提督の憂鬱 作:sognathus
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それぞれのチームのテーブルを回り、完成を確認した那珂が解説隻の霧島に向って呼びかけた。
*舞台裏的でメタな発言あり。
*登場人物が多いのでセリフの前に名前あり。
「霧島さーん! 皆料理できたみたいだよー! 那珂ちゃん確認しましたー!」
「あ、そうですか。ありがとうございます。それでは試食といきましょう!各チーム、順番にここに運んできてください。先ずは金剛チームからですね」
コトッ
「頑張って作りました! 味は保証しますよ!」
「ほ、ホントよ? ワタシも頑張って作りマシタ! だから食べてミテ!」
「そうか、では頂くか」
「うむ!」
パクッ
「ん……美味い」
「ほ、本当デスカ!?」パァッ
「ああ、だが点数としては50点くらいだ。本当に普通のカレーだからな」
「エッ」ガクッ
「……」(まぁ本当に普通に作っただけだしね。でも意外に厳しい採点だなぁ。次の機会は本気で頑張ろう!)
がくりと項垂れる金剛に申し訳なさそうな顔をしながら、比叡は既にこの時今回の結果の挽回に静かに心の中で燃えていた。
「おかわりっ!」
「あなたはしっかり審査してください! はい、金剛チームありがとうございました。次、一航戦チームお願いします!」
コトッ
「どうぞ」ニコッ
「……」ズーン
「頂きます」(加賀……?)
「いただきます! もぐ……辛っ!?」
「……」ヒリヒリ
口に入れた瞬間、思わず水の入ったコップに手を伸ばしたくなる様な衝動に駆られる辛さに提督と長門は襲われた。
赤城はそれを予想していたらしく、辛さに口ごもる提督と長門を見て苦笑しながら言った。
「あ、やっぱり?」テヘッ
「……っ」ビクッ
「赤城、これは?」
「えっと、ちょっとカレーの味で失敗してしまって、それを隠すために香辛料を沢山使いまして……」
「なるほどな」
「……」プルプル
「取り敢えず、30点といったところだ」
「……っ」ジワッ
「まぁ、同感だな。おかわり!」ガツガツ
「ほんと、何でも食べますね」
「……」グス
涙を滲ませて落ち込む加賀に提督は声を掛けた。
「加賀」
「……はい」
「一航戦のプライドに拘らずよく料理を出したな。立派だと思うぞ」ナデ
「た……いさ……。はい、次は本当に美味しいものを作ってみせます」
(そういう慰め方もあるのね。流石大佐)
赤城はそう提督が加賀を慰めるのを見て、彼の気の回し方に感心していた。
「はい、一航戦チームの方ありがとうございました。次の奮闘に期待ですね! では次、五航戦チーム尾根がします!」
コトッ
「どうぞ♪」ニコッ
「おお、これは……」ジュルッ
「美味しい、筈よ。うん、絶対に大丈夫よ!」
「ふむ、頂きます」
「美味い!」
「挨拶くらいしてください」
食事の挨拶もせずいきなり歓喜の声をあげる長門に霧島は鋭く注意をした。
「うん、これは美味いな」モグモグ
「本当ですか? やったぁ♪」パァッ
「良かったぁ……」ホッ
提督の言葉を聞いて翔鶴と瑞鶴は嬉しそうに胸を撫でおろした。
「パイナップルを入れたんだな。うん、まろやかな酸味が良い感じだ」
「うまいうまい!」ガツガツ
「……もういいです」
「ああ、これは80点くらいでもいいな」
「……それでも80点なのね。大佐、厳しくない?」
出来にそれなりに自信があったのだろう。
提督の採点を聞いて瑞鶴は少し不満そうな顔をした。
「瑞鶴っ」
「翔鶴、いいんだ。まぁ美味しいのは間違いない。だけど簡単に高い点数をあげてもお前達の後にもっと美味いのがきたら採点の時に困るだろう?」
「……なぁるほど。つまり80点以上は無いという事ね」ニヤッ
「良い自信だ」ニッ
「ず、瑞鶴……」アセアセ
「翔鶴、美味かったぞ。機会があったらまた食べたいくらいだ」
「え? あ……よ、喜んで!」パァッ
「その時は私も呼んでくれないと嫌よ? お願いね」
それは姉を独り占めされるかもしれないという焦りからか、それとも提督への恋心故か。
はっきりとは分からなったが、瑞鶴は翔鶴の後に直ぐにそう続いて提督に言った。
「はい、五航戦チームの方ありがとうございました。はい、次は規格外チームの方です。どうぞ!」
コトッ
「もう! 島風達が先に出したかったのに!」
「まぁまぁ」
「頂きます。ん……これは肉が凄く柔らかいんだな。うん、味も文句ない」モグモグ
「はぁ、こんなにカレーが食べられるなんて幸せだなぁ♪」モグモグ
「……長門さん、さり気なく何処かの空母のポジションも食べようとしてませんか?」
「どう? 美味しかった?」
「ああ、美味かったぞ。70点だ」
「えーーー!? 100点じゃないのー!? 頑張ったのにー!」
提督の採点に明らかに不満そうな声をあげる島風。
それに対して雪風は先程の翔鶴のカレーを見ていて思うところがあったのか、そう気にしてもいない様子だった。
「んー、まぁこれくらいだよ島風ちゃん。翔鶴さん達の方が味は美味しそうだったし」
「ぶぅ、悔しい!」ムスッ
「島風ちゃん……」
「……だが、確かに料理ができたのはお前が一番早かったな」
「! でしょ!? 島風と雪風ちゃん凄く頑張ったもん!」パァッ
(え? そんなのでいいの!?)
島風の態度の急変に雪風は危うくこけそうになった。
「今度は味も一番を目指せばいい。期待しているぞ島風」
「うん! 任せておいて!」
「雪風、美味しかったぞ。今度はもっと美味いのを頼む」
「は、はい! 雪風頑張ります! ありがとうございます、大佐!」パァッ
「はい、規格外チームの方ありがとうございました。残すところ後2組となりましたね! では、雷電響+1チームの方どうぞ!」
コトッ
暁「ぷ、ぷら……」ヒクッ
電「暁ちゃん、我慢なのです!」
響「興奮しちゃだめ」
雷「はい! 雷達のカレーよ! 食べてみて!」
「ん、頂きます。……ほう」
「おお、これは!」
暁達のカレーを口に含んで提督と長門はお互いに驚いたような表情をした。
暁「美味しいでしょ?」
雷「当然だわ!」
電「頑張ったのです!」
響「優勝は間違いないね」
「うん、これは本当に美味いな。香辛料が良い感じだ。肉も柔らかい」
「お前達、凄いじゃないか。お姉さん感動でおかわりしてしまうぞ」
「さっきから他のもしてるじゃないですか」
「うん、点数は79点だな」
暁・雷「えー!?」
電「はわわ……」
響「なんと」
翔鶴達のカレーに勝っている自身があったらしい。
暁達は目に見えて残念そうな顔をした
「悪いな。カレーとしての出来は翔鶴達に匹敵するのは間違いないが、如何せん先に食べた翔鶴達の物の方が俺の好みだったんだ」
暁「そ、そんなぁ」
雷「むぅ、これは痛いわね。そういえば大佐の好みを考えてなかったわ」
「ん? 私の好みは?」
「あなたはなんでも食べるじゃないですか」
響「だね」
電気「なのです!」
「む、これは手厳しいな。はは」
「そういう事だ。だが事実上は同格だと思っている。誇っていいぞ」
暁「むぅ……ちょっと納得いかないけど、まぁいいわ。今度は大佐好みのカレーを作ってあげるね!」
「ああ、期待してるぞ」
「はい、暁ちゃん達ありがとうございました。さて、次で最後ですね……下妹チームどうぞ!」
コトッ
「だから、その下妹ってやめてくれないかしら」
「はい。大佐どうぞ」
「ありがとう。頂きます」モグ
「お? 何か匂いが翔鶴達の時と様に独特の……もぐ、ほほう」
「これは……美味い」
「ほ、本当ですか!?」パァッ
今ままでも美味いという言葉を提督は言ってきたが、今度のそれは他のものとは違う感じだった。
口に含んだ後、その美味しさからか少し口元が緩んでいるように見えた。
その言葉に羽黒は泣き出しそうな笑顔をし、足柄は素っ気ないながらも髪をかき上げながら恥ずかしそうにその賛辞を受けた。
「……そ」ホッ
「具や辛さ、匂いもさることながら、このまろやかさ……チョコか」
「まぁね。でも甘くはないでしょ? 普段はあまり使わないんだけど、今回のは香辛料も使ったの。調整に苦労しけど、その甲斐あったみたいね」
「90点」
「え?」
提督の突然の採点に霧島は驚いた顔をした。
だが一緒に並んで座っていた長門はその決定に異論はないようで、目を閉じて座りながら落ち着いた態度で言った。
「ん、まぁ文句ない」
「90……? え、それって大佐……! ね、姉さん!」ウルッ
「……いいの? 私達で?」
「先に頑張った奴らには悪いが、これは正直な気持ちだ。美味いぞ」
「……そう。ありがとう」ニコッ
「おおっと、これは最後の最後で勝負が決まったようですね! 優勝は下妹チーム、足柄さん達です!」
出場した選手の控え場所では、各々がその結果を感慨深げな様子で見つめていた。
翔鶴「ふぅ……残念。でも仕方ないわね」
瑞鶴「翔鶴姉、ちょっとあのカレー食べてみようよ。大佐好みの味見逃せないもの」
暁「むぐぐ……最後の最後で……」
響「薄々には感じてたけど、やっぱり足柄さんが一番の強敵だったね」
雷「やるわねー! あ、作ったカレー皆に配り始めたわよ!」
電「研究なのです! 皆行こう!」
加賀「……」モグモグ
赤城「加賀さん美味しい? え? 美味しいのが逆に辛い? そう。ふふふっ」
島風「もぐもぐ……。はぁ、こんな美味しいの早く作れるかなぁ」
雪風「島風ちゃん早く作る必要はないよ。こういうのは『一番』を目指せばいいんだよ」
金剛「Oh! delicious ネ! こんなのいつか自分で作りたいナァ……」
比叡「お手伝いしますよ。お姉様!」(でもこれ本当に美味しい。これは研鑽に励まないといけないわね!)
今日は月曜なので、真面目なイベントの攻略の続きは次の休みにでもするつもりです。
難易度を全て甲でクリアした人に贈られるあの勲章。
何か意味があるんでしょかね……。