西城秀樹さん一周忌 石井ふく子プロデューサーが“役者・西城君”を偲ぶ
芸能2019年5月15日掲載
一輪車を猛練習
現在、TBSの日曜日21時台は、東芝がスポンサーから離れ、「日曜劇場」として連続ドラマを放送しているが、当時は一話完結ドラマを流していた。主演を務めていたのは、森光子(1920~2012)や池内淳子(1933~2010)、渥美清(1928~1996)、吉永小百合(74)ら名優ばかり。当時、まだデビュー8年目の24歳だった西城さんは、さぞ喜んだのではないか。
「いいえ。あの人はそういう感情を表に出す人でないんですよ。けれど、こちらの思いにしっかりと応えてくれる。仕事できっちり返してくれるのです。私たちの世界は、それが一番いいんですよ。歌の仕事がとても忙しい時期だったのに、何回も何回もリハーサルをやってくれて。しかも、いつだって一生懸命でした」(同・石井氏)
なにしろ、「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」が大ヒットしてから約半年後のことだったのである。
「それとね、西城君が立派だったのは、主演であろうが、自分だけ前に出ようとする人ではなかったところ。ドラマはみんなでつくるもの。それを若いときから、よく知っていました」(同・石井氏)
このドラマで西城さんが演じたのは若きカメラマン。あるサーカス団を追い掛けて写真を撮っていたところ、熱意が認められ、そのサーカスの共同生活に加えてもらう。それからは団員たちに密着して写真を撮り続けるのだが、やがて芸に命を懸ける団員たちと自分との間に壁を感じはじめる。このため、団長に頼み込み、自分もサーカスの芸を習い始めることに。それは遊び半分ではなく、猛練習で、ついには一輪車などの芸を習得。その努力が認められ、団に迎えられてピエロに抜擢されるのだが、練習中に事故に遭い、帰らぬ人になる――。西城さん自身、猛練習によって一輪車の運転をマスターした。ドラマは高評を得た。
その後も石井さんは西城さんを重用した。山田風太郎(1922~2001)の「エドの舞踏会」を原作とし、明治の元勲たちの妻にスポットを当てた3時間のスペシャルドラマ「妻たちの鹿鳴館」(同:1988年)にも起用する。
いわゆるオールスター作品で、大原麗子(1946~2009)や若山富三郎(1929~1992)、小林桂樹(1923~2010)、田村高廣(1928~2006)、草笛光子(85)、佐久間良子(80) らが一堂に会したが、石井さんは「その中でも西城君はぜんぜん見劣りしなかった」と追想する。西城さんの役は、すまけい(1935~2013)が演じた黒田清隆の家の馬丁・山代源八で、黒田の妻・滝子(佐久間)を愛しているという設定だった。
歌うときには時にダイナミックなアクションを見せたが、ドラマの現場では細かな気配りを欠かさない人だったという。
「周囲にとても気を遣っていましたね。でも、気を遣っていることを相手に分からせないように努めていて、それがとても良かった。気を遣っていると思わせたら、相手にとってはうるさいじゃないですか」(同・石井氏)
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