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【社説】

参院定数と歳費 抜本的見直しが必要だ

 参院定数の六増に伴い、歳費を削減するのか否か、与野党が協議している。経費節減は必要だが、そもそもなぜ定数を増やすのか。選挙制度と歳費の在り方については抜本的な見直しが必要だ。

 参院議員の歳費削減については経緯を振り返る必要がある。

 発端は参院選挙区間の「一票の不平等」是正を名目に、参院議員定数を六(三年ごとの改選数では三)増やす法律を自民、公明の与党が昨年の通常国会で強引に成立させたことだ。七月に予定される参院選から改選数が選挙区で一、比例代表で二増となる。

 これに伴い、議員歳費や公設秘書の給与、文書通信交通滞在費などの経費が増える。それを賄うため与党は三年間、歳費を一人当たり月七万七千円削減する法案を提出したが、野党側の反発で十連休前の審議入りができなかった。

 こうした中、国民民主党は歳費の削減ではなく、自主的に返納することを提案した。与党側も受け入れに傾いている状況で、与野党は十五日に再度協議するという。

 原則論を言えば、「一票の不平等」是正のための定数増は一概には否定しないし、経費節減に努めるのは当然である。与党が歳費削減法案を提出したのも、定数増で国会議員を優遇した、との批判を避けたかったのだろう。

 しかし、参院定数の六増に至った経緯がいただけない。比例定数の増には、二〇一六年の前回参院選で「合区」が導入された「鳥取・島根」「徳島・高知」両選挙区で自民党の公認に漏れた現職議員を救済する意図があるからだ。

 なおかつ、個人名の得票順に当選順位が決まる非拘束名簿式の比例代表の一部に、各党が定めた順位に従って当選者を決める「特定枠」も導入した。選挙区での公認漏れの候補を優遇できるようになる。自民党内の事情を優先させた党利党略以外の何ものでもない。

 そもそも今年の参院選に向けて「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」と、法律が求めていたにもかかわらず国会は国民との約束である抜本改革を怠り、定数六増という弥縫(びほう)策を押し通した。議員自ら身を削るというなら、一人あたり月百万円の文書通信交通滞在費や、年三百二十億円の政党交付金に手を付けなければ本気とは言えない。

 参院の選挙制度や歳費など経費の在り方は、民主主義の根幹に関わる。その場しのぎでなく、抜本的見直しを避けてはならない。

 

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