平成30年8月31日
一般事情
1 面積
91,985平方キロメートル(日本の約4分の1)
2 人口
- 約1,029万人
- (2017年,ポルトガル国立統計院)
3 首都
- リスボン市(人口:約50.5万人)
- (リスボン市を含む大リスボン圏には,総人口の約1/4が集中)
4 言語
ポルトガル語
5 宗教
カトリック教徒が圧倒的多数
6 国祭日
6月10日(ポルトガルの日,16世紀の大詩人カモンイスの命日)
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1143年 | ポルトガル王国成立(カスティージャ王国による承認) |
1580年 | スペインとの同君連合(スペイン王フェリペ2世がポルトガル王となる) |
1640年 | スペインから独立(王政復古) |
1755年 | リスボン大震災 |
1910年 | 王政終焉,ポルトガル共和国成立 |
1925年 | カルモナ将軍による軍事政権(共和制の崩壊) |
1932年 | 独裁体制の開始 サラザール政権(~1968年),カエターノ政権(1968年~1974年) |
1949年 | NATO加盟 |
1955年 | 国連加盟 |
1974年4月25日 | カーネーション革命(独裁体制の終焉,民主化) |
1986年 | 欧州共同体(EC)(後EUに発展)に加盟 |
1996年 | ポルトガル語圏諸国共同体(CPLP)に加盟(同年に設立。事務局リスボン) |
1998年 | 万国博覧会開催(リスボン) |
1999年 | ユーロ導入(2002年から流通) |
政治体制・内政
1 政体
共和制
2 元首
- マルセロ・ヌノ・ドゥアルテ・レベロ・デ・ソウザ大統領
- (Marcelo Nuno Duarte Rebelo de Sousa)
- (2016年3月就任,任期5年)
3 議会
1院制 230議席,任期4年
4 政府
社会党(PS)政権(2015年11月~)
- (1)首相名 アントニオ・ルイス・サントス・ダ・コスタ(António Luís Santos da COSTA)
- (2)外相名 アウグスト・エルネスト・サントス・シルヴァ(Augusto Ernesto SANTOS SILVA)
5 内政
- (1)2011年6月の総選挙を受けて発足したパッソス・コエーリョ連立政権(社会民主党(PSD)と民衆党(CDS/PP)の連立)は,欧州委員会,欧州中央銀行,国際通貨基金(IMF)との間で交わされたトロイカ合意の履行を通じ,財政再建を推進した。2014年5月,政府は同支援終了を宣言する一方で,競争力の促進や雇用創出等に向けた各種改革を進めた。
- (2)2015年10月,任期満了に伴う共和国議会選挙が実施され,緊縮政策と構造改革継続の方針を示した連立与党(PSD・CDS/PPの連立)が107議席を獲得して引き続き議会の第一勢力となり,カヴァコ・シルヴァ大統領は,パッソス・コエーリョ首相の続投を決めた。しかし,連立与党が提出した政府プログラムが同11月11日に野党の反対多数で否決されたことを受け,カヴァコ・シルヴァ大統領は各党や経済関係者の意見を幅広く聴取した後,社会党のコスタ書記長を首相に改めて指名,同月末,コスタ新政権(閣僚18名,副大臣41名)が発足した。左派各党(ポルトガル共産党(PCP),左翼連合(BE),緑の党(PEV))は閣外協力に留まったため,同政権は少数与党となっている。
- (3)同政権は前連立政権による緊縮策を緩和し,「経済成長」「雇用改善」「格差是正」を柱に国民生活に配慮する政策を実施している。2016年3月に就任したレベロ・デ・ソウザ大統領(社会民主党(PSD))とも協力しつつ,安定的な政権運営を行ってきている。財政規律を維持しつつ,失業率の改善にともなう消費の回復や好調な観光業等により,2016年の財政赤字の対GDP比が2%まで削減され,2017年6月には過剰財政赤字是正手続きを終了し,順調に経済を回復させている。結果,社会党(PS)は40%超の高支持率を維持しており,第2党の社会民主党(PSD)を10%以上引き離している。
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)欧州統合への積極的参加
1992年,2000年に続き,2007年後半にEU議長国を務め,リスボン条約が署名された。
2018年1月,ユーログループ(ユーロ圏各国の財務大臣の会合)の議長に,センテーノ財務大臣が就任。 - (2)大西洋同盟の重視(NATO,対米関係)
NATO原加盟国。2010年11月にはNATO首脳会合を主催。リスボン統合司令部(JFC-Lisbon)は2012年末に閉鎖されたが,代わりにNATO海上打撃支援部隊(STRIKFORNATO)が移設。米国との協定に基づき,ラージェス空軍基地(大西洋上アソーレス自治州のテルセイラ島に所在)を米軍の使用に供与しているが,2015年1月,米国防省は欧州における軍事施設の合理化計画を発表。同2月,リスボン市内でポルトガル米国二国間常設委員会が開催され,ポルトガル政府は本合理化計画について改めて不快感を表明。段階的な基地縮小は開始されているが,両国は協議を続けている。 - (3)ポルトガル語圏諸国共同体(CPLP)
CPLP(加盟国は全9か国:ポルトガル,ブラジル,アンゴラ,カーボヴェルデ,ギニアビサウ,モザンビーク,サントメ・プリンシペ,赤道ギニア,東ティモール)を通じ,旧植民地諸国との連携,経済関係の強化及び人的交流の促進を図るとともに,ポルトガル語の国際語化を図っている。 - (4)在外公館の新規開設,AICEP(ポルトガル投資貿易振興庁)と連携した輸出促進,外国投資誘致等を目指した多角的な経済外交を推進。
- (5)グテーレス元ポルトガル首相の国連事務総長就任(2017年1月)等を受け,国連を一層重視。ポルトガルは2011~2012年には国連安全保障理事会非常任理事国を務めた。
2 軍事力(ミリタリーバランス)
- (1)予算 21億5,130万ユーロ(2018年)(出典:ポルトガル国防省)
- (2)兵役 2004年11月から完全志願兵制に移行した。
- (3)総兵力 29,410人(内訳:陸軍52%,海軍27%,空軍21%,女性比率11%)(2017年)
3 ポルトガルによる対外援助実施状況
- (1)二国間援助
- 1億1,283万ユーロ(前年比-15%)
- (2)多数国間援助
- 1億9,742万ユーロ(前年比+35.2%)
- 計 3億1,024万ユーロ(対GNI比0.17%)
- (出典:カモンイス協力言語院,2016年)
経済
1 主要産業
製造業(機械類,衣類,コルク製造)及び観光業等
2 実質GDP
約2,046億ドル(2016年)(世銀)
3 一人当たり名目GDP
19,813ドル(2016年)(世銀)
4 経済成長率
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | |
---|---|---|---|---|---|
経済成長率(%,ポルトガル国立統計院) | -1.1% | 0.9% | 1.8% | 1.5% | 2.7% |
5 物価上昇率
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | |
---|---|---|---|---|---|
物価上昇率(%,ポルトガル国立統計院) | 0.3% | -0.3% | 0.5% | 0.6% | 1.4% |
6 失業率
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | |
---|---|---|---|---|---|
失業率(%,ポルトガル国立統計院) | 16.2% | 13.9% | 12.4% | 11.1% | 8.9% |
7 総貿易額(ポルトガル国立統計院,2017年)
- (1)輸出:551億ユーロ
- (2)輸入:690億ユーロ
8 主要貿易品目(2017年1-6月期,ポルトガル投資貿易振興庁(AICEP))
- (1)輸出:機械及び機器,車両及び他輸送用機材,非鉄金属,プラスチック及びゴム,鉱物性燃料,農産物,衣類,化学製品,木材パルプ及び紙等
- (2)輸入:機械及び機器,車両及び他輸送用機材,鉱物性燃料,農産物,化学製品,,非鉄金属,プラスチック及びゴム,農産物,繊維材料等
9 主要貿易相手国(2017年1-6月期,ポルトガル投資貿易振興庁(AICEP))
- (1)輸出:西,仏,独,英,米,蘭,伊,アンゴラ,ベルギー,中国(対EU 74.5%)
- (2)輸入:西,独,仏,伊,蘭,中国,ベルギー,英,ロシア,伯(対EU 75.9%)
10 通貨
ユーロ
11 経済概要
- (1)ポルトガル経済は従来からEU依存型で,貿易・投資ともにEUとの結びつきが強い(輸出入の約7割,対ポルトガル直接投資の約8割をEU域内国が占めている)。市場拡大のため,ブラジル,アンゴラ等のポルトガル語圏諸国(CPLP),中国を始めとするアジア,北米・中南米等との経済交流拡大を図っている。
- (2)2007年頃からのEU域内における景気後退の中,2009年秋からのギリシャ財政危機を契機に,ポルトガルは大幅な財政赤字国として注視されるようになった。2010年には長期国債の利回りが持続不可能な水準(7%超)まで上昇。財政破綻を回避すべく,2011年5月,政府は欧州委員会,欧州中央銀行,国際通貨基金(IMF)と財政健全化プログラム(トロイカ合意)に合意し,3年間で総額780億ユーロの融資を受けることになった。
- (3)2011年6月の総選挙を経て誕生したパッソス・コエーリョ首相率いる連立右派(社会民主党・民衆党)は,議会で安定多数を確保し,上記トロイカ合意に沿った厳しい財政再建策(労働市場改革を含む)を推進した。緊縮に伴う痛みから,2012年後半には,ストライキを含めた抗議運動が起きたが,2014年5月には計12回に及んだトロイカの定期審査の全日程を終了。経済成長率や失業率等のマクロ経済指標に明るい兆しが見え始め,金融市場で資金調達を行いながら財政再建を進められた。
- (4)2015年10月の総選挙を経て発足したアントニオ・コスタ首相率いる社会党政権(少数与党)は,前連立政権による緊縮策を緩和し,最低賃金の上昇等による可処分所得改善等を通じた内需主導型の経済成長を推進している。当初は財政赤字の拡大の可能性や構造改革の遅れに懸念が示されたが,失業率の改善に伴う消費の回復や好調な観光業のさらなる振興等により,2016年の財政赤字の対GDP比が2%まで削減され,2017年にはEUの過剰財政赤字是正手続きを終了した。一方,競争力の向上に向けた構造改革の遅れや高水準の公的債務残高等に対する懸念は残っており,今後安定した成長に向けた改革の現政権のかじ取りが注目される。
二国間関係
1 政治関係
(1)天皇皇后両陛下・皇太子殿下御訪問
天皇皇后両陛下は1998年5月の英国,デンマーク御訪問の途次にポルトガルにお立ち寄りになり,リスボン万国博覧会を御視察になった(「日本館」での昭和天皇の貝のコレクション展示等)。また,2004年5月,皇太子殿下がポルトガルを公式訪問され,首都リスボン,コインブラ,ポルトを御訪問された。
(2)その他要人往来(肩書きはいずれも当時)
2002年1月,田中外務大臣は我が国外相として初めてポルトガルを訪問し,ガマ外相との会談,サンパイオ大統領及びグテーレス首相への表敬を行った。また,2004年4月,ゴウヴェイア外務大臣が我が国を訪問し,川口外務大臣との会談を行い,2005年5月には,サンパイオ大統領夫妻が,愛・地球博ポルトガル・ナショナルデー(5月24日)に出席するために訪日し,小泉総理との会談を行った。2007年2月には,アマード外務大臣が訪日し,麻生大臣と会談を行い,政策協議に関する覚書に署名した。2013年3月にポルタス外務大臣が外務省賓客として訪日し,岸田外務大臣を初め,政府関係者らと会談を行った。2014年5月に安倍総理が現職総理として初めてポルトガルを訪問し,カヴァコ・シルヴァ大統領表敬,パッソス・コエーリョ首相との会談等を行った。2015年3月26~28日,パッソス・コエーリョ首相がポルトガル首相として25年振りに訪日(公式実務訪問賓客)した。2016年7月及び2018年1月には,マルケス企画・インフラ大臣が訪日した。
(3)議員交流
日本ポルトガル友好議員連盟は1985年発足。ポルトガル日本友好議員連盟は2012年発足。これまでも両国の友好議連を中心とした議員交流が行われている。最近の議員交流は以下のとおりである。
【日本からポルトガルへ】
- 2015年5月 谷垣禎一・日本ポルトガル友好議員連盟会長
- 2016年7月 衆議院欧州各国議会制度等調査議員団(河村建夫団長)
- 2016年8月 衆議院欧州等政治経済事情調査議員団(佐藤勉団長)
【ポルトガルから日本へ】
- 2012年9月 フラスキーリョ・ポルトガル日本友好議員連盟会長
- 2013年3月 フラスキーリョ・ポルトガル日本友好議員連盟会長
- 2013年12月 マルケス・ポルトガル日本友好議員連盟副会長
- 2015年3月 ガランバ・ポルトガル日本友好議員連盟副会長
- 2016年4月 ガランバ社会党(PS)議員及びマセード社会民主党(PSD)議員(OECDグローバル議員ネットワーク会合出席)
(4)2010年修好150周年
1860年8月3日の日・ポルトガル修好通商条約調印により,両国の外交関係が開設された。2010年には修好150周年を記念して,在ポルトガル日本国大使館を中心に,文化事業や記念切手の発行,海上自衛隊及びポルトガル海軍の練習艦の相互訪問等,多岐に亘る記念行事が行われ,両国間の友好の歴史が再認識された。同年11月には伴野外務副大臣がポルトガルを訪問し,ポルトで開催された日本文化紹介イベント「ジャパン・ウィーク」に出席した。
2 経済関係
- 貿易:貿易収支はポルトガル側の入超(対日輸出349億円,対日輸入480億円(2017年))。
- (1)主要対日輸出品目:衣類・同付属品,自動車・同部品,電気機器,野菜,履き物,化学製品等
- (2)主要対日輸入品目:自動車・同部品,一般機械,電気機器,精密機器類,ゴム製品等
- (出典:財務省貿易統計)
- 直接投資:日本からの対ポルトガル直接投資(フロー)は約12億円(2015年)(出典:日本銀行国際収支統計)。日本からポルトガルへの進出企業数は98社(2017年10月現在)(出典:海外在留邦人数調査統計)。ポルトガルから日本への進出企業数は5社(2016年10月現在)。
- ポルトガルを訪問した日本人は2016年で106,830人(前年比21.8%増),我が国を訪問したポルトガル人は2017年で23,442人(前年比9.4%増)(出典:日本政府観光局(JNTO))。
3 文化関係
- (1)海洋をテーマとする「リスボン万国博覧会」が1998年5月から9月まで開催された際には,我が国も日本館を出展し,好評を博した。昭和天皇の貝のコレクションが出典された。
- (2)2010年の修好150周年では,能公演,裏千家家元による茶道紹介,和太鼓公演,ポップ・カルチャー紹介事業,日本映画祭,ジャパン・ウィーク等多数の日本文化紹介行事が行われた。
- (3)2013年は,1543年にポルトガル人が種子島に到着した「鉄砲伝来」から470周年に当たり,様々な日本文化紹介事業が行われた。
- (4)姉妹都市交流(8組。うち1組は国際友好都市)
レイリア市-徳島市,ポルト市-長崎市,アヴェイロ市-大分市,カスカイス市-熱海市,ヴィラ・ド・ビスポ市-西之表市,シントラ市-大村市,ナザレ市-逗子市(国際友好都市),アブランテス市-人吉市
4 在留邦人数
641人(2017年10月,外務省)
5 在日ポルトガル人数
594人(2017年6月末,法務省)
6 要人往来(2000年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
2001年9月 | 井上参議院議長(公式) |
2002年1月 | 田中外務大臣 |
2003年8月 | 綿貫衆議院議長 |
2004年5月 | 皇太子殿下 |
2006年1月 | 中馬内閣府大臣 |
2006年3月 | 山口特派大使(大統領就任式) |
2007年4月 | 北川防衛大臣政務官 |
2007年8月 | 松山経済産業大臣政務官 |
2009年6月 | 小泉元内閣総理大臣 |
2010年11月 | 伴野外務副大臣 |
2014年5月 | 安倍内閣総理大臣 |
2014年7月 | 稲田内閣府特命担当大臣 |
2015年6月 | 松本内閣府大臣政務官 |
2017年1月 | 滝沢外務大臣政務官 |
年月 | 要人名 |
---|---|
2000年6月 | フェロ・ロドリゲス労働社会保障相(小渕総理葬儀参列) |
2002年1月 | アマード外務副大臣(アフガン復興支援国際会議) |
2003年9月 | サントス外務副大臣(TICAD III) |
2004年4月 | ゴウヴェイア外相(外賓) |
2005年5月 | サンパイオ大統領夫妻(博覧会賓客) |
2006年2月 | ピーニョ経済革新相 |
2007年2月 | アマード外相(外賓) |
2008年3月 | ガマ国会議長(参議院招待) |
2011年2月 | サントス財務相 |
2012年10月 | ガスパール財務相,コスタ中銀総裁(IMF・世銀年次総会) |
2013年3月 | ポルタス外相(外賓) |
2014年6月 | クリスタス農業・海洋相 |
2015年2月 | ヴィエイラ・エ・ブリット食糧・農業食品研究担当副大臣 |
2015年3月 | ロドリゲス内務相(第3回国連防災世界会議) パッソス・コエーリョ首相(公式実務訪問賓客) マシェッテ外相,ピーレス・デ・リマ経済相,モレイラ・ダ・シルヴァ環境・国土・エネルギー相(首相に同行) |
2016年7月 | マルケス企画・インフラ相,コスタ・オリヴェイラ外務省国際化担当副大臣 |
2017年5月 | コスタ・オリヴェイラ外務省国際化担当副大臣(アジア開発銀行第50回年次総会) |
2018年1月 | マルケス企画・インフラ相,ブリリャンテ・ディアス外務省国際化担当副大臣 |
7 二国間条約・取極
- 査免協定(1974年),漁業協定(1978年),租税条約(2013年7月発効),ワーキング・ホリデーに関する協力覚書(2015年7月発効)
8 外交使節
- (1)ポルトガル駐箚日本国特命全権大使 新美潤
- (2)本邦駐箚ポルトガル特命全権大使 フランシスコ・マヌエル・ダ・フォンセカ・シャヴィエル・エステヴェス