SU-METALの虚空のスキャット!From Dusk Till Dawnの重要性を考える。 | ベビメタ・ラブ <BABYMETAL LOVE>

ベビメタ・ラブ <BABYMETAL LOVE>

メタル世代より少し年上のロック世代からのベビメタ愛ブログです!
BABYMETALについて思いきり主観で書いてますがご容赦を!


テーマ:

今年初のBABYMETALメインライブで披露されたFDTDこと”From Dusk Till Dawn"。

 

2thアルバムのEU盤US盤に収録され、日本盤には収録されていないこの曲については、全楽曲の中で一番BABYMETALらしくないとも言える曲で賛否両論あるようですし、再現するのが難しい曲で、もし披露するとしたら、歌も演奏ももっとマニピュレーターに頼って、ダンスが主体のステージになるものと思ってました。

 

しかし、Hollywood Palladiumで披露されたFDTDは、生歌と生演奏がとんでもなく素晴らしくて、想像を超えるクオリティの高さに感動しました。

 

会場の目撃したメイトさんも大変興奮、感動したようで、いくつもの動画がアップされていますね。

 
これは音質のいい動画。SUの力強い歌唱と青山神の粒ぞろいのドラミングが絶妙に美しく絡み合う。最高です。

 

”From Dusk Till Dawn"は、2thアルバム”Metal Resistance"海外盤の全12曲中の7曲目に入っていました。

日本盤では”シンコペーション"が入っている位置です。

 

EU盤のジャケット

 

■2thアルバム”Metal Resistance"EU盤の曲目(太字が日本盤と異なる曲です)

1.「Road of Resistance」
2.「KARATE」
3.「Awadama Fever」
4.「YAVA!」
5.「Amore」
6.「Meta Taro!」
7.From Dusk Till Dawn
8.「GJ!」
9.「Sis. Anger」
10.「No Rain, No Rainbow」
11.「Tales of The Destinies」
12.THE ONE - English ver. -

 

 全12曲中の7曲目というのは、我々のように若い頃、アルバムをLPレコード(アナログ盤)で聴いていた世代にとっては、片面6曲ずつ収録されているレコードB面の1曲目がイメージされます。

 
アーティストにとって、アルバムの曲順は重要です。

 

現在は、音楽がデジタル化され、曲を自由にシャッフルしたりして聴ける時代になってしまい、曲順は昔ほど重要ではなくなっているのかもしれませんが、LPレコードでアルバムを聴いていた私たち世代の頃のアーティストは、おそらく今のアーティスト以上に曲の順番や配置にこだわっていたのではないかと思います。
 
何しろLPレコードに針を落としたら、片面を通して聴くのが普通でしたので、レコードのA面B面それぞれにどの曲をどの順番で配置するかは、アーティストにとってとても重要だったのです。
 
例えば本ブログで何度か取り上げたQUEENの場合、ファーストアルバムではギミックだなんだと英国メディアに散々叩かれ、セールスも芳しくなかったのですが、セカンドアルバムでは一転して高評価を得てセールス的にも成功しました。
 
そのセカンドアルバム「Queen Ⅱ」は、A面がWhite Side、B面がBlack Sideとなっていて、A面とB面が「白と黒」という対照的なイメージのコンセプトアルバムとなっていました。
 
「Queen Ⅱ」のジャケット
 
BABYMETALの2thアルバム”Metal Resistance"海外盤もまた、”From Dusk Till Dawn"が7曲目に入ることで、「Queen Ⅱ」と同様に、A面とも言える前半6曲と”B面”の後半6曲が対照的な世界となる見事なコンセプトアルバムに仕上がっているように思います。
 
 
前半6曲はファーストアルバムを受け継ぐような、BABYMETALらしいポップで楽しくポジティブな楽曲が並びます。
 
ところがB面1曲目”From Dusk Till Dawn"では、一転してダークな世界に突入していきます。
 
 
夕暮れから夜明けまで”From Dusk Till Dawn”の世界を静かに浮遊するような序盤のアンビエントなムードの中、SUの力強く美しいハイトーンボイスが響き渡ります。
(ここからFDTDの歌詞を引用しますが、歌詞が正式に発表されておらず、ネイティヴの人のヒアリングでも個々に微妙に違うので、ご参考まで。)
 
In the air…
Pray your way
In the air… in the air…
 
翻訳サイトの” ハワイとプログレとBABYMETAL”様が、この”In the air…Pray your way”の部分を”虚空に祈りを馳せよ”と訳されていて、なるほどと感心しました。
 
 
”Pray-祈り”と合わさることで、in the airを”虚空”という宗教用語に訳されたのだと思いますが、70年代のプログレに造詣の深い”ハワイとプログレとBABYMETAL”様が、”虚空”という表現を持ち出されると、プログレの歴史的名盤であるPINK FLOYDのアルバム「狂気」(原題は”The Dark Side of the Moon”)の中の一曲、”虚空のスキャット”を想起せずにはいられません。
(”ハワイとプログレとBABYMETAL”様はブログの中で、70年代プログレの名盤として、やはりこのアルバムをあげていらっしゃいます。)
 
 
これがPINK FLOYDの”虚空のスキャット”。
FDTDのSU-METAL のクールな”虚空のスキャット”とは対照的で、苦悩や怒り、あるいは恍惚など、様々な感情の入り混じったようなエモーショナルなスキャットです。
 
 
虚空とは、何もない空間を意味する一方で、仏教では「何も妨げるものがなく、すべてのものの存在する場所」を意味するそうです。
 
「何もないから、すべてが存在する。」
うーん、深いですね。
 
 
ただ”ハワイとプログレとBABYMETAL”様も、この”From Dusk Till Dawn”の難解な歌詞にはそれ以上踏み込まれず、”基本的には連想ゲーム的な言葉遊びということで良いのではないか”とされています。
 
客観的には確かにそうかもしれませんが、客観性に乏しい主観的ベビメタラブな本ブログでは、あえてこの歌詞の内容を無理やり掘り下げてみようと思います。
 
 
 
In the air…Pray your way”(虚空に祈りを馳せよ)と歌った後に、SU は”夢、感じる、ひとり、永遠、心、寒く、温かい思い出”など、まるで夢の断片のような言葉を一つずつ語りかけます。
 
Dream… Feel
Alone… Forever
Heart… colder…
And warm… memories…
 
そしてその後もメタファーのようで詩的な歌詞が続いていきますが、それまでの夢の中を浮遊するような世界の終わりを予感させる不安さが、徐々に増幅されていきます。
 
Get off my face
More day after day
And reaching to fate
So instincts so faint
 
(それを)私の前から遠ざけ
(それは)日増しに増えていき
そして運命に到達する
そう本能はとてもか細い
 
 
そしてSUが夢の終わりをクールに告げるのです。
 
I’ll wake from the dream
To keep and relive
‘Cause life it is a dream
And thing’s on a BREAK!
 
私は夢から醒める
生存し続けるために
人生、それは夢だから
事物は中断する!
 
 
この”BREAK!”というSUの宣言とともに、突然激しいメタルのリフが夢の世界を切り裂いていきます。
それまでの静寂な闇夜を浮遊するような夢の世界とは対照的なブルータルなメタルワールドに突入するのです。
 
さらにSUは歌います。
 
All it’s over
Never ever
All it’s over

Never ever

In the air…
In the air…
 
全ては終わる
それは2度と決してない
 
虚空へ 虚空へ(祈りを馳せよ)
 
と曲は終息していきます。
 
FDTDは、前半6曲の楽しい夢のようなベビメタワールドが終わり、後半のリアルでダークな世界へと入っていく幕開けのような曲とも解釈できます。
 
 
 
 
"FDTD"の後にYUIMOAのBLACK BABYMETALによる2曲が続きますが、どちらもこれまでのBABYMETALの楽曲の中で最もヘビーな本格的なメタルとなっています。
そしてその一曲では、YUIとMOAが”ざっけんじゃねーぞ”と罵り、強い怒りを訴えています。
 
そこにはファーストアルバムのように、パパにおねだりしたり、”4はしあわせの4”と歌った天使のようなBLACK BABYMETALは存在しません。
 
 
そして続く”No Rain, No Rainbow”では、SUが絶望について歌います。
 
絶望さえも光になる
止まない雨が降り続いても
絶望さえも光になる
悲しい雨が虹をかけるよ
今も
 
 
 
 
FDTDで夢の終わりを告げた後、怒りや絶望について歌うBABYMETAL。
 
PINK FLOYDの狂気(The Dark Side of the Moon)になぞらえると、まさにBABYMETALのダークサイド、”The Dark Side of BABYMETAL”とも言えるアルバム展開となっていきます。
 
 
そしてアルバムのラストを飾るプログレ組曲「Tales of The Destinies」と「THE ONE」に到達します。
 
 
「Tales of The Destinies」は、
”運がない!ツイてない!答えはいつも
とこの曲もまたネガティヴな歌詞で始まり、まだまだダークサイドが続いていきます。
 
あれじゃない これじゃない
答えはどこに
ない!ない!ない!ない!
 
何もなく、答えも見つからないことへの苛立ちの歌詞とともに混沌としたサウンドが続いた後、ベビメタらしい痛快なメロディのサビとともに歌詞も一変します。
 
Don’t worry さあ 生まれ変わる
Count down
始めていこうよ
Set me free !
 
ここで、FDTDで繰り返し歌われた”in the air-虚空に”という言葉が想起されます。
虚空とは、何もない空間を意味する一方で、仏教では「何も妨げるものがなく、すべてのものの存在する場所」を意味するものでした。
 
 
ない!ない!ない!ない!
 
何もないから何も妨げるものがない。
 
だから生まれ変われるのです。
 
「Tales of The Destinies」は、苦悩のカオスから抜け出していくような曲構成のプログレ楽曲ですが、最後はこう結ばれます。
 
止まらない 終わらない
果てしない ジャーニー
僕らはひとりじゃない
Now and forever
それがデスティニー
The one will be with you
我らが the destinies
 
 
"(生まれ変わった)僕らはひとりじゃない、果てしない旅は永遠に続く、それが我らのディスティニー"、と歌い、
それが最後の曲「THE ONE」で繰り返される
 
We are THE ONE
Together
 
というメッセージとして結実するのです。
 
「THE ONE」で繰り返し歌われるこの
”私たちはひとつ さあ一緒に”
という歌詞は、1曲だけで聴くと綺麗事にも聞こえるのですが、ダークサイドの6曲を通して聴くと、この歌詞が、怒りや絶望、挫折に満ちたリアル世界の中での再生と前進を決意し訴えていく曲として切実に迫ってきます。
 
 
”From Dusk Till Dawn"が7曲目に入ることで、”Metal Resistance"海外盤は見事なコンセプトアルバムとなっていたのです。
 
 
 
 
”From Dusk Till Dawn"のライブパフォーマンスに感動し、昨年春、”Metal Resistance"海外盤を聴いてからずっと感じていたことを思わず長々と書き連ねてしまいました。
 
 
あくまで私の個人的な想いなので、こんな風に考える珍奇なメイトもいるんだと、笑って許してくださいませ(^^;)
 
 
 


BABY METALランキング

SULOVE-METALさんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります