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(なつ)私を 東京に行かして下さい。
(泰樹)行きたきゃ 行けばいいべ。
じいちゃん…。お前の顔は もう二度と見たくない。
(富士子)ちょっと…。勝手に出ていけ!
♪~
(とよ)あ~れ。おう…。
あ~れ あ~れ…。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(ため息)
あんたが 私に頼るなんてよっぽどのことだべさ。
いい もう…。何さ? 言ってみれ。
言って 楽んなれ。
あんた 孫を 東京に出すそうじゃな。
雪次郎? 出すよ。
昔は 息子も出したからね。
なつのことも 頼めんか。
なっちゃん?
なして? なっちゃんが 東京行くんかい?
本当の家族が 向こうにいるんじゃ。
行きたいという思いは 当たり前だべ。
あんた それでいいんかい?
なっちゃんは 孫以上にあんたのまな弟子だべさ。
寂しくないんかい?
自分で まいた種じゃ。
種?
何したのさ?
照男と くっつけようとした。
はあ?
わしは なつのことをまだ他人みたく思ってたんじゃ…。
そう言われてしもうた。
なっちゃんにしたらきょうだいで結婚しろって言われたみたいなもんだもね。
急に 女に見られたみたいで恥ずかしかったんでないかい?
よう分かるな なつの気持ちが。
乙女の気持ちは 乙女よ。
誰が乙女じゃ。
ほんで なっちゃんが 急に東京に行きたいなんて言いだしたんかい?
こうなったらあいつの自由にしてやるしかないべ。
(雪之助)泰樹さん。こんなものを作ってみたんだわ。 はい。
何じゃ これ?
(雪之助)パフェです。
ぱふぇ?(雪之助)うん。 こんなものね十勝で作ったもんはまだ誰もいないと思うんだわ。
まずは 泰樹さんに食べてもらおうと思って。
どうぞ どうぞ…。
何じゃ こりゃ?
ホイップした生クリームです。牛乳の脂肪分だけを激しく泡立てると そうなるんだわ。
それを使ったお菓子がねこれからはどんどん はやると思うんです。
東京じゃ もうはやってるかもしれんな…。春になったら雪次郎を連れて 東京行くんで調べてきますね。そうか…。
お前 その東京になっちゃんも連れてってやんな。えっ?
頼む。
ええ?
♪~
(天陽)なっちゃんは自分の信じたことをやればいい。
天陽君… そんなに応援しないでよ!
さよなら!
ああ!
(夕見子)何!?
夕見 私は バカだ…。
知ってる。
照男さん…。
(照男)なつと 話したか?
なつが 東京に行ってもいいのか!
俺に どうすることができるんですか?
どうするって…どうしたいんだ?
俺 ず~っと思ってたんです。
何を?
なっちゃんは いつかこの土地からいなくなるって。
なっちゃんにとってはそれが自然なことだろって…。
自然には逆らえんでしょ。
だから 諦めんのか?
俺は ここで生きるって決めたから子どもの頃に…。
昔 なっちゃんが 俺にしてくれたようになっちゃんが決めたことを 俺は守ります。
♪~
あれ どこ行ってたの?
え… どこでもいいべ。
♪~
父さん ちょっと…。
えっ 何だ?
♪~
なつがね 東京に行きたいって言いだしたのはさ…。
何だ?
お兄さんと妹のこととは別にほかの訳があるのかも。
ほかの訳?
なつには 東京でしたいことがあるのかもしれんわ。
何だ? したいことって。
(富士子)あの子の口から聞いたわけじゃないからはっきりとは言えんけどそんな気がするんだわ。
(泰樹)だったら 何で それを言わんのだ?
(富士子)悪いと思ってるからでしょう私らに。酪農とも農業高校とも関係ないことだからね。言いだせないのさ。
ここで働いて何年かしたら行きたいって言ったのはそういうことなんでないかい。
(照男)よいしょ…。
何? これ。(明美)兄ちゃんが作ったの。
牛乳の鍋だ。うえっ…!
何してんの!うめえから。 食ってみれや。
(夕見子)やだ。これ 照男兄ちゃんが考えたの?
まあな…牛乳と みそが合うんだわ。
いらない。(照男)はあ?(富士子)夕見子 なつは?
あ… まだ 部屋で落書きしてる。ねえ ほかにないの?
(戸が開く音)・おばんでした。
(剛男)あっ 誰か来た。誰だろ?
・(弥市郎)阿川です。あっ 弥市郎さんだ!
(砂良)おばんです。どうぞ。
(富士子)おばんです。
弥市郎さん! 砂良さん!
この前はどうも ありがとうございました!
(弥市郎)おう 元気かい?しっかりした子ども。
やめて下さい。
父さん 母さん じいちゃんこの人らが 私を助けてくれたの。
牛乳のお礼に寄りました。牛乳?
お礼なんて なんも…あれは こっちのお礼ですから。
お礼に行ってくれたの?当たり前でしょ。
お返しといっちゃなんだが…これを 受け取って下さい。
わあ なんて立派な!
熊が ラブレターくわえてる!
バカ! 何言ってんだ お前 失礼だべ。
ん? 何で兄ちゃんが てれてんのさ。てれてねえべよ。
それじゃ これで。
あ… それじゃこっちのお礼になりませんよ。
ちょっと待って下さい。飯でも食ってけや。
いや… 夜中に失礼しました。
お邪魔しました。
弥市郎さん…また 森へ行ってもいいですか?
ああ いつでも来い。
森は 誰のもんでもねえからな。
いつでも待ってるからね。
はい。ん? 何で 兄ちゃんが返事してんの?
兄としてだべ。
(夕見子)えっ?
♪~
ん? あれ うまいわ!
(照男)だべ。おいしい!
(剛男)うまい。
なつ。
はい。
お前のことは 雪月に頼んどいた。
えっ?
雪次郎と一緒に 東京へ行けばいい。
お義父さん 何ですか? 急に。
じいちゃん…。
私は もう じいちゃんと家族ではいられんの?
いつでも戻ってくりゃいい。
ここが お前のうちじゃ。
それは変わらん。
先に 東京の用事を済ませてこい。
じいちゃん…。
したけど… お前が もし…東京で幸せになるなら…それも 立派な親孝行じゃ。それを忘れんな。
絶対に それを忘れるな。
♪~
なつよ… どうした? 浮かない顔して。
お前の魂は 今 どこにある?
抜けちゃったのか?
♪~
あっ なっちゃん。
とよばあちゃん…。
あっ 東京のことかい?柴田のじいさんから…。
ばあちゃん!おっとっと!
どしたの?
私は ずるい…。
ずるい?
じいちゃんを… 裏切ってしまった。