晴れやかな表情で言った彼女は、当時18歳の大学1年生。
まだまだ顔にはあどけなさの残るその表情は、日本の高校生と変わりない。
あれから半年が経つが、彼女は大学を休みがちになった。
今や、ふくよかだった彼女の頬は前に比べると痩け、おしゃれに抜かりのなかった髪型もシンプルだ。
そして彼女は時おりため息混じりに言う。
「結婚なんてしなきゃよかった」
そう言った彼女の顔には、嗄れたあどけなさが残るだけだった。
一気に10歳くらい老け込んでしまったかのよう。
タシケント市内での結婚式の様子
ウズベクの人々はとても早婚だ。
女性なら17~23歳、男性は20~25歳くらいには結婚してしまう。
上の彼女のように、学生のうちに結婚してしまう事例も決して少なくない。
そこにはウズベクの宗教・文化的な背景が見え隠れする。
この国の文化では「結婚生活」が人生そのもの、のような位置付けにある。
子孫を育むことこそが幸せであり、義務であり。――なので「結婚」はとても重要視されている。
そして、子どもの結婚に関する決定権を持つのは両親(主に父親)である。
娘が17歳~23歳、息子が20~25歳に達すると、結婚相手を探し始めるという。
結婚相手を探すのは、主に息子の母親の仕事だ。
息子に最も合う女性を探すために、この「花嫁探し」には親戚や隣人なども参加する。
少しでも興味の湧く女性が見つかれば、ソウチと呼ばれる仲人を女性の家に送るという。
そこで女性の家族や生活状況などをじっくりと観察し、合うと判断すれば結婚の話を持ちかけるとか。
結婚話を持ちかけられた女性は、ほとんどの場合承諾するのだという。
これに関しては私の友人がこう述べている。
突然両親に呼ばれて、男性の写真を見せられるなり
「この人と結婚しなさい」と言うの。
少しでも返事を躊躇うものなら、断ったら次にいつ縁談が来るか分からないでしょう、と。
そうして心理的に圧力をかけられて、最終的には結婚に承諾せざるを得ないのよ。
そうして私の親友のほとんどは結婚していったけれど.....
本当の幸せってなんなのかしらね。
海外で色々ことを経験したからか、早くに結婚するだけじゃない、と私は思うのだけど。
と。彼女自身は縁談を断ったことがあるのだという。
彼女は留学経験もあり、修士号まで取った才女だ。
ウズベク社会の中でもかなりリベラルな家庭で育った彼女だが、既に20代半ば。
既に「行き遅れを通り越しておばあちゃん」と呼ばれ始めた彼女は、周囲からの結婚へのプレッシャーも日に日に増しているようだ、という。
それでも彼女の両親は、彼女の意見を尊重して何も言わない。
のちのち、「早く嫁に出さないと... 本当は心配よ」と彼女の母親がこっそり教えてくれたが。
今でこそ、少しずつ彼女のような存在も増え始めてはいる。
最近では、知識層を中心に早婚が少しずつ問題視されはじめてきたようにも感じられる。
(それでも「親の決めた相手と、早くに結婚する」のが大多数だが)
花嫁衣装を着る娘
私自身は地方出身なので、早婚に対してそれほどの問題意識もなかった。
だが、早くして結婚したという私の先生の話を聞いて納得した。
例えば10代で結婚すると、まだ学生だったりするため収入が十分でないことが多い。
結局、結婚後も義両親と同居して、経済的には依存しないと生活できない。
そうこうしているうちに子どもができ、一世帯の人数が増えても収入はそれほど増えないので、家計は火の車。
早くに結婚したために、生活レベルを落とすことを余儀なくされることも珍しくないという。
先生は、「もっとロシア人たちのように自由にできればあんな苦労をしなくてもよかったのに」と、最後に付け加えた。
ちなみに、両親が男女関係に厳しいのは大体タジク人やウズベク人の家庭なのだとか。
確かに、ロシア人や朝鮮人などの他民族は、割とそういうことに関してはオープンな印象を受ける。
タジク人やウズベク人は、昔の日本人に近い価値観を持っているように感じる。
多民族国家ウズベキスタン。
もしかすると結婚観もどんどん変わっていくのかもしれない。
民族でやんわりと住み分けがされているこの国だが、「早婚」に対する意見からも見えるように、他民族の生活を垣間見たり、自分の体験を通して、人々の認識はどんどん変わってきた兆しは見える。
結婚なんてしなきゃよかった、といった彼女は言う。
「若いうちに、もうちょっと自分の足で外を見に行きたかった」と。
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