
それは『花燃ゆ』の経験を踏まえればわかっていたことでもある。
題材云々言いますが、「吉田松陰の妹」も無茶振りでした。
絶対に成功するはずのない企画を、知名度だけでゴリ押しする。
こんな時代はもう終わります。
『いだてん』ではなくて、大河枠そのものがもう時代遅れとは何度も申してきました。
『ゲーム・オブ・スローンズ』が世界同時配信される時代に、大河に勝ち目があると思っておりますか?
数年前ならこう言えました。
「日本の歴史を扱っているから」
しかし、それも終了です。
木造船ひとつで予算が尽きた『平清盛』のあたりで、大河滅亡のカウントダウンは始まっていたのでしょう。
『いだてん』だけの話じゃない。
『花燃ゆ』と『西郷どん』もきっちりと燃やそうね。
そうそう、クドカン氏は筆を折りませんよ。
きっと、海を越えて、どこかで息を吹き返すことでしょう。
終わったコンテンツに巻き込まれて被弾したところで、彼は致命傷を負うわけではありません。
なんかこう、どうして大河を見たあとで、『ポプテピピック』とこの動画を思い出すのか。怖くなってきた……。
※【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。
※『いだてん』も『八重の桜』もU-NEXTならネット(スマホ)で見れる!
↓
※他にも多数の朝ドラ・大河作品も視聴できます(時期によって対象番組が異なりますのでご注意を)。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
スポンサーリンク
【参考】
いだてん(→link)