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2006、2月 掲示板より |
ETA社のムーブ供給 投稿者:KoHi 投稿日:2006/02/03(Fri) 23:51 No.179かねてから噂になっていた,2005年末でのETA社からの部品単位の出荷停止(完成品のみの供給)ですが, Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:HiZiRi 投稿日:2006/02/05(Sun) 12:51 No.202 EPOSやら。FCやら。格安だから。またこんど買おう。。。。 Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:KoHi 投稿日:2006/02/05(Sun) 15:14 No.206 HiZiRiさん,そうそう(ToT)... Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:へいきち 投稿日:2006/02/05(Sun) 19:51 No.210 そうこうしていると消費税が上がっていたりして(爆)。 Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:金子時計店 投稿日:2006/02/06(Mon) 08:57 No.215 どのメーカーもETAのムーブに頼っているからETA社の独断場になってしまうのでは・・・ Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:KoHi 投稿日:2006/02/06(Mon) 10:52 No.218 えっと,スイスの時計作りは,今も昔もマニュファクチュールよりもエタブリスールの方が主流だと思います.ETA社は以前はエボーシュS.A.でしたし... Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:ウルトラセブン 投稿日:2006/02/06(Mon) 11:34 No.219 ゼンマイ式は、精度・安定性等の時計に求められる本来の実用性ではクォーツには逆立ちしても勝てないわけですから、工芸品としての魅力の無いゼンマイ式は、存在価値が低いのではないかと、個人的には思います。 Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:へいきち 投稿日:2006/02/06(Mon) 13:41 No.223 中華ムーブが隙間に入り込んでくる様な予感が個人的にはしています。今の実力はまだまだでしょうが、潜在能力は高いと思いますし、低価格帯のムーブなら入っていく余地があると思います。そしてなにより国家的に勢いがありますよね。 Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:KoHi 投稿日:2006/02/06(Mon) 23:49 No.225 私自身は,時計好きになった最初の頃(90年代)は,時計のムーブメントなんてそれほど話題にも上らなかったですし, Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:ヒデパパ 投稿日:2006/02/07(Tue) 23:12 No.240 ETA社のムーブメントに関しては、2年ほど前から噂を聞いたことがあります。オメガをはじめ、多数のメーカーがETA社製のムーブメントを使用していますが、かなり業務縮小というか供給を抑えていこうとしていると。そこで各メーカーは困っちゃったようです。いろいろと生産コストや信頼性でどこのムーブメントを使用するか、はたまた自社製のムーブメントを作るのか?KoHiさんのおっしゃる通り、どうもETA社ムーブメントはスウオッチグループ専用、というかスウオッチグループを介して供給されていく流れになっていくようなことを聞きました。つまりスウオッチの許可なくして使えなくなっていく方向性にあるようです。ETA社のムーブメントは高額になっていくのでしょう。(こんなこと断言しちゃっていいのかわかりませんが)そこで当然使用できなくなるメーカーが出てくるんですが、金子時計店さんがおっしゃる日本のオリエントやセイコーのムーブメントの使用の可能性を示唆しているメーカーもあるとかないとか?実際、オリエント製のひげゼンマイにかなり惚れ込んでいるスイスメーカーがあると聞きました。精度を安定かつ、高度なムーブメントを作るためには、どうしてもひげゼンマイの役割なくしては考えられませんから。それが、遠いアジアの国で安く作られている。いつの日か、R社をはじめとする多くのメーカーが日本に求めてくるかもしれませんね。 Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:KoHi 投稿日:2006/02/08(Wed) 23:32 No.259 ヒデパパさん,ETA社だけではなく,どうもレマニア,フレデリック・ピゲも供給量を抑えようとしている節があります. Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:ウルトラセブン 投稿日:2006/02/10(Fri) 20:17 No.290 ETA社には、今のようなゼンマイ式のブームがいつまでもは続かないという不安があるのでしょうか? Re: ETA社のムーブ供給 投稿者:KoHi 投稿日:2006/02/11(Sat) 00:36 No.293 ちょっと雑感です.想像もかなり入っています.しかも,長いです^^;;;... |
ETA社製のキャリバーリスト,少し古くなったので更新します.ついでに分かり易いように表にまとめました.
Calibar | winding | 持続時間 | 径(mm) | ligne | 厚さ(mm) | 石数 | BPS | 発表 | 特徴 |
2000 | 自動巻 | 42 | 19.4 | 8 3/4 | 3.6 | 20 | 8 | 1992 | 中三針日付付き. |
2004 | 自動巻 | - | 23.3 | 10 1/2 | - | 20 | 8 | - | 中三針日付付き. |
2094 | 自動巻 | - | 23.3 | 10 1/2 | 5.5 | 36 | 8 | 2002 | 2004-1+横三目クロノグラフ.9時位置永久秒針,3時位置30分積算計,6時位置12時間積算計. |
2660 | 手巻 | 42 | 17.2 | 7 3/4 | 3.5 | 17 | 8 | - | 中三針. |
2671 | 自動巻 | 38 | 17.2 | 7 3/4 | 4.8 | 17 | 8 | 1971 | 2660+自動巻機構+日付. |
2678 | 自動巻 | 38 | 17.2 | 7 3/4 | 5.35 | 25 | 8 | 1971 | 2671+曜日. |
2681 | 自動巻 | 38 | 19.4 | 8 3/4 | 4.8 | 25 | 8 | - | 中三針日付付き. |
2685 | 自動巻 | 38 | 19.4 | 8 3/4 | 5.35 | 25 | 8 | - | 2681-秒針+ムーンフェイズ |
2688 | 自動巻 | 44 | 19.4 | 8 3/4 | 5.35 | 17 | 6 | - | 2681+曜日(6振動・2681の廉価版). |
2801-2 | 手巻 | 46 | 25.6 | 11 1/2 | 3.35 | 17 | 8 | 1980 | 2824-2-自動巻-日付. |
2804-2 | 手巻 | 46 | 25.6 | 11 1/2 | 3.35 | 17 | 8 | 1982 | 2824-2-自動巻. |
2824-2 | 自動巻 | 38 | 25.6 | 11 1/2 | 4.6 | 25 | 8 | 1972 | 中三針日付付き自動巻. |
2834-2 | 自動巻 | 38 | 29 | 13 | 5.05 | 25 | 8 | - | 2824-2+フル表示曜日. |
2836-2 | 自動巻 | 40 | 25.6 | 11 1/2 | 4.6 | 25 | 8 | 1982 | 2824-2+二ヶ国語曜日. |
2846-2 | 自動巻 | 49 | 25.6 | 11 1/2 | 5.05 | 21 | 6 | 1987 | (6振動・2836-2の廉価版). |
2892A2 | 自動巻 | 42 | 25.6 | 11 1/2 | 3.6 | 21 | 8 | 1983 | 中三針日付付き.12時位置24時間計,6時位置パワーリザーブ計もあり. |
2893-1 | 自動巻 | 42 | 25.6 | 11 1/2 | 4.1 | 21 | 8 | - | 2892A2+ワールドタイムディスク. |
2893-2 | 自動巻 | 42 | 25.6 | 11 1/2 | 4.1 | 21 | 8 | 1992 | 2892A2+センター24時間針. |
2894-2 | 自動巻 | 42 | 28 | 12 1/2 | 6.1 | .37 | 8 | 1996 | 2892A2+横三目クロノグラフ.3時位置永久秒針,9時位置30分積算計,6時位置12時間積算計. |
2895-1 | 自動巻 | 42 | 25.6 | 11 1/2 | - | 30 | 8 | - | 2892A2のスモールセコンド版. |
2896 | 自動巻 | 42 | 25.6 | 11 1/2 | 4.85 | 22 | 8 | 2003 | 2892A2+ビックデイト. |
2897 | 自動巻 | 42 | 25.6 | 11 1/2 | 4.85 | 22 | 8 | 2004 | 2892A2+7時位置パワーリザーブ計. |
6497-2 | 手巻 | 46 | 36.6 | 16 1/2 | 4.5 | 17 | 5 | 1950s | 三針スモールセコンド(Lepine,リューズの対角にスモールセコンド). |
6498-2 | 手巻 | 46 | 36.6 | 16 1/2 | 4.5 | 17 | 5 | 1950s | 三針スモールセコンド(Savonette,リューズの右90度にスモールセコンド). |
7001 | 手巻 | 42 | 23.3 | 10 1/2 | 2.5 | 17 | 6 | 1971 | 三針スモールセコンド. |
7750 | 自動巻 | 44 | 30 | 13 1/4 | 7.9 | 25 | 8 | 1973 | 縦三目日付曜日付きクロノグラフ.9時位置永久秒針,12時位置30分積算計,6時位置12時間積算計. |
7751 | 自動巻 | 44 | 30 | 13 1/4 | 7.9 | 25 | 8 | - | 7750-日付・曜日ディスク+24時間計(9時位置)+月・曜日(12時位置)+センターポインターデイト+ムーンフェイズ(6時位置). |
7753 | 自動巻 | 44 | 30 | 13 1/4 | 7.9 | 25 | 8 | 2002 | 7750の横三目版.12時位置の30分積算計を3時位置に. |
7754 | 自動巻 | 46 | 30 | 13 1/4 | 7.9 | 25 | 8 | 2003 | 7750+センター24時間針. |
7758 | 自動巻 | 44 | 30 | 13 1/4 | - | - | - | - | 7750-曜日-12時間積算計+ムーンフェイズ |
7760 | 手巻 | 44 | 30 | 13 1/4 | 7 | 17 | 8 | - | 7750-自動巻機構. |
7765 | 手巻 | 44 | 30 | 13 1/4 | 7 | 17 | 8 | - | 7760-曜日-12時間積算計 |
7768 | 手巻 | 44 | 30 | 13 1/4 | - | - | - | - | 7765+ムーンフェイズ |
7770 | 自動巻 | - | 30 | 13 1/4 | 7.9 | - | 8 | 2002 | 7750+スプリットセコンドクロノグラフ. |
(by KoHi) |
参考HP
ETA S.A.・Equation of Time・TimeDesign
参考文献
ムーブメントブック・傑作腕時計百年図鑑2004年版(別冊ビギン)
昆虫少年と機械式時計マニア 投稿者:テグ 2003/09/08(Mon) 09:28 No.3892 皆さんは子供の頃、朝まだき霧に覆われたクヌギ林でカブト虫を探したり、夕焼けの川辺で赤トンボを追ったりした経験はありませんか。昆虫に対する少年の憧れとひたむきな思い。その熱いまなざしが、そのまま機械式時計マニアへと移行していった方はいないでしょうか。私は機械式時計マニアの端くれとして、常々自分の時計に対する異常とも思える好奇心とエネルギーの注入に、この昆虫少年時代の熱情の再来を感じています。 |
「ロービートで行こう」私的改訂版 (by KoHi) |
これはパワーウォッチNo.11の同題記事の,私なりのパロディーと思ってください. 一般に,毎秒6振動以下の振動数をロービート, 8振動以上の振動数をハイビートと言います. 現在のスイス製自動巻きの時計の場合, ムーブメントの主流の振動数は8振動です. これは,最も広く使われているETA社製の自動巻きムーブメントが 8振動だからです. 0.ちょっとした調速理論 テンプの等時性を上げる,すなわち,外力の影響を下げるには, テンプの慣性モーメントを上げることと テンプの回転速度を上げることが考えられます. 慣性モーメントとは,回転体の慣性を表す量のことです. 直線運動の場合の慣性は,物体の質量に比例します. 例えば,同じ速度で移動しているダンプカーと自転車を 止めるのに必要な力は,ダンプカーの方が大きくなります. この力のことを慣性と言います. 回転体における慣性モーメントの大きさは,質量だけではなく, 全重量が回転軸からどれだけ離れているかにも依存します. 同じ質量の場合,円柱よりも円盤の方が,円盤よりも中をくり抜いた円盤の方が 慣性モーメントは大きくなります. 一方,同じ慣性モーメントを持つテンプの場合, テンプの回転速度が大きければ大きいほど等時性は大きくなります. これは,自転車をゆっくりこぐよりも勢いよくこぐ方が安定する (外力の影響を受けにくくなる)ことを想像すれば分かりやすいと思います. テンプの慣性モーメントを上げるにはテンプの径を大きくすればよく, テンプの回転速度を上げるには振動数を上げればよいことになります. さて,テンプの径を大きく(したがってテンプの質量も増す)する場合, テンプを動かすための力も大きくする必要があります. この力はゼンマイの力に対応します. 一方,ゼンマイの力は,幅には比例しますが, 厚さには3乗(理論値.実測だと2乗くらい)に比例します. したがって,ゼンマイの力を上げるために手っ取り早い方法は, ゼンマイの厚さを増すことです. しかし,香箱の大きさが同じ場合,ゼンマイの厚さを増せば増すほど 香箱に納めることができる長さが減りますから, ゼンマイの持続時間(パワーリザーブ)が減ります. さらに,厚いゼンマイは疲労しやすく切れやすいので, ゼンマイは可能な限り薄くて長いものがよいと言えます. なお,出力不足は輪列以下の仕上げをよくして摩擦損失を 極力少なくして補う必要があります. まとめると,ムーブメントの等時性と耐久性の観点から, テンプの慣性モーメントはなるべく大きくする 振動数はなるべく大きくする ゼンマイの力はなるべく小さくする という三つの兼ね合いがどうしても必要になると思います. したがって,ゼンマイの力が同じ場合に等時性を上げるためには, 小さいテンプでハイビート(テンプの回転速度を上げる)か 大きいテンプでロービート(テンプの慣性モーメントを上げる)という 二つの選択肢があり,小型化を考えると前者しか選択肢がなくなります. ちなみに,ETA2824,2892,7001を比較すると, 振動数は2824と2892が8振動,7001は6振動です. 一方,テンプの径が最も大きいのが2824,次いで7001,2892となります. したがって,振動数とテンプの径からは,2824の方が理論上精度が出しやすそうです が, 実際に精度が一番よいと思われるのは2892です(クロノメーターも多い). したがって,上に書いたことはあくまでも一般論で, 実際の精度は,設計・仕上げ・調整等にかなり依存すると思います. 1.現在ハイビートが主流な理由は? 間接的には,ETA社によるムーブメントの独占供給が原因だとは思いますが, それよりも,60年代に小型化と高精度を目指して ムーブメントのハイビート化がすすんだことが原因でしょう. 小型化のためには小さなテンプを採用しなければならず, そこで等時性を上げるためにハイビート化が必要になったと考えられます. そして,その後のクォーツショックでムーブメントが開発されなくなった (ETA社によるムーブメントの独占供給となった)ことが理由だと思います. 2.ジャイロマックステンプを採用している理由は? パテックやオーデマがジャイロマックステンプを採用している理由は, 精度向上もあるとは思いますが,一番の理由は緩急針が必要ないことだと思います. 通常,緩急針を動かすことでヒゲの長さを調整して緩急調整をする必要があり, それがヒゲゼンマイを疲弊させる原因となります. 一方,ジャイロマックステンプでは,この緩急針が必要ありません. チラネジ付きテンプの発展形だとは思いますが, テンプの径を大きくして慣性モーメントを向上させ, また,精度の圧倒的な追い込みを目指して生み出されたものだと思います. ちなみに,ロレックスのマイクロステラスクリュー付きテンプや オメガのフリースプラングテンプも似たような機構になっていて, ジャイロマックステンプと同様,緩急針はありません. これも耐久性の向上と精度の追い込みのためからだと思われます. 3.チラねじが無くなった理由は? そもそもチラねじは,バイメタルテンプと スチール製ヒゲゼンマイを使っていた時代に, 温度による金属の収縮を補正するために生まれました. その後,モノメタルテンプ(グルシデュール製)や ニバロックス製ヒゲゼンマイといった, 温度変化をしない素材を採用するようになったため,チラネジは必要なくなり, そのコスト高のため,次第に使われなくなったのでしょう. さらに,チラネジを使わないことで, テンプの慣性モーメントを上げることができ,等時性を上げることができます. また,チラネジには,空気抵抗による遅れを生み出していたので, それを回避するという意味もあったようです. 2との関連では,ジャイロマックステンプやそれに類する仕組みは, テンプの慣性モーメントを上げつつ,緩急微調整もできる,という とてもうまく考えられた機構だと思います^^. 4.なぜ今でもロービートのムーブメントが製造されているのか? ロービートの一番のメリットは,なにをおいても「耐久性」だと思います. 弱いゼンマイを使ってロービートで駆動する方が, 機械的なストレスが少なくてすむと思います. なお,等時性を保ちつつ小型化を目指すのであれば, テンプの径はなるべく小さくする必要がありますが, そうでない場合は,ロービートのままテンプの径を大きくするという 選択肢もあると思います. 5.バルカンはロービートにこだわっているのか? こだわっているというよりも,MSRグループ(レビュー・トーメン)から 買収したクリケットのムーブメント(V.10)が たまたま5振動だっただけのことだと思います. V.10は,クォーツショック以前に一度生産終了になっています. だからハイビート化されずに,1985年にレビュー・トーメン銘で クリケットが復活したときには,5振動のままでした. ちなみに,V.10は,5振動の割にはテンプの径が小さいと思います. このままバルカンがV.10を基本とした時計しか出さなければ, ロービートにこだわったメーカーだと言えると思いますが, 今後どうなるかは?です... 6.ETA社製ムーブメントはほとんどが8振動? 「自動巻き」というくくりではこの文章は正しいです. ただ,手巻きになると,ETA社製では,7001と6497/8がロービート, 2801と2660がハイビートとなります. さらに,「手巻きスモールセコンド三針」というくくりであれば, ハイビートの方が圧倒的にムーブメントの種類が少ないです. ETA社製ではこの範疇のハイビートムーブメントは存在しませんし, レマニア製やFP製でも確かほとんどロービートです. このくくりでハイビートなのは,パテック(cal.215),ゼニス(エリート), ヴァシュロン(cal.1400),ショパール(L.U.C.クワトロ)くらいだと思います. 7.現行量産時計でロービートの時計を探すのは難しい? 簡単です^^.オリエントは6振動ですし, セイコーの逆輸入時計によく搭載されている7S系も6振動です. また,6にも書いたように,「手巻きスモールセコンド三針」であれば, スイス製でもロービートは簡単に見つかります. それから,最廉価手巻きクロノグラフであるパリョート(ポレオット)の ムーブメントcal.3133も6振動ですし,オメガのスピードマスタープロフェッショナル に搭載されているムーブメント,レマニア1873も6振動です. 8.自社製ムーブメントはロービート? 確かにロービートは多いですが,ロービート一辺倒ではありません. パテックはベースの3種類(cal.215, 240, 315)のうち, 手巻きのcal.215がハイビートです. ヴァシュロンのcal.1400とショパールのL.U.C.すべてもハイビートです. ヴァシュロンの場合は,JLC製がベースのムーブメントもありますが, この場合,手巻きはほとんどロービートです. 4にも書いたように,パテックやヴァシュロンの場合, ムーブメント径が小さいですから,必然的にハイビートになったのだと思います. ショパールのL.U.C.の場合も,あのマイクロローターの占める面積が大きいことと 精度の面から,ハイビートになったのだと思います. ちなみに,レビュー・トーメンの自社製ムーブメントであるGT12系とGT44系は, 5.5振動という,今となってはほとんど見かけなくなった振動数を採用していて, とても興味深いです^^. 9.ロービートを楽しむには? 個人的には,ロービートの一番の醍醐味はあのテンポの音と ゆったりしたテンプの動きだと思います. これらを楽しむには,現行ムーブメントで最も設計が古いムーブメントである, ETA/UT 6497/8 搭載の時計が,一番いいと思います. しかも,スケルトンだと,音も大きくてなかなかです. 腕時計と懐中時計,チラネジ付きとチラネジなし, 機能も三針・ビックデイト・トリプルカレンダームーンフェイズ (ラクロアには24時間表示やパワーリザーブ計+レトログラード日付) とありますから,予算と嗜好に合わせてお好きなものをお選び下さい. ただし,元来懐中時計用のムーブメントなので径も厚さもありますから, 時計もそれなりに大きくなります. レディースだと,個人的には,何をおいてもレビュー・トーメンの オープンハート・レディースだと思います. スケルトン加工のブリッジ形状やムーブ径に対して大きめのテンプと 個人的にはかなり惹かれます^^. ただし,時計はかなり小さいので,男性には似合わないでしょう^^. それ以外だと,オールドストックのユニタスやASやプゾー, レビュー・トーメンのオープンハート・メンズやGT1885, お金があれば,オールドストックの手巻きクロノグラフあたりでしょうか... 手軽に楽しむのであれば,オリエントやセイコー7S系でしょう. 最近のオリエントやセイコー5にはシースルーバック仕様も多いので, ムーブメントを見る楽しみもあります. #個人的にはそれほど美しいとは思いませんが^^;;;... さらに,巻き上げ効率・メンテナンスの容易さ・低価格では オリエントやセイコー7S系はスイス製よりも圧倒的に勝っているでしょう. (参考文献) パワーウォッチNo.11「ロービートで行こう」 小林敏夫著,基礎時計読本(改訂増補版) 金子時計店第二掲示板のカキコ「テンプの大きさと精度」 (Thanks to ばさらさん,紅玉さん,helloさん,どぅ~んさん) 金子時計店第二掲示板のカキコ「ゼンマイの力」 (Thanks to ZAQWERTさん,鉄猫さん,どぅ~んさん) Thanks to Sunaさん&れいさん:この原稿を書くきっかけを頂きました m(_"_)m ============= |
2003、9、1 |
De Villes のムーブメント (by KoHi) | |
オメガの De Villes Prestage のムーブメントの画像はとても興味深いです. オメガの呼称は Cal.651 で,ベースムーブメントは ETA/Peseux 7001 です. これは,丸穴車の2本ビス留め(A),コハゼの形状(B), テンプ受けの形状(C)かもらわかります. テンプ受けは,1960-70年代の Peseux の共通形状のようです. 一方,Peseux 7040 や Peseux 7046 は,丸穴車は1本ネジ留め(A), コハゼの形状(B)も違います. ただし,ベースムーブメントというだけで, 大きく次の4箇所を改良しています(*1). (1) グリュシデュール製テンワの採用 (2) Etachron Regulator の装着 (3) 受けの形成 (4) コート・ド・ジュネーヴ入りロジウムメッキ仕上げ 特筆すべきは,(2)と(3)です. (2)は,ETA/Peseux 7001 では一般には装着されていない 緩急調整用レバーを設置するために,テンプ受けを一部彫っています(D). この改良により,精度調整が容易になると思われます. (3)もなかなか手がかかっています. テンプ受け(C)だけは ETA/Peseux 7001 のままの形状ですが, それ以外は,おそらく1940年代のオメガ自社製キャリバー Cal.26.5 を意識して,受けの形状を変更しています. そのため,輪列受けは原型を留めていません^^. 具体的には,輪列受けに二番車まで加え, テンプを取り囲む部分を直線の組合せから円形に変更しています. この輪列受けの形状は,どちらかといえば Peseux 7040 や 7046 に 似ているところも興味深いです. しかも,この Cal.651 を搭載したオメガの時計は 他には存在しないようなので(*2), Cal.651 は De Villes Prestage 専用ムーブメントのようです. オメガもなかなかやるものです. シースルーバックでないのが本当に残念です. (Thanks to ZAQWERT さん:いろいろ調べるきっかけになりました^^) ========== (*1) #De Villes Prestage の解説.残念ながら画像はありません. (*2) http://home.xnet.com/~cmaddox/OmegaCaliberList.html #オメガのキャリバーリスト. | |
<<Omega651.jpg>> Omega 651 (De Villes のムーブメント) | |
<<P7001.jpg>> ETA/Peseux 7001 (Les Genevez/Handwinding) | |
<<P7040.jpg>> Peseux 7040 (Auguste Reymond/Metronome) | |
<<P7046.jpg>> Peseux 7046 (Epos/Emotion Regulateur) |
============================== ユニタス大好き! (by KoHi) ============================== |
最近,いわゆる「デカ厚」時計のブームで,パネライを筆頭に, 「ユニタス6497/8」とよばれる手巻きムーブメントがよく使われています. これらは,腕時計の場合,6497は9時位置で6498は6時位置, 懐中時計の場合,6497が6時位置で6498が9時位置に スモールセコンドがレイアウトされるバイプロダクトムーブメントです. この「ユニタス(Unitas)」とは会社の名称です. そもそもユニタス社は,1898年に創業した オーガスト・レイモンド社(*1)のムーブメント製造部門でした. その後,1932年(34年説もあり)にオーガスト・レイモンドから切り離され, エボーシュS.A.(*2)の傘下に入り,以後,1983年の操業停止まで 手巻きムーブメントを供給したと思われます. 特に6497/8は,70年以上前に(1940年代から1950年代との説もあり)製造が 開始されたムーブメントで,ユニタス社が操業停止後も, ETA社が現在まで引き続き製造している息の長いムーブメントです. もともと懐中時計用のムーブメントだったのですが, 「デカ厚」時計ブームで腕時計用に返り咲いたムーブメントです. したがって,ETA 6497/8 と表記されることもあります. また,ユニタスのホールマーク UT を用いて, UT 6497/8 や ETA/UT 6497/8 と表記されることもあります. 6497/8以外のユニタスムーブメントは83年に製造中止になりましたが, これらのストックがまだまだかなりあるらしく, 様々なメーカーから,以下のようなムーブメントを搭載したモデルが 90年代以降も発表されています. なお,ほとんどの時計が限定品かすでに生産終了品なので, 現時点(2003年1月時点)で手に入る可能性が低いものも数多くあります. また,以下のリストは私が把握している分だけですので, 抜けも数多くあることをご了承下さい. #かっこ内は (モデル名;限定数(_は限定ではないモデル);発売年). ========== ・6300 -- 本中三針式センターセコンドをもつ1950年代製の5振動ムーブメント. Auguste Raymond (Evergreen;250;1995) Jacques Etoile (Medicus・Primus・Metropolis;_(製造数は650ほど);2001-) Stowa (Jubilaums Model;70;199?) ・6325 -- 6376とはコハゼと受けの一部の形状しか変わらない6振動ムーブメント. Auguste Raymond (In the Mood;500;1998) ・6376 -- かなり普及したと思われる1960年代製の6振動ムーブメント. Chronoswiss (Regulator (first model);3000ほど;1987-90?) Jacques Etoile (Lisbon Medium;_;2001-) Maurice Lacroix (Masterpiece Power Reserve;400;1996) Maurice Lacroix (Masterpiece Enamel;_(生産終了);1998?) ・6380 -- おそらく6376にポインターデイトを追加したバイプロダクトムーブメント. Sinn (Regulator;_(生産終了);1990-4) ・6425 -- 香箱受けと二番車受けが共通となった日付付き6振動ムーブメント. Auguste Raymond (Boogie;999;2002) Stowa (Marine 6425-S;500;199?) ・6480 -- 小型日付付きムーブメント. Auguste Reymond (Edith Piaf;150;2001) ・6565 -- 超小型の秒針無し二針ムーブメント. Catorex (Pendent Watch;_(生産終了);-2002?) ・6580 -- 1960年代製の小型日付付き6振動ムーブメント. Auguste Raymond (Ballad;999;1999) ・176 -- 1940年から1950年代頃に製造されたムーブメント. Grace Fabliau (Naked Movement 01;50;2003) ========== オーガスト・レイモンドの時計が多いことは, ユニタスがもともとオーガスト・レイモンドの ムーブメント製造部門であったことに起因してます. ユニタスのムーブメントの特徴は, よくも悪くも「汎用ムーブメント」であるということ. 上に挙げた176以外の50年代以降製造のムーブメントは すべてチラネジがないスムーステンプでアジャストも三点ですし, 受け(ブリッジ)もテンプ受け・香箱受け・輪列受けの三つからなるものが多く, 決して高級ムーブメントではないと思います^^;;;. しかも,直線を基調にした受けの形状が多く, 生産効率を上げていることが分かります. なお,テンプ受けは,大きさの違いはありますが, どのムーブメントも似たような形状です. また,これはオールドムーブメントの特徴でもあるのですが, 現行ムーブメントに比べると大きめのテンプを採用してます. 個人的には「偉大なる平凡」とでも形容すべきムーブメントだと思います. メカニズム的に凝っていない分,メンテナンスは比較的容易であると思われるし, 比較的厚そうなブリッジは耐久性も高そうに感じます. それから,テンプのそばの地板に,6497/8 以外のものは U に T をかぶせたユニタスのホールマークが刻印されています. 現在もETA社で製造されている6497/8には,5振動と6振動のものがあるようです. 6497/8を用いた時計の中では,ジャッケ・エトアールやマーチン・ブラウンが, チラネジの追加,緩急計の変更,10mmに満たない薄さ, それから場合によっては受けの分割と, なかなか興味深い時計作りをしていると思います. また,クロノスイスのタイムマスターは,出車を配置して, 6497をセンターセコンド化していています. さらにパネライは昨年(2002年),6497の受けの形状を変え, スワンネック緩急計を追加したムーブメントを開発しました. 6497/8は,その大きさから受けや地板が分厚く, 耐久性に非常に優れたムーブメントだと思います. さらに「世界の腕時計大鑑2002-2003」によれば, 6497/8をベースにしたクロノグラフムーブメントを開発しているという話もあります. ビックデイトやトリプルカレンダームーンフェイズのモジュールは エポスやジャッケ・エトアールにすでに搭載されているので, この話も結構信頼性が高いような気がします. 個人的には,6497/8にパワーリザーブ計を搭載した時計や レギュレーターレイアウトの時計を作って欲しいところですが... なお,ユニタスのムーブメントは高級ムーブメントではないだけに, オールドストックのユニタスを搭載した時計は, 付加機能がないただの三針時計の場合だと10万円前後までが適正な価格だと 個人的には思っています. ============================== (*1) オーガスト・レイモンド社 スイス・ビエンヌのトラメランで1898年に創業した時計会社. 会社名は,創設者の名前から取られています. 正式名称「Auguste Raymond S.A.」を略して ARSA と呼ぶこともあります. 1970年頃までレイモンド一族の経営だったようですが, その後,休眠状態を経て経営が変わり, 現在の社長は1989年に若干27歳で就任したトーマス・ルーズリー氏. 比較的安価な機械式時計を製造すると共に, ARSA銘の盲人用機械式時計では圧倒的なシェアを誇る時計会社です. (*2) エボーシュS.A. おそらくフランスのジャビー兄弟社製の格安ムーブメントに 対抗するために設立された,スイスのムーブメント製造会社の連合体です. もともとエボーシュとは「半完成品」の意味です. エボーシュS.A.の歴史は,ムーブメント製造会社の合従連衝を繰り返す歴史であり, クォーツショックの後,最終的にはETAに統合されて現在に至っています. #かっこ内はホールマーク. 1926年,ア・シルト(AS),フォンテンメロン(FHF),ア・ミシェル(AM)によって創設. 1927年,ランデロン(L)ほか9社が傘下に入る. 1928年,フェルザ(F),ヴィーナス(☆)が傘下に入る. 1932年,アローニョ(A),フルーリエ(FEF),ユニタス(UT),ETA(ETA)が傘下に入る. 1933年,プゾー(P)が傘下に入る. 1937年,シェザール(C)が傘下に入る. 1941年,デルビィ(D)が傘下に入る. 1944年,バルジュー(R)が傘下に入る. 1962年,シェザールが操業停止. 1965年,デルビィが操業停止. 1966年,ヴィーナスが操業停止. 1969年,フェルザがETAに吸収合併. 1970年,ランデロンが操業停止. 1974年,アローニョが操業停止. 1978年,ア・シルトがETAに吸収合併,キャリバーが統合される. なお,AS製のキャリバーは1983年まで製造される. 1979年,フルーリエが操業停止 1983年,ユニタスが操業停止. 1983年,SSIH(オメガ・ティソ)とASUAG(コンコルド・エテルナ・ロンジン)が合併し てSMHを結成. 1985年,プゾーが操業停止. 1985年,エボーシュS.A.がETAの名のもとに統合し,SMHの傘下に入る. 1989年,フォンテンメロンが操業停止. 参考 ヴィンテージウォッチ No.7 ウォッチアゴーゴー No.30 |
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オーバーホールのタイミング 金子時計店 |
結構皆さんOHのタイミング は、気にされているようですね OHを定期的にするように勧める店は、多分に商業的要素が含まれているような気がします(売り上げUP) OHはすればするほど機械に傷が付きます (慣れていない技術者に受け持たれたら不運?) かすり傷ひとつ付けずにOHすることはベテラン技術者でも容易ではありません これからシーズルーバックの時計をOHするときはベテランの腕のいい人にしてもらわないといけないですね。 私の経験から言えばオイル切れで不調になるより、湿気、埃等で不調になることが多いようです 結構大きな埃やゴミが入っています 体温で温まっている時計の裏蓋周りに付着している埃が時計を外して時計内部の空気が冷えてくると空気が収縮して外部の誇りを吸い寄せるのです >時計のオイルの質というのは どれくらいで経年変化・・・ ということですが動かさずにじっとしていて劣化することはないと思います 実際、保管している時計のオイルはごく小さいビンに入っていますがかなりの年数どうもなりません 動かせば動かすほどオイルは減ってきます、ですから動かさなければオイルは長持ちします ですからOHのタイミングは、その時計をどういう条件でどれくらいの頻度で使うかによって決まるのではないでしょうか |
Re: 無題 テグ - 2002/12/10(Tue) 19:32 一つの時計を購入した時、そのお金がそれぞれどこに流れて行くのか考えてみると、なかなか面白いです。R社の時計だと、お客さんが1個の時計を買う毎に、R本社、日本R社、小売店などにそれぞれ豊富にお金(利益)が流れて行くわけで、このデフレ不況下の日本においては、「経済優等生の時計」と言ってよいでしょう。お客としてもその辺は十分自負していいところで、R社の時計を買った人は「俺は日本経済および世界経済に貢献した!」と胸を張って言っていいと思います(マジで!)。でも、上には上がいるもので、R社なんかよりも更に日本経済(もしくは世界経済)に大いに貢献できるブランドの時計というのもある訳です。これは単に時計の値段が高いという事ではなく、時計の製造コストはそれ程でもないのに、売る時にはそのコストの何倍、いや何十倍というお金をお客様が出してくれる時計のブランドの数々です(差し障りがあるといけないので、名前は伏せます)。それらのブランドは、戦後最悪の経済不況下の日本にあっても、順調に利益を伸ばしており、これは経済や商業活動に携わる全ての人々がお手本にすべき、高度な経済戦略を持って成功を収めているブランドです。製造コストの何十倍もの利益の出る商品!それらの時計を購入したお客様は、自分たちの出したお金が、どこに流れて行くのか考えてみると、それもまた楽しいのではないでしょうか。「私の出したお金が〇〇社の銀座店のビルディングの豪華な装飾に使われてるんだわ!とか、「あの梅田店の大勢いる店員の給料の何分の一かは俺が出したんや!」とか、「僕の出したお金がオリンピックでのベラボーな広告費にも使われたんだ!」なんて。なかなか夢のある話ではありませんか(それに引換え、オリエント本社のなんて古くてみすぼらしいこと!オリエントの方すみません・・・)。 |
ピラーホイール使用の時計 投稿者:kyyk 2002/11/09(Sat) 12:45 No.5338 KoHiさんまたまた質問で恐縮なのですが教えて下さい。 | |
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金子時計店クイズ 投稿者:KoHi 2002/11/06(Wed) 10:57 No.5303 | ||
以下のようなクイズを作ってみました.金子時計店のHPを見ずに答えられたら,あなたも金子時計店マニアです^^.#暇な人は回答をこの後にカキコしてください. | ||
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============================== 現行のETA製機械式ムーブメントあれこれ (by KoHi) ============================== 機械式時計好きになると避けては通れない^^, 現行のETA製機械式ムーブメントについて書いていきます. なお,ここではオールドムーブメントは除外しています. 現行のETA製機械式ムーブメントは,以下の6つに大別できます. #これは便宜上私がこのように言っているだけです^^;;;. (1) ETA 2824系 (2) ETA 2892系 (3) ETA 2671系他 (4) ETA/Valjoux 7750系 (5) ETA/Peseux 7001 (6) ETA/Unitas 6497/8 ===== (1),(2) 2824系と2892系 ===== 日付付き中三針自動巻きムーブメントである2824系と2892系は, ETA製のムーブメントの中でも最もよく使われているものだと思います. 両者の主な違いは,2824系が25石なのに対して2892系が21石であることです. おそらく,2824系が2801に自動巻機構を付加したムーブメントなのに対し, 2892系は最初から自動巻きムーブメントとして設計されたものと思われます. ですので,2892系の方が2824系よりも薄型です. 2824-2が11 1/2ライン(径25.60mm),厚さ4.6mmに対して, 2892-A2が11 1/2ライン(径25.60mm),厚さ3.6mmです. シースルーバックだと,見分け方は比較的簡単です. 2824系はETAのホールマークが刻印されているのに対し, 2892系はキャリバー番号もあわせて刻印されているようです. また,2824系は,テンプの反対側にローターを動かしたとき, 歯車状のものがテンプの側と離れたところに2つ見えますが, 2892系はテンプの側のものはなく,離れたところに1つしか見えません. ローター取り付け部の盛り上がりも,2824系の方が顕著です. なお,2892には,トリプルカレンダーモジュールを追加したもの, ムーンフェイズモジュールを追加したものなど多くの派生があります. また,2892にクロノグラフモジュールを追加した2894以外にも, クロノグラフモジュールを追加したものなどもあるようです. 特に,2892ベースのクロノグラフは,横三目で, 普通は,3時位置が永久秒針,6時位置が12時間積算計, 9時位置が30分積算計というレイアウトです. ===== (3) 2671系他 ===== 8振動の手巻き中三針ムーブメント2660は, 7 3/4 ライン(径17.20mm),厚さ3.5mmの小型自動巻きムーブメントです. レディース用に主に使われているようです. また,これより少し大きな自動巻き日付付き中三針ムーブメントとして, 2681,2000-1,2004-1があります. 2681が8 3/4 ライン(径19.40mm),厚さ4.8mm,25石. 2000-1が8 3/4 ライン(径19.40mm),厚さ3.6mm,20石. 2004-1が10 1/2 ライン(径23.30mm),20石. ===== (4) 7750系 ===== 7750は,8振動の全方向片巻き上げ自動巻きクロノグラフムーブメントです. 13 1/4ライン(径30mm),厚さ7.9mm,25石. 作動原理はカム式,動力伝達方式はスイングピニオン方式. 1973年に当時のバルジュー社が発表後, バルジュー社は7750系以外のムーブメントの生産をすべて中止しましたが, ETAに統合後も7750系は生産が継続されました. 7750は縦三目日付曜日付きクロノグラフです. ノーマルのダイアルレイアウトは, 9時位置が永久秒針,12時位置が30分積算計,6時位置が12時間積算計で, 3時位置に日付(+曜日)が付きます. 最近では,フライバック機能付き, 9時位置永久秒針,3時位置30分積算計の横二つ目タイプ, 9時位置永久秒針,3時位置30分積算計,6時位置12時間積算計の 横三つ目タイプなどがあります. ===== (5),(6) 7001と6497/8 ===== 7001は,プゾーが1971年に開発した6振動の小型手巻きムーブメントです. プゾーが操業停止になる1985年までの間に,約235万個製造され, 今なおETAで製造されているムーブメントです. 10 1/2ライン(径23.3mm),厚さ2.5mm,17石. 変わったところでは,エベラールの8日巻きのベースムーブメントがこれです. 6497/8(正確には6497-2,6498-2らしい)は, 懐中時計用としてユニタスが開発したムーブメントです. 腕時計だと,6497は9時位置に,6498が6時位置に スモールセコンドが配置されています. 6497,6498ともに5振動と6振動のものがあるようです. これも現在でもETAで製造されています. 16 1/2ライン(径36.6mm),厚さ4.5mm,17石. ===== 派生 ===== それぞれのムーブメントの派生をまとめます. なお,私の推測も含まれています.ご了承下さい. (1)2824系 2801-2 = 8振動手巻き中三針(11 1/2) 2804-2 = 2801-2 + 日付 2824 = 2801-2 + 自動巻き機構 2824-2 = 2801-2 + 自動巻き機構 + 日付 2834-2 = 2824-2 + 曜日(フル表示) 2846-2 = 2824-2 + 二カ国語曜日 2846 = 2636-2 の廉価版 (2)2892系 2892 = 8振動自動巻き中三針(11 1/2) 2892A2 = 2892 + パワーリザーブ + GMT 2893-1 = 2892 + ユニバーサルタイム 2893-2 = 2892 + センターGMT針 2894-2 = 2892 + クロノグラフモジュール 2895-1 = 2892 - センターセコンド + スモールセコンド (3)2671系他 2660 = 8振動手巻き中三針(7 3/4) 2671 = 2660 + 自動巻き機構 + 日付 2678 = 2671 + 曜日 2681 = 8振動自動巻き中三針日付付き(8 3/4) 2685 = 2681 + ムーンディスク 2688 = 2681 + 曜日 2000-1 = 8振動自動巻き日付付き中三針(8 3/4) 2004-1 = 8振動自動巻き日付付き中三針(10 1/2) (4)7750系 7750 = 8振動自動巻き日付・曜日付きクロノグラフ(13 1/4) 7751 = 7750 - 日付・曜日ディスク + 24時間計(9時位置) + 月(12時位置) +曜日(12時位置)+センターポインターデイト+ムーンフェイズ(6時位置) 7760 = 7750 - 自動巻き機構 7765 = 7750 - 自動巻き機構 + センタームーンフェイズ 7770 = 7750 + スプリットセコンドクロノグラフ機構 *7760や7765からは12時間積算計ははずされていることが多いようです. (5)7001 7001 = 6振動手巻きスモールセコンド(10 1/2) (6)6497/8 6497-2 = 5または6振動手巻きスモールセコンド(16 1/2) 6498-2 = 5または6振動手巻きスモールセコンド(16 1/2) ===== クロノグラフの永久秒針 ===== 7750系の永久秒針が9時位置なのは,昔の名残だと思います^^. 古の手巻きクロノグラフムーブメントは,スペース効率を稼ぐため, どうしてもあの位置(リューズの反対側)に永久秒針が配置されました. なかには縦目クロノグラフムーブメントもありましたが,主流は横目でした. 自動巻き機構とクロノグラフ機構を一体として開発された7750系も, その流れを汲んで永久秒針が9時位置となったのだと思います. それにしても「7750系は,なぜ縦三つ目として開発されたのでしょう?」 一つの推測としては,自動巻き機構が場所をとるので, 30分積算計をブリッジの先に固定するしかなかったから(*1) (この部分は,シースルーバックの時計だと12時位置に見ることができます) という理由が考えられますが...#あくまで推測です. それに対して,2894に代表されるクロノグラフムーブメントは, 自動巻きムーブメントにクロノグラフモジュールをくっつけるという, いわゆる二階建てクロノグラフです. では「なぜ3時位置の永久秒針なのか?」 その理由は私には分かりません^^;;;... 30分積算計と12時間積算計を香箱の近くに配置することで クロノグラフ運針用のトルクを確保し, 空いた3時位置に永久秒針を配置...したのかなぁ^^? そもそも2892系はセンターセコンドのムーブメントなので, クロノグラフモジュールに歯車をかませれば, 永久秒針の位置は,比較的容易に選べそうな気がしますが... デュボア・デプラ社のように,2892系に独自に クロノグラフモジュールを組み込む会社もあります. この場合も今までは3時位置永久秒針が多かったのですが, 最近では,ベル&ロスのジュネヴァ126のように, ETA2892ベースで,3時位置30分積算計,6時位置12時間積算計, 9時位置永久秒針というレイアウトも出ました.ですので,今後は 「9時位置永久秒針クロノグラフ=7750系」 「3時位置永久秒針クロノグラフ=2892系ベース」 という図式は成り立たなくなりそうです^^. ===== ビッグデイト ===== 昨年(2001年)あたりから一つの流行になっているビックデイトですが, これもETA製のモジュールがあるようです. しかも,0~9の円盤と0~3が三つ書かれた円盤を回すもの(*2)と, 0~3が書かれた十字型盤と1~9,0が三つの後に1が書かれた円盤を回すもの(*3)の 少なくとも二つのモジュールがあるようです. 前者は2892系のクロノグラフに搭載されており, 後者は7750系のクロノグラフ用に搭載されているようです. なお,エポスの6498用は前者か,別作モジュールだと思います. (Thanks to こうじさん・ZAQWERTさん・ぴよさん) 明らかにランゲアンドゾーネの「ランゲ1」発表後に刺激を受けて 開発されたと思われますが,約3年ほど時間がかかったにしろ, 汎用ムーブメントに組み込むビッグデイトモジュールを開発するとは, ETAの開発力は凄いものがあると思います. なお,ユリスナルダン(*4)やオリジナルのランゲアンドゾーネ(*5)は それぞれパテントを取っているようなので, ETA製のモジュールはこれらとは仕組みが違うようです. ============================== (*1) 7750の説明は,TZ内の以下のHPが非常に詳しいです. http://www.timezone.com/WatchSchool/The_Horologium/Valjoux7750/valjoux7750.s html (*2) http://www.montre-solmare.jp/grace/col200010-01.html (*3) http://www.jacquesetoile.com/images/big/7750gc1.jpg (*4) http://www.ulysse-nardin.com/images/movmnt/UN22A_lrg.jpg (*5) http://www.fortunecity.com/marina/customhouse/111/lange2002.htm 参考HP (ETA S.A.) http://www.eta.ch/ (Equation of Time) http://63.86.16.186/movements/ ============================== |
2002.11,4 by KoHi |
============================== 腕時計クロノラグの謎(2)・・・ なぜレマニアの最初期自動巻きクロノグラフムーブメントが センター分積算針クロノグラフムーブメントだったのか? (by KoHi) ============================== 「時計なんでも研究室」のきっかけとなったカキコで, 実は根本的な疑問が生じました^^. レマニアには1340系,1350系と5100系という センター分積算針自動巻きクロノグラフムーブメントがあります. 1340・50系の発表が70年代はじめなので,開発時期はもうちょっと前になります. 5100系はそれらの後継だと思います. 70年代はじめといえば,自動巻きクロノグラフがようやく出始めた時期です. ですので,これらはレマニアにとっての最初期の 自動巻きクロノグラフムーブメントだと思います. それではなぜ,レマニアの最初期の自動巻きクロノグラフムーブメントが センター分積算計だったのでしょう? 世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントは, 1969年にブライトリング連合から発表されたCal.11です. その後すぐ,ゼニスのエルプリメロが発表されました. どちらもインダイアル分積算計です. レマニア自身,手巻きインダイアル分積算計のムーブメントがすでにあったので, 普通に考えれば,同じくインダイアル分積算計をもつ 自動巻きクロノグラフを作ると思うのですが, なぜ1340・50系はセンター分積算針のクロノグラフだったのでしょう? まず, 「軍用に使用するため,クロノグラフの視認性を高める必要があり, センター分積算針クロノグラフにした」 という理由が考えられると思います. 例えば,フォルティスのコスモノートは ロシアのガガーリン宇宙訓練センターで制式採用されています. また,ジンのレマニア5100を使ったモデルでは, ドイツのGSG9や消防士用のものが見受けられますし, パイロットに向けたモデルもあります. チュチマのミリタリークロノグラフは,1985年にドイツ軍, 1990年にNATO軍とアメリカ軍に制式採用されて今に至っています. レビュートーメンのエアスピードもパイロット用として開発されたものです. どれもこれも実用に供することを第一とした 「ヘビーデューティー」なものばかりです. また,オメガのスピードマスター自動巻きは, 70年代にスピードマスター125などにレマニア1340・50系, その後すぐレマニア5100が搭載されたことがありました. (by れいさん・紅玉さん) オメガ以外の時計は, 時計の開発時期がムーブメントの開発時期よりずっと後なので, どちらかといえば,「センター分積算針クロノグラフムーブメントが たまたま存在したからこれらのムーブメントを採用した」 ということだと思います. 一方のオメガは,1340系開発直後の73年のバーゼルフェアで, これを搭載したスピードマスター125を発表しています. しかし,これはレマニアがたまたま自動巻きセンター分積算計 をもつクロノグラフムーブメントを作ったので採用しただけであって, センター分積算計のクロノグラフを作るようにと オメガが依頼したようにはあんまり思えません. この時期以外,オメガからは後にも先にも センター分積算計をもつクロノグラフは出ていないわけですし... もちろん,レマニアがブレゲに吸収されオメガのグループから離脱したので, 一時期レマニアとオメガの関係が希薄になった,ということも, オメガからセンター分積算計をもつクロノグラフが 出なかった理由の一つだとは思います. ちなみに,オメガスピードマスターブロードアローに搭載されている フレデリックピゲ製のムーブメントは, レマニア1873の供給がストップした場合を想定して作られた 自動巻きクロノグラフムーブメントという話もあります. 話が逸れました^^. 「なぜレマニアはセンター秒積算針クロノグラフムーブメントを作ったか?」 という疑問に対する最初に挙げた理由は,どちらかというと二次的なもので, 本当の理由は別にあったと考えることができます. ここで,オメガのスピードマスタープロフェッショナルにも搭載されている 手巻きクロノグラフムーブメントである レマニア1873系と1340・50系を比較してみると(*1), 両者はミニッツレコーディングホイール(30分積算車)付近以外の部分, 特にカム回りの部品形状が酷似していることがわかります. ですので,レマニア1340・50系は,レマニア1873に自動巻き機構を 追加する方針で設計されたのではないでしょうか? その際,1873で3時位置のミニッツレコーディングホイールがあったところに, 自動巻き機構(第一切り替え車・第二切り替え車など)を追加することで, 1340・50系を作ったのではないでしょうか? そのため,1340・50系の3時位置にインダイアル分積算計が配置できなくなり, 仕方なくセンター分積算計としたのではないでしょうか? さらに,トルクの問題もしくは厚さの問題から, センター分積算針は普通の分針のように動くように 設計したのだと思います(*2). 一方,5100は1340・50系とは全然違う別設計だと思います. 5100は1340・50系と比較して,クロノグラフ機構が全く異なる簡略形ですし, そもそもクロノグラフのパーツが ローター側に全く出ていませんから...(*3) ただ,1340・50系のノウハウを生かし, 構造の簡略化・メンテナンス性の向上・薄型化から, やはりセンター分積算針を採用したのだと思います. 同じセンター分積算針をもつムーブメントですが, 自動巻きクロノグラフ黎明期に開発された1340・50系が 「とにかく自動巻きクロノグラフムーブメントを作る」 ことを目的に開発されたのに対し, クォーツショック真っ最中に開発された5100は 「とにかく耐久性が高くコストを押さえたクロノグラフムーブメントを作る」 ことを目的に開発されたムーブメントなのだと思います. それから,二次的な理由として,先に挙げたクロノグラフ積算針の 視認性があったのだと思います. もちろん,これらのことは単なる推測であって, 今となっては本当の理由を知ることはできませんが... ============================== (*1) http://ca.jpn.org/~chronos/dada/lemania/lemania.htm (*2) 前回も書きましたが,この部分が正しいかどうか私は分かりません^^;;;. あくまで私の予測です. |
2002、10、29 by KoHi |
腕時計クロノラグの謎・・・ インダイアル分積算計はいつから30分になったのか? なぜセンター分積算計は少ないのか? (by KoHi) ============================== 腕時計でインダイアル60分積算計のクロノグラフは過去にもほとんど存在しません. ヴァルジュー,ヴィーナス,ランデロン,ロンジン,ミネルバ, エクセルシオパーク,レマニア,アンジェラス,ユニヴァーサルなどの ムーブメントは,どれを見ても普通は30分積算計,たまに45分積算計があっても, 60分積算計はないようです. それから,懐中時計もいくつか調べましたが, その中にはインダイアルの60分積算計はありませんでした. ただ,いつの時代にも例外はあるわけで^^, その例外とは,モバード(Movado)のCal.90Mと95M, それから,ピアース(と発音するのでしょうか?Pierce)のCal.134です. モバードは9時位置スモールセコンで3時位置60分積算計なのに対し, ピアースは6時位置スモールセコンドで12時位置60分積算計です. おそらくモバードの方は有名だと思います. 有名な「うねうね針」が60分積算計のものがあります. さて,インダイアル分積算計が30分が主流である理由ですが, 「目盛りが小さくなって見にくい」とか 「目盛りの60等分が難しいからそれはスモールセコンドだけにしたい」 といった難しい理由ではなく,単純に 「スモールセコンドと区別するため (by ブライツさん)」 つまり, 「60で目盛りづけられたインダイアルが2つあると間違いやすいから」 だと思います. 実際,モバードにはうねうね針でない60分積算計をもつ時計もありますが, これだとどちらが積算計か分かりませんでしたから^^;;;... なお,モバードの場合はうねうね針にしたり針の色を変えて, ピアースの場合はインダイアルのサイズを変えて, この誤読を無くそうとしている努力を感じました. 時計史(というほど大げさではないですが^^;;;)という観点から考えれば, 最初はインダイアルの積算計がないセンター秒積算針をもつ 懐中時計のクロノグラフが生まれたのだと思います. そしてその後,分積算針,次いで時積算針が追加されていったのだと思います. 腕時計クロノグラフができたのはこの分積算針を追加する時点でしょう. 「機械式時計の名品(栗崎賢一著)」で,氏が腕時計クロノグラフ第一号として 挙げているロンジンのクロノグラフが, すでにインダイアル30分積算計をもつものでしたから... 分積算針を追加する際,ロンジンのCal.12.68Z(*1)やミドーのCal.1300(*2)のように, センターに追加したものはいくつかあります. ただこれらは少数派で,腕時計クロノグラフが一般的になるにしたがって, インダイアルクロノグラフが標準となったような気がします. そのときに分積算計も見やすさから30分積算計が主流になったのだと思います. そうなると,ムーブメント供給会社はそのようなムーブメントしか供給しなくなり, ますますその流れが加速した,と考えました. なお,センター分積算針をもつ自動巻きクロノグラフムーブメントには, 70年代にレマニアが開発した1340系,1350系と5100があります. しかしこのいずれも生産終了もしくは生産終了が決まっています(2002年10月時点). なお,ジラールペルゴの「ヴィンテージ1960クロノグラフ」もセンター分積算針でし た. また,2002年のバーゼルフェアで,ミドーが「マルチフォートクロノグラフ」という 時計を発表していました.これは,時分針とスモールセコンド(3時位置)以外に, センター秒積算針と分積算針,それに12時間積算計(6時位置)をもつクロノグラフで, おそらくETA2892系にモジュールを加えたクロノグラフだと思われます. ではなぜ,センター分積算針のクロノグラフは現在主流ではないのでしょうか? その理由は,ずばり, 「センター分積算針を1分間で1回動かすのに必要なトルクが大きすぎる」 からだと思います. 通常,クロノグラフのインダイアル分積算針は, 秒積算計が1分間動くたびに1目盛り進みます. この動きのおかげで分を読みとる際の誤読が少なくなります. 一方,この「1分間で1回」センター分積算針を動かすのに必要なトルクは, インダイアル分積算針を動かすのとは比較にならないほど大きいと考えられ, したがってジワーっとしか動かせないのではないでしょうか?(*3) パッと見た視認性は圧倒的にセンター分積算針の方が上だと思いますが, 正確に分を読みとるという点では,インダイアル分積算計の方が上だと思います. もちろん,センター分積算針はどうしても文字盤デザインの制約が大きくなる という理由もあると思いますが, とうとうクロノグラフの主流とはなり得ませんでした. 今後も,モジュール方式以外で,新規ムーブメントが 新たに作られる可能性は非常に低いと思います. ============================== (*1) ロンジンCal.12.68Z 時分針とスモールセコンド以外にセンター秒積算針と分積算針を持ち, インダイアルのない手巻きクロノグラフムーブメント. ただし,普通の三針ムーブメントでも12.68Zと呼ばれているものがある. (ですので,ムーブメントの番号は間違っている可能性もある) (*2) ミドーCal.1300 バルジューVZを原型としたミドーの手巻きクロノグラフムーブメントで, 時分針,センター秒積算針と分積算針を持ち, インダイアルのないクロノグラフムーブメント. 主にミドーのマルチセンタークロノグラフに搭載されていた. (*3) センター分積算針の動き 私はレマニア5100を搭載したレビュートーメンのエアスピードクロノグラフで この動きを確認しましたが,他の時計および他のムーブメントでは確認していません. ですので,「1分間に1回動く」センター分積算針もあるかもしれません. ============================== |
2002、10、23 by KoHi |