ラノベ編集者の『三木一馬』さんが世界観設定と読みやすさの関連性について解説 「世界設定の情報量は読みやすさに比例する」
『世界設定の情報量は読みやすさに比例する』というお話です。書き手の方は、自分の作品がどれくらい読者から「情報量が多そう」と思われているか、読み手の方は、あらすじや概要で自分が「好きな読みやすさ(作品の情報量)」を測る指針になるかもしれません。
作品における、『世界観』とはなんでしょうか。そこには舞台設定が密接に関連しています。わかりやすく、チェックポイント形式にしてみましょう。どんな作品でもかまいませんので、なにかを例に考えてみてください。YはYes、NはNoです。Yの数が多いか少ないかを調べます。
①キャラに『スーパーナチュラル』要素があるかどうか(超能力や魔術といった特殊能力が実在するかどうか)。Y/N ②オーバーテクノロジーがあるかどうか(科学技術が現代よりも発達しているかどうか)。Y/N
③別次元が存在するかどうか(異次元世界でも、隣のファンタジー世界でも構いません)。Y/N ④主人公の周りで不思議現象がおこるかどうか(①~③に該当しない非現実的な現象が日常の中で起こるかどうか)。Y/N
①「キャラに『スーパーナチュラル』要素があるかどうか」は、現実世界の常識を超えている『スーパーナチュラル』な要素をキャラが備えていればYとなります。たとえば『禁書目録』は魔術師や超能力者が出てきますから、Yです。
②「オーバーテクノロジーがあるかどうか」は、たとえばナノマシンやヴァーチャルリアリティは進歩しているか、極端にいうならワープは可能かなどです。『アクセル・ワールド』の脳波を電気信号として読み込むデバイス『ニューロリンカー』は二〇四〇年代の最先端技術ですから、これがあてはまります。
③「別次元が存在するかどうか」は、現実世界から異世界に転生する、といった設定などもこれにあてはまります。『ソードアート・オンライン』のゲームにログインする設定も別の世界と考えていいでしょう。これもYとなります。
④「主人公の周りで不思議現象がおこるかどうか」は、空から宇宙人が降ってきたり、同じ時間をずっと繰り返したり、などです。白い死神が登場する『しにがみのバラッド。』や、未来から天使がやってくる『撲殺天使ドクロちゃん』はこのポイントがYとなります。
このYの数が多ければ多いほど、『世界設定』は複雑であると言えます。 間違ってはいけないのですが、このYが多いほうがいい、というわけではありません。これは一般論ですが、通常のライトノベルでは、Yは2つくらいが良いバランスなのかな?と想像します
なぜなら、多ければ多いほど、読者にとっては初見の情報……特殊能力のメカニズムや、未来の設定を作中で説明する必要が出てくるからです。それはつまり、読者に理解してもらう情報量が増え、読む負担が増えることを意味し、自ら読む前のハードルを上げていることになります。
たとえば佐島勤さんの『魔法科高校の劣等生』なら、4つの項目すべてYです。①は魔法師、②は二〇九〇年代、③は一般に周知された魔法師の社会(これも別世界と呼べるでしょう)、④はパラサイトの存在です。
しかし『魔法科』は、その複雑過ぎる『世界設定』を逆に『個性』として最大限に出すことで、人気を獲得しています。ただ、通常それを意図せずやってしまうと、単に『読みにくい』『覚える特殊用語が多すぎる』作品として避けられてもおかしくないでしょう。
自分が作家として書いている作品、もしくは読者として今読んでいる作品に、このチェック項目をあてはめてみてはいかがでしょうか? そのYの数に自分のクセがあれば、それが書きグセ/買いグセなのだと思います。そこから、自分にとっての『読みやすい本』の指針を見つけてもいいかもしれません。
ちなみに、僕が長文ツイートを連投するときは、仕事が煮詰まっているときです。これも書きグセの一つか……うーんうーん……。。。
新しい設定は話に奥行きを持たせることができるけれど、その分読者は文字で1から頭で考えて理解する必要があるからその分読む敷居が上がる
一般的に書籍化されているなろう小説が似たような世界観ばかりなのもそこが理由なのかもね
楽に読める
だからこそ「魔法科高校の劣等生」は異質だよね
オリジナル設定を面白さに活かせているのが凄いところ
そして読みやすさが重視されている「小説家になろう」で人気があったというのが不思議
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シャナ……にはオーバーテクノロジーがないか
設定ドカ盛りというと真っ先に思いつくのがシャナだ