ラノベ編集者の「三木一馬」さんが『魅力的なキャラクター』の作り方について解説
物語で、読書惹きつけるのは何か。それはキャラクターです。人によっては、シナリオであったりドラマ、ストーリーテリングだろうという方もいらっしゃいますが、僕はそれら全てに勝るのはキャラクターであると思っています。もっというなら「人間らしさ」です。
「人間らしさ」と言っても、日常生活そのままを描いてもただの日記になってしまいますから、物語として描くなら、より娯楽としての「人間らしさ」もすこし意識しておくべきです。そういったキャラクターが描けたら、それは魅力的と表現されます。では、魅力的なキャラクターとは?
心理学を例にとって説明します。心理学には『ハロー効果』という言葉があります。『ハロー効果』とは、「社会的に優れた立場にいる人間は、その人格も優れている、と感じてしまう心理」を指します。
つまり、社会的に成功しているスポーツ選手や芸能人といった方々は、品行方正であり、振る舞いも人間的に優れたことをする……と「思ってしまいがち」という心理が人間にはあります。
対応するように、「社会的に劣っている立場にいる人間は、その人格も褒められたものではない、と感じてしまう」心理も人間は持っています。
そしてここからエセ心理学と名高い恋愛工学で多用される『ゲインロス効果』も紹介します。『ゲイン効果』というのは、ハロー効果によって「評価の位置エネルギー」が低い位置にある人間が、その評価と逆の行動をとったとき、通常よりも印象良く感じる心理のことです。
ゲイン……つまり、信頼や高評価を「得る」ということです。『ロス効果』というのは、ハロー効果によって「評価の位置エネルギー」が高い位置にある人間が、その評価と逆の行動をとったとき、通常よりも印象悪く感じる心理のことです。ロス……つまり、信頼や高評価を「失う」ということです。
魅力的なキャラクターを生み出したいときは、ハロー効果で低評価を与えた人間のゲイン効果を狙うといいでしょう。たとえば、最初はトリッキーでふざけた振る舞いをしているキャラが急に真面目でシリアスなことを喋ると、とても印象的に聞こえたり(例:バットマンのジョーカー)、
昼行灯で遊女と戯れる役立たずなのに、実は裏では復讐の準備をととのえて敵の首を鮮やかに獲ったり(例:忠臣蔵の大石内蔵助)、ビビリで小市民な少年だったのに、いざ土壇場になれば誰よりも友情を重視したり(例:JOJO第四部の広瀬康一)、どのキャラもとても魅力的に感じます。
それを踏まえて、魅力的なキャラを書くときに大切なポイントが、ゲインロス効果ではなくハロー効果のほう……『「評価の位置エネルギー」の高低をきっちり丁寧に描くこと』を気遣うとよいです。
というのも、皆さん、「ゲインロス効果」はけっこう作品内で書いてくれるのですが、意外と「ハロー効果」のほうは「自分の頭の中で設定として決まり切っている」からこそ、文章に落とし込むのを忘れがちなのです。
それを他人が読むと、たとえば……「この敵ボス、『世界最強』っていうわりに、その『最強』のシーンがないし、しかも主人公にやられちゃうから、凄みがまったく無いなぁ」、こんな印象を抱かれてしまいます。
まず自分が表現しているキャラの一番最初の設定を、自分の脳内にしまっておくだけでなく、バシッと本文に表現しておくことが大事です。それは、ハロー効果のどちらかをきっと表現しているからです。そこからゲインロス効果を利用して、魅力的なキャラクターを描いていきましょう!
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