オーバーロード 骨の親子の旅路   作:エクレア・エクレール・エイクレアー
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19 ドラゴンとの邂逅

「モモン様。柵の外から村一番の騎士と会いたいという白銀の騎士の方がいらしています。たぶんパンドラ様のことだと思うんですが……」

 

 カルネ村に建てた家にエンリが尋ねてきた。家自体は村にある他の家と大差なく、中も本当に質素なものだ。最近は村の立て直しのためにこちらにいることが多い。ここにいる時には常に幻覚で人間の姿をしている。

 グリーンシークレットハウスにいる時はアンデッドの姿で過ごしている。ネムの護衛ついでに戻ったりもしている。

 

「こっちも確認した。パンドラにも確認させたがかなりの強者だ。話し合いだから戦闘にはならないと思うが、この家で話そうと思う。エンリたちには迷惑をかけないさ」

 

「天使さんたちよりも強いみたいですが……」

 

「この世界で頂点にいる者だろうな。たぶんこの前の戦闘を見られたんだろう。向こうがいきなり戦闘を仕掛けてこなかったから話の通じる相手だとは思うが」

 

 村の中でパンドラと合流して、できたばかりの表門へ向かう。門を開けた先にいたのはパンドラのように顔も隠した相手だった。

 

「初めまして。私の名前はツァインドルクス=ヴァイシオン。親しい者にはツアーと呼ばれている。初めに言っておくが、こちらに戦闘の意思はないよ。まあそれも、話し合いの結果次第にはなるけど」

 

「ずいぶんバカ正直だな。じゃあこちらも。モモンとパンドラだ。先の戦闘を見てこちらに出向いてくれたのかな?」

 

「うん、そう。君たちの力はこの世界では常軌を逸している。だからこの世界で君たちが何をしたいのか確認したくてね。もし世界を破壊しようと考えているのなら、刺し違えても君たちを倒さなければならない」

 

 ずいぶんとハッキリ言うためにモモンガは思わず破顔してしまった。相手の実力はたしかにモモンガたちと変わらないだろうがこちらは二人、向こうは一人。そして刺し違えてでも倒すという物言いを気に入ってしまった。

 

「フフ。なるほど。まあ勘違いを起こさせても仕方がないか。あれだけの力の発露だ。怯えさせるのも当然だろう。俺もあの一撃は喰らいたくない」

 

「話し合いはこのままここでするのかい?」

 

「いや、この村にある俺の家でしよう。それにこちらも初めに言っておこうか。世界を壊すつもりはないぞ?この世界は君たちのものだろう?それを異邦人たる我々が奪ってどうする?我々はあくまで、この異世界を楽しみたいだけだ。見たことのない景色、見たことのないマジックアイテム、武器、防具、生き物。この世界には未知が広がっている。それを追い求めることこそが、ユグドラシルを旅するきっかけだったんだから」

 

 そう言ってから家へ案内しようとしたが、相手のヴァイシオンはついてこない。だが先程の言葉に驚いたかのような反応はしなかったし、むしろ微動だにしていない。まるでそこに人形がいるみたいだ。

 

「どうした?話し合うのだろう?」

 

「あ、うん。そうだね……」

 

 家に案内して全員椅子に座る。相手もヘルムで顔を隠しているし、こちらも体質的に食事は不要だったので何かを出すようなことはしなかった。

 最初に口を開いたのはヴァイシオン。

 

「やっぱり君はぷれいやーなんだね?そっちの騎士もかい?それともえぬぴーしーという存在かな?」

 

「プレイヤーを知っているのか?だがその感じ、お前はプレイヤーではないのか?」

 

「私はぷれいやーではないよ。ぷれいやーの知り合いがいただけさ。過去には世界を滅ぼすぷれいやーもいた。だから警戒しているだけさ」

 

「……そうか。この世界に来たのは俺だけじゃなかったのか……」

 

 モモンガとしても自分だけがここに来ているとは考えていなかった。それは嬉しくも思うが、かつての仲間たちは最後にログインしていなかった。この世界に来ている可能性はないだろう。

 

「過去、というのはどれくらい前から?」

 

「私が知る限りでは六百年前から。大体百年周期で誰かが、もしくはギルドごとこの世界にやって来る。今回は君たちだったようだ」

 

「なるほど……。個人でやって来る者たちもいたのか。なら我々はその中間か?……それにこれだけの力の差があれば、世界征服を考える輩もいて当然だな。ユグドラシルでは誰もできなかった偉業だ。それができるものならやってやろうという気概の人間がプレイヤーに多いのは当然とも言える」

 

 ゲーマーとしてその感覚は正しい。実際アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの中にも世界征服をしようとする者はいたし、自分の身体がゲームのものと同じになっていて、魔法やスキルなどもゲームと同じく使える。

 ゲームの感覚のまま、この世界で暴れてしまう可能性だってある。この世界のレベルが低いことも相まって、そういう危ない思考に流されることもあるだろう。

 

「君がそういうつもりのないぷれいやーで助かったよ。でも一応聞かせておくれ。君たちはこの世界でどうしたい?そっちのパンドラ君も、君の言葉で聞きたい」

 

「俺は……。まあ、冒険がしたい。さっきも言ったが未知を知りたいな。あとはアレだ。この村には恩義があるからちょっとは村の助けをしたいなと。敵対者も追い払うぞ?」

 

「それが過度じゃないことを祈るよ。君たちぷれいやーは善悪問わず影響力が大きい存在だからね。パンドラ君は?」

 

「私はモモン様に付き従い、モモン様の苦悩を取り払うのが役目ですから。それ以外となると……。私の知り得ないマジックアイテムの発見と保管、ですかね。それ以外にやりたいことと言われましても」

 

 正直に答えた結果がこれだ。他のギルメンや数多くのNPCがいればまた話は違っただろうが、二人しかいない現状でやることなど限られてくる。

 前は皆のためにギルドマスターをやっていたが、この世界に仲間はおらず、何かの頂点に立つ必要もない。この世界にはこの世界の生き物の生き方がある。虐殺などは許せないが、基本的に手を出すつもりはない。

 せっかく自然も残っているので、リアルではできなかったことをしたい。モモンガはその程度のことしか思っていなかった。

 

「ああ。この世界の戸籍が欲しいから冒険者になるつもりだが、それくらいは見逃してくれるよな?」

 

「もちろん。君たちがそうポンポンと大規模な魔法を使わなければ何をしたっていいさ。世界のルールがよほど変わらなければいいかな」

 

(すまん……。超位魔法かなり使ってるぞ。土地の変質とか……。ドルイドでもできるし大丈夫か?)

 

 もちろん口には出さないモモンガ。毎日のように超位魔法を使って実験している、なんて口が裂けても言えなかった。

 

「あとパンドラ君。君にはもう一つ聞きたい。もしモモン君が先に死んでしまって、君一人がこの世界に残されたら……君はどうする?」

 

「モモン様の遺された遺言があるのであれば、それを最優先します。それを守った後に、モモン様の姿を真似たゴーレムを作って安置し、それも終わればマジックアイテムの整頓をするでしょうか」

 

(お前が俺のゴーレム作るのかー)

 

 そう設定したからなと、マジックアイテムの件については何も思わなかったが、ゴーレムの件は少し気にしてしまう。

 他のギルメンは死んだわけでもないのにその姿が霊廟に安置されていて、モモンガの分はユグドラシルを引退する予定がなかったために作っていない。スペース自体はあるのでもし先にモモンガがパンドラを残して死んでしまったら、本当に作りかねないと思った。

 そしてモモンガはゴーレム作成能力などないに等しく、正直不格好なギルメンも多い。だがパンドラの忠誠心からはかなりの完成度のものを作ってしまい、浮きかねないなんてことを気にしていた。

 

「……世界を滅ぼしたりしないのかい?」

 

「???モモン様が眠られている場所を滅ぼす意味があるのですか?むしろ、丁重に保護しようとは思いますが」

 

「……なるほど。君たちのような存在もいるんだね」

 

 ヴァイシオンは納得したのか、一心地付いたようだ。顔が見えないので本当にそうなのかはわからなかったが。

 

「ヴァイシオン。プレイヤーを知っているということは、プレイヤーやNPCが人間種とは限らないとわかっているのだろう?」

 

「そうだけど……」

 

 モモンガは幻覚を解く。完全なるオーバーロードの姿を見せたのにも関わらず、驚いている様子はない。

 

「……てっきり驚くものだと思っていたんだがな」

 

「ああ、幻覚のこと?もしかして人間の振りしてた?君が何か幻覚を使っているのはわかってたけど、私たちには効かないよ」

 

「やはり同レベル帯には通じないか……。お前と同格はこの世界にどれだけいるんだ?」

 

「眠ってる存在も含めても、二十は確実に切るね。彼らが活動を再開したらアレだ。いわゆる世界の危機ってやつ」

 

「なるほど。それは俺たちのところにも警告に来るわけだ。安心しろ。この村にちょっかいをかけなければそんな力を使うつもりはない。どうやらこの世界では第三位階でエリート、人類の到達点で第六位階らしいからな。冒険者もそこら辺に抑えて活動するさ」

 

「そうしてくれると僕も助かる。じゃあもう少しこの世界について語ろうか。情報は少しでもあった方が良いだろう?」

 

 そうして三人は話し合う。陽光聖典から得た情報の、竜王国のビーストマンは狩り尽くしても良い存在だと教えてもらい、余裕ができて来たら経験値稼ぎで狩りに行くことを決める。

 その他にも聖王国の存在や評議国のこと、冒険者や十三英雄の話などを聞き続けた。目の前のヴァイシオンは長生きなのは察していたが、十三英雄の一人だとは思いもしなかった。

 話は夜まで続き、ヴァイシオンが帰る時間になったというので村の外まで見送りに来ていた。

 

「モモン君、パンドラ君。君たちの考えが知れて良かった。ただ、気に障ったからと言ってたやすく国を滅ぼしたりしないでくれよ?……法国はいいけど」

 

「これ以上俺たちにちょっかいをかけてこなければな」

 

「そこは法国を信じるしかないか。……ああ、あと。君は正直に答えてくれたのに僕だけ秘密というのは公平じゃないね。実は僕、ドラゴンなんだ」

 

「……はあ!?じゃあその鎧、もしかして遠隔操作か!?竜人じゃないんだろ!?」

 

「うん。純粋なドラゴンだね。これは僕の魔法で操作してる。あと、僕はアーグランド評議国の永久評議員なんだ」

 

「だから評議国について詳しかったのか!はー……。それならお前の強さも納得だ。というか、それで十三英雄って、詐欺じゃないか?人間の集まりだったんだろ?」

 

「異形種もそれなりにいたけどね。まあ、方便ってやつさ」

 

「……それ、この村の子どもたちにバラしてやる」

 

「夢を壊さないでやってくれ。僕も仲間たちに怒られて反省しているんだ。あと、異形種だってのがバレたら法国がうるさいからねえ」

 

「あー、なるほど」

 

 納得してしまったために、モモンガは結局十三英雄の秘密を村の子どもたちに話すことはなかった。話しても意味がないと思ったからだ。

 

「あと今後はツアーでいいよ。君たちとは友好的に接したいし」

 

「ああ、わかった。じゃあな、ツアー。敵対してくれるなよ?」

 

「僕としても御免だねえ。あんな空も割るような一撃、本体でも受けたくないよ」

 

 そう言って白銀の鎧は空を飛んで帰っていく。なんだか濃厚な一日になってしまったが、敵対者が減ったことにお互い感謝した一日だった。

 

 

 




復活しましたが、不定期更新になります。
感想などもおそらく返せません。

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