【大相撲】北勝富士見事! 相手は大関だが大金星に匹敵2019年5月15日 紙面から ◇北の富士評論「はやわざ御免」3日目は大荒れとなった。2日目までの平穏な土俵は高安が御嶽海に敗れたのを境にして一気に修羅場と化した。2日間万全の相撲をとっていた豪栄道が遠藤にいいところなく負けた。 立ち合い左からの張り差しに出た豪栄道は踏み込みもなく定位置。しかも腰高。悪いところだらけである。悪い時には悪いことが重なるものらしい。遠藤もどうやら右から張っている。この張り手は両者共に失敗であった。しかし、遠藤は素早く右でまわしを引いて、迷わず前に出る。左も十分に差して、しかも、かいなが返って万全の体勢だ。豪栄道は何の抵抗もできずに土俵を割った。 まさか遠藤をくみしやすしとみたわけでもないだろうが、実に雑な立ち合いをしたものだ。せっかく絶好調の相撲が続いていたのにもったいないといいたいところだが、豪栄道にそれほどの余裕があるとは思えない。4日目は琴奨菊である。3日目のような立ち合いだと一気に持っていかれかねない。本来の頭を下げる低い立ち合いに徹するべきだ。あの張り差しはもう使うべきではない。 お次は貴景勝である。私はラジオで解説をしていたが、100%北勝富士の勝ちはないと言い切ってしまった。北勝富士の2日間のだらしない負け方に怒り心頭に発していたので、一気に押されると思い込んでいたのである。ところがである。相撲はとってみなければ分からないと昔の人はよく言っていたっけ。 立ち合いは当たり負けして押し込まれた北勝富士だが、得意の左おっつけがうまく貴景勝の脇の下に入った。その手をぐっと押し上げると、貴景勝の体が持ち上がったではないか。ここが勝機とばかりに北勝富士の喉輪が効いて、貴景勝の腰が崩れた。そこを逃さず北勝富士が一目散に前へ出て、今が盛りの新大関を仕留めた。相手は大関だが、これは大金星に匹敵する一番である。 やればできるではないか、北勝富士。この一番は褒めて取らそう。どうですか、この手のひらを返したような小生の変わり身は。何と言われようが気分が良い。俺の富士をつけた孫弟子会心の相撲を喜ばずにいられようか。今夜は一杯やりたい気分だ。それから、結びの鶴竜も勝負には勝ったが、相撲は負けていた。琴奨菊があの右手さえヒョイと引っ込めたら勝っていただろう。もったいない。 さて、このぐらいで、とりあえずビールからやろうか。 (元横綱)
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