清水のプロ初先発初勝利を支えたスーパーキャッチは、右翼・平田だけではなかった。12日の阪神戦(甲子園)。1回にもらった2点の援護を直後に吐き出した清水は、2回も先頭の木浪に四球を与えた。9番・才木は送りバント。捕った清水は振り向きざま二塁に投げたが、タイミングが際どかった上にワンバウンドした。股が裂けるほど左脚を伸ばし、その送球をすくい上げたのが京田だった。
「高めなら無理ですけど、低いのならカバーするのが僕たちの仕事ですから」。間一髪アウトで1死一塁。無死一、二塁になっていたら、あの試合はどうなっていたことやら・・・。
令和になり、京田はグラブを新調した。昨季に続くシーズン中のグラブ変更は野手にしては珍しいことなのだが、今回はメーカーごと換えた。事情や動機はここでは触れないが、僕が書きたいのは京田は自費で購入したということだ。
平成の間にプロ野球選手が商売道具にお金を払わなくなった。少なくとも平成初期、若手は自腹を切ったバットを折っては泣いていた。頑張れば無償提供の申し出があり、もっと頑張ればメーカーの方から報酬を伴う契約を提示される。広告塔になることは一流のステータスだった。
「僕も買っていたし、先輩からもらうこともあった。そうやって道具の合う、合わないを覚えていったんですよね」。奈良原内野守備走塁コーチは1991年入団。グラブやバットは買うのが常識だったが、今は2軍選手でも提供されるのが当たり前。今回がプロ初購入の京田は、1個4万円のグラブを2個買った。
「買わなきゃ覚えない。そう考えました。捕球面がスッと正面を向いてくれる。いいグラブだなと気に入っています。面が黒色なのも好きなところです」。時代が移れば常識も変わる。だけど、わずかな出費が億をもたらす。プロ野球がそういう世界であることは変わってほしくない。