敗因は6回の5失点。そこに異論をはさむ余地はないが、打たれた大野雄は無死二塁から中井に与えた四球を「分かれ道」と言い、勝ったラミレス監督はその直後の大和の安打を「あそこがキーポイントだった」と分析した。
「(初球が)ストライクならバントをと考えていた。ボールになったので打たせた」とラミレス監督は振り返る。初球はバントの構えから引いた。2球目はバスターでもなく強攻。フラリと上がった打球は、右翼線に落ちた。
「分かれ道」も「キーポイント」も通り過ぎた無死満塁だが、それでも僕はこの大ピンチを切り抜けられると夢想していた。結果的には甘かったのだが、その根拠はデータ大好きのラミレス監督も認識していた。
「今日はヒカル(伊藤光)がキーパーソンだった。守備も良かったが、打撃では左投手への結果が全然良くなかった。よくやってくれた」
この打席を迎えた段階で、今季の伊藤光の左投手との対戦は30打数4安打(打率1割3分3厘)。右投手の3割3分9厘と比べると、はるかに見劣りする数字だった。大野雄はどうかというと、試合前の段階で右打者の被打率が1割4分9厘。左打者の2割6分2厘よりはるかに強い。つまり「左を打てない右打者」と「右に強い左投手」の対決だった。
伊藤光を抑える。次が代打。その次が大野雄に合っていなかった神里…。ここをしのげばブルペンに不安を抱えるDeNA投手陣の攻略は難しくない…。すべての「仮定」は、伊藤光の一振りで吹き飛んだ。打った本人が「まさか」と驚いたプロ初のグランドスラム。データとは、かくもはかないものなのか。
「オオノはセ・リーグでもベストの部類の投手。彼を打ち崩せたのは明日へのいいモチベーションになる」。気持ちよさそうなラミレス監督の表情を、明日こそ曇らせねば-。