「…彼女できたんだよ!ホラ、この間言ってた娘!」
彼の携帯の画面には端正な顔立ちの、けれどもまだあどけなさが残る娘の写真が。
なるほど、ついに!それはよくやったね!と彼に携帯を返すと…
間もなく電話の呼び出し音が彼を呼び、それとほぼ同時に彼は通話ボタンを押して嬉々として話し出したのだった。
その顔は普段からは想像できないほどニヤけていて、こっちまでニヤニヤしてしまいそうになるほどのものだった。
彼に事の顛末を聞いた。
その彼女は、なんでも19歳の女の子でタシケント出身だという。彼自身は24歳でカシュカダリヤ州の出身。
それまで直接話したことはなかったが、某大手SNSの大学ページで彼女の写真を見て一目惚れしたのだとか(!)。
それから彼は彼女のクラスメートに秘密裏(!)に彼女の人となりや、恋人の有無を聞き…
「引っかかる部分」が無かったために、某SNSの彼女のページからメッセージを送ってやりとりを始めたのだとか。
結婚は誰にとっても大切なテーマ
ウズベキスタンには今も「少女らしさ」「娘らしさ」をめぐる伝統的かつ宗教的な複雑な性規範が社会に存在する。
親しい男友達を持っていたり、男と話しているところを目撃されただけでも「浮ついている」とすぐに噂が立ち、良い男性は寄ってこない。
そして、他のイスラーム諸国と同様、婚前交渉は当然ながらタブーである。
ウズベク人男性たちはそうした浮ついた噂がない少女を恋人に、ゆくゆくは妻にするたびに、恋人候補の少女のリサーチには余念がない。
そして、引っかかる部分がなければ様々な方法で彼女にアタックする。
一方で、少しでも引っかかる部分があれば「縁がなかった」「変なのに引っかからなくてよかった」とすっぱり諦めるのだ。
そして、そこに更に「年齢」や「出身地」「親兄弟・親戚」といったオプションが加わる。
ウズベキスタンの一般的なカップルは少なくとも3-5歳の年の差というのが一般的だ。
また、地方によって文化や方言も違うことから、同じ出身地の相手を求めることも多い様子。
そして、日本にいると想像できないほど親戚付き合いが頻繁なウズベキスタンにおいては、相手の親兄弟と親戚の人となりも大切になってくる。
もちろんそうした「恋愛観」や「結婚観」というのは人によって大きく異なる。
しかしウズベク社会には
「女性は独立しては生きていけない、結婚しなくてはならない」
「男性は独りで生きていけない女性のためにも結婚し、働き、女性と子供を養わなくてはならない」
「結婚し、家庭を築くことこそが何よりも大きな幸せである」
というほぼ共通といえる考えが浸透している。
そうした社会だからこそ、男女ともに若いうちから「結婚」を意識しているし、実際に初婚年齢は日本と比べると早い。
20代前半で家庭を築いていても普通のことだ。
友人は数週間前からSNSで彼女に猛烈なアタックをしていたことは知っていた。
だが、これは新しいタイプのアタック方法だと思われる。
ウズベキスタンは今もネット状況は良いとは言えず、この方法は現代の都市部の、それも大学という限られたコミュニティであったからこそできた技だ。
話を聞く限りでは、現代の郊外ではもっぱら電話を使ってアタックするのが一般的なようだ。
ウズベキスタンでは急速に携帯電話が普及しており、今や国民の誰もが持っているのではと思うほど。(料金も高くない。)
これについては宗野ふもと氏の『 「電話彼氏」を婿にする―ウズベキスタンの結婚事情 』 (2012,『アジア・アフリカ地域研究第2巻』、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)が詳しい。
郊外の少女が電話を通じて男性と出会い、結婚するまでのストーリーを軸に、ウズベキスタンでの恋愛における「携帯電話」の為すところが書かれている。
写真も交えてあるので読みやすく、興味深い内容である。
だが、そもそも「アタックして恋人(将来の妻)」を得るのは最近までは一般的でなかったようだ。
今もウズベキスタンでは「お見合い結婚」が高い割合で占めているが、昔はほぼ100%お見合いでの結婚だったという。
現代の都市部でのお見合い事情としては、男性の親兄弟・親戚が良い娘を見つけ、ふたりを知り合わせ、あとは任せる… というもののようだ。
一昔前は、男性の親兄弟・親戚が見つけた娘の親兄弟・親戚と話し合って結婚を決めるというものだったらしい。
電話を終えた彼はさらに鼻の下を伸ばして、嬉しそうに私に言った。
「結婚式に絶対に呼ぶから、絶対来てくれよ!」
まだ付き合って0日だし、気が早いんじゃ… と一瞬思ったが、ここはウズベキスタン。
当たり前じゃないか、と返事をした私であった。(何はともあれ、我が友人の幸せを願うばかりだ)
当たり前じゃないか、と返事をした私であった。(何はともあれ、我が友人の幸せを願うばかりだ)
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