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【格闘技】

黒田、またも世界に届かず ムザラネに0-3判定負け

2019年5月14日 紙面から

10回、モルティ・ムザラネ(左)と打ち合う黒田雅之=後楽園ホールで(七森祐也撮影)

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◇IBFフライ級タイトルマッチ12回戦

 ボクシングのIBFフライ級タイトルマッチ12回戦が13日、東京・後楽園ホールで行われ、同級4位の黒田雅之(32)=川崎新田=は王者のモルティ・ムザラネ(36)=南アフリカ=に0-3の判定で敗れ、王座獲得に失敗した。黒田は圧力を強めた相手に徐々にペースを握られ、有効打を繰り出せなかった。採点は最大6点差をつけられ、6年ぶり2度目の世界挑戦も実らなかった。戦績は41戦30勝(16KO)8敗3分け。ムザラネは2度目の防衛に成功し、40戦38勝(25KO)2敗となった。

 試合終了のゴングが鳴った瞬間、黒田が血に染まった顔で天を仰いだ。また世界に届かなかった。それは誰よりも自分自身がわかっていた。

 だが、満員の後楽園ホールを埋めたファンからは大歓声。そして判定0-3の敗戦が告げられた後の拍手が、黒田の健闘を物語っていた。

 「終盤に消極的になった6年前(世界初挑戦のWBAフライ級タイトル戦)と違い、最後まで攻めることはできた。応援はうれしかったです。盛り上がってもらえたのは、結果はともかく少し救いになった」

 序盤は身長で8センチ上回る黒田が遠距離からの左ボディーを軸に主導権を握った。だが「拳ひとつ分伸びてくる」という王者の左ジャブを浴び続けた。右目が次第に腫れ、距離感がつかめなくなった。

 「2、3回から右目がぼやけ、相手の左がよく見えなくなった」。中盤以降は王者得意の乱打戦に。果敢に応じ場内は沸いたが、手数でも正確さでも差があった。

 プロデビューから14年。ここまで7敗もしており、引退していいタイミングは何度もあった。

 そんな黒田を動かしてきたのはスパーリングの記憶だった。現WBAバンタム級王者で世界3階級制覇した井上尚弥(大橋)との合計150ラウンドをはじめ、前WBOフライ級王者・木村(青木)、現同級王者でこちらも世界3階級制覇の田中恒(畑中)らと何度も拳を交えてきた。

 「井上君は別格ですがそれ以外の世界王者とは十分戦えた。彼らと僕の違いはなんだろう、という疑問がずっとあって。それがわからないからボクシングにしがみついていた」。諦めない試合は、その思いをぶつけたものだった。

 答えは、また出なかった。「今後については今は何もないです」と、黒田は進退を保留した。だが、どの道を選んでも黒田の名は間違いなく観戦したファンの心に刻まれた。 (藤本敏和)

 

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