提督の憂鬱 作:sognathus
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砲弾が風を切る轟音が聞こえた。
どうやら仲間の援護が始まったようだった。
音に気付いた山城が連合艦隊機関の姉にそれを知らせる。
*登場人物が多いので途中までセリフの前に名前あり。
山城「姉様! 支援砲撃来ました!」
利根「良いタイミングなのじゃ!」
扶桑「そうね。これならいけそう。皆、まだいけますか?」
加賀「……お風呂……」ボソ
赤城「あ、大丈夫だそうです」
筑摩「え? あ、はい。私は大丈夫です。第二艦隊の方はどうですか?」
筑摩の声に僅かな間の後、ノイズ混じりの声が返ってきた。
ゴーヤ『大丈夫でち!』
初春『余裕じゃ♪』
潮『任せてください!』
吹雪『右に同じく! 初霜ちゃん?』
初霜『任せて! 大丈夫よ!』
神通『絶対に負けません。心配はしないでください』
扶桑は彼女達の声を聞いて決断した。
敵目標への最終攻撃を。
扶桑「……皆、頼もしいですね。では……征きます! 全艦突撃!」
ドッ!!
深海棲艦達「……!」
それから数十分後、扶桑達の連合艦隊は、支援砲撃の助けもあって被害らしい被害も受ける事無く、完勝と言っても差支えが無い程の圧倒的な勝利を収める事ができた。
利根「ふぅ、完勝じゃな♪」
山城「姉様、やりましたね!」
神通『目標の沈黙を確認しました。任務完了です』
加賀「お風呂、お風呂……」ヌギッ
赤城「加賀さん、ここで海に入っちゃうと傷に沁みるわよ」
筑摩「ふぅ……。やりました♪」ニコッ
初春『ふむ、上々じゃ。ようやったのう潮』
潮『あう……。え、えへへ。ありがとうございます』テレッ
吹雪『何とかなりましたね』
初霜『お疲れ様ぁ♪』
皆が口々に勝利の結果に安堵し、喜びの声をあげるなかで旗艦の扶桑の声が無線から聞こえていない事に気付いたゴーヤは気付いた。
彼女はその事が気になり扶桑に呼びかける。
ゴーヤ『扶桑さんどうかしたの? さっきから静かね』
扶桑「あ、ゴーヤちゃん。あなたの位置からならここよりよく見えないかしら。あそこ、私達が戦っていた場所に何か見えない? 何か動いているような……」
扶桑の言葉を聞いて直ぐに緊張感のある顔に戻ったゴーヤは、先程の戦いでまだ残り火が消えずに残っている場所を注視した。
ゴーヤ「んん……?」
確かに何かが見えた。
火が燃える海の上で何かの黒い影が動いているのが。
ゴーヤ「……」
討ち損ねた敵かもしれない。
ゴーヤは静かにその身を海に浸けると、音を立てずに静かに影が見えた個所へと近づいて行った。
???「……っ、……っ!」
段々影の主の声が聞こえてきた。
どうやら何か焦っているらしい。
これは好機かもしれない。
仲間が敗北したことに動揺して混乱しているのかも。
ゴーヤ「……」カチャッ
ゴーヤは魚雷の発射装置を構えつつその影を撃沈するか追い払うか、危険度を判断する為に更に近付く。
影の主の声が今度は明瞭に聞こえた。
???「あちっ、熱っ!」ゴロゴロ
ゴーヤ「……ん? あれはぁ……」
ゴーヤは影の正体を確認して驚いた顔をした。
「初めまして! 呂500です! ロウと呼んでもらえると嬉しいですって!」
「……」
提督の前に白い肌に銀色の長髪といった出で立ちの大人しそうな少女がいた。
だがその少女は大人しそうなその様な外見をしていたものの、意外にも活発そうな笑顔と明るい声で自己紹介をした。
自分の自己紹介に特に何も言わずに鈍い反応を見せる提督に、呂500と名乗った少女は困惑した顔をする。
「あの、提督? わたし、何か気になる事でも?」
「ああ、いや……。すまない、少し待っててもらえるか?」
「はい、 分かりました!」
ようやく自分の声に反応してくれた提督に呂500は安心した様に再び明るい顔に戻り、元気よくそう答えた。
「扶桑」
提督の後ろで成り行きを見守っていた扶桑を提督は声を潜めて呼んだ。
「はい」
「言いたい事は解るな? どういう事だ?」
「はい、ユウちゃんの事ですよね」
「ユウ……。やはりドイツの、潜水艦なんだな?」
「ええ、まぁ……」
「自分の名を日本式に言っているが、どういう事なんだ? 改修を受けて最終的にそうなるとしても、あの姿でそれを名乗るとは……」
「私達も最初は驚いたんですが、本人によると……」
『なんだか凄い衝撃で目が覚めたんです。そしたら文字通り海面は火の海で……。熱くて転げまわっていて気付いたい時には自分をそう認識していましたって!』
「……という事らしいです」
「……龍鳳の時と似たような既視感を感じるな」
提督の脳裏に初体面でいきなり自分の事をお父さんと呼んだ大鯨の頃の龍鳳の姿が浮かんだ。
彼女は自分を移送していた船が敵の攻撃を受け、運よく無事だったものの機能停止中に受けた衝撃が原因で提督を自分の主人として認識する為の機能にエラーが生じてしまったのであった。
今回の呂号の件もシチュエーションは違えど、受けた衝撃によって艦娘の自己認識機能に影響が出てしまったという点で龍鳳の件と類似していると言えた。
「あの時の戦いはまさしく完勝でしたが、それも支援砲撃のタイミングとピンポイントの着弾、それと私達の奮闘があってこそでした。ですが当然それを可能にした攻撃の激しさは相応のものでして……」
「結果、お前達が倒した深海棲艦の一人が交戦中に艦娘に戻る際にその衝撃を受けてしまったという事か」
「恐らくは」
「大体把握した。まぁ問題はないだろうが、一応記録はしておけ」
「分かりました」
「待たせて悪かったな。……ロウ?」
「いえ、大丈夫ですって、なんですか? 提督」
呂500は提督の様子を窺うような声にも相変わらう元気な声で応じた。
「ん、そうだな。先ずは俺の事は提督でもいいが、ここでは大佐と主に呼ばれている。だからできればお前にもそう読んで欲い。階級は気にするな。お互いの信頼を表すための愛称とでも思ってくれ」
「大佐ですか? 分かりました! じゃぁわたしもこれからは提督をそう呼びますねって!」
「ああ、ありがとう。それとな」
「はい?」
「お前の名前なんだが、自分でも分かっているとは思うが今の姿は……」
「あ、はい。ドイツの艦である事は解っています。本当は改修を受ける事によって段階的に自己認識も変化するんじゃないかなって思いますって!」
「ああ、いや。その事は解っている。まぁ気にするな。その事じゃなくてな」(改修で性格も変わるのか? だとしたらドイツ艦の時はどういう性格だったんだ?)
提督は呂500の本来の性格が少しだけ気になった。
やはり見た目通りの大人しい性格だったのであろうか。
それに対して呂500は提督のそんな思いなど知る由もなく、話の続きを促した。
「はい、なんですか?」
「お前の呼び方だが、ロウよりユウと呼びたいんだが」
「え? ユウですか? それってドイツ艦の方ですよね? 確かに今はその姿をしているけど、どうせ呂号になるのならこっち方が……」
呂500は提督の提案に不思議そうな顔をした。
どうも自分が日本の艦だという意識が強いようで、海外艦の方の名前に若干抵抗があるようだった。
「いや、そういう効率的な理由ではないんだ。その、なんだ。ユウの方が女らしくて良くないか? 俺もその方が呼び易いと思うし」
「え? お、女らしい? だからそうわたしを……?」
呂500は提督の言葉を聞いて目をパチクリとさせた。
「そうだ。お前さえ良ければだが」
「……大佐は」
「ん?」
「大佐は、わたしを艦娘としてじゃなくて、女の子と意識してくれるのって?」キラキラ
呂500の提督を見る目が輝いていた。
その反応は明らかに提督の提案を彼女が喜んでいるのを表しているようであった。
「……一応兵器という認識は持っている。だが軍人としては甘いとは思うが、少なくとも俺はお前たちの事は人と同じように接したいと思っている」
「……っ」プルプル
「? どうしたユ――」
「うきゃー!!」ダキッ
「っと……。ぐ……ど、どうした……?」ギリギリ
妙な奇声と共にいきなり抱き付いていた呂500を何とか抱き留め、提督は締め付けられる感触に耐えつつ彼女に訊いた。
「大佐! わたし今とっっても嬉しいって! なんかそう言ってもらえて何というかなんと……う……えへへ♪」スリスリ
「そうか、じゃぁ呼び方は?」
「はい! どうぞユウと呼んでください! わたしもその名前がいいって!」
「そうか、じゃぁよろしくなユウ」
「はい! よろしくお願いします!」
こうして見た目はドイツでも既に中身は日本という奇妙な艦娘がその日、新たに提督の基地の仲間になった。
E-3クリアしました。
結果的にはストレートに4回ゲージ撃破で直ぐに終わる事ができましたが、最後の一回の連合艦隊の編成を攻略でよく見る機動部隊のものにしたところ、何か最後までヒヤヒヤする事にw
ボスまでは運よくスムーズに辿り着いたものの、決戦支援がE-2で空母を入れたデフォルト編成が敵をほぼ壊滅させたのに対して、威力と命中率を重視して空母を入れない戦艦4隻を入れたものを使ったら前者と比較して結構残念な結果だったり。
取り敢えずE-4まではクリアしたいですね。
難易度どうしようかなぁ。