★グラム陽性菌に効果のある薬剤zithromacを紹介
★プラジクアンテル薬浴の注意点、体内浸透の悪い薬剤あり
★腸管鞭毛虫病。メトロニダゾールの注意点を強調
藍藻(水槽内の壁にできたコケ)のシアノトキシンという毒素

再発を繰り返す、手遅れ気味どうしても治療したい、等の深刻なアクアリストへ捧ぐ
作者:日本魚病学会91566、日本魚類学会会員。
お願い:啓発のため当方の記述を一部ご利用される場合、第三者への誤読を防止するため全体の内容を読めるよう、この項をリンク紹介等ください。Since1998

魚病の対処法(飼育している魚の病気の治療方法)

馴れた魚は可愛い

魚類の中には特に頭がいい魚が存在します。イシダイのように芸を仕込めるタイプは有名ですが、数ある雑多な魚、食用魚の中にも人馴れしているニュースがあったりします。マダイやハマチ、アンコウ。刺身にならずにペットになってしまったかのような報道もありました。金魚では話す(咽頭歯を使って音を出す)ものが出てきたり、どうやら感情すら持ち合わせているのでは?と思わずにいられません。実は私も医学研究で魚を使用したり、魚病研究で実験したり、自宅での熱帯魚飼育など数多くの魚を観てきました。最近ではイワナ(名前:おうさま)、複数の疾病を抱え5か月の闘病生活で亡くなってしまいましたが、泳ぐ哲学者…と思えるほど賢かったです。過去を振り返ると18歳のアジアアロワナ、渓流初心者の頃に釣った30㎝のアマゴ、たった数匹ですが稀有な存在として賢かったと思い出します。その賢さぶりを例え自分の大学講座にて熱く語れば、自分の立場を危うくするほど。特に王様(イワナ)は魚界のアインシュタインかホーキング博士かと思ったのは秘密です。みなさんのペットである魚たちも、飼い主をエサをくれるマシーンと見ているのではなく個人を区別してそうだとか、変わったしぐさをするとか、感情があるのではと思うほど可愛いはず。そんな魚が病気にかかったら焦りますよね。今にも死にそうになっているなら何としてでも助けたい。たとえ安いお魚であっても、金魚すくいの小赤であっても、お金を使ってでも救いたいはずです。飼い主バカとはいえません。

作者の魚病治療実績

生物に対して死および病気にさせる原因には、寄生虫や原生動物・真菌、細菌各種、ウイルス各種、化学物質(薬害・汚濁ヘドロ等による)があります。菌=バクテリアは単細胞、ウイルスは粒子。魚類には人間と違ってリンパ節がなく病原菌侵入に対する防御力は弱く(ページ下部にて詳細解説)自然治癒は基本ありません。その反面、ウロコと皮膚粘液に含まれたインターフェロン等の「防御物質」が活躍するという人間とは全く違うシステムです。したがって絶対防衛圏を突破した病原体はすこぶる活発化し、そこから引き起こされた病気を治療しようとするときは正確な診断、原因の分析・特定が必要で、そこを怠ると一気に悪い方向へ進んでしまい、より治癒させることが困難となります。しかし、会話が出来ない飼育動物の症状は、行動の変化や外見の異常などの様態でしかなく、さらに観察によってのみ診断するしかなく、治療方針を立てることは飼育者のスキルの差が大きく、平均して「こうだ」といえない大変難しいこと。養殖場での魚の場合、数匹が死んだ後で解剖や患部からの資料を得て細菌類分離・同定ができ、生存魚への疾病対処が可能ですが、ことペットとして飼育されている魚では「その魚を助ける」ことで死んだり悪化したりする前に治療しなければならないため困難度が甚だアップします。ここでは熱帯魚、金魚・コイ、日本産淡水魚、冷水魚、海水魚の全てを網羅できるような、可愛いペット魚をどうしても救いたい、しかし天を仰ぐしかない…という飼育者に役立つであろう専門的基本を述べたいと思います。

→治療→ 黒っぽい
皮下組織が
出来つつ
完治 黒点が多くなってるのにも注目です。
(作者自宅・2007年、治療魚サツキマス42㎝)

通常、ここまでの大きな穴が開きますと、悪化が止まらず、
浸透圧調整が出来ずに、病魚は凡そ斃死します。
見極めるスキルが必要。

=治療区 =完治

▲このように的確な治療(冷水病)をすれば多くの治療困難といわれている疾病をも完治させることが出来る。但し養殖魚ではコストと手間が合わない。

=背中に長期エビぞりの跡。開腹手術後。

=完治(1996年の転覆病研究時

▲アジアアロワナ転覆病。鰾(ひょう)=浮袋の手術で治療の簡易進行写真。病変資料からSJNNVを検出。

=尾ぐされ症状もあるが最大の原因特定に注視。

▲海からの産卵で遡上してきたサツキマスの転覆病。元気なまま1か月。病気などで弱っての転覆とは別の病気なので、本文をよく読まれ勘違いしないようにしてください。罹ってから2週間もすれば、せっそう病(エロモナス系感染症)や尾ぐされ病、ミズカビ病、細菌性鰓病などが複合してくるのが普通であり、治療開始の早さで結果が分岐する。

主だった魚病の分類

まず魚病は、我が国日本において、水産系とペット界隈系で同じ病原菌でも呼び方が違う点に気をつけたい。金魚で有名なマツカサ病や転覆病、ポップアイ…などは単独の病気ではなく、様々な疾病の結果、同じような末期症状となります。一方、尾ぐされ病、穴あきなどは原因菌が同じなのに場所によって呼び方が変わることがあり、鰓病とかも。従って、AだからBと「こうだ」と決めつけることは危険であり、治療が後戻りできないほど多くの失敗談が散見できます。例えば、飼育初心者さんが金魚や熱帯魚で白点病とアドバイスされ水温を上げたら、実際は別の病原エピスチリス症で、高温に耐える種だし活性が上がってしまって病魚を落としたとか、水温を上げたら鰓腐れ病、尾腐れ病の細菌や寄生虫の活動が活発となり逆に病状が悪化してしまったりします。海水魚の白点病は昇温しても治らない別物。温度に敏感な海水・汽水・冷水魚までも最初から白点病と決めつけて水温を上げるべきではないのをお分かりいただけたと思う。塩水浴では濃度(~0.5%)によりカラムナリスなどが元気いっぱいになったりします。ゆえに簡単な白点病ですら治る・治らない・新治療法などが飛び舞い、民間療法の付け入る隙ができてしまい勝ち。医学ですらあるのだから魚病学(のアクアリウム)では顕著になっています。

以下は主な魚病を取り上げた。時間をかけて語句検索で詳細に調べ、魚の様態と比較し、病気の特定に役立ててください。尚、簡単に教えてもらおうというよりご本人さんが知恵や知識を得るのが長い目で見ればいい。本当の意味での「急がば回れ」です。

細菌類 
 セッソウ病(エロモナス感染症) 主に運動性エロモナス。体表隆部・出血・潰瘍。肛門付近からの出血。フラン・サルファ剤で完治。  
 尾腐れ、皮膚病、鰓病 ↑↓主にせっそう病を部位で分けた症状名。他の様々な疾病と似ているので断定は注意。  
 非運動性エロモナス症 主に穴あき、赤斑病。20℃あたりで活性が高い。実験でない限り運動性も非運動性ともに感染している。  
 新穴あき病(新紅斑性皮膚炎) 非定型エロモナス。コロナウイルス連動疑惑あり。抗生物質(エフロキサシン、ジフロキサシン等)経口投与  
 カラムナリス病(たんぱく分解)滑走菌 強い。ヒレ腐れ、鰓腐れなど。pH6.5以下だと増殖なし。的確なサルファ剤使用で完治可。高濃度塩浴  
 細菌性鰓病 Fravobacterium branchiophilum 摂餌低下、鰓から粘液が多量、鰓蓋が開き膨らむ。高濃度塩浴  
 異型細菌性鰓病 ↑上記より治りにくい。きっちりと高濃度塩浴を清潔さや温度変化に注意して徹底する。  
 細菌性腎臓病 腎臓腫大、貧血、眼球突出や腹部膨張(腹水っぽく)。オキソリン酸の使用量は注意。  
 ビブリオ病(グラム陰性短桿菌) 常在菌。遊泳不活発、体表黒化、眼球突出、鰭基部発赤、脾臓腫大、肝臓出血。人間では腸炎ビブリオ。  
 レンサ球菌症 腹部膨張、鰭基部発赤、肛門の拡張、出血、眼球突出など。水産用OTCが効果あり。グラム性菌の一例  
 乳酸球菌症 上と同様の症状。ワクチン投与、抗生物質や抗菌剤の経口投与。1週間以上の絶食。  
 潰瘍病 金魚やニシキゴイではボックス病、サケ科はUDN潰瘍病、毛細血管が走っているが切除は容易。  
 卵膜軟化症 発見後100年たっても突き止めることができていない。過マンガン酸カリウムで抑制可=桿菌が主原因。  
 魚結核症 マイコバクテリア症。臓器はガンのように肉芽腫が多発し機能障害。経口投与。治療困難。  
 抗酸菌症 上の結核性とは違う非結核性抗酸菌症。マイコバクテリウム症。ポップアイ、下痢、痩せ、腹水など合併症。  
 ノカルジア症 グラム陽性↑上二つ症状類似と共に人間へも感染する三つ。エリスロマイシン、スピラマイシン等の経口投与  
 細菌性冷水病(グラム陰性長桿菌) 養殖池が全滅する。特にアユへ猛威。25度で抑制。冷水病薬(SIZ、FF)マス、ウグイ、オイカワなど多数罹患  
 眠り病(転覆病や浮腫に似ている) 直接原因は未解明だが錦ゴイや金魚で移動直後等々発生、エルバージュと塩浴。OTCテラマイシンで完治。  
 滑走細菌症(海水魚) 介水伝播し感染力は強い。表皮にじんわりと毛細血管からにじむような出血。早期発見必須。フラン剤1/2  
 細菌性白雲病 大変強い繊毛虫キロドネラの白雲病と似ているためにこう呼ばれる。こちらはそんなに手強くない。  
ウィルス系
 IPN (伝染性膵臓壊死症) ウイルス性腹水症、10℃未満では病状が進行しない。白フン・黒化・腹水・眼球突出など  
 IHN (伝染性造血器壊死症) ビブリオ症と表面上の区別がつかないが、成魚は大丈夫、幼魚稚魚が主。  
 VHS (ウイルス性出血性敗血症) 魚にはリンパ節がない。好中球(白血球の一種)を葛根湯などで活性向上させる。  
 ヘルペスウイルス病 (OMVD) 金魚・錦ゴイ・サケマスではヘルペス型が違う。人間でいうと帯状疱疹などが亜種。エラがピンク白に変色  
 VEN (ウイルス性赤血球壊死症) 酸欠に陥ってエラが綺麗な状態なのに突然死んだ形となる。  
 EIBIS (赤血球封入体症候群) 赤血球内に封入体ができ、貧血、鰓や腎臓が白色化。胃の膨張も特徴。淡水でも海水でも感染。  
 転覆病(ウイルス神経壊死症) ウイルス(SJNNV)で元気なまま転覆。弱った時、過食での転覆は別物。  
 リンホシスチス症 淡水、汽水、海水魚で発生。特にコイ科での発生は皮膚増殖症という、区別は電子顕微鏡で。  
 コロナウイルス感染症 変異が起こりやすい。腹膜炎。エロモナス菌属と連動する疑惑あり。強いSARSが出現し有名に。人間MERS  
 ウイルス性乳頭腫症 白い5㎜程度の点々、その後盛り上がってくる。リンホシスチス症に似る。原因:ヘルペスウイルス。  
 ウイルス性浮腫症(ローソク病) 水温25℃以上で抑制。37℃に耐えるIPN (伝染性膵臓壊死症)と同じ症状だがポックスウイルスの別原因。  
真菌系
 ミズカビ病(代表的真菌症) 体表に綿のようなふわふわしたものが付く。大量になり鰓へ行くと窒息死。真菌性の種類は多々ある。  
 ワタカビ病(海水魚) 初期は小さい点に見え、白点病と区別がつきにくい。白点が治らないという意見の正体は大概コレ  
 ブランキオマイセス真菌症 エラ。真菌用のマラカイトグリーンでは治癒しない模様。フラン剤・トリクロホルン等を試すしかない。  
 胃鼓張症 異様に肥大化した腹部が特徴。まつかさ、腹水に準じた治療を行う。早期以外、治癒は期待できない。  
 イクチオホヌス症(真菌⇒原虫) 多くの淡水魚、海水魚が罹患する。肝・睡・腎臓に白点。胃のない魚種(コイなど)には感染しない。  
 オクロコニス症 サケ科魚類、海水魚中心。腎臓肥大、肉芽腫、背中等への潰瘍。早期以外、治療法はない。  
 真菌性肉芽腫 アユ、錦ゴイ、金魚、フナなど多くの温帯性魚類にて発見。”肉ぐされ病”とも称される。  
 内臓真菌症 サケ科魚類の幼魚に発生。菌糸は体外にまで広がらない。致死率は10-20%  
 デルモシスチヂウム症(真菌⇒原虫) 真菌⇒原生動物(球形胞子)へ分類化された↓加温30℃で治療する。冷水系や海水魚では加温が困難。  
原生動物・寄生虫類
 デルモシスチヂウム病(真菌⇒原虫) もっぱら鱗の小さい魚類に寄生。各ひれや真皮に白円炎症を起こす。加温処理。作者イワナで発見。  
 イクチオホヌス症(真菌⇒原虫) 多くの淡水魚、海水魚が罹患。肝・睡・腎臓に白点。痩せ黒化腹水。胃のない魚種(コイ等)には感染しない。  
 住血吸虫症(単生類・単後吸盤類) 海水。脳、内臓、心臓から鰓に繋がる血管に寄生し産卵。虫卵が血管内に詰ることで斃死。ハダクリーン  
 サイクロキータ病 鰓、粘膜、上皮の破壊。トリコジナ、イクチオボド、ギロダクチルス、ダクチロギルス、コスティア等の混合寄生  
 トリコディナ症 ↑のトリコジナ(トリコディナ原虫)の名を代表的にとっただけ。同じ病気の別名。オレガノ配合飼料など  
 白雲病(繊毛虫キロドネラ症) ↑同じ症状だが特に強いキロドネラ吸虫類が代表的に鰓に寄生。粘液を多分泌。過マンガン酸カリウム  
 原虫性鰓病(鞭毛虫イクチオボド症) ↑代表的にイクチオボドが寄生。別名イクチオフォヌス症、コスティア症。高濃度塩浴など  
 ギロダクチルス症 ↑代表的にギロダクチルス、ダクチロギルスが寄生。高濃度塩浴、たいがいプラジクアンテル含有剤で完治  
 白点病(淡水魚) イクチオフィチリウスが寄生。27℃以上では繁殖力がない。進むと粘膜剥離。治療基本  
 鹹水性白点病(海水魚) クリプトカリオン・イリタンスという鞭毛虫が原因。海水鑑賞魚病の圧倒的シェア。硫酸銅で治療。治療基本  
 リムフォシスティス病(海水魚) 海水ツリガネムシみたいないびつな白点が付着。進行が遅いが鰓に行くと危険。淡水浴で完治。  
 ウーディニウム病(コショウ病) 海水、汽水魚。鞭毛虫アミルウージニウムが鰓や体表に寄生。淡水浴や銅イオンで完治。  
 エピスチリス症(ツリガネムシ) エピスチリス(Epistylis)の有柄繊毛虫類。30度に耐える。白点、水カビに似ているが微小点の群生  
 腸管鞭毛虫症 腸管等に寄生、白フンで痩せていき腸機能障害。断食と薬浴。メトロニダゾール。人間ジアルジア症  
 腸テロハネルス症 コイ科で多い。1~2㎜の皮膚隆起で白点やツリガネムシに似る。進行すると大きくなり斃死。昇温で完治。  
 微胞子虫症 腸テロハネルス症の大枠別名。お腹が膨れて痩せているが元気で餌をモリモリ食べる。マス養殖でも散見  
 条虫寄生症(扁形動物・線虫) 複数。腸管等に寄生、出血を伴う下痢、痩せていき腸など機能障害⇒腹水化。水産用ハダクリーンで完治  
 エキノコックス(多包条虫) ↑を参照。キタキツネなど陸上は単包性条虫エキノコックスだ。(人間:包虫症など)  
 アニサキス(線形動物) ↑条虫寄生症を参照。アニサキス科の線虫の総称、人間の食中毒で有名になった代表格。  
 ミトラスポラ症(腎腫大症) 錦ゴイや金魚などで横腹が出てくる。細菌性腎臓病に似る。食欲・フンよし、長命、早めに駆除剤投入。  
 ヘキサミタ症(ヘクサミタ) 腸内等ヘキサミタ科原虫寄生。二次エロモナス等混合感染が多いので総合的に投薬治療する。  
 チョウ(ウオジラミ、アルグルス) 寄生されたらピンセットで剥がす。リフィッシュ・デミリンが有効。感染症に警戒必須↓  
 イカリムシ(キクロプス目) 淡水魚、同上。細ウールマットを濾過槽に敷き詰めて幼生を濃しとる方法も。リフィッシュ・デミリン  
 メダマ・イカリムシ(シフォノストム目) 海水魚につく目立つメジャー寄生虫。ヒジキムシ科。同上。  
 ハダムシ症(海水魚) 単生類カプサラ科。小さめの物は白点と同じ。最大体長10mm程度に成長。淡水浴や水産用ハダクリーン  
 黒点病 吸虫類が魚体表面に寄生、そこにメラニンが集まって黒く見える。重篤化はしない。淡水・海水  
 原虫性赤斑病 セッソウ病と似ていて、プスドモナス・フロリッサンスによって起こる。過マンガン酸カリウム薬浴  
 粘液胞子虫性側湾症 脳室にシスト、その刺激で神経が損傷、その結果、脊椎が湾曲する。早期以外、治療困難。  
 鰓ミクソボルス症 鰓に大きなシストを形成するため呼吸が阻害される。錦ゴイに多い。溶存酸素量DOの多い低温にする。  
 グルゲア症 皮下から内臓の細胞内でシストを形成。外からはデコボコした表皮に見える。28℃以上で5日間。  
 頭部穴あき病 針に刺されたような小さく深い穴が開き、徐々に大きくなり穴あき病と同じ外見。シクリッドからイワナまで。  
理化学・物理的
 栄養性鰓病 コアラのように単食で育てるとなりやすいが、もっぱら神経薬害が背中押しの原因。  
 栄養性脊椎湾曲症 同上。ビタミン欠乏症の代表選手。症状が同じの粘液胞子虫性側湾症とは別原因。  
 腰なえ病 薬濃度や薬浴時間過多などで発生。頑丈な体躯を誇る錦ゴイですら遊泳に力が入らずフラフラである。  
 脊椎湾曲症(筋肉剥離) 鰓洗いするようなマス、アロワナなどに多い。自分の力で剥離。骨折もある。治癒困難。  
 ガス病(理化学的要因による疾病1) 水中ガスが過剰でヒレ皮下に泡がついたり眼球突出。徐々にガス抜きする。  
 理化学的要因による疾病2 バルサン、ダニアース、フマキラー、防虫シート、ダニ駆除芳香剤、蚊取り線香など。  
 理化学的要因による疾病3 ウールマットをしっかり洗ってから使用しないと白点病などに罹る傾向あり。  
 pHショック(水質大変化) 様々な物が溶け込んでいる古水槽、添加物を溶かして投入しないだけでも連鎖した水質変化でショック死。  
 アンモニア中毒 水温上昇+pH上昇時にアンモニアイオン⇒アンモニア化、毒性強。神経障害⇒呼吸不全  
 酸素欠乏症part1 メチレンブルーなど粉末系、酸素を消費する薬剤で治療中によく死なせる人はこれ。よく溶かしてない。  
 酸素欠乏症part2 アクアセイフなど上記と同様によく溶かさないと鰓に張り付き呼吸困難で死亡(塩類細胞多魚種)  
 酸素欠乏症part3 市販バクテリアを濾材の少ない状態で過剰投入、そのバクテリアが鰓に棲んでしまって斃死。  
 異物・釣り針・ゴムなど誤飲 吐き出すことが普通。特にコーティングされていない釣針は消化で無くなる可能性も高い。  
 飛び出し どうやら水中から上を見ると隙間の色の差が非常に魅力的に見える模様。狙ってます。  
 水質悪化 採餌不良が兆候。内臓バランスを崩し栄養が取れず外皮の防御物質である粘液不足となる。⇒病気ほう助  
その他
 旋回病(長期) 胞子虫、脳障害、平衡感覚の消失。同じように旋回するのは衝突、目が悪くなった場合もある。  
 転覆症状 ウイルス疾病の転覆病とは違う、弱っただけ。弱らせた原因を正確に分析し取り除く。  
 えらめくれ 主に水質悪化+水替え時の刺激で内外部の急伸差により外側に開く。原虫寄生の刺激ではピンポイント  
 ポップアイ 体内の圧力上昇により起こる。原因は水質悪化、水中ガス過剰、病気の末期で浸透圧調整の不具合。  
 白内障 老成魚がなる。一見奇麗な目に見えてもエサ食いをミスする。一匹飼いなら匂いで捕食できる。  
 ~AIDS(エイズ) ディスカス、アロワナ等で聞くが、免疫不全ウイルス(HIV)とは関係なく、エロモナス感染症の耐性菌あたり。  
 ネオン病 正体はカラムナリス(細菌欄参照)。ゆえにネオンテトラのカラシン、グッピー、メダカなども罹っている。  
 敗血症(末期の腹水の主因) 各種。菌・ウイルス・寄生虫などの疾病から制御不能な生体反応を生じ臓器機能障害。下痢なし。  
 血便下痢・浮腫・まつかさ(末期総合) 各種。エロモナス腸感染・重篤化、線虫増殖、ウイルス腫瘍などによる内臓壊死。区別・早期発見が困難  
 老衰 飼育魚の生活史から寿命が来ている場合、ヒレなどにツヤがなくなりロウの様になる。  
 死因トップ 鰓機能障害、酸素欠乏が原因で死亡した場合、ほとんどの魚が口を開いて斃死。  
 病原体 これまでに100種類もの病原体が報告されている。魚病の被害総額は年100億円と見積もられている。  
 ハンドリング・ストレス ワクチン注射等で魚体に触れる指針。手が苦手なのはアユやマグロ。人の体温で火傷する事はないが…。  

本来の”確定診断”方法~ゆえの治療アドバイス指針

上記の簡易「疾病一覧」をご覧のように、ネットでよく見かける魚病名は極一部であり、魚病名というより症状名です。お魚には浮腫や水腫、様々な病気があります。魚を死なないように育てるのは基本であり、避けられない病気の治療法がその上にあります。やむを得ず専門用語が多々ありますが、読み進め全てを理解できたならば、「観賞魚の病気」だけでなく犬猫・小鳥、人間に至るまで「共通する理屈」に気づかれることでしょう。

さて私が過去、魚病の診断に使ったのは、患部を採取し潰し、シャーレにて培養、細菌類ならグラム染色で陽性か陰性を見極め、球菌か桿菌か、ウイルスならそれなり(分離、中和試験で同定、蛍光抗体法で抗原確認)、この特定作業で抗生物質の何に感受性が高いかを絞り込めるので正確な治療を施せました。近年においては耐性菌の出現が多いので最初に薬剤感受性検査を行い有効と思われる薬剤を選択する事が必須となっています。かつて新治療法を編み出したのも同じような展開、病理の基本です。ワクチン化するか試すために病死魚の身肉をエサに混ぜて与え、感染しにくくなるかどうかの判断も必要でした。人間用を含めてワクチン開発には攻撃試験、有効性試験など閉鎖系試験設備で行うけれど、このようなことはネット語句検索には書かれてないし、否、書いてあったとしても殆どの人が読まない論文だし、如何に普通に読んでもらえるかの苦労を工夫したものでした。ちなみに私の専門は”人間”の方です。人体用のワクチン力価はしっかりと定められているが、魚類では定められていないものが多いので、あやふやなものが跋扈するのも致しかたない現実があります。ワクチンは、人や家畜については要指示薬及び劇薬になっており、水産用についても当然ながら副作用、耐性菌の発生及び使用に当たって医学の専門知識を必要とします。消毒剤の病原体への作用機序を理解し、全てにおいて人体及び水産生物への影響を念頭に実施するのが理想。そして治療に使用する薬剤はワクチン法抗菌剤法と分かれて制定されています。

=魚類は重症化へのスピードが速いので即判断。冷水病

↓なんとか治癒させても大きな傷跡が残る。食材としてはアレですがペット飼育という点では合格です。

=サクラマス40㎝

養殖業者ですら診断で断定できず検査機関の手順によって特定、断定するわけなので、一般のアクアリストや店舗が病気を特定できるものは少ないのが現実。病原菌を培養し診断する器具もない。「第三者の病状説明から推論できることはありますが正確とまでは言えません。さらに画像や動画すらないとなると単なる憶測になってしまいます」。この現実を直視・把握し、病名よりも全てを網羅できる治療法のアドバイスが最適であると私は過去に助言してきました。なるべく入手しやすい市販薬を基準に、要指示薬の乱用防止の解説も加えます。

1 魚の様子がおかしい

まず最初に飼育者が気づくのは、エサ食いが悪い(内臓)、エサを食って吐き出す(鰓病、内臓)、底や壁や石に体をこすりつける(白点・寄生虫)、その後、表面が白く混濁、白い点が散開、充血し穴が開く等であろう。そしてお腹が出てきた(浮腫・腹水)、ポップアイ(内臓、ガス)、細くて白い又は異様なフン(内臓、消火器官)、着底して活性がない(重症全般)、呼吸が早い(鰓全般)、ひっくり返る(浮袋、内臓破壊、重症全般)、ヒレや口が溶けるなど外部から見てもハッキリと判断できる行動や症状である。病気の一部が見えてきたとき、白点やイカリムシという一種類のものであれば診断も簡単であるが、それら以外の病気では通常、合併症を発生させている。

病気の進行スピードの一例:
水槽に多いエロモナスに感染した渓流魚アマゴと設定すると、水温15度で何もしない場合は5日後ぐらいから斃死が始まり、11日後に全数が斃死する。特に内臓感染の場合は3日後から斃死が始まり、7日後に全数が斃死している。飼い主が気付く日数はそれぞれの観察の頻繁さや飼育スキルによります。

2 考える前に…水替えをする

まず最初にアレコレと考えるより水替えを実施します。3分の1とかいわずに2分の1~3分の2ぐらいはやってみる。魚が元気であれば中和剤は入れずに水道水をそのまま入れる(塩素殺菌)。まず魚が死ぬようなことはないので様子を見ると、症状が消えるもの、進行するものに分かれる。悪化したものを中心に治療方針を検討していく。水替えで治癒した魚ばかりであればそのままでいいが、悪化する魚がいた時点で、水槽の砂や濾過のリセットをすると良い。大概、砂や濾過に病原菌が溢れており、すでに有用な濾過細菌は取って代わられている。もう死滅しているかもしれないのに「濾過バクテリアを大切にしましょう」の言い訳で手軽な一回や二回の水替えで誤魔化そうとすると病気が再開・悪化する。面倒くさがらずに大掃除を行う=治癒の可能性が高まります。ソイルなど多孔質の砂利などは魚が回復するまで撤去する。薬品を使うと多孔質内に残留し植物が植えられなくなるからね。なにより重要なのは、先に始まる治療の薬剤たちは泥に含まれている有機物らと結合し規定期間の効果を発揮しずらくなるので、当然のことながら奇麗にしておくというのが最も大切。「魚病薬は高額の割に効果が少ない」と主張する人々の場合、大概が濾過槽の掃除を怠っている。鵜呑みにせず薬剤の効果が薄い場合は汚れが原因だと覚えておきましょう。のちに実感します。また冒頭の塩素殺菌というのは、平たく言えば塩素が細菌をはじめとする微小浮遊物にくっついて変質化する作用のことで、くっつくと塩素そのものも無害化となります。

★原因が病気とは違う、飛び出し、水温設定ミスや掃除サボリを含む人為的なうっかりミスなどなら、環境をしっかりさせ、まっさらな水に粘膜保護アクアセイフや塩を入れる等で直ぐに回復させることができます。もちろん「弱らせるウッカリ人為的行為=致命傷に至る」レベルなわけですから、対処が遅れれば遅れるほど死んでしまう確率が跳ね上がります。昔からのお約束として、本来の病気と混同しないように注意。

・塩素=通称「カルキ」。次亜塩素酸カルシウム
・ハイポ=固形、塩素中和剤、特に安い。白衣に飛んだ消毒用イソジンの脱色に使うのもハイポの仲間。
・テトラ コントラコロライン=塩素中和剤。最も普及している。
・アクアセイフ=水道管内の防錆・防藻剤、錆から流入する重金属を無害化。pHを0.5ほど下げる。コロイド剤、化粧品の保湿剤にも使用されている。
・テトラ パーフェクトウォーター=粘膜保護剤、無色透明。上と似てるが粘度がなく即効性、亜鉛は無害化なし。亜鉛といえば幹線道路際健康診断。
・エーハイム4in1=粘膜保護剤〈淡水専用〉、pHを若干上げる。
・Zicraジクラウォーター ベニッシモ=腸内細菌の活性化(!?)「海洋珪藻土」を主成分、他に類似品としてアクアシステムCLC等がある。

3 原因を考察する

調子を崩しているように見えたり、同居魚の弱いものが星になったりした場合には、まず直前に何か気づいていないミスをやらなかったかを考察します。餌の点検、水替えした反動で水質を崩していないか、pHを上昇させるアイテムを無造作に加えていないか、バルサンなど焚いていないか等、その後、それらが無問題であれば、蓄積されたヘドロやアンモニア、魚に適したpHや硬度だったかをチェックしていきます。とりあえず無難さを徹底するならば、予備水槽やバケツに現在の飼育水を半分入れ、水道水の中和したものを加えてお魚を引っ越しさせます。実際のところ、かなり面倒な作業なので冬なら冷たいし温度調節も必要だし、多くが現在の水槽のまま水替えを再度し様子を見るといった形になると思う。pHは下がる方向については耐性がある。逆の上昇は致命傷を引き起こしやすいので気を付ける。アンモニアだった場合、神経を侵すので様子を見るのではなく早急に対応しないと呼吸不全で星を増やすことになりかねません。水温が高いときにpH上昇で水に溶け込んでいたアンモニアの毒性が高まる。毒性の少ないアンモニアイオンから毒性の強いアンモニアに変化が増えるからです。ベテランになればなるほど「自分の水槽で急変はない」という自負があるので意外と見落としがあっても気づきにくい、こういう場合にだけは初心に戻って基本から考えるのが吉です。

★pHショックは水質の良い水槽間ではドボンでも起きません。寧ろドボンのほうが調子を崩しません。もし古い水槽で且つ水合わせしてもpHショックが起きてしまったらオリジナル水に戻すか、奇麗な水でエアーレーションを強くしてアクアセイフを入れるぐらいしか手はありません。キリ揉みし呼吸が止まった場合、下顎を持ち口を開け水流が鰓を通過するように、心臓が止まった場合もありえて(サケマスは産卵時に数秒心臓が止まる)、指で心臓の位置をトントンと叩く。健康体であったならば復活の可能性が高い。もし危機を乗り越えたとしても回復は異様に遅く、1週間ぐらいかかります。死ぬ場合は遅くとも2~3日ですから、それを過ぎて生き延びればアレコレせず待ち続けましょう。水槽のどこかにバランスを崩す何かがある筈なので早急に濾過槽と低砂、ホース汚れ等の点検、大掃除を行いましょう。いい切っ掛けです。

★私の場合、淡水水槽ではpH5.5で水替えをします。牡蠣殻やサンゴ砂などを入れている場合はpHの下がりが遅いのでpH6.2-6.3ぐらいで水替えします。海水水槽の場合、増えにくい濾過細菌が充分増えていれば緩衝作用が半端ないのでpHを気にしたことすらありません。アンモニアを気にしたぐらい。硝酸塩は溜まる一方の筈だけど海水魚たちはメガネモチノウオはじめキスやヒイラギなども元気いっぱい長命でした。ハマチの飼育まで釣り雑誌で記事を書いたことがあります。硝酸塩が限界以上に溜まると肌荒れ、鰭のギザギザ、ピンホール症状が出てきます。これは病気発生直前のシグナル。いずれにしても、いろんな数値を参考にして魚種別にし、目安にし、臨機応変で対応しましょう。(対応できるようにスキルを高めましょう。)

・ダブルサイフォン式オーバーフロー=過密・海水不安定の解決。2階建てにし上下水槽を連結、水量水温機材の共有化。(下部に当方水槽写真)
・pH計測=常時モニターできるものを推奨。上下動のスピードは感覚的に把握できる。リトマス試験紙でも可。
・水温計測=常時モニターできるものを推奨。
・水質検査キット=亜硝酸など手軽な安い検査キットから、溶存酸素量計測器など高額なものまで幅広くあります。

4 塩水浴濃度は重症性によって変える

魚病薬に含まれている塩はご存知と思いますが塩浴治療を狙ったものではありません。微量な薬剤の計量をしやすくするため、そして還元作用などの機序の際に電子が動きますから、それを行いやすくする”繋ぎ”の為です。

さて、淡水魚での塩水浴は0.5%の濃度で行われています。細菌性鰓病の場合は高濃度塩水浴が有効。しかし低濃度(~0.5%)に強く活性が高まる細菌が多いので注意、濃度では5%で5分、3%で1時間、1%で4時間など水産試験場の指導で養殖場などが実施しています。アクアリウムの魚でも同様で効果は確実にあります。飼育水槽で実施するのは0.6%~0.8%の塩水浴(永久浴)その期間は軽症魚で7日間、重症魚で14日間。期間が過ぎれば長くやっても効果は同じなので、徐々に水替えで塩分を下げていきます。1日半分水替えで自然に減らせば問題はありません。一方、細菌性ではなく原虫性、大量死亡を起こす可能性のある原虫性鰓病イクチオボドの寄生について、さけ・ます資源管理センターで行った駆除実験(塩水浴)のデータがあります。塩化ナトリウムでは濃度5%、5分浴により駆除できた。しかし健康な稚魚はこの濃度で30分以上生残可能だったところ、イクチオボドの大量寄生を受けていた稚魚では10分以上の処理を行うと死亡する魚も多くいました。また、5%の食塩あるいは並塩での10分浴では十分な駆虫効果があったものの、塩水浴後サケ稚魚に若干の死亡が観察されています。このことから塩水浴による魚への有害性は寄生レベルによること、また、食塩や並塩が同濃度の塩化ナトリウムよりやや効果が低くなるのは塩類組成が異なるためでしょう。いずれも寄生虫駆除に効果のある濃度と稚魚が死んでしまう濃度が近いこと、稚魚の状態によっては塩水浴の安全性が異なることから、淡水系飼育魚界隈で流布されている「一律0.5%塩水浴」には注意が必要。また、同じ個体を何回も塩水浴することは魚を傷めてしまい死亡に繋がることもあります。

 

アクアリウムの塩水浴では粗塩がいいとされますが、ミネラルはさておき、そもそも病魚は原子吸光光度計で血中ナトリウムイオンが下がっていることが多く測定され、塩を入れることによりナトリウムが補給できるのが一番いいからと考えられます。また、病原菌は浸透圧0.35%近辺、淡水魚の体内は0.9%近辺(体調不良魚では0.6%ぐらいまで下がる場合も)、塩水で作られた0.6%あたりであれば浸透圧の差で病原菌の方が脱水症状で死ぬという理屈となります。海水魚の淡水浴は逆の意味で有効。海水に住んでいる細菌は耐塩性があるから希釈すると効果的なのです。海水の2倍の6%高濃度浴も実施してもOK。いずれにしても浸透圧差を利用した治療法です。淡水魚も海水魚も症状によって塩水浴での斃死率が変わるので、様子を見ながら行うこと。中止する判断は後の項で述べます。ちなみに塩水浴(淡水要求性の高い魚)・淡水浴(海水魚)、投薬ともども濾過バクテリア群も全滅してしまいそうなイメージですが、良い細菌にも塩類に強い弱いなど膨大な種類がいるので全滅しないのでご安心を。尚、塩水浴を終えた際、魚の粘膜が剥がれているケースがありますので病原菌が付きやすく、塩浴後の休薬期間にはアクアセイフなどの粘膜保護材を入れるのも予防への一手。但し、ニシキゴイ・金魚は丈夫だから規定量でいいのですが、水の綺麗な所に棲むイワナやヤマメ、アマゴ、海から遡上してきたサケ科魚類の場合、規定量では傷ついた鰓がコーティングされ窒息を起こすことがあるので3分の1以下の少量を入れるにとどめること(これ防止のためにテトラ パーフェクトウォーターが出来たのだと思われます)。

★先に触れたようにアクアリウム界隈において薄い塩0.5%での恒久浴が基本の様に行われていますが、水産試験場や養殖場では採用されていません。薬剤を使うか、塩浴させるなら濃い短時間浴のみです。これは病原体の進行が早く、薄い塩浴の治療効果という形では不確定要素が多いためです。そして0.5%ではカラムナリスなど細菌の中には活性が高まるので、危機管理としては0.6%以上が本来と考えられます。但し、鰓病の際は塩類細胞の働きを含めて機能が低下しており、従って体内濃度も低くなっている場合があります(淡水魚。海水魚では逆に濃度が高くなってる)。その場合、永久浴は死への背中押しになっていることもあり、高濃度塩水浴にて短時間浴が無難です。そもそも浸透圧を淡水魚の体内濃度に近づけると魚は本当に楽になるのでしょうか。海水魚の場合なら、海水を薄めて楽にさせるとは言わないです。治療中にポップアイ・水腫・浮腫・激ヤセが起きた場合、病気による浸透圧調整の破壊が始まった兆候なのですが、この重要なシグナルを緩め、見落とす原因となりかねません。そして低濃度とはいえ長期の恒久浴をしていると、渓流から河口まで住んでいる強靭な肉体を持つ魚(ウグイ、コイ、フナ等)の場合は耐えられるのでいいでしょうが、海と川を行き来するような魚の場合、塩が塩類細胞を刺激し浸透圧調整の機能を変化させ腹水が起きる場合が多くあります。腹水症となった魚は極めて重篤化していき、即対処に入らねば余命はもって数日です。

・塩化ナトリウム=”薬効”としてみると実は純度が高いほうが効果的。
・電子塩分濃度計=買っておけばらくちん。
・ボーメメーター=海水比重計。海水濃度屈折計。
・プチメーター=海水比重計。簡易の物の場合は新旧で誤差が大きく出るので定期的に買い替える。イソギンチャク・サンゴ飼育では更新必須

5 原生動物(原虫)たちを第一歩にする

魚を導入し、1週間から2週間たつと飼育水の換水を放置していた場合、かゆいかゆいと体をこすりつける動作をするようになる。ヒレを観察してみれば白い模様が出来、また白い点がポツポツとついているのを発見できる。白点虫かイカリムシなどの甲殻類の寄生虫の幼生か。どちらか分からなくてもメチレンブルー系を投入。飼育水や濾過槽が綺麗であれば塩水浴よりも早く効き、苦労は全くない。規定量の5分の1ぐらいから効果が確認できるでしょう。人間ではメトヘモグロビン血症でのメチレンブルー投与で治療が行われている。酸素を消費するのでブクブク(エアーレーション)を強化し、ちゃんと薬剤を溶かして入れること。よく「グリーンF系で死んでしまった」というのは酸欠=ドバっと入れて溶けるのを水槽内で「綺麗だな」と鑑賞してしまう人に多い。熱湯で良いのでしっかり溶かしてから水槽へ入れないと薬が鰓に張り付いて次の日には死亡。薬が悪いという意見は溶かさずに入れてしまったせいと思われる。海水魚であれば鹹水性白点病、硫酸銅系を投入する。水族館で設置されてる銅イオン発生器に倣って十円玉でもよい。白点が消え体をこすらなくなれば10円玉を取り出すだけ。60㎝治療専用水槽なら十円玉一個、意外と効果があります。硫酸銅は強い薬なので甲殻類の同居するような状態では使用してはいけません。注意点としては「薬害がひどいので薬を使わず、魚の体力増強で治療する」パターンは、病気を出した水が硫酸銅よりも有害だという順序を忘れてはいけない。ビタミン等の添加や栄養食品は病気が出る前の話です。他に真菌用のマラカイトグリーンも効果があり…注意点もあり別項で説明します。淡水魚の場合、グリーンFとニューグリーンFは成分が少し違うがどちらでも構いません。塩水や水温でゆっくり治療するよりもあっという間に治るので薬剤を使いましょう。白点虫の生活史から念のため二回繰り返しますが、一回で治ってしまうことも多い。治療練習と思って観察を繰り返しましょう。また2週間たったら白点が変な感じに成長したり治らない場合は被嚢を有する寄生原虫の場合があり手強い。様子を観察しながら他の原虫や寄生虫退治へシフトします。観察は最初に投薬してから30分は気を付け、48時間~72時間で結果を吟味して次の判断につなげます。

=サツキマス40㎝

白いポツポツが白点虫(白点病)。どんな魚でも、アクアリウム初心者さんが水槽に入れ、2週間もすれば発生するヤツで普通に観れますよね。フナやコイでも発生するのだから、海から遡上してきたサツキマス、イワナなんてもっと弱く、食欲が一気に無くなる様子も楽勝観察。放置しておくと粘膜も剥離し、鰓に寄生されて粘液も大量、呼吸困難で鰓蓋の動きが早まり衰弱していきます。各部に合併症が出現して最後を迎えてしまう。色素剤とともに清潔に洗ったウールを上部濾過槽などに敷き詰め濃しとるのもよくやる手ですが、そんなに怖い病気ではなく、見た目の病気らしさ、掃除・投薬対応の違いで魚病は良くも悪くもなり、初心者さん含め飼育水や溶存酸素の重要さ、薬が効く効かないの原因、生命の尊さ、健康の大切さを学ぶ絶好の機会となっています。海水魚の硫酸銅は濃度厳格に。淡水魚はメチレンブルー色素剤が入ってればなんでもOK、多目に入れ間違えても魚類にとって安全性が高いので初心者にもおすすめ。両者とも治ると魚は耐性を獲得するのでしばらくは再度罹りません。治癒⇒発病を繰り返すようなら似た症状の疾病は多くあるので別の病気も疑うこと。

★原生動物とは、動物としての性質を強く持った原生生物(単細胞性の真核生物)のことです。鞭毛虫類・繊毛虫類・胞子虫類・肉質虫類という四つに分類されています。単純に「原虫類」ともいう。種の数は65,000以上、水槽内に出没するのは約200種を数え病原性をもつものも多く35種以上、人間、家畜、鳥類、水産生物への被害等の関りで高度に学術化しています。”原因不明の病気”というのは、正確には…原因を突き止めていないだけで必ず原因があり、結果として病気であるもの。アリストテレスのギリシア時代から議論が盛んでした。

・グリーンF:メチレンブルーに加え抗菌剤(フラン剤)微量。奇麗だなと溶けるのに見とれていてはいけません!
・ニューグリーンF:メチレンブルーに加え消毒剤(アクリノール)とグアニジン系抗菌剤(塩酸クロルヘキシジン)微量。(同上)
・グリーンFリキッド:溶かさずに入れる人が多かったので最初から液体ならOK。消毒剤(アクリノール)微量。
・メチレンブルー水溶液:最初から液体。精製水のみ添加物なし。
・トロピカルゴールド:中級者以上で”まとめて最初に”を把握できる方向け。+駆虫剤(トリクロルホン)&消毒剤(アクリノール)微量。
・サンエース:”まとめて最初に”メチレンブルーを薄めアクリノールと抗菌剤(サルファ剤)を含めている。↑同様、病原特定の目的でも有用。
・グリーンFクリアー:二酸化塩素(水成二酸化塩素)。淡水水草の共生する水槽全体を消毒、無色透明の効果弱の長期タイプ。中和剤で無効となる。
・硫酸銅(海水魚):鹹水性白点病をすぐに治癒させることができる。水族館では銅イオン発生器(和光技研)を設置している。
・十円玉(海水魚):意外と使える。60㎝規格水槽に1個、治癒したらすぐに取り出すだけ。銅イオンの代わり。淡水魚は感受性が高いので使用不可。
・白点キラー(海水魚):光分解性発色剤、成分不詳。治療に供するものではない。白点虫やトリコディナなど原虫類の代謝系を阻害。
・ホルマリン:孵化場やトラフグ養殖場などにて使用されていた。特に強い原虫である白雲病(キロドネラ症)等向け。使用禁止
・オレガノ配合飼料:イクチオボドやトリコジナの予防。孵化場向け(ホルマリン禁止の代替え)。
・過マンガン酸カリウム:2~3g/tで薬浴、効果が切れるのが早い(4~6時間)。色が残っていても切れています。特に強い白雲病(キロドネラ症)向け。

6 次はポピュラーな水カビ病を退治>分類変更もある謎多き真菌界隈

病気の中で分かりやすいのはミズカビ病(真菌症)である。これには先の色素剤で治癒できるが、低砂や濾過槽がそのままの場合に完全に除去できず水環境はすぐに崩れてしまう。その際に複数飼育で体当たりなどの争いがあるとケガをし、そこに水カビがついてくる。あまりにも酷い場合は低砂を取り去り濾過槽の掃除と消毒をし、ベアタンクにしてマラカイトグリーン(しゅう酸塩)で治療する。原虫のツリガネムシらもついでに退治してくれる。しっかりと環境さえ清潔にしておけばぶり返さないので白点病並みに対処しやすい病気の代表といえる。表で水カビが見えないとはいえ、鰓に張り付いていると狂泳、自分でコントロールできない泳ぎ方をするので、水カビ発生順序を考えれば推測しやすい。窒息の前兆だと考えて投薬を継続し収まるのを観察していくこと。楽観しすぎると手遅れになるので注意。マラカイトグリーンは水草、バクテリア(濾過)、甲殻類に対して優しいとうたわれている。3日ほどで効果が切れるので短く、濾過槽の有益細菌を絶滅させるほどの殺菌力はないというほうが正解であろう。それでは弱い薬なのかというと違う。真菌は細菌ではなく原虫に近いが正確には原虫とも違う、更にウイルス並みの強さから一般細菌レベルまである”謎多き特化もの達”とイメージを変えてみないと薬効や治癒の違いに戸惑うことになる。外皮やエラだけでなく内臓にもつきますからね(深在性真菌症という。治療薬は別項のメトロニダゾール)。

ということで、真菌の属する菌界(接合菌類、担子菌類、ツボカビ類、子嚢菌類、不完全菌類)からミズカビ類・鞭毛菌類はクロミスタ界の卵菌類に分類され、更に接合菌類のハエカビ類とされていた鰓病イクチオフォヌスも原生動物に分類するという学会提案があり、当サイト記事としては極力最新のカテゴリーに分類を直しました。

=通常のミズカビなら容易に完治。

・メチレンブルー系は初期段階で使用。または塗布も推奨。
・グリーンFクリアー:二酸化塩素(水成二酸化塩素)。無色透明の効果弱の長期タイプ。中和剤で無効となる。実は…真菌にも効く。
・マラカイトグリーン(商品名:アグテン、ヒコサンz、スーパースカット):マラカイトグリーンは原虫もついでに退治できる。
・アグテンパウダー:アグテンの粉末版。抗菌剤(サルファ剤)や消毒剤(アクリノール)も入っている総合系。
・フレッシュリーフ:マラカイトグリーン+抗菌剤(サルファ剤)や消毒剤(アクリノール)含有。同上。
・マーキュロクロム:メルブロミン、塗布。水カビが生えた釣ったフナに塗ったら治って感動した中学時代の私。実際、コイ治療で使用されていた。
・ファンキゾン:ヒト用。消化管におけるカンジダ真菌の異常増殖に対し菌数の減少に有効。
・メトロニタゾール:ヒト用。ディスカスの腸管鞭毛虫病でよく使用されている。深在性真菌症の抗真菌薬でもある。

分類変更例「デルモシスチヂウム症」。水温上げられず四苦八苦

ドイツゴイからヨシノボリ、ウナギ、イワナに至るウロコが小さい(又はない)魚類に発症しやすい。皮下・筋肉内に入り込み菌糸を広げるので薬浴の効果がほとんどみられない。悪化していくと噴火のような状況となり筋肉が露出する。鰓への寄生も報告がある。コイや金魚の場合は冬に罹り夏に自然治癒するので水温をあげる処置を選択する。具体的には飼育水温を約30℃以上に上げると菌糸が崩壊する。細菌に感染しやすいので予防的に抗菌剤を散布しておく。

=なぜか右のイワナだけが感染した。

庄川源流(岐阜)、桂川上流(山梨)で釣ったものたち。罹患したのは庄川出身。

= デルモシスチヂウム症

背びれ付近の白円が薬浴中にもかかわらず2か月間で徐々に大きくなり(直径1㎜⇒7㎜)、周辺の皮膚が広く直径3㎝ほど薄く黒ずんで膨隆し炎症を起こしかけている。白点病、水カビ病、穴あき病、ツリガネムシ、イカリムシ、ウーディニウム病ではなく、各種薬剤でも治癒しない。魚は元気であり、症状の進行スピードが遅いので楽観視していると菌糸が皮下直径5㎝とか広がってきたときに焦ることとなる。悪化させるとエロモナス菌も参戦し皮膚が欠落しビローンと捲れ上がる場合もあり浸透圧調整ができずに1‐2日で斃死する。スタート時では穴あき病やイカリムシの寄生初期と見分けにくい。穴あき病治療の効果はなく、耐性菌とか新型の病気とか右往左往する。

 =進行は止まらない。

4か月の間に噴火があり↑鮮明な肉が見え、直径15㎜またジワジワと広がりを繰り返す。一見するとまさに穴あき病だが、しかしデルモシスチヂウム症となると水温をあげるしか手立てがないので冷水魚では治療困難。オキソリン酸やエルバージュの抗菌剤や駆虫剤トリクロルホンなどで他の病原を防いでもジリ貧、長期治療となりリセットし休薬期間として真水に戻すとエロモナス感染症など混合罹患して死に至るきらいがある。このように攻防のロールプレイングゲームに陥るデルモシスチヂウム症は、多数の球形胞子が観察されて真菌原因から原虫原因に扱いが変わったが、所属はいまだ微妙な疾病である。そういえば類似例として、ブランキオマイセス症も真菌に分類されているのだが、真菌の特効薬マラカイトグリーンが効かないという謎なものである。イクチオホヌス症なんかはウイルスや結核菌に匹敵する強力な真菌で治療法は見つからず4℃以下で初めて活動が抑制されるという恐ろしさ。

マラカイトグリーンについて

魚類の殺菌剤、駆虫薬として古くから知られており、海水魚をはじめ観賞魚の水カビ病、白点病、尾腐れ病の治療薬つまり合成抗菌剤として用いられています。発がん性が認められたことから食用にする魚への投与は禁止されました。しかし観賞魚ではOKであるので魚病対策では使用できます。ときどき全使用禁止とうたうかたがいらっしゃいましたので、誤解を広めないように喚起しておきます。なお、マラカイトグリーンはオキソジンやイソジンと同属の消毒殺菌剤に分類されます。本章の後述”ウイルス~民間療法”の項で述べますが、金魚・錦鯉や熱帯魚のジャンルで多い魚病でイソジンを使用しています。実はこれを使わないようにとメーカー(明治製薬)から注意喚起されています。ちゃんと魚類用に販売されているアグテンやヒコサンzを使用するようにしましょう。なかなか効きます。メチレンブルーの10倍~20倍の毒性を示すということで慎重になっている方も多いらしいのですが、イソジンに比べれば弱い。イソジンは平気で使えるのにマラカイトグリーンは毒性が強いと尻込みする、強いというイメージならトリクロルホン、エルバージュやオキソリン酸もそうだよね、この矛盾は知識を得るしか乗り切れません。病原菌に効く理屈は、細胞を染色しその過程で活性酸素を発生、がん化させ病原菌自体を殺すというもの。水カビ以外にも効くし、海水魚の病気にも有効打を放てるけれど、ペット魚の長期飼育という観点では、水カビ以外ではなるべく使用しないようにしたい。殆どの菌に効くものの抗酸菌やサルモネラなど一部は耐性があります。

・アグテン:海水魚の場合は尿排出機能の差から淡水の半分ぐらいからでよい。真菌の種類によっては規定量の2倍入れることもある。
・ヒコサンz:同上
・スーパースカット:同上
・アグテンパウダー:アグテンの粉末版。サルファ剤(抗菌剤)やアクリノール(傷の消毒剤)も入っている総合系。
・フレッシュリーフ:上と同じで抗菌剤や傷の消毒剤も入っている総合系。

アクリノールは販売中止の予定。

水カビ病の原因として水質がすこぶる悪化した以外ではケガがメインとなる、そのケガの治療については極端な話、水が清潔で魚に体力があれば自然治癒していく。海水魚では小傷でも致命的で隔離しないと他の小動物に食い荒らされ傷口がどんどん広がり斃死する。兎にも角にも治癒力より病原菌の悪化が勝っている場合に投薬をする。いわゆる消毒剤=アクリノールだ。原生動物・グラム陽性菌・グラム陰性菌の消毒に有効。バイエル社が発明し、世界各国で外科、歯医者などで使用されてきた傷に対する消毒剤です。長い間、アクアリウム界隈でも使用されてきました。後追い実験や各国の厚生省への報告などで、感染に対しての防御機能をもつ白血球、マクロファージがアクリノールで障害を受けてしまうことが判明、また、組織の再生をになう繊維芽細胞なども機能障害を受けてしまうことが発覚。結果、アクリノールは一時的なものであり、長期的にみると副作用によるデメリットのほうが大きいと判断されました。傷の治療では抗菌剤で薬浴するほうがよいと思われます。2018年暮れから2020年、製薬会社の販売中止が順次行われる予定。観賞魚界隈では商品が変わっていくかどうか言及はなさそうでよく分かりません。

・ニューグリーンF(グリーンFには入っていない)
・グリーンFリキッド(グリーンFゴールドリキッドには入っていない)
・トロピカルゴールド(微量含有)
・トロピカルーN(微量含有)
・サンエース(微量含有、わずかに多い)
・フレッシュリーフ:同上
・アグテンパウダー:アグテンの粉末版。同上

7 細菌を手当たり次第に殺菌・抑制

ここまでで初期の対応を間違えたり、不在していて発見したら数日経ってお腹が膨れていたり、目が飛び出していたり、コショウを振りかけたような体表、白い膜に覆われた体色が異常な感じ、呼吸が早い、フンが異常に長い等々、白点病のような簡単じゃ無さげ、なんだか調子の悪いのが加速…こんな雰囲気を感じ取ったら重篤化、エロモナス菌などの合併症となっている筈。尾ぐされ病で飛びぬけて強力なカラムナリス菌をはじめどんな細菌にでも罹ればタンパク分解が始まりますから尾ぐされ症状も出ますし「尾ぐされ=フレキシバクター・カラムナリス」単独の病気という考えもやめたほうが無難。魚が弱れば、どんどん複数細菌が重なっていくものです。そういう場合は細菌類を手当たり次第に滅菌すると考えを変えれば見え方も変わってくる筈。まずは飼育水の中にいる雑菌や濾過槽のフィルター、低砂にいる雑菌をサルファ剤、フラン剤系で。グリーンFゴールド顆粒で行います。せっかく繁殖させた濾過細菌が全滅しちゃう…など躊躇する傾向があるのは残念なこと。啓発の仕方が間違っているのか、自然のバランスは病気を出したりの問題発生時点で崩れている。さっさとリセットしてやり直すという姿勢が治療にとっては大事です。清潔な水槽を実現する為、ぬめりまで落としてまっさらに、水道水を入れて少しだけ中和剤でも(既定の3分の1ぐらいで充分)。その中に薬剤を投入します。低砂も濾過も水槽も綺麗な状況で薬剤が本来の力を発揮、内臓が破壊されているほど重症でなければ結構治癒していきます。過去と比較して治癒のスピードが全然違うと肌で感じて下さい。薬だって少ない使用で済みます。



細菌性疾病に罹ったと同時に環境に有毒物質が加わると病状の進行が加速する。対病原菌などへの耐久性が低下するからだが、急がなければ分析している間に死に至る。上のアジアアロワナは18歳、出張から帰宅したら異変に気付いた。一般的にビブリオ病、レンサ球菌症、穴あき病などが他魚へ感染するのは2日以内で、白点のような感じから肉が露出するまでは10~15日である。グアニンと色素の消失、ウロコが崩壊し、真皮が壊死、筋肉が露出するのが観察できる。患部は徐々に拡大し周辺が白濁壊死、5~6日以内には真皮筋肉も崩壊し脱落していく。投薬が効き始めると潰瘍は白濁部位までは進むが3~4日で進行は止まる。患部の発赤や隆起・腫脹している部分が徐々に退色していけば好転だ。このパターンから外れる場合は汚濁など薬の効果を阻害するものが存在することといえる。その後、10~20日で真皮が再生され、ウロコが出来てくる。治癒の場合は遅速が水質環境や個体差によって現れる。

一般の飼育水槽での出現率が高いエロモナス菌に対して適切な薬の効果としては、スポイトで強制経口投与(ナリジクス酸)や餌に混ぜた強制口径投与(スルファモノメトキシン=サルファ剤類)の場合、6-12時間後に体内の病原菌が少なくなり、24時間後には無くなっている。生体数としては2-3日後から斃死魚が少なくなっていく。この時差に注目すればいい。血中の濃度が24時間以上保たれれば確実である。これを薬浴でイメージし、生存魚を増やすにはどれぐらい薬浴が継続できるか、有効血中濃度7㎎/dlに達するまで間に合うのか…など想定していく。その想定が間違っていればダメだが「人間は考える葦である」を実践するチャンスであります。治療開始が遅くなれば魚体内で生きている悪い細菌が増え、合併症も出てきて、薬の効果が追い付かずに斃死してしまう。早期治療開始が重要なのは人間の医学と同じです。また副腎皮質ホルモンも治療では効果があるそう。

経口投与は、特に重い鰓病では薬浴が困難になる場合が多いので、エラへの影響を与えない基本的選択肢です。慣れた方でも薬浴で規定量の薬を入れたら死んでしまったという場合、粒子が溶け切っていないグリーンFゴールド顆粒と鰓病の組み合わせの場合が多いと推察できます。

★抗菌剤の特徴。サルファ剤よりフラン剤のほうが魚体に吸収されやすい反面、長期薬浴には不向き。サルファ剤は長期的にいいのですが耐性菌が出現しやすい傾向があります。いずれも経口投与ができる・できないもあり薬浴での効果発揮は濃度に気をつけねばなりません。早期発見を見逃していた場合、治療が遅れたわけで、魚体吸収の早いフラン剤を使うのが救命には必須の選択になります。投薬後24時間を過ぎたら終了するか観察機会を増やし、同じような黄色だからといってサルファ剤のように3~7日と継続しないことが重要です(魚自体を殺してしまう)。←エルバージュを入れたら死んでしまった報告の主因はだいたいコレです。わざわざ抗菌剤(サルファ剤・フラン剤)と分けて記述しているのはこういう理由です。

★甲状腺ホルモン(SIGUMA社サイロキシンL-Thyroxine):副腎皮質ホルモンと同様に治療では効果があると思われたヨウ素を含む甲状腺ホルモンの一種、チロキシンともいう。意外な作用があり、ヤマメなんかだと擬似銀毛化してしまいます。一見、降海型サクラマスに。ディスカス、アロワナなんかはメタリックに輝きますので珍しいとうたって高値で売られていました。買った人は効果が切れる半年後に普通になってしまってガッカリだったことでしょう。ヤマメも半年後に元の陸封型に戻ります。

・フラン剤=エルバージュエース(海水魚の場合は淡水の規定量の半分でOK。浸透圧調整から排尿システムが異なるから。)
・フラン剤=パフラジンF(エルバージュの池用みたいな増量版。)
・サルファ剤=グリーンFゴールド顆粒(+フラン剤も入ってる)サルファ剤の耐性菌が発生していた場合でもフラン剤が叩いてくれる。
・サルファ剤=ハイートロピカル(アクリノールも入っている。)カプセル式少量ゆえ大型水槽で薬浴する場合はひと瓶では足りない。
・水産用OTC散(テラマイシン):オキシテトラサイクリン塩酸塩、レンサ球菌症など死亡率の低下。人間用では化膿止めやニキビの治療の軟膏。
・オキソリン酸=パラキソリンF、直接食べさせる経口投与で細菌感染治療薬の市販版。
・グリーンFクリアー:二酸化塩素(水成二酸化塩素)。無色透明の効果弱の長期タイプ。中和剤で無効となる。実は…細菌にも効く。
・サルファ剤=スルファモノメトキシン。水産試験場など経口投与で完治実績、養殖場の業務向け。~犬・牛など
・乾燥南天の葉:新穴あき病の特効薬として注目。副作用については不明だが、よく効くと評判だ。100リットルの水に乾燥南天50g
・新穴あき病にはアンピシリン、エリスロマイシン、ホスホマイ シン、スルフィソゾールナトリウム、ニフルスチレン酸ナトリウムという抗生物質が効果。
・過マンガン酸カリウム:2~3g/tで薬浴、効果が切れるのが早いので(4~6時間)色が残っていても切れています。
・ビオトーク(安定化二酸化塩素):効果は過マンガン酸カリウムとほぼ同じ。水道水をハイポで中和している水槽では残留ハイポにより薬効激減。
・ヨウ素イオン樹脂抗菌剤:塩素と同じハロゲン元素の天然ヨードを主原料。予防向け。

グラム陰性菌のみをターゲットにする

上で行ったのはグラム陽性菌(良い細菌が多い)、グラム陰性菌(悪いのが多い)を両方手当たり次第に叩くという治療法でしたが、オキソリン酸というキノロン系抗菌剤は、エロモナス菌やビブリオ菌という常在菌に対して強く作用し、グラム陰性菌だけを叩くという傾向があるので、陽性菌(濾過細菌はこちらに入る)を大切にしたい人向けでもあります。淡水のみと付記されてますが実は海水・淡水の両方で使用できます。オキソリン酸の含有されたのはグリーンFゴールドリキッドやパラザンD・観パラD系。グリーンFシリーズは名前が似ていても成分がガラっと違うので注意が必要です。オキソリン酸に弱い魚種がいますので、同じようなものと考えて投入したら一発でアウトという薬害を私は経験しています。ちなみにイワナは14分の1から投入していき、7分の1の濃度でフラついて痙攣し始める前兆でありました。半分の濃度ではひっくり返り死ぬ寸前。古代魚と言われるアロワナ類よりイワナはオキソリン酸に対して遥かに弱かったです。ただ同時期にグリーンFゴールド顆粒は規定量入れても大丈夫でしたので、無理にオキソリン酸を使わない方法を模索しました。この辺は魚種と病状進行による感受性の違いだと思われます。オキソリン酸はpH11なので少量水槽や多く入れ間違えたりすると水槽内もpHが急激に上昇します。下降は凡そ大丈夫ですが急上昇は多くがペーハーショックを起こすので注意してください。このことに加えカルシウム成分の多い水には効果を弱めさせられるのでパッケージに「海水には使用しないように」と注意書きが入れられたと思われます。pHショック事故防止のため、規定量の3分の1づつ1時間あけて投入します。オキソリン酸は規定の薬浴期間を過ぎたら治癒しなくても再投薬は不可です(耐性菌防御)。

・グリーンFゴールドリキッド:抗生物質オキソリン酸。薄い=小さな水槽向け。
・観パラD:抗生物質オキソリン酸、パラザンDの後継薬。濃い=大きな水槽向け。
・パラキソリンF:直接食べさせるオキソリン酸、経口投与で細菌感染治療薬の市販版。

グラム陽性菌のみをターゲットにするには

例えば陽性菌、レンサ球菌症の「20℃前後、腹水、ポップアイ、ヒレ基底部発赤、肛門拡張」やノカルジア症の「加えて臓器はガンのように肉芽腫が多発し機能障害」という外見エロモナス菌らと変わらない症状で、オキソリン酸の効果がない時がこれに該当します。ブリ、ヒラメからアユ、熱帯魚、サケマスと対象も幅広い。水産用OTC=塩酸オキシテトラサイクリンが効果的。病状が改善しなくても8日間以上の連続投与は不可(耐性菌防御)。この薬は一時期耐性菌が蔓延ってしまい使われなくなりましたが、近年ではオキソリン酸などへの耐性菌が増えたので寧ろテトラサイクリンの方が効果的な場面も多くなってきました。他にクロラムフェニコール、エリスロマイシン、スピラマイシンなど抗生物質の経口投与などもあります。サケマスの場合、海水で飼育しているときと淡水で飼育している時では薬の投与の仕方が変わります。先のオキソリン酸の様に。同じ魚種でも飼育環境によって使用できる認可が下りる下りないがあるのです。私はテトラサイクリン系薬剤で染色した耳石で降海型など年齢を算出することをよくやっていました。メチレンブルーの様に染色作用もあるのです。そして、陽性菌のみに効く薬剤はありますか?という質問が多く寄せられていたので敢えて触れるだけですが、こと魚病の対策では決して出ることがない人間医療専用の抗生物質ジスロマック(zithromac)があります。ペニシリン系の「アンピシリン」など抗生物質が数種類あります。お魚の病気では使えません。といいますか陽性菌のみ叩くというのは治療方法としては想定外です。やむを得ず水産用医薬品以外の物を使用する場合には、薬剤として使用した物を活性炭などで吸着し、又は中和するための措置を講ずる等環境の汚染が生じないよう十分配慮すること。(56水研第797号)国立研究開発法人水産研究。

=ヒト用です。人間ですら下痢になったりします。(気軽な入手は99%無理でしょう)

・水産用OTC散(テラマイシン):オキシテトラサイクリン塩酸塩、レンサ球菌症やビブリオ病など死亡率の低下。3g/100L薬浴、経口投与(本来)
・塩酸クロルヘキシジン:グアニジン系抗生剤で魚病薬の中では「ニューグリーンF」のみに微量含有されている。見逃して他にもあるかもしれない。
・ハイートロピカル:サルファ剤(アクリノールも入っている。)カプセル式少量ゆえ大型水槽で薬浴する場合はひと瓶では足りない。
・クロラムフェニコール、エリスロマイシン、スピラマイシンなど抗生物質の経口投与。

細菌対処をまとめますと、一般家庭のアクアリウムではエロモナス感染症が多いですが、エロモナス菌というのは属グループであり、彼らは論文を多々ひも解いてもそんなに強烈な毒素をまき散らして斃死を引き起こすことまではしていません。どうやら斃死までいってしまうケースでは真菌やエピスチリスおよび鰓に巣くう病原体による合併症といえます。それであのむごたらしい死骸が出来上がります。実際のところ、当サイトの疾病表ですら一部であり、穴あき病みたいな皮膚炎症を生じるウナギのるい孔症、錦ゴイのイノシトール欠乏症、アユのチョウチン病、錦ゴイの伝染性水腫症、細菌性冷水病などなど類似症例も多く掲載し尽くすることができません。そうそう、オスカーやディスカス、スネークヘッドからイワナまで罹る「頭部穴あき病」というのもあります。針に刺されたような小さく深い穴が開き、徐々に大きくなり穴あき病と同じ症状となります。しかし穴あき病の治療が全く効果がなく、患部も頭周辺と偏っています。イカリムシ原因も穴の中央付近に小さな穴がありますけど部位は全身であり偏りません。個人的には頭部に巣くう線虫が犯人だと思っています(次項にで詳しく)。さて上で紹介したキノロン系抗菌薬(オキソリン酸)とテトラサイクリン系抗生物質は、牡蠣殻やサンゴ砂を入れたカルシウムを多量に含有する飼育水の場合、効果減弱しますのでご注意ください。対策として海水魚の場合は、別水槽で原塩か食塩を使って比重計で合わせた飼育水を作り、そのうえで投薬します。ヒト犬猫の場合はミルクを飲ませません。何はともあれ、原虫⇒真菌⇒細菌という順序で投薬していくと効果的に駆除、治癒の成功例が増えるというのが一般の方にも理解しやすい簡素な理屈となります。

8 寄生虫を考える

釣ってきた魚、小赤、エビなどの生餌についてきたり、導入した水草に不運にもついて来たりして、結構たいへんな気持ちになるのがイカリムシやチョウ(ウオジラミ)である。見てくれが悪くなるのもあるが、なにより魚たちが気持ち悪そうにしているのが伝わってきて何とかせねばと焦ることとなる。私はチョウならニューグリーンFを投与して酸欠になりやすいのか体から剥がれて水槽内を泳いでいるのを網ですくう形を最初に選択する。またチョウは魚を取り出してピンセットでいけるが、魚が大きいと鰓の中に入っていたりして見逃すきらいがある。チョウという名はいまいちだがアルグルスと呼ぶと格好いい。イカリムシも同様でピンセットで引き抜くのだが、幼生が水槽内にいるのでまたくっついてくる。濾過槽の物理ろ過部分(綿・ウール)を圧縮するほどガッチリ入れ込み、濃しとる方法で自然減を狙っても良い。心配ならデミリン水和剤、トリクロルホン系を登場させる。観賞魚界で駆虫の薬剤の主要成分はトリクロルホン、これは甲殻類には猛毒。変わってデミリンは甲殻類の脱皮阻害剤という農薬で間接的駆除、意外と魚には無害っぽく感じた。規定量の半分でも効果がありOK。尚、清い水を好む治療魚(イワナ)が複数100%が半年以内に腸まんに罹ったことを記しておきたい。とにかくイカリムシやチョウなどを退治できるのだが、死骸がしばらくついたまま。ここにミズカビやエロモナスなどがつき、不在していた4-5日間の内で腹水または水腫が発生、ポップアイにもなりかけており、エサも喰わなくなって2週間の闘病生活の末に愛魚を落としてしまったことがある。これは悔しかった。何らかの原因で肝膵臓(←混合)・腎臓が機能減退している際は特に、僅かなイカリムシの刺傷部にもかかわらず細菌が浸入し弱っている臓器の炎症を起爆膨張させる。イカリムシ・チョウの治療後は抗菌剤を適切に入れておきたいとお勧めする。尚、えらに寄生する微小寄生虫、体表に現れる黒点病の吸血虫らは初期の高濃度塩水浴やマラカイトグリーン系の投薬段階で無害化・死滅していると想定するので、ここでは触れていません。もし生き延びていたとしても次の項「線虫」で駆逐させます。

  =目の白い腫瘍に注目を。

メダマイカリムシ、ハダムシ、エラムシ、出目金病、目に腫瘍系の肉球が出来たイシダイの子供。初期原因推測=他魚につつかれた、水に窒素が多い、色素材が浮遊、白内障から発展、目の奥で病原菌に侵されたケース、海水魚に多い寄生虫で発生する。失明するが餌は匂いで採れるので全滅というケースは免れる。淡水ならトリクロルホンやデミリン、海水ならプラジクアンテル、よく効きます。

★鰓に何らかの障害を生じた場合、まずはエサをそこそこ食べたらラストに一部を吐きます。内臓の障害の場合も吐いたり食べなくなりますが下痢を起こすので区別します。厄介なのは粘液の塊が水槽内で漂うケースで、その粘液が下痢から出てきたのか、鰓のどこかの部位でたまっていたのか、目撃しないと断定ができません。両ケースとも魚は若干、光過敏になったり調子が悪そうにしています。水槽に張り付いているわけにもいきませんから、メチレンブルー(原虫)からマラカイトグリーン(真菌)、サルファ剤(細菌)を数日かけて順に単独で投入、効果がなければトリクロルホン(寄生虫)を投入します。更に効果が出なければ、次の項の「線虫」を想定します。効果のあるなしを評価するため、現在の魚の様態を繰り返し観察して頭に入れておくのが必須となります。

★トリクロルホンは水によく溶ける唯一の有機リン剤で、魚類に対して中程度の毒性(96時間のLC50値は0.45~51mg/l)、エビ・カニなど水生節足動物は中程度から高度の毒性(48時間のLC50は0.75μg/l)です。タコ・イカの軟体動物や微生物は節足動物よりも感受性が低いため影響はほとんどありません。アクアリウム界では微生物である扁形動物単生類のギロダクチルスやエピスチリス症のツリガネムシからトリコジナ、イクチオボドなどにも効果があるといわれていますが、実際には効果はないと思われます。治癒したとしても添加剤の効果かもしれません。又、微生物とはいっても甲殻類系微生物には効きます。ミジンコなど多いですよね。鳥類に対する毒性は中程度。水温30℃以上、pH8.5以上では毒性が強くなります。分量、用法さえ守れば問題が起きることはありません。LC50値=50%致死濃度のこと。

・デミリン水和剤:(ジフルベンズロン)甲殻類の脱皮阻害剤。脱皮する成長過程なら効く。水に溶けにくい。100Lで0.1-0.2g。ペットボトルで工夫。
・リフィッシュ:トリクロルホン+グアニジン系抗菌剤(塩酸クロルヘキシジン)微量。
・トロピカルーN:トリクロルホン+アクリノール微量、値段やすい。
・トロピカルゴールド(トリクロルホン微量含有)
・マゾテン:成分メトリホナート(パッケージ表記)=トリクロルホン、同じ物質です。
・水産用ハダクリーン(プラジクアンテル):スズキ目魚類(淡水のコイ目のように制覇した魚類)住血吸虫、ヒラムシやハダムシの駆除剤。経口タイプ
・水産用マリンサワーSP(過酸化水素45%):薬浴により海水養殖魚の寄生虫を駆除。休薬期間はない。劇薬のため防護具着用
・酢酸:純度96パーセント以上の酢酸である氷酢酸2ml/L水溶液に30秒~1分浸漬する。
・オキシドール(過酸化水素3%):30分以上の薬浴は危険。初心者にとって扱いが難しいので治療では避け、なるべく使用しないこと。
・ホルマリン:塩とホルマリンを混ぜると毒素が発生。環境保護の観点からも使用してはいけません。強いわりに治癒効果は満足いかない。

そして線虫=条虫寄生症。本来は白点病の隣にでも掲載したいほどのメジャーなものである

地球上の温帯から熱帯の海水・汽水・淡水といった広大な範囲に分布している線虫。エキノコックスアニサキスという人間へも苦痛を強いる有名どころを含め様々な種類がいる。1mm~数メートル、魚の腸内に数が少ないときは普段通りだが、数が増えてきたり、魚自身が弱ったりの原因で、線虫が腸内から別組織に移動したりすると症状としてあらわれてくる。まずは普段はおっとりしていた魚が怯えを見せ始め、次に下痢、体被の退色、摂餌不良、そして痩せてくる。このころに飼育者が気づく場合が多い。その後進行するとふらつきや狂泳、急いで塩水浴やメチレンブルー系、黄色くなる薬系を投入する。こういう治療を開始している間に腹水による体の腫脹で「これは別の病気じゃないか?」と頭の隅によぎり始め、ポップアイが出現し、悪い場合は自分自身で激しい動きをして筋肉剥離を生じて背曲がりのようになってしまう。手遅れになる典型な疾病といえましょう。貴方が過去に亡くした魚を思い出してみて下さい、見た症状がある筈。エロモナス菌や原虫などと言われていたものが実はコレかもしれません。

この線虫の駆除に水産用ハダクリーンがある。海水魚用で3日間の経口投与で実施する。本来は海水魚用だが淡水魚にも応用が効き、サケ科で薬浴の場合、100Lにてハダクリーン0.2gで10分、速攻である。頑丈さを誇る巨漢ニシキゴイでも100L+2gの3時間。繰り返し投薬する必要はないでしょう。成分のプラジクアンテルは条虫・鰓の吸虫を幅広く解決できる。同じ成分の薬品として水産用ベネサールなどがある。注意点として、ヒト用や動物用ハダクリーン、海外製品など同じプラジクアンテル製剤とはいっても薬剤によっては体内への浸透が悪く表皮の寄生虫しか効果がない場合もある。条虫、吸虫の種類によりプラジクアンテルの投与量が異なることがあるが凡そ先の薬浴パターンで賄えられると思われる。ハダクリーンは水に溶けにくい。溶かすのにエタノール10ml、ジメチルケトン(=アセトン)系の物、クロロホルム、酢酸・酢でも可能だが、闘病中は添加物の問題が生じるかもしれないので寧ろそのまま真水で頑張って溶かす方がよい。先のデミリンと同じようにペットボトルの出番。また薬浴を長く継続しても良さそうだが、重篤ですら3日目ぐらいには目に見えて回復、内臓・鰓はとっくの昔に改善に転じていると思われるので8~24時間ぐらいでいいでしょう。駆除を狙う病原体が線虫なのか吸虫(卵は排除できない)なのか、進行が早いか遅いかで時差を設けたりして加減する。水替えでプラジクアンテルを抜いた後、脱落した跡への細菌感染を防ぐために抗菌剤を散布しておく。プラジクアンテルが魚体から抜けるのは早く、48時間で血中濃度などへの残留は検出できないほど。従って薬としての副作用はなさそうだ。別の意味で副作用”的”なものとしては、体内で死んだ線虫らの大小死骸を消化吸収や排出で処理する段階で時間経過的に色々と起きてくるだろうこと。内臓が完全に破壊されていなければ間に合う。サバなどの体内に多く含まれるヒスチジン(無害)は死ぬとヒスタミン(有害)に変化していき、これがアレルギーを引き起こすことに似ている。元のヒスチジンの分量や新鮮さが重要だ。

魚種による感受性差については常識だと思うが、当方で同時に3つの水槽でニシキゴイ向け濃度での薬浴を試したところ、薬に弱いとされているアジアアロワナ27cmはエサも食しながら198時間以上平気だったが、岩魚2匹33~38cmは開始早々3~5分で嘔吐と下痢を爆発させはじめた。直ぐに真水へ移動させ落ち着いたが計10分、優しい薬なのにと心底驚いた。ひと昔前の薬は絶食と下剤がセットだったがプラジクアンテルでは不要のこと、しかし投与前は絶食させたほうが良いと思う。何はともあれ、このように同じ薬剤量・溶媒で差が出る。ペット魚の感受性については理解を深めておくこと。(ページ下部に感受性の話が出てきます。)当方が投薬最低基準としている岩魚で大丈夫ならば殆どの魚類で耐えられると思う。

★以下、各種魚の例。実施研究論文を紐解くと……。ハダクリーン100g中にプラジクアンテル50g含有。
・ニジマスの腸に寄生する条虫に対してプラジクアンテルの薬浴(1mg/L溶液に10分間)が有効であることが報告されている。
・コイに寄生する単生類とヨーロッパ産コイ科の淡水魚に寄生する単生類に対する効果の研究では、10mg/L溶液への3時間。
・イトヨの体表の寄生虫に対して、1μg/ml溶液への90分間の薬浴でほとんどの個体の体表からの脱落が認められている。
・ヨーロッパウナギの鰓に寄生する単生類に対し、10~30mg/Lの薬浴処理で効果が認められた。
・キングサーモンに寄生する甲殻類に対しては、魚体重当たり10、20あるいは100mg強制経口投与したが効果は認められなかった。
甲殻類系の寄生虫に対してはトリクロルホンやデミリンのほうが適する。=甲殻類の同居する水槽に使える。
なぜサケマスだけ微量で内臓にまで効果があるのか?私は簡潔に「飼育水が奇麗だから薬の効果が高い」と応用の効く答えをします。

また同じような内臓の病気対策としてディスカスの腸管鞭毛虫病用トリートメントハンバーグ(ディスカスハンバーグ)がある。食わない、食欲がない、含有成分が違う、他魚の場合、アクアリウム界隈ではヒト用のメトロニダゾール(商品名例:フラジール)が用いられている。入手はヒト用ゆえむつかしい。ディスカスで有名だったが、それだけの薬剤ではない。原虫である腸トリコモナス症や性病の抗トリコモナス剤として1957年から使用され、ランブル鞭毛虫感染症などの病原体のDNAを切断する作用が知られ大きな毒性を示すが、鳥類や哺乳類をはじめヒトへの作用は少ない。特に嫌気性菌(空気を嫌う悪さをする大部分の細菌)に効き、ピロリ菌やアメーバ赤痢を排除するためにも使用する。深在性真菌症の抗真菌薬、抗原虫薬であり、ニキビ用の軟膏もある。このメトロニダゾールは嫌気性菌ではない好気性菌のグラム陽性菌やグラム陰性菌に対しては効果はないと報告があるので濾過材はそのままでOK。岩魚2匹33~38cmは薬浴2日半、平気であった。併用禁忌薬は特になく外皮に潰瘍等が生じているならば抗菌剤を加えておく。しかし一方でこの薬は蛋白結合率が低く、血中にとどまらず組織に移行し、また尿中排泄が遅延する。つまり、組織にとどまり排泄しにくい薬剤と考えられるので特に3日を超えて長期に薬浴するのは危険であろう。さらにこの薬剤は脳の関門橋を突破し、アルコールのように脳内にも移行・残留するため、末梢神経障害、中枢神経障害等の副作用が現れることがある。こうなったら泳ぐどころではないので、せっかく治癒したと思ったら期間を置いて飼育魚そのものが死に至る。飼い主は別の病気で死んでしまったと考えることだろう。素人中心で行われる”民間療法”の危険なところである。

←進行する浮腫とポップアイ。通常の薬がまったく効果ない場合、内臓疾患を疑う事。

線虫の病気が「魚の病気と治療」で取り上げられにくいのと、フラジールが魚病薬として認可されないのは、上記を読めば容易に理解してもらえたと思うが、海水魚と淡水魚の排尿するシステムが違うこと(浸透圧調整)など、対象魚による投薬注意や薬浴期間の判断をその都度しないといけないからである。人間に対して処方箋が必要なのは医師の診断で副作用を含めた判断が必要だからであり、海水魚、金魚や鯉やサケマス、シクリッド系各種による熱帯魚でも同じ方法ではいけないからと察知していただけるはず。間違えれば期間を置いて斃死する。よく読んで注意点を守っていただきたい。ちなみに人間の場合は特にアルコール分解阻害作用もあるので、お酒飲みには「酒は控える」注意を促す。分解が速攻で出来ずに悪酔いがひどくなるからね。

★文中にある通りフラジールは好気性細菌には効果がありません。通常は好気性細菌として動くエロモナス菌には無効。一方、腸内のエロモナス菌は嫌気性細菌として働いている(通性嫌気性生物という)ので効果があると思われます。質問が多く寄せられていたので追記しておきます。そもそもエロモナスは簡単な部類ですから危険を冒してフラジールを使用する必要はありません。まっさらな水にして抗菌剤を使用、経口投与ください。

★アロワナなど一部の魚は胃壁を吐き出すことがあります。水槽内に漂う肉の塊にびっくりして(カーニバルしかやってないのに)どこから水槽に入ったのか!と心配しますが、病気悪化ではなく新陳代謝や病変部の防御作用みたいな感じで、寧ろ良くなったと軽く考えて構いません。こういう自己防御作用は初めて見た際には「人間とは根本的に違うのだなぁ」としみじみ感じ入ります。

★普段は腸にいる線虫、魚が弱ったり死んだりすると腸から筋肉など別組織へ移動する生活史がある。釣魚を〆たら直ぐにワタを出すというのは刺身で生食したい釣り師のお約束。釣りあげてから生かさず放置して帰宅後にワタを抜き三枚におろして調理した場合、こわい、こわーい腹痛が待っているかもしれない。人間の体内では、アニサキスは1週間ほどで死滅するが、サナダムシ(条虫の代表格)なんかは死なない。とりあえず人間にとっては昔からある病気なので対策も普通にある。生餌をあげている肉食魚を飼育している方は、池や川の野外で採取してきたものをペットに与えるとキャリアーとなる可能性がある。他の病気で闘病していたら、本来、治せる程度の病気が、線虫が移動して内臓を破壊、ダメ押しの腹水が発生してしまう…ということも知識として得ておいてください。

・水産用ハダクリーン(プラジクアンテル):3日経口投与、薬浴の場合100Lハダクリーン0.2~2gで10分~3時間。海水魚、淡水魚。感受性注意。
・水産用ベネサール:上と成分が同じプラジクアンテル、他にも類似品がある。一袋50g入りを買っても一生使える。
・トリートメントハンバーグ(ディスカスハンバーグ):食欲があるうちに。近年の物には有効成分が入っていない場合が多い(薬事法のため)。
・アスゾール:動物病院で処方可能。成分はニトロイミダゾール系抗菌剤、つまりメトロニダゾール錠剤です。24時間で充分な効果。
・フラジール膣錠:メトロニダゾール。100Lに対して500mg(or250mg二錠)3日以内で薬を抜く。発泡錠なので水槽では使いやすい。人間用。
・フラジール内服錠:上の膣錠にはホウ酸(防虫防腐剤)が含まれているので避け、こちらを砕いて溶かすのもよい。糖衣を剥がしましょう。人間用。
・レバミゾール:2ml/Lにて24時間薬浴する(線虫駆虫薬)、牛、豚、鶏。
・コンバントリン(ファイザー製薬):パモ酸ピランテル。広域駆虫剤で回虫や鈎虫(十二指腸虫)、毛様線虫などに効果を示す。人間用。
・日局木クレオソート剤(正露丸):人間チフス菌に有効。「アニサキスの活動を抑える効果」があるとして、大幸薬品が2014年に特許を取得。結果待ち

8 ウイルス疾患と抗酸菌症、民間療法の注意報

私のようにサケマスを飼育し釣った遡上魚を治療したりとしていなければ、まずウイルスは持ち込まない。ニシキゴイの品評会など出品時にコイヘルペスに感染した、金魚の品評会で…などと報告は上がるが、感染頻度は一般アクアリストが心配するほど高くない。ヘルペスウィルスは28℃以上になると活動を停止する。赤血球封入体症候群なら16℃以上だ。しかし気付いた時には別の病気に複合感染している場合が殆どであるため、治療できるじゃないかと単純に温度を上げると他の病気が悪化する。IPNウイルス (伝染性膵臓壊死症)の活性帯は10℃~37℃なのだ。一般アクアリストが使用できる認可された市販魚病薬は残念ながらない(注射で行うワクチンはある)。人間用の薬としてはウイルスを退治してくれるイソジン。イソジン消毒液とイソジンうがい薬、PVP-I製剤(水産用イソジン)とあるが、区別せずの使用法で弱らせて病気を悪化させ死なすケースの方が多いようだ。観賞魚治療で使えるのは卵の消毒の水産用のみであり一時使用オンリー、うがい薬などでは人が飲んだり、決して鑑賞魚には使用しないことが製造元である製薬会社により注意喚起されている。確かに消毒という面ではイソジン成分のポリビニルピロリドンが変質し(本来のヨウ素より)遥かに毒性を持ち一見すると治療効果を発揮するようだが、半年~1年後には鰓に巣食ったそれの変質化により急激に死に至る場合が多い。そもそも乾燥するまで待つのが医療現場での作業。作用機序を調べれば水の中で使用してもイソジン自体に血止め作用もないし、特にイソジンと唐辛子は粘膜を荒らすので濃度には厳格さが求められる。血止めといえばタンパク質凝固作用のあるマーキュロクロム(通称赤チン)の方がずっと良い事実。効果は低いが評判もいまいちなグリーンFクリアーの二酸化塩素(水成二酸化塩素)。実は…白点病専用ではなくウイルスや細菌、真菌、原虫にも有効ということは殆どの人が知らない(か敢えて教えないのか)。

民間療法を使わなくても上記項目までの治療で(魚類の持つ好中球など防御作用・治癒力により)なんとか完治できる。というより純ココア浴やトウガラシと同様に民間療法を使用している場合、低砂や濾過槽がそのままだったりして”治療知識”の根本がズレている。水合わせなどに神経質な反面、濾過槽掃除のサボリでは1年以上放置がざら、ウールなどの新品状態のまま徹底に洗わないで使用開始の手抜き、病気が出ているのにバクテリア温存の器具洗浄(バクテリア育成ではなくヘドロ育成になっている)、慎重さは目に見えない場所への配慮に発揮してほしい。普通の薬剤をまっさらな綺麗な水槽で使用し、出来ることから一つ一つ治療する方が確実である。その為の薬剤であり、使用法が正しければ多くの症状を安全に且つ確実に治すことが可能である。その過程でウィルス疾患まで治癒していることが多い。治らない場合は民間療法の前に治療環境を見直すことが最優先だと私は思う。上で触れたイソジンを使用するなら、前にも書きましたがマラカイトグリーンやグリーンFクリアーを使用すればいいのであり、調べて納得いただければと思う。

★ヘルペス・ウイルス病を昇温で治療したとしても完治しているわけではなくウィルス・キャリアーとなっています。放流、出品や譲渡には注意すべきです。コイ金魚ヘルペスも同様と思われます。症状は似ていてもウィルスなのか他の疾病なのか判別が重要なのはこのためです。治癒したと思って水槽や池に戻すと混泳魚が発症してしまう場合、可能性が高いです。コイヘルペスの大流行問題の根底にはネット等のニシキゴイ流通経路の拡大もあり。殺処分が問題視されたこともあるけれども、様々な背景を考慮して論じなければなりません。

★大きな被害をもたらすIPN (伝染性膵臓壊死症)とIHN (伝染性造血器壊死症)のウィルスに対する消毒剤の殺ウィルス効果において、PVP-I製剤(水産用イソジン)で10ppmの有効ヨウ素量になるよう希釈し、ウイルスとの接触時間を30秒~30分で行った実験データがありました。イソジンの殺ウイルス効果はIPNウイルスでは1分以上の接触で完全に不活性化し、IHNウイルスでは各株化細胞間5種の感受性の違いがあり1分~15分で不活性化がばらついたとの結果が得られています。1ppmでは最大30分でも不活性化が見られなかったケースもありました。IHNウイルスは20℃以上で活発さが減少していき27℃で大部分が不活性化、しかし、IPNウイルスは10℃~37℃で活性力価は安定したままです。

=ウイルス感染に匹敵する抗酸菌症。抑えても半年で胸まで進行。

抗酸菌症を細かく分けると、結核菌と非結核性抗酸菌の2つ原因があり、臓器はガンが多発し、ポップアイ、下痢、痩せ、腹水など合併症を生じます。20℃以下なら自然軽快する場合があります(但し水槽の壁・装飾品を含めた滑り内にて休眠している)。人間の「肺マック症」を含め抗酸菌には名前の通り”酸”に強いのでオキソリン酸などは効果がありません。有効な薬がないため、結核よりも増加傾向にあるといえましょう。病状悪化の進行が遅いので、この魚はひどいが他の魚は元気で無問題だ…という差が現れ、既存の魚病薬が効かないため(病気の病原体を特定せずに行うアクアリウム界隈では顕著に)あれこれと議論や怪文書が生じる所以となっています。

芽胞菌>ウィルス&結核菌>真菌>一般細菌

・ウィルス&結核菌まで効く中水準消毒薬=ホルマリン、エタノール、イソジン、二酸化塩素(グリーンFクリアー)、次亜塩素酸ナトリウムなど
・真菌に効くマラカイトグリーン。還元作用により活性酸素を発生し殺菌。 抗生物質、合成抗菌剤とは根本的に別物。メチレンブルーの作用機序が類似
・一般細菌まで効く低水準消毒薬=オキシドール(過酸化水素3%)、アクリノール、サルファ剤、フラン剤、オキソリン酸など

一般的にはウイルスが最強、それを退治できるのが中水準消毒薬。ウイルスと同等の強さを誇るのは抗酸菌の一種である結核菌。実はウイルスの上も存在しており「芽胞菌」、それを退治できるのを高水準消毒薬といいます。フタラールとかグルタラールというあまりにも強すぎて使用が制限され、用いるのは金属やプラスティック素材の消毒ぐらいです。真菌の強いものはウイルスや結核菌と同等だけど弱い水カビは一般細菌と同じレベルです。幅広い。ヒトの外科手術部位に使用するのはエタノール、ポビドンヨード(消毒用イソジン)など中水準消毒薬です。ちなみに消毒剤というカテゴリーの中に抗生物質があります。それぞれ病原体に対する作用が異なるので一長一短、投薬は病状分析を含めたスキルが必要です。

・PVP-I製剤(水産用イソジン):ウイルスキャリアーの連鎖を断つための卵の消毒剤。50mLで10L、15分間浸漬する。一時使用のみ可。
・エタノール(アルコール系消毒剤):90%で60分でようやく効果がみられる(IPNウイルス)。IHNに対しては30%の短時間で効果を発揮。
・フェノール系消毒剤:濃度0.1%(IPNウイルス)~0.4%(IHNウイルス)で30分で効果がある。
・ハロゲン系消毒剤:25~80ppm、15秒から30分とIPN、IHN両者とも効果はあるが研究者によって濃度や時間に大きく幅がある。
・次亜塩素酸ナトリウム:4ppmの2.5分で効果がみられる(IPNウイルス)水道やプールの殺菌や塩素系の漂白剤
・中性電解次亜塩素酸水:有効塩素濃度50ppmに60秒浸漬で大半を殺菌。
・二酸化塩素(水成二酸化塩素):グリーンFクリアー。無色透明の効果弱の長期タイプ。実は…ウイルスにも効く。

★グリーンFクリアー。実は…ウイルスにも効果があります。成分の二酸化塩素は、低濃度で効果があり(塩素の2.63倍)、耐性菌が出来難く、pHに左右されにくい。塩素系及びアルコール系の製剤の代用品として注目され、幅広く使用されています。身近では鳥インフルエンザの世界大流行の危機の際、空間消毒剤として防護服の職員が散布した映画のような光景をTVなどで見たことがあるでしょう、アレです。いい薬剤なのですが、但し、日常生活用の製品では医薬品としての認可が厳しいため不当表示で指導を受けるメーカーが少なからずあります。アクアリウム上での注意点は、水道水の中和をしたテトラ・コントラコロラインなどが残留した水槽内では中和されてしまい薬効をなくします。「効かないじゃないか!」、「効果なく薬浴中に死んでしまった!」という意見の大半の理由はコレと思われます。使用方法が間違っているだけで、この薬剤はとても優秀です。

<民間療法まとめ>
・イソジンうがい薬:水1リットルにつき1~3滴5分浴以内。10Lに4滴で永久浴。ヒトの場合も甲状腺疾患の患者さんへは避ける。魚類への使用不可
・イソジン消毒液:濃すぎるので「うがい薬」が使われているようだ。医薬品(ヨウ素剤)粘膜を激しく荒らす。魚類への使用不可
・純ココア浴:ポリフェノール、リグニン、テオブロミン等。エラ病等で鰓に障害のある魚へは一気に悪化を促す。水槽の環境破壊をも促すので注意。
・トウガラシ含有成分カプサイシン:殺菌作用があり甲殻類へは無害といわれる。傷口を悪化させます。
・デミリン:甲殻類の脱皮阻害剤。イカリムシが脱皮する成長過程なら効く。100Lで0.1-0.2g。イワナでは半年後に腸まんに複数罹患100%
・乾燥南天の葉:ナンジニンが分解されてチアン水素、殺菌・防腐効果がある。新穴あき病向け。100リットルの水に乾燥南天50g。副作用は不明。
・メトロニダゾール(商品名例:フラジール):薬を抜かず3日以上薬浴を行ったままでいると体内に残留し神経障害を起こし斃死の可能性が高まる。
・日局木クレオソート剤(正露丸):「アニサキスの活動を抑える効果」があるとして、大幸薬品が2014年に特許を取得。副作用は不明。
・十円玉(海水魚):意外と使える。60㎝規格水槽に1個、治癒したらすぐに取り出すだけ。銅イオンの代わり。
・マーキュロクロム:メルブロミン、塗布。水カビが生えた釣ったフナに塗ったら治って感動した中学時代の私。タンパク凝固作用でイソジンより優秀。
・オキシドール(過酸化水素3%):30分以上の薬浴は危険。扱いが難しいので治療では使用しないこと。生体を除いて藍藻除去に。
・ラクトフェリン:研究者が真鯛での実験を述べたが粘膜増強あり。病気では悪化進行が勝る場合があるので薬効的に難しい。
・フコイダン:上ラクトフェリンと共に抗菌作用がうたわれているが、どちらかというと好中球の活性を促す時間のかかるタイプと思われる。
・ホルマリン:蛋白質を凝固固定。塩とホルマリンを混ぜると毒素が発生。吸い込み、廃液に注意。強いわりに治癒効果は満足いかない。

9 繰り返される疾病の対処・注意点~環境を振り返る~

よく聞く「腸まん」のように消化不良、腸閉塞、細菌性内臓疾患から来ている症状、ないし腎臓肥大と見えるお腹がやたら大きくなる症状、幾ら治療薬を投入してもぶり返す肌の剥離、眼球の濁り、粘液の多分泌、白点やミズカビ。まず間違いなく低砂がひかれ、汚濁した濾過が稼働し、水替えすら3日で元通りになってしまうほどの水質悪化が原因と思われます。薬剤を投入しても無駄なほど。ミズミミズが出現し水質浄化に役立つという生態系があるのを喜んでしまう方までいる。そこそこの加減が必要で、疾病の場合は兎にも角にも綺麗で清潔にすること。見た目で透明な飼育水でも信用せずに真っ新にしてやりなおすこと。これを面倒くさがらずに行えば、きっと愛魚は助かる率が格段に跳ね上がる事でしょう。環境要因も見逃しがないだろうか?ヒーターや水中ポンプからの漏電とか、水槽部屋でバルサンを焚いてしまった、その際に煙が入らないよう水槽をビニール袋でしっかりと覆ったか、防ダニ・カビ入りの芳香剤とか、防ダニシートとか、フマキラーなどの殺虫剤を使った、水替え時に使用するホースの内部等、実際にはこういった見逃しケースも多いと推察できる。以前にも触れたが、投薬の粉末(特にグリーンF系)をしっかりと溶かしていたのかまで振り返ってほしい。粘膜保護剤のような粘度のあるものを入れるとチューブなどの内部に張りつき病原体の温床になる可能性があることも忘れずに。ホースともども熱湯を流し続ければ剥がれてきます。人間での病院で院内感染が問題になったことがある。徹底的に洗浄した病院と予算の関係上そうできなかった病院とでは随分と仕事量が違うと言います。人間も家畜も魚類も生物であれば共通するものがあります。

藍藻(水槽内の壁にできたコケ)を一口で「シアノバクテリア」ともいう。これらにはシアノトキシンという毒素を生成するものがある。哺乳動物の肝臓毒性や神経毒性を示す。魚類でも生体の入ったままコケを洗って2週間~1か月後に生体が水腫、下痢を起こして病気と思い、投薬を繰り返して薬害で病状加速、死亡したことも多いと思われる。飼い主は根本理由に気づかないからこそ魚を入れたまま洗ってしまい換水なし。よく調べて環境を整え対策しよう。藍藻は藍色細菌の群生・集団イメージです。ただし厳密には普通の細菌とは異なる分類、微妙な真菌類。流水殺菌灯、オキシドール - 過酸化水素水の使用で消え去る。そもそも真菌類なのでマラカイトグリーンを筆頭にサルファ剤、フラン剤、オキソリン酸も効くゆえ治療中に多少減少。いずれにせよ魚の調子が悪くなった一要因として考慮を入れるのをお勧め。原因不明と思っているなら尚更、もしも…の場合があるからね。

・流水殺菌灯:ラン色細菌から原生動物まで減少させることができる。
・オキシドール(傷口消毒用2.5~3.5w/v%) - 過酸化水素水(工業用)←藍藻除去
・エクスタミン淡水用:成分:マグネシウム、鉄、カルシウム、他。付属のピペットで藍藻に直接吹きかける。
・アンチグリーン淡水用:成分不詳~正体はオキシドールという噂。水槽に添加。
・木酢液:製造工程により品質にバラつきがある。酸性pH3なので留意しましょう。

10 薬剤治療を中止するタイミング

薬害で死亡する前兆、即座に水を無薬にして回復を祈ること。フラつき、エサの喰い損ね(場所を間違えている感じ)、目の異常(かすれ、突出気味発生)、痙攣の前兆、呼吸がかなり早い、活性低下、急に元気になったかのような異常さ。大概、末期状態では規定量の投薬にも耐えきれず、体力も生命維持で限界になっており、少しの加減で生死が分かれる。治療の名のもとに最後の背中を押してしまうことが王道である。これを避けるには投薬後30分間は必ず観察し、少しでも異常が発生したら半分の水替えで様子を見るという姿勢が必要。これで死にかけても背中を押す確率が下がる。重症化した場合、悪化はすこぶる早い。限界の投薬量は徐々に下がってくるので、1週間前に大丈夫だったからといって同じ分量を投薬するのは慎重になっていただきたい。これが意外と下手を打たないコツである。中止を強いられる段階で何とか生存できている場合、まずは餌を中止し、フンが完全に出るのを待つ(絶食療法)。通常の投薬ではエサは特に制限しなくてもいい。水が汚くなり水替えが頻繁なほど大食漢であればエサを普段の半分ないし3分の1ぐらいに制限すればいいでしょう。絶食療法の場合はかなりの重体(内臓機能障害)になっているケース。一旦、消化器官や内臓を休ませる。少し普通になってきたかなというぐらい回復したら徐々に与え始めます。少しずつ与えずに今までと同じぐらいあげると死亡する魚が出てくるので分量を守ってほしい。特に異型細菌性鰓病の治療報告で顕著だ。吐くための激しい動作「拒否反応」に似た様態や消化エネルギーで衰弱化。エサをあげ始めたら何故か死んでしまったというトラウマになる。2週間ぐらいで回復しない場合は生存可能性は残念ながら低い。次のステップで時間を稼ぐ。フンの様態も観察して淡水魚で下痢が始まったりは要警戒・覚悟すること。フンはゼリー&ゲイル状で腸内に収まっており肛門から排出される際に水を吸って太く大きくなります。



病気中は怯えて錯乱し、水槽ガラスに衝突し死亡事故も起きる。必要があればタオルなどを利用してガムテープで覆うと少しは防げる。特に遊泳力のある魚には。尚、周知の通り青くなる薬剤メチレンブルーとマラカイトグリーンだが、光で分解されて効果が薄くなる記述も多いので兼務できる。#直射日光や紫外線殺菌灯でなければたいした違いはない。

★投薬後、時差を置き、2日間ぐらいして危篤状態になった場合、半分の水替えを実施、アクアセイフや水道水にコントラコロラインで中和してみると多少元気が戻ったような印象になる(場合が多くある)。病気が治癒したわけではなく、投薬の薬か塩浴のいずれかに対して感受性が高まっていることなので、適時、薄めて休薬期間を設ける。休薬時に生き続けるのであれば、手ごたえを感じることができる。希望が持てる。

★鰓病の合併症を併発している場合、なんとか機能しているエラへ致命傷を与えてしまうのが投薬である。エラへの影響を与えない基本的選択肢で経口投与があるものの、ここまで来ている魚はエサを食べない。スポイトを用い強制的に胃まで飲ませることで行うが、その作業で弱らせてしまうことも多い。したがって”絶対に落としたくないペット魚”の場合、ほんのり薄く色づくレベルのメチレンブルーを入れ細菌の増殖のみやや抑え、以下の低温不活性化で時間を稼ぐが無難であろう。

11 低温不活性化で時間を稼ぐ

ここまでのステップをよく読まれた方はお察しかと思いますが、どのような未知の病気だったとしても何とか施せる手段が存在することです。そして人間のガンでもお馴染みの最後の砦、サメを除き魚類にも多い悪性腫瘍摘出の外科手術の次項へもつなげれます。

病魚の鰓を観察して上皮が著しく肥厚していれば毛細血管が圧迫されています。これにより血行障害、循環障害が引き起こされ、肝心な塩類の吸収、排出機能が麻痺、すなわち生存しているだけで奇跡…な状態でも頑張っている魚に報いたい。薬浴は長い期間をかけて行った、それでも改善せずにジリ貧。数種類の疾病にかかり、更に内臓機能も障害があってエサを食わない。死を待つばかりという魚。この場合でも、残された安全な方法として「限界の低水温にて放置する」があります。低水温になればなるほど溶存酸素は増え呼吸が楽になり、錦ゴイや金魚などの温帯性魚類は概ね8℃以下で冬眠に入ります。一方で温度が低くなると魚の免疫力が下がるという話があり、低温では治癒しないし、薬を使用しないように…というのもあります。一見、納得してしまいますが、水温が高くても死んでいませんか?そもそも魚類の免疫力は微々たるものですから(リンパ節すらありませんからね。基本ないレベル)期待しすぎてはいけないと思います。

私は渓流釣りをしますので、変わった魚を釣った場合、生かして持ち帰ります。16リッターや26リッターのクーラーボックスにブクブクですから何匹も入れると大変。そこで仮死状態のように氷を入れ水温を低くします。サケマス系は冷水魚なので出来れば4℃以下。金魚でもコイでも冷水魚たちと同じように病気であったとしても数℃に耐えられます。短期冬眠みたいなもので機能低下にして多くの病気の進行を食い止め、免疫とは異なる生体防御機能で徐々に回復させるのを目的とします。魚表皮の粘液には抗ウイルス性を発揮するインターフェロンや溶菌性を持つリゾチーム等が含まれています。そして体内には好中球というキラー細胞があります。熱帯魚ではそれぞれの種類で調べて設定します。薬害を体から抜いて腸内フローラのバランスが自然と整って病気に打ち勝つ、何とか復活させたい一般的に行える最終方法でしょう。

一方、水温を上げるのは冷水魚を多く扱った経験の為、上昇させずに治すことをモットーとしています。酸素溶存量が減るのでメリットが少ないと言いますか、水温を上げたら鰓腐れ病、尾腐れ病の細菌や寄生虫の活動が活発となり逆に感染させ病状が悪化してしまったりするデメリットを考えるなら、上げないほうが無難と確率論的に言えます。健康な時の水温上昇と病気衰弱の時の水温上昇は別物と考えてください。水温をしっかり管理するためには水槽用クーラーのハイパワー機とヒーターの併用が必要です。低温とはいえ長期で水が腐るのを心配なら補助として1/5規定ぐらいで薄っすら色づく程度のメチレンブルー(推奨)を溶かしこみます。

★例えばエロモナスで実験データを紐解くと、渓流魚のアマゴでは5度で死亡率0%、10度で95%、15度で100%、キングサーモンでは3.9度で死亡率8%、9.4度で48%、15度で58%であった。明らかに水温が低いほうがエロモナスの活性が鈍る。

★例えばエピスチリスは水温12℃以上で活性し繁殖する。そして30℃でも死滅しない。11℃以下で魚体から離れてシストを作るので、そのタイミングを目指す。治ったと思ってそのまま水温を上げると活性し始めるので再発する場合が多い。水槽や器具の洗浄が必須という一例であります。

12 外科手術

ヒレに訳の分からない病変が出来て切除するなら半分~3分の1で留めます。3分の2以上切除すると再生しない場合が多いので気を付けること。鰓めくれ(鰓まくれ)はカッターでは粘膜により滑って切れにくく、大型なら硬くて切れない場合がありますのでハサミ推奨です。切れ目を入れるだけで綺麗に治ります。鰓蓋の固い部位までいっていますと大変なので早めに決断しましょう。お腹や浮袋が膨れて転覆状態なら注射器で空気を抜きます。目ダレは眼窩の脂肪上下を切除して治しますが失敗すると目が当てられないので不慣れな方は避けた方が望ましいです。軽症ならば放置を勧めます。脱腸は傷つけないよう丁寧に体内へ押し込みますが、鯉や鰻や鯰のような暫く水から長く取り上げれる魚なら濃い砂糖水を脱腸部分にかけると浸透圧の作用で縮みますから安全に容易となります。再度出てくるようなら圧迫原因をさぐるため設備が必要となりますので動物病院へ。麻酔から覚醒させる際は奇麗な水につけ、流れのある場所へ鰓を接近させます。魚種や甲殻類には覚醒しやすいものと覚醒しにくいものがありますので予め調べておくことが大切です。ここまでは専門教育を受けていなくても治療に慣れた上級者であれば可能なレベルです。(注:飼育スキルがあったとしても治療スキルとは関係ありません。全く別物です。)

←下腹部の切開約4cmを行った浮袋(鰾)手術直後の様子。順調に回復した。

マンモグラフィー(乳がん検査)などヒト医療転用のX線撮影をして患部を特定したのち手術を行います。脱腸の原因が肛門の拡張ないし裂傷であれば縫合します。10日後、抜糸し再度出るようなら出ている部位を水平に綺麗な消毒済みのハサミないしメスで切り取り、奥まった部位はレーザーメスなどで切除します。卵巣ガンは産卵できずに斃死するので深部用麻酔を使った開腹手術が行われています。しかし手術に至る前の健康状態により残念ながら予後不良も多いです。卵巣がん切除は難しそうですが部位が出口に近いために脱腸切除と同じ難易度扱いですが、難しいのは浮袋や奥まった場所にある複数点在する腫瘍の手術です。浮袋も体の奥にあることと各魚種の解剖学の応用知識が必須な上、経験も必要です。一部の切除した浮袋が回復するにつれ好中球らがウイルスに打ち勝ち神経も徐々に正常化、私が行ったウイルス性神経壊死症である浮袋の手術ですが、その記事、私は写真を現像してアップするというネット状況でした。すなわち手術を成功させたのも随分前のお話です。医学の価値は治してこそです。いずれにしても切除した病変部位は病理組織検査ができますので、大元になった原因がウイルス・抗酸菌などによる腫瘍なのか、線虫やべん毛虫の傷炎症による腫れなのか等々を診断し、術後の効果的な薬剤の選定をします。尚、私ではありませんが、腸満を引き起こしている卵巣がんの摘出手術の様子(画像)が全日本錦鯉振興会のサイトで公開されているものがあります。解説共々、併せて参考にしていただければと思います。腹部を切開した大きな開放部(傷口)の縫合は、医療用接着剤(医師・歯科医・獣医師)を使います。普通の糸で縫うと化膿するので、昔はヒトの手術では髪の毛で縫合糸の代用をした時代もありました。

(追記)2014年、オーストラリアにて世界初の成功として金魚の手術が行われ頭部の腫瘍摘出の様子がBBCなど報道により世界配信されました。手術費用と魚の値段の差や、ペット魚に対する愛情の何たるかが注目、今後、ドイツやイギリスでも魚の手術に挑戦するといいます。医学、魚病学、水産学とは違う異なるジャンルだった「獣医学」からなので、今後はどうしても落としたくない助けたいペット魚への治療需要が高まるといいと思います。少しだけ残念なのは、日本のレベルは20年先を行く世界トップということがこの手術時期だけでもわかりますが表に出ることはありません。私は国家表彰もいただいていますし人生大満足ですが、これからの若手研究者には是非、日本に誇りをもって頑張ってとエールを送ります。

・レントゲン造影:2倍に薄めた硫酸バリウムを強制経口投与し各魚種の腸の長さによるが15分~2時間で肛門に達する⇒撮影する。
・麻酔剤 FA100:安全性は高いが鰓病を併発している場合は致命傷を与えるので疾病知識が必要。
・メタアミノ安息香酸エステル:FA100より安定している。体内深部の痛覚にまで効果。腹部切開中に暴れて内臓損傷の防止のため、こちらが推奨。
・医療用接着剤:腹部切開手術の場合、大きな開放部の縫合はこれを使う。稼働の大きな部位は縫ったほうが良い。
・腹腔内注射:ウロコの体表側からの筋肉注射は構造上薬液注入が少ない。胸鰭の内側は皮膚が薄く腹腔内に針を入れやすい。

手術切開後または表皮患部の狭いピンポイントに消毒剤の直接塗布は、魚を取り出し、テッシュや清潔なタオルで滲んだ出血や水分を吸わせたあとで綿棒等で塗ります。部位にもよりますが注意点としてエラへ数滴でも入ると直ぐに希釈したとしても良いことはありませんので、鰓部に近いところは無理に塗布ではなく薬浴での対処が望ましいです。病魚の場合は特に清潔なタオルやタモ網でないと全身に水カビや雑菌の粘体が直後から出現してくるので、メチレンブルーなどの薬浴で対応します。綿棒の中には水を弾くものがありますから(本番で発覚しても慌てずに)水を吸わせるテッシュで代用します。塗布10秒後に水中に戻します。外用薬塗布は2回基本~3回繰り返して実施すると確実でしょう。最後に、強い薬剤で長くつけ過ぎますと粘膜だけでなく表皮まで破壊してしまい愕然とする最悪コースもあるので注意してください。

・メチレンブルー:粉末を少量の水で溶き粘液状にして使う。推奨。
・液体のメチレンブルー:ニチドウのメチレンブルー水溶液やグリーンFリキッドなど使いやすい。推奨。
・マラカイトグリーン:使いやすい。やや刺激があるようで魚は嫌がる。推奨
・フラン剤やサルファ剤:細菌系は全身に回ってることが多いので薬浴のほうが良い。
・オキソリン酸:直接液を綿棒でとって塗布。穴あき病向け。
・ポピドンヨード剤とグリセリンの等量混合液:獣医にてよく処方されている。
・ヨードチンキ:劇薬ではない希ヨードチンキを使う。水カビで有効。刺激があり粘膜を激しく荒らす。
・マーキュロクロム:メルブロミン、塗布。水カビが生えた釣ったフナに塗ったら治って感動した中学時代の私。刺激少なくOK。
・ルゴール液(複方ヨード・グリセリン):耳鼻咽喉科
・歯科用ヨード・グリセリン:神経を抜いた後の根管消毒でお馴染み。
・消毒用イソジン:人間外科手術用は消毒用イソジン。薄めたとしてもうがい薬にはできません。刺激は少ないが粘膜を荒らす。
・ネオヨジン外用液:類似品は多い。ポビドンヨード、婦人科用イソジンクリーム、イオダインM消毒液、などなど皆お仲間である。

13 「判別のできない病気、合併症」治療パターン

白点病、水カビ病、尾ぐされ病、穴あき病、マツカサ病を治療できているアクアリストが対象です。基本的に一つの薬剤で実施とメーカーからは言われていますが、初期以外は薬剤を併用して原虫・真菌・細菌・寄生虫を可能な限り短期で退治します。それでも治癒傾向がみられない場合は、内臓の線虫類を疑い、その先はウイルスや抗酸菌です。下記表の1番目から5番目までご覧の通り、市販薬中心で行うことを配慮、塩+ホルマリンのように薬剤同士の毒性急上昇を極力排除しています。6番、7番は水産用を使用、入手困難なので動物病院を当たる(サケマス養殖場、鯉販売店、ディスカス販売店も)。2-3日で悪化がストップしたと感じたならば、その時点の薬剤で経過観察し改善に転じるならばそのままでOK。注意深く日々の観察を行うこと。当方では鮮明な画像を毎日撮り病巣等を比較しながら分析します。粘液中の防御物質や好中球ら治癒力勝負となるためエサは食べるなら与え続けます。食べるときの動作やフンの様態も重要。悪化はすこぶる早いが治癒は遅いという常識からも粘膜保護剤やpH調整剤は汚れと同様に薬剤の効力を下げるので、不確定要素の少しでもあるものは使用しません。薬のチェンジ時については徐々に薄めて交換するというような水合わせ概念は捨て去ります。一気に9割は新水に交換しても構いません。心配なら病気の進行具合を見ながら可能な限り早く合わせてください。尚、目の前の命を救うことが目的なので、特例として本来は避けることが望ましい薬剤の長期的な副作用は無視します。薬は全て可能な限り規定量にします(意外とやってみたら薬に弱い種類と言われている魚でも平気だったりします)。

=各種病原体の区別が難。どうせ合併症なのだから全部治療する。

 1  水槽、濾過槽洗浄・ウールマットも奇麗に(not新品) 水は9割ぐらい交換、低砂もとる。  薬の効果を発揮できる状態にし短期決戦を挑む。
 2  トロピカルゴールド(トリクロルホンも含有している)  (★)  アクリノール含有薬を投入。3日間で悪化部位を観察。
 3  メチレンブルー  サルファ剤(例:グリーンFゴールド顆粒)  デミリン  48時間から72時間で治癒傾向がなければ次を行う。
 4  マラカイトグリーン   フラン剤(例:エルバージュエース)  デミリン  24時間から48時間で効果がなければ線虫の内臓破壊
 5  プラジクアンテル  在庫なく入手できない場合、メトロニダゾール薬浴24~48時間  経過観察48時間。効果がなければウイルスか抗酸菌
 6  水産用イソジン  50mLで10L、15分間浸漬。代用はグリーンFクリアーのみ。  祈る
 7  低水温で時間稼ぎ  メチレンブルーとサルファ剤を薄く色づかせる、ビタミン剤など添加   腸内フローラ、好中球ガンバレと応援、祈る
 8  開腹手術  腫瘍摘出、麻酔剤 FA100  浮袋部分切開、卵巣がんなど。獣医師以上向け

(★)2番目初日にトロピカルゴールドを入れ、次の日にデミリンを入れ、その次の日にグリーンFゴールドを入れて3番目の段階にするのを採用下さい。
・海水魚では3番目の原虫類駆除にメチレンブルーではなく硫酸銅を入れます。細菌類駆除のサルファ剤、甲殻類系寄生虫駆除のデミリンは同じ。
・洗浄後の濾過槽は、剥がれた粘膜や崩落した肉片をとるためにウールマットのみで稼働させます。それらに病原体が豊富についていますから。
・薬の交換時は、9割排出⇒新水⇒新投薬。汚濁水槽で投薬する「水合わせ」は基本不要です。まっさらな水での薬浴は別物。
淡水魚=途中で鰓病(原虫性・細菌性)と判断できた場合、塩浴をするなら濃い短時間浴のみ。それ以外なら塩は使用しないこと
海水魚=途中で鰓病と判断できた場合は淡水浴を実施。硫酸銅、マラカイトグリーンで薬浴。エルバージュ使用の場合のみ半分から。
・明らかに細菌性の進行なのにサルファ剤やフラン剤の効果がない時は、水産用OTCテトラサイクリン系+オキソリン酸の抗生物質の併用を実施。
・明らかにウイルス感染なのに水産用イソジンが入手できない場合、グリーンFクリアー(二酸化塩素)に運命を託す。

訳の分からない疾病に加え、常在の病原体である白点虫、エロモナス、カラムナリス、ビブリオなどが参戦してきます。ページ上部に書いた病気の進行例の通り、内臓感染なら3日から斃死が始まり体表感染でも5日から7日、遅くても11日後には全滅となります。1番目+2番目は合併症を抑えます。大概、1番目の洗浄がしっかりなされれば病状進行は緩やかになり施せる手立ても増えていきます。4番目からはマラカイトグリーンに加え体内吸収の早いフラン剤なので、かなりきついです。規定量で3日行うと斃死するものが出てくるレベルなので特に投薬後24時間を過ぎたら観察機会を増やさねばなりません。少しでも不安な様子が観察できれば即座に水替えを行い薬剤の濃度を薄める救急処置が可能な体制を敷いてください。不安な様子⇒斃死が早いということを理解していて、迷わず行動を起こす事が望ましいです。水温を変動させるのは7番目のみです。水温調整の体力を温存し、好中球など白血球の一種がキラー細胞として感染細胞を破壊するのを期待します。既存の薬が効かなかったという”謎の疾病”ケースでも、大概は3番と4番で進行が止まる場合が多いです。止まってしまえば耐性菌の出現だったのか、常在菌が変異して未知なる症状を発現しただけなのか検討できます。基本、アクアリウムは閉鎖水域ですから。薬剤の軽減や交換のため水替えを行いますが、そのまま排水口へ捨てるのではなく活性炭で吸着したうえで環境に配慮してください。

14 戦い終わって器具洗浄

病との長い戦いが終わって最後の処理。石鹸でパイプの中まで洗えれば細菌類は死滅している。ウイルスまで死滅させようとするなら、さらし粉、逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム液)を用いるのがいいでしょう。ウールマットなど交換消耗品は積極的に廃棄すること。廃液は溶け込んでいる薬剤の種類によって中和や活性炭などで吸着の手段で極力無害化して流すのが望ましい。具体的には農林水産省の指針があるので以下に抜粋します。

(1)塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム)の殺菌作用はいづれも酸化作用によるもので、効果は温度、pH、及び対象物の有機物量によって大きく変動する。塩素系消毒剤では、皮膚刺激性及び腐食性が強いため、皮膚に付着した薬剤は、直ちに水で洗い流す。また、塩素系消毒剤は魚毒性が強いため、飼育用水への混入には厳重に注意する。廃液は、チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)で中和する。次亜塩素酸カルシウムは汚染された排水の消毒に、次亜塩素酸ナトリウムは水槽及び器具類等の消毒に適する。

(2)逆性石けん(塩化ベンザルコニウム液)は、有機物及び金属イオンの影響によって効力が低下するため、2~3日で交換する。普通の石鹸と併用すると効果が無くなる。手指及び器具等の消毒に適する。

(3)アルコール系薬剤(エタノール)は、手指及び小型の実験器具の消毒に適する。

(4)飼育用水及び排水の消毒では、主に紫外線及びオゾンが用いられている。紫外線は水中の懸濁物により効果が低下するため、使用に際しては注意する必要がある。オゾンには残留オキシダントの生物に対する強い毒性が報告されており、この点については十分注意を払う必要がある。


治療法の最後として、合成抗菌剤として含まれている有名どころを一部ピックアップしますと…

メジャーどころ
オキソリン酸 通称OA アクアリスト向けに混合市販されている効果弱の薬剤。
スルフィソゾール 通称SIZ よく効くが、抵抗力を持つ菌が多くなっている。
フロルフェニコール 通称FF 耐性を持つものが少ないので併用するとOKだ。
他の抗菌剤
スルファモノメトキシン、リンコマイシン、アモキシシリン。
上のメジャー3つと合わせて6つが研究者などがよく使う薬剤で水産試験場でも同様。
養殖ブリなどにも使用されるので、研究界隈なら聞くことが多いビック6薬と言えます。
業務用ではない市販薬(参考として)
素人使用の安全性に配慮しながらメチレンブルー(消毒色素材)、ニトロフラゾン(抗菌)、
先のオキソリン酸(抗菌)などが、適当に混合されている。
品名としては、エルバージュ、ハイートロピカル、グリーンF、グリーンFゴールド、
グリーンFクリア-など多数有り、診断を間違えても何かが効くようになっている。
前もって常備するなら
・原虫=メチレンブルー系(トロピカルゴールド)
・真菌=マラカイトグリーン系(アグテンかヒコサン)
・細菌=エルバージュエース、グリーンFゴールド顆粒、オキソリン酸系
・寄生虫(甲殻類)=デミリン
・線虫・吸虫類=ブラジクアンテル系(水産用ハダクリーン)
・ウイルス&抗酸菌=グリーンFクリアー(←最後の砦)
麻酔剤 FA100:バケツに水と病魚を入れ2~3滴を加え掻き混ぜる。10数秒待つ。
これを病魚が引っくり返るまで繰り返す。安全性は高いが重篤魚は避ける方が無難。

以下からは、病気治療の上で知っておきたい魚類の知識です。


転覆病の誤解について

「転覆病」を語句検索すれば圧倒的上位に金魚がすぐに見つかるのは、ここを読まれているのなら通った道ではないでしょうか。確かに丸っこい魚体ゆえに浮袋が調整しにくいと思われるし、症状が多いのも納得です。私が見るに他の症状から来ているものが多そうです。金魚はもともとフナという頑丈な魚であり、それを弱らせるほど症状を進ませているから転覆症状=死亡率高いとなります。原因を浮袋に求めるのではなく弱らせている大元の原因や合併症を探って治療するのが近道と思えます。こと水産業界の「転覆病」では、マハタやキジハタ、シマアジなど養殖業界で深刻で全滅させます。かれらの魚体は普通のトマホーク型、転覆病の魚をPCR法、間接蛍光光体法にてウイルスを検出、発見された亜種らしきものを含めた共通するウイルス(SJNNV)はしっかりと見つかっており、それが引き起こす症状をウイルス神経壊死症(VNN)といいます。サケマスは遡上や寿命の関係で転覆病を治癒させるよりも殺処分など防疫を重視する傾向がありますが、マハタなどではかなり頭を悩ませている模様。弱っている転覆症状かウイルスによる転覆病か、区別は微妙で難しいですが”転覆病”に拘りすぎないことが重要かと思います。手術まで行わず注射器のような器具で浮袋の空気を吸い出して治したケースでは転覆病のウイルス(SJNNV)は見つかりませんでした。空気を抜かなくても自然治癒する別の原因が主です。

←有気管ウキ袋

どうして違いがあるのか?
←無気管ウキ袋

取り囲む毛細血管から
気体を滲ませ溜める。

シマイサキやカサゴなどは釣ると音を出しますが、それはウキ袋を動かして出します。(⇒ウキブクロ解説

魚にはリンパ節がない

本文中に記述していましたが、例えば魚類にはリンパ節がないことを知っていた方はどれほどいらっしゃるでしょうか。人間でいうリンパ節は外部の雑菌などに対する体の防御機能をつかさどっています。リンパ液やリンパ球を運ぶためリンパ節が相互に管で結ばれ流れています。大きなものや数は外部にさらされやすい首回り、脇の下、太ももの付け根に集中しています。急に大きくなったりした場合は炎症か悪性腫瘍(ガン化)の疑いがあり、足に患部があったら首のリンパ節が腫れるとか遠い場所に位置していながら関連するケースもあります。魚ではリンパ節がないため、リンパ球に類似する作用の物が体内にあり、好中球など白血球の一種がキラー細胞として感染細胞を破壊します。すなわち外部より病原菌などが入ると魚体全体に回りやすく悪化しやすいことが言えます。反面、細菌類の侵入を防ぐために粘液や鱗のような鎧で体を強固に守っています。私が考えるに、魚はリンパ節がないため病原体の進入時の防御作用は弱くても、回復力という点では備わっており、内臓機能障害などは絶食で修復しやすいと思います。浮腫や水腫で胃腸にゼリー状の異臭のする物質がたまっていながらも、絶食中に排出され浮腫が収まってきて驚くことが多々ありました。腸閉塞などでなければ回復させることはヒトよりも容易かもしれません。錦ゴイやフナ(金魚)、ウグイのような強靭な肉体を持った魚では、病魚に余力があれば硫化マグネシウム(MgSO4)で薬浴させると排出がスムーズになる(肝機能や腎機能の向上)、更にビタミン類(特にB群)の添加により排便を促す方法も採れるでしょう。とはいえ同じように排便を促すといわれる純ココア浴のような方法はエラ病等で鰓に障害のある魚やサケマスのような鰓が高性能=弱いものだと弱らせる危険性が高いです。ちなみに魚の腎臓は背骨に沿ってある血合いです。人のリンパ節につきましてはリンパ浮腫について(医学雑談用)をご覧ください。硫化マグネシウム(MgSO4)はエプソムソルトという名称です。また、腸内フローラのバランスを整えて病気に打ち勝つという人間から魚類まで治療法として謳われていますが、いったん病気になってしまうと悪化進行が勝ります。予防の観点ではいいのですが治療では採用してはいけません。人間で乳酸菌やビフィズス菌の健康食品がありますが5種類摂らねばよりバランスを崩して悪化が多いので注意ください。

同じ病原菌でも魚種によって感受性が違う

我が国のサケマス養殖の中で問題となる「せっそう病」を例にして取り上げたい。まずせっそう病とは常態菌であるエロモナス・サルモニシダが引き起こす。名前や場所を変え金魚から幅広くみられる。ニジマス養殖のころ、めったにこの病気はなかったが、アマゴ・ヤマメ・イワナの養殖が確立されてから問題になってきた。治療法確立と出現の差を調べた文献によると、ニジマスとイワナはこの病気に対して強く、アマゴとヤマメは弱かった。興味深いことにDNAでは差がみられない同種内の変異、サクラマスとヤマメでも強さの差がみられたことである。降海型サクラマスのほうが陸封型ヤマメよりエロモナスやIHN(伝染性造血器壊死症)に対して弱かったのである。スモルト化が強く出現するヤマメとアマゴでは、そのスモルト化を境界線にして病気の強さの差が出現する。スモルト化が目立って出現しにくいニジマスとイワナは感受性が弱い(病気にかかりにくい)。また、自然界におけるイワナでは殆ど出現しない病気がせっそう病である。このことから、問題となる病気の出現が環境要因によることが大きいと判断でき、飼育水槽や池の清潔さなどを徹底すれば患う確率を減らせると推測できる。各種薬剤の効果のほどもデータではっきり示されているので当記事を参照して各々の読者は治療への応用に努めてほしい。日本の人里離れた最上流に棲むイワナから海の海水魚まで、この病気はこの治療法…といった一律の病名、治療法ではなく、それぞれの魚種に合う治療を施すよう調べて実施するほうが早道だし効果を肌で感じるから身につきやすいと思う。

エサ取りのみなさん、勢ぞろい水槽写真
イシダイX2

メジナX1

カワハギX2

ベラX1

フグX1

海水魚は排尿の違いから淡水魚より”尿の毒”が強いので濾過細菌が定着するまでも長い。立ち上がってしまえば、なんて簡単なんだろうと飼育しやすさと可愛らしさでエサ取りといえども油断できない。特にイシダイは頭がいい。スケールイーターのコトヒキ(シマイサキに似ている)なんてのもいて、観賞魚っぽいから生かして持って帰り水槽に入れると大変なことに。釣れると「え~ガッカリ」というヒイラギなんて、大変美しくてびっくりした程。

水素での治療を研究?新治療法発想か!!!

細胞の死を防ぐという効果がある水素。人間では脳死患者さんの治療へ寄与できると慶応大学病院をはじめ12の医療機関で研究が進められています。私は瀕死の魚が「天を仰ぐ」レベルであれば低温不活性治療を選択していますが、水素も使えるかもしれないかと感じています。思えば胡散臭いとオカルトレベルの評価を受けている「水素水」。濃度的に基準がなさそうで公表もされていないので詳しく分かりませんが「水素水」が人間には効果があるのかどうか、人間にとっては水レベルのものだろうけど…と思いながら、飼育魚に使ったらどうなるのか?どなたか清水の舞台から飛び降りてみませんか?いや失敬。このことはまだネット上にて触れられていないことを確認しましたが、科学は道具であるというスタンスから一度実験してみたいと思っています。しかし遺伝子2倍体と3倍体では感受性の違いはなかった……。ちょっとでも3倍体が強靭であれば病気対策やら役立ったのに。

=昔の研究メモ(手書きです笑)

流水ポンプや人工波発生装置、ディフューザーなど必要か検討

私も初心者のころ、特に大型ゴミバケツ水槽やタライなどを卒業したある程度お金が使える社会人になった際に、便利グッズをしこたま採用していました。低砂もばっちり、海水水槽では分厚いサンゴ砂、プロテインスキマーからイソギンチャクやホヤなど、特に凝ったのは水流ポンプ、人工波発生装置、マイクロバブルを応用するディフューザーでした。これで60㎝から180㎝の水槽での流水発生や溶存酸素の補填は充分。しかし実際に使用してみると、お魚にとって本当に必要かどうか疑問に至り、最近は使用していません。海水魚では月の引力による潮の満ち引きがあり、食いに影響しますので釣り人は潮見表は必須ですよね。しかし水槽内ではそんなの関係なくエサを食う。生物が環境に慣れる力はなかなか大したもので、自然の海でも温排水があればそこの排出のあるなしで行動が支配されるようになる。潮見表も関係なくなります。リンク先は中部電力温排水口。母方が中電の幹部だった。敷地内の岸壁は釣り人に開放されており、磯投げ情報誌の連載中にネタにしたもの。懐かしいな。

=60㎝から180㎝まで人工波発生、流水ポンプなど

本当に自分の水槽で必要なのかは、人に聞いたりするのではなく結局自分で使用して肌で効果を感じて採用するのがいい。不要になると勿体ないと思うでしょうが、これもまた趣味の通過儀礼みたいなもの。Rioシリーズのコレクションはあと1-2種類買えばコンプリート!!!実際に使っているのはRio400を冷水90㎝水槽、Rio1400を海水60㎝ダブルサイフォン式オーバーフローです。NIWA-WaveSは強力な波を発生させれましたね。120㎝水槽でも楽勝。水流が合っていない場合の判断としては、魚の体力を奪って白点病に罹るかどうか、で観察してください。特に放置していた水槽で使用すると、水槽内の汚濁を巻き上げ、速攻で病気になってしまうことすらあります。清潔にしているつもりでも上部濾過槽の下部の汚れや壁についていた有毒性のコケとか想定外の悪影響が出る場合があります。(コケの正体は細菌類ですからね)。

究極の飼育コツ

過剰な濾過槽を設置するのもいい。しかし、最初の設置までは汗だくでも頑張れるが、時を経るにしたがってメンテに手抜きが加わって、ある日限界を迎えて病気が出始める。慌てて塩や魚病薬を水槽内にそのまま投薬、治らない、死んでしまいそう、なぜ?、と右往左往してしまう。複雑な濾過システム、分厚い底砂・飾り、ディフューザーなどの流量を低下させるグッズの数々、そういう運命が来ることを決して忘れずメンテに万進できる人にしかお勧めできない。流量低下の水槽にアクアセイフなど粘性のある添加物を入れるとパイプの壁面に張り付き病原体の温床を促すので掃除も大変になる。上手く飼育するコツというなら、フンを濾過に吸い込ませないように水槽内の流れを工夫し、小網で毎日一回ほどこまめにフンや残餌を回収すること。病気は持ち込まない限り出ないし、愛魚が病気になっても治療開始が容易い。濾過槽の掃除や水替えのスパンが異様に長くできるのもOK。4か月に一回の水替え、普段は足し水で賄うのみでOK。水質に厳しいイワナやヤマメですら。強靭な肉体を持つアロワナやプレコや錦ゴイ金魚なら10か月ぐらい水替えしない時もある。濾材は水替え時または後に数日置いてウールマット部を半分交換したり、リング濾材は洗ったりする程度…すらしないことも多い。なぜなら濾材やウールマット自体が奇麗なままだからで、汚れをさっと分解してくれる有益バクテリアが豊富、むしろ汚れたものを水槽に入れておけば奇麗になるほどである。泥のようにべったりということは起きようがない本来の理想的な状態がこれ。従って水に全て浸かっておりドライ濾過部分はありません。毎日のフン取り作業が面倒でしょうが、それだけ愛魚と触れ合えます。愛魚本来の寿命に近い年月を全うさせれますよ。これが私の工夫を繰り返して辿り着いたシンプルイズベスト。

この水槽であれば新魚の導入時、海水魚でも熱帯魚、金魚でも、水質に最もうるさいイワナに至るまでドボンです。水合わせはしません。プラス・マイナス3度以内で片方の水質、pHが極端に違わなければOK。体調を崩したら寧ろ「早期発見できた」と喜びます。病気を持っていない元気な個体なら問題ない筈です。通常「水合わせが必要」といわれる理由は、飼育者の水槽の水質がかなり悪く差があるという前提です。極端な話、アユやヤマメの放流時に河川と養殖池の水合わせはしません。ブリ・イシダイ等の釣り堀ですら。当方では海水小魚・エビ・カニ・イソギンチャク・海藻・ライブロックに至るまでドボンですが、死んだことがなく、ライブロックではキュレーションすらせず微生物の死骸やゴミは環境への栄養という感覚になっています(ベルリン式+モナコ式のため)。

=水質安定を徹底。我が家

人間の大規模病院のVIPルームよろしく病魚のVIPルーム。ハイパワーの水槽用クーラーを装備。水温管理が重点なのは溶存酸素量(DO)管理でもあります。

  モンハナシャコの飼育。二匹、我が家の海水水槽。
ベルリン式+モナコ式の水替え不要システム。
ダブルサイフォン式オーバーフローにて上下を連結。
たてほこjp作用保管型サイフォンユニット
岩魚も飼える水槽用クーラーで酷暑を乗り切る。
上部に海道達磨ベンチュリー式プロテインスキマー。

水槽内を見ても分かる通りサンゴ砂がたんまり、海水小魚20匹、
ライブロックが要塞化しているため、外部濾過も上下一台ずつ。
流量を犠牲にしてディフューザーでマイクロバブル状態を維持。

モンハナシャコは当初「所詮シャコだし」と、勝手に育つという
強いイメージだったが、とんでもなかった。繊細で賢すぎる!
これは飼育者にしか理解できない特権みたいなもの。
ゆえに飼育ノウハウはなく、飼育歴も2年優秀6年最上級。

海水魚では病気の兆候が見つけにくく、体表の変化以外では気づいたら死亡という事が多く見られる。これは海水が立ち上がれば相当な変化にも緩衝力が強く働き、その甘えにつながって管理の手抜きが加わり汚濁水槽となっているからである。硫化水素のヘドロが発生しているのに低砂やフィルター掃除で海水内に広げてしまい数日後には死亡、飼育者は掃除をしたのになぜ?と原因に行き当たらない。通常、魚の体力・健康が限界に達して初めて表に病状が出てくる。それでは遅い。大型魚ですら救うことは基本、白点やウーディウムなどの(簡単に判別できる)原生動物寄生虫ぐらいしか対応できていないのが現実。海水水槽は、立ち上げまでは長期間必要でむつかしいイメージがあるが、立ち上がってしまえば淡水水槽より簡単。これを利用して病気専用水槽を用意しておき、病魚を引っ越しさせると投薬できる体力まで回復させることが可能。上の写真では小さなキューブ水槽が見えますが、それがエスケープ用の海水水槽、ミツボシクロスズメダイ二匹が維持している。イソギンチャクが死んで毒素をまき散らし魚ともども全滅というような飼育者は病気についての知識を普段から得ておきましょう。何を重視したらいいか、何を軽視したらダメなのか。飼育とは産卵増殖するまで可能なことを言います。”生かしているだけ”のテクニックを飼育初心者がまねしても同じ失敗の道を歩むだけ、長期飼育を実際にしている人の水槽や病気についての科学的な思考を「まずは徹底的にマネする」ことによって初めて応用が可能です。上の写真のモンハナシャコの飼育では水質管理を徹底し病気を持ち込まず、軽い病気なら本人の治癒力でなんとかする、という方法しか採れないが…甲殻類の病気は薬剤が使用できても濃度が難しいし困難なので、治療を専門とする私が直面している研究対象であります。そもそも病気分類からして再現実験すらできないし未研究ばかり。

=サツキマスとクロダイでの慣汽水実験

淡水魚と海水魚の境界域である「汽水」。サケ科は1か月半の間を汽水域で体を馴染ませる。pH、浸透圧差を克服するため排尿システムを適切に機能させるためだが、この塩類濃度について魚病や飼育での間違った使い方が多く見られる(前述:治療目的の塩の使い方)。ちなみにこの実験は1992年ごろのものです。長良川河口堰ができたらサツキマスは全滅するかもしれない…の知見目的。サツキマスは長良川最上流のイワナエリアで釣った海からの遡上もの。クロダイは河口より離れた防波堤にて釣ったもの。水槽内で2年目で仲良くしていた。サブ目的として、遡上サツキマスが海に戻ったと錯覚させることができるなら、3倍体などのDNA操作をせずとも自然により大型になり、寿命的にサクラマスやシロザケのように、更には長命を期待できるとした。私の専門の一端にバイオ技術があるが、なるべく自然の力に頼る方法も重要だと考えている。

★モンハナシャコ水槽の場合、自然にベルリン式+モナコ式となっていて、更にベンチュリー式プロテインスキマーまであるので理想的な手間いらずの海水水槽となっています。外部濾過槽のモーターでディフューザー酸素供給、塩だれも少なく水替え頻度は2-3か月に1割分の人工海水のみです。エサをそんなにあげていないスズメダイやヤッコなど海水魚たちがすぐに大きくなって困ってしまうほど安定。エビやカニも順調。メインの筈のモンハナシャコに冷凍餌をあげるためカニやエビの減りが悪く定住しまくりです。本来エサであった小魚やエビカニが大手を振っているのでありました。シャコが奇麗好きで巣穴の中の食べ残しやゴミを直ぐに外に捨て、それを他が頂戴するのでエサのリサイクルがパーフェクトというのも大きい要因です。

★初心者向け注意:イソギンチャクやナマコの仲間は死ぬと毒素を出すものが多いので死なせないように最も重視、他にイカ・タコ・オウムガイなど生息の温度pHなどが違うもの等、飼育しにくいものを中心に水槽内を設定していく。飼育困難なものを中心にして他の強い魚はその環境に慣れてもらう工夫が必要なので、基本をマスターしない限り手を出さないようにしてほしいところ。昼行性・夜行性、水質・水温・相性・食性・毒性などの個別知識は必須。短期間しか飼育していないのを、さも長期間の飼育をしているかのようにPRする飼育論はネットでも散見できるが、そういうのをマネしないよう見抜けるぐらいの知識を得ていないとダメ。ミドリイシはじめサンゴなんか大変弱いですからね。

獣医師や魚類防疫士などを頼ろう

お魚の病気について実際、観賞魚より養殖魚の方で猛威を振るっていまして年間損害額のシェアも高い。私自身も魚の病気の相談をかなり受けてきました。しかし質疑応答に対する説明が大変労力がかかりました。病気の発生メカニズムの根本や治療の水温の設定から薬剤のグラム数、果ては申告されている病気が正しいかどうか画像から検討したり。本業(医学)からメールを見るのが遅れることも普通。ネットの無料相談の限界です。このページで書いていることでも魚病の基本でしかありません。どんなジャンルにでも専門家というのは想像以上に知識があるものです。プロはプロに任せる、是非とも動物病院を頼ってほしいです。人間と違って保険がきかないから高額と思われてる方も多いですが、そんなことはありません。お住いのそばで探してみてください。あなたの大切なペット魚は、きっと助かりますよ。特に医学もさることながらアクアリウムでも民間療法から間違った知識のままベテランやセミプロになられてしまった方、獣医師のアドバイスも的確で目からウロコ、貴方の飼育スキルの向上に更に役立つはずです(きっと)。また資格保持数は少ないものの魚病に関する専門的知識及び技術を有する魚類防疫士は、各養殖場、孵化場、水族館などへ巡回し、薬剤の使用方法が適切であるかどうか、病気の発生具合や器具を用いた簡易診断を行っている実務に強い専門家です。ネットで発見したら(今は不要であっても)いざという時のためにブックマークしておきましょう。飼育テクニックについての専門家も存在し観賞魚飼育管理士といいます。

★私が勤めていた病院でも…医学では、若き医師の一つの訓練で「正常な人のレントゲン写真」を繰り返し見て把握させます。そうしてようやく些細な異常が判断つくようになります。見慣れていなければどんなレントゲン写真でもみんな一緒に見えてしまいますよね。ブレることがないように徹底的です。これは全ての物事において右往左往しない大変重要な”真理”でもあります。

・獣医師:大学にて専門教育を受け国家試験に合格した者。魚病学関連も増えてきている。
・魚類防疫士:日本水産資源保護協会による技能試験に合格した者。当初、農林水産省が行っていた。
・観賞魚飼育管理士:日本観賞魚振興事業協同組合による技能試験に合格した者。2級や3級とランクがある。

終わりに

私は小さい頃からペットをよく飼っていました。まさかお魚でペットロスにかかるとは思わなかった。そのお魚はイワナ(名前:おうさま)。あまりにも可愛く、フレンドリー、賢さと健気さに魚を見る目が変わり、もう一度会いたい、もう一度触れ合いたいと願ってやみません。

=私は釣ったサクラマスやサツキマスがメインだったが…

一般家庭におけるアクアリウムの最も難しい魚種は?と問われた際に、私は迷わず「海から遡上してきたサツキマス」と答える。一般の方が考える渓流最上流に棲む水質にうるさいイワナではない。イワナは産卵後も生存し長寿で餌付けも容易な部類だ。鳥などと違い、成魚からでも慣れる。一方サツキマスは、多くのサケマス専門書で「海からの遡上サケ科サケ属はエサも食わない、産卵後は100%死ぬ」と語られるだけあって、工夫をしないと餌を食ってくれない。釣った直後に黒いフンをしているので野生でエサを食うことは確信していた。しかし餌付けからして困難なのだ。私はその困難さを克服するために色々と工夫した。そして餌付けを成功させて雑誌や新聞で取り上げられた。最高の飼育年齢は5年半(通常長くても3年)。海からの遡上は大きさやパーマークのあるなし等ではなく、耳石と鰓の塩類細胞の量で判別した。1998年ごろの話。サクラマスのことも聞かれるが、サクラマスは大きいといっても”戻り”や湖沼型の場合が多いようで、ほぼ無難に通常の餌付けができたので正しかろう。あくまで関東や北陸で釣ったサクラマスまでだが(北に行くほど陸封型が減り降海型が多いのは常識)。それにしても飼育困難なものにチャレンジしたいというのはある程度スキルの高まったアクアリストなら通過する儀礼じゃないだろうか。ブリーディングに挑戦するとか、魚病を研究するとか、アクアテラリウムに切り替えるとか、楽しみ方はいろいろある。私はそれからも熱帯魚や海水魚や、観賞魚系からイセエビからハマチまで自宅の水槽で飼育したが、サツキマスを超える魅力のあるものには出会わなかった。しかし、出会ってしまった。それが飼育しやすいと早々に卒業したつもりだったイワナである。

=一緒に暮らせれて楽しかったよ!笑顔

多くの魚は餌付けができると目が可愛くなる。そして普通にみられる「エサくれダンス」。しかしその先があったことに初めて気づかされた。エサくれダンスとは違う人懐っこさ、愛嬌、ギャクキャラまで演じる稀有な魚イワナ。そして顔が笑顔に変化していった特別な「おうさま」。初めての驚きだった。病気の際は彼の笑顔が消えた。治療が終わると笑顔に戻った。しゃべりかけてくるような動作も頻繁。こんなことがあるなんて!まるで妖精じゃないか。頭がいいというイシダイを遥かに凌駕していた。イギリスへ2年間行くという話が持ち上がった時、おうさまの処遇で悩んだ。リリースしたら釣り人に近寄って「遊ぼうよ?」なんてしそうだし、英国まで連れていくこともできない。知人にお金を払って2年間預けるかという考えにも及んだ。#私はサツキマスなど飼育し治療し、産卵に参加できるようリリースしに行っていた。

=病気になると「しょんぼり顔」のおうさま。

=治ると笑顔が戻る。模様を見れば判断できる通り同じ個体。

今まではサツキマスやアロワナなど多々飼育してきた。イワナだって数十匹を尺以上で釣ってきて育てた。このおうさまも人里離れた奥秩父、荒川源流の小沢にて36-37㎝で釣り、初めての関東の尺がみ岩魚としてクーラーボックスでえっさえっさと山を降りて運んだものだ。歩いたり岩を登ったり下ったり、その衝撃で彼も疲れ切っていただろう。帰宅にも長時間かかった。しかし彼は人間嫌いにならず、何年もの長い期間を共に楽しく過ごした。素晴らしい経験だった。白っぽく角度を変えるとシャンパンゴールドに輝き気品があった。周囲のサツキマスやサクラマスと喧嘩を売られても喧嘩せず、果ては自分より大きな55㎝ニジマスすら従えて縄張り争いすらさせない平和な水槽の中心に座した。そこから「おうさま」という名前になった。この魚、何かが違う…。来客がみて、他の慣れた魚とは一線を画す仕草を「イルカみたい」などと形容した。彼が寿命をかなり超え亡くなった際、私はペットロスに陥った。これも初めての経験だった。

=老成魚になったおうさま。最早、ひょうきん妖怪、山神みたいに。

それ以来、イワナをメインにして「もう一度、彼のようなイワナに会いたい…」と飼育し、多くの大型岩魚が愛嬌ありの懐きっぷりを見せてくれた。頭をなでなでするどころか、体までニギニギまとわりついてくるし、なでなでしてと手や腕に寄ってくる、胸鰭との握手まで普通に!(握手だけはバランスを崩すため長くはできないが)。肉食魚で縄張り意識が強いはずなのに他魚と仲良く泳ぐ、果てはエサ金と一緒でも食わずいじめなくなり人工エサのみバクバク食うようになったりと、野生の習性を学習や理性で乗り越えたかのようなイワナたちも少数だが複数飼育した。おうさまの魂が一部乗り移ったかのような(←飼い主バカ)。逆に飼育し続けていても慣れてはいるが基本は本能のまま普通のイワナと変わらないものも多くいた。そういえば以前飼っていた小鳥でもカゴの外ではフンをしないという常識はずれな賢い子がいた。興味深い。まことに興味深い。研究肌に…私の頭に電球がともった。古来「イワナの怪」、「岩魚坊主」などの民話というか童話・逸話があったが、時々、イワナの中に混じっている特に頭の良いイワナがその元だろう。しかし未だおうさまを超える魚には出会っていない。私は一応、大学で教鞭まで取った科学者の端くれ、こんな話は出来ないと自負していたが、お許しいただきたい。

ありがとう「おうさま」、そして現在も自宅にいる愛魚のイワナやサクラマスたち。

<オマケ>

=サクラマス43㎝

「魚」の正統派フォルムを持つハンサム魚といえばこれ。餌付けをして慣れたといっても精神的な交流までは難しく感じます。やはり高級食材としての存在が一番なのでしょう。狭い水槽内で飼育する場合、うまく飼えば鼻をぶつけず奇麗なままです。水槽飼育に適した大きさは40㎝前後までです。50㎝以上ですと、人慣れしてエサ食いまでに影におびえてダッシュし壁にぶつかり警戒心を解くまでにお鼻がボロボロに(治りますが凹んだ状態で)。120㎝水槽でも上手くいきにくかったですね。遊泳力のある遡上魚でも水流を工夫してダッシュやジャンプをしないようにできます。苦労しますがパターンさえ把握すればOKです。陸封型は遥かに簡単。奇麗な魚たちですのでクーラーさえ用意できれば是非とも飼育してみてください。陸封型の養殖魚ならヒレやエラや模様などの見てくれは悪いですが初回スタートには最適です。

=モンハナシャコ18㎝ぐらい大型。

=耳様「プロペラ」が特徴。名前:シャコ太教授

巷でいう”凶暴”とは違い、慣れると飼い主の指にシャコパンチは出さないですし、寧ろ従順な雰囲気をまといます。餌を荒食いすることもなく古いものや添加物が多い生アサリやホタテ、イカ、エビなんかは一旦手に取って確認するものの食べない。エビの様に腐敗肉を仲良く食べることもしない。奇麗好きで、巣穴にゴミがあると即座にお掃除しています。自然下では8㎝までは小魚主体、大きくなると貝や甲殻類などを幅広く食するとのこと、確かに人工飼育下でも大型のほうは魚を捕らずにいます。巣を作る際に形状の異なったサンゴ石などを角度を合わせてアーチ状に組み上げたり補強したりと、どうしてそんな工夫や思考ができるのか。全体の状況を把握し記憶して材料を選ぶというのは、脊椎動物である魚よりも賢い稀有な甲殻類でしょう。シャコパンチだけでなく、やはり生物学者の頭を悩ます筆頭です。エサの残りを他の生物にあげるような仕草まであって、どこかに高性能な脳が隠されているのか、興味深いです。

=ちび太は肌色⇒赤色に成長

同一個体!肌色の画像は名東水園Remixさんで販売されていた頃のものです。脱皮して濃くなっていくのです。青いザリガニの変化とはちょっと違う。
(画像許可:Remixみなと店、Moriさま、ありがとうございます)

オマケQ&A

どうしても治療したいという病気の蔓延したという金魚水槽。助言いたします。金魚たちの外見が細菌やウイルスに侵されているようには見えず、そのうえで調子が悪いとなりますと内臓かエラと思います。深在性真菌症やエロモナス菌が内臓で嫌気性細菌として働いたり、発情の争いによる怪我やアンモニアによる呼吸不全など確定できませんが同じような症状となります。複合した原因は粘膜保護剤投下によるパイプ内の汚れが病原体の温床になっている、低砂にも同様、水は奇麗でも病原体はたくさんいて連鎖した状況と思われます。投薬は内臓でメトロニダゾール薬浴で真菌や嫌気性細菌、ブラジクアンテル薬浴にて生エサによる線虫(急に死ぬのは塩浴などで弱った金魚の体内で線虫が移動して症状として出てきます)、その後水替えし、脱落した病原体の傷の感染予防に抗菌剤(エルバージュやグリーンFゴールド顆粒)。

実際、金魚より弱い淡水魚は山ほどいて、季節の変わり目などでは体調を崩しません。水の悪化のせいです。治癒傾向が出ましたらメチレンブルーで水の腐敗防止。薬の交換の場合、塩水浴が邪魔をして水合わせをしている時間で病気の悪化が上回り、急変しがちです。水温の上昇下降は調子を合わせるエネルギーを使い消耗させるので、水温は変化させずに治療のほうにエネルギーを使わせるのが推奨です。今の金魚たちの様子を観察しましたが、全然余裕です。変なミスをしなければ大丈夫、細かいところでは防ダニシートやゴキブリ退治などご家族さんの聞き取りもどうぞ!今の水槽はリセットが一番推奨です。

死んでしまった金魚のエラを確認し白くなっていたら金魚ヘルペスの疑いがあります。窒息死です。その場合、水産用イソジンで薬浴しますが、サケの卵のウイルス連鎖を断ち切るための消毒で使用されています。市販のイソジンは半年後に高確率で死亡しますので使わないでください。ネット情報をうのみにせず同じような民間療法でココア浴がありますが、鰓病の際は悪化させますし、トウガラシ含有成分カプサイシンは殺菌作用があり甲殻類へは無害といわれますが、かなり傷口を悪化させます。二酸化塩素の含まれた魚病薬を使用ください。金魚のピンポンパールの様に丸く特殊なものが弱いというよりも、想像以上に強いです。適切な投薬をすれば、そう簡単には死ぬようなことにはなりません。

何かヒントがつかめるかと思いまして過去を拝見しました。AとBの死因から申告されていることが事実だと前提して推測するに、第一に「線虫」。いわゆるエキノコックスやアニサキスのようなやつです。魚が弱ったり(死ぬと)内臓から筋肉へ移動しますので治療中に内臓破壊を起こし腹水になります。余命は数日。治療したり塩浴したりの際に急変して飼い主は原因に気づきません。白点病に並ぶメジャーな病気ですが人間の寄生虫の食中毒は知られていても、なぜかアクアリウム界隈では話題にされません。次にコケ掃除、コケの中にはシアノトキシンという毒素を出すものがいて、大量のコケ掃除をする際は水替えしても細かいものが漂うレベルではなくまっさらにする必要があります(まぁ溜めずに普段から掃除をしましょう)。これも一押しの原因です。

通販などで弱い個体を買った場合、治療してあげればいいと考えを変えると余裕が出ます。お店ごとに別にウイルスの異型があるわけではないですし、水温上げで治療したウイルスキャリアーを購入しただけです。健康魚との見分けはつきません。チョウ(ウオジラミ)が付いていた金魚があった場合、エラの中に潜んでいるものもいますのでデミリン水和剤薬浴がいいです。トリートメントで使用されている魚病薬のトリクロルホンもいいですが期間が長いのでデミリンで一発で退治できます。見えないレベルのイカリムシの幼生もまとめてOK。最後にウールマットは新品をセットするとき徹底的に洗わないと製造ロットによっては有害物質が何故かついていることがあります。

治療スキルは飼育スキルとは全く別物なので、正確な情報を得るまでは長くつらいロードを歩みます。今生きている金魚達を助けるため、且つ、次の病気の際にスムーズに治療に入ることが出来るように、前もってコツコツ勉強することが大事です。薬剤も病気発生のあとで揃えるのではなく、金魚が弱い生物だと認識されていらっしゃるのなら、予めそろえておいてください。



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