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【社説】

空き家問題 地域を再生する視点で

 じわじわ空き家が増え続けている。所有者に自分が使わなくなった後の活用法や「家じまい」について早めに考えてもらう予防策が必要だ。使える空き家を地域再生に生かすための知恵を絞りたい。

 空き家が増えていくのは、人口が減少していく中でも新築住宅は建てられ、総住宅数が増加しているためだ。総務省の調査では二〇一八年の空き家は八百四十六万戸で五年前に比べ二十六万戸増えた。全体に占める割合は13・6%で十軒に一軒強は空き家ということになる。

 賃貸が空き家全体の半分を占めるが、今回増加が目立ったのは住民が亡くなったり、入院したりして長期間無人の状態が続いている住宅だ。三百四十七万戸ある。高齢化の影響が大きいだろう。

 所有者になりすまして勝手に土地を売買する「地面師」の暗躍が近年目立つのも、空き家の増加が背景にある。空き家は過疎地だけでなく都市の問題としても深刻化している。

 二〇一五年に空き家対策特別措置法が全面施行され、危険な空き家を改善するよう市町村が求めても所有者が応じなかった場合や、所有者が不明だった場合は代執行で撤去できるようになった。しかし所有者に支払い能力がなかったり、土地が売却できなかったりして、費用の全額回収は困難なのが現状だ。

 空き家を生まないための予防策を強化したい。一義的には所有者が考えることだが、取り得る方法についてデメリットも含め、周知を図っていくことも必要だろう。 例えば一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」は国の基金の支援も受けて、シニア世帯の住宅を、子育て世代などに貸し出す「マイホーム借上げ制度」を運営している。

 沿線を活性化したい鉄道会社と、子育て世代を呼び込みたい自治体が連携する事例も生まれている。埼玉県と東武鉄道は一六年に協定を締結。移住希望者などを、空き家バンクに登録している住居などに案内するバスツアーなどを合同で実施している。

 地域活性化の観点から関係者が連携して対策を進めていくことが今後はさらに求められる。

 都心で働き、週末は地方の古民家などで暮らす二地域居住を提唱する自治体の取り組みも広がっている。地域と人の生き方のどちらも豊かになるよう知恵を絞れば、空き家は「問題」ではなくチャンスとなる可能性も秘めている。

 

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