ラノベ編集者『三木一馬』氏が宣伝の必要性について語る「本の存在を『認知』してもらえなければ読者は手とりようがない」
最高の作品も、宣伝する先を間違えれば自爆してしまう、というお話です。 僕はよく『出たがり』と言われますが(笑)、それは間違っていません。なぜなら、僕という人間は『タダで使える』からです! たとえばアニメイベントを開催するとき、声優さんを呼べば当然のごとくギャランティがかかります。
台本をつくるライターさんを呼べばその分の費用もかかります。イベントは貴重な作品の露出機会ですから、可能な限り豪華なキャスティングをしたいですし、できることならするべきです。しかし予算が限られている以上、お金がかからない人材を使わざるを得ないときもある。
作品を熟知している人ならなお良しなので、どうしてもプロデューサーという立場の人間が前に出てくる機会が多くなるのです。本の宣伝についても同じです。文庫ひとつひとつに潤沢な宣伝予算はありません。ですが、できるかぎり自分で宣伝機会をつくって、アピールをしていかなければならなりません。
『待っていたら偶然、作品が取り上げられる』かも。『良い本をつくってさえいれば、誰かが読んでくれる』かも。そんな『かも』が通用する時代はとっくに終わっています。いくら良い本をつくったところで、その本の存在を「認知」してもらえなければ読者は手に取りようがありません。
ただ書店の棚に並べられているだけでは、その本の存在は多くの読者にとってあってないようなもの――背景となんら変わりないのです。背景と変わらなかった本を「認知」してもらい、手に取ってもらい、あわよくばレジまで持っていってもらうには、どうすればいいか。宣伝するしかありません。
宣伝というと、TVでCMを流したり、新聞で一面広告を出したりといった大規模のものばかりを想像しがちですが、そんなことはありません。お金がそもそもかけられない状況のほうが多いのが編集者という仕事です。
ここだけの話、某アキバのブログなウェブサイトさんには、頭を下げまくってタイアップで記事にしていただいてますし、多くの方々がツイッターを始めるのも、ほぼタダで宣伝をできるからです。
幸運にも予算がついたとして。どんなチャンスも逃さす、露出機会を窺うというのが宣伝です。ゆえに、限られた宣伝予算は有効に使う必要があります。いくらお金を使ったとしても、投資した先に潜在顧客が存在しなければ、宣伝の意味はありません。
たとえば、男子高校生が通学電車に乗っているとします。その高校生の目前、電車の窓上には生命保険会社の新保険プランの広告が貼ってありました。高校生にはその広告がちゃんと目に入っています。さて、高校生が学校から帰宅したとき、生命保険の広告を見たことを覚えているでしょうか?
答えは、絶対に覚えていません。高校生という若年層にとって、生命保険はもっとも縁遠い商品とも言えます。まったく興味がないどころか、それが商品であるという認識すらしていないのです。
一方で、同じ生命保険の広告でも三〇~四〇代くらいのサラリーマンには目にとまるでしょう。この世代になれば生命保険は自分の人生で大きな位置を占めてくるからです。
話題を戻して、高校生に興味を持たせる広告と考えるなら、若手アーティストのニューアルバムの発売告知、スマートフォンゲームの宣伝といった内容なら親和性が高いと言えます。宣伝は、潜在顧客層を意識し、そこにきちんと投げ込めるかどうかでリターンに大きな差が出ます。
本を売るときも同様で、自分たちの作品を、「おっ、この作品面白そうだな」と思ってもらえる層がいる場所に向けて告知しなければなりません。それを間違えると、貴重な時間と大金をドブに捨てることになります。実は僕には、過去に明確な失敗体験がありまして……。
アニメ『俺の妹』二期の告知をどうするか、という宣伝会議の席にて。その広告出稿先に『フィギュアスケート会場』が選ばれました。『フレンズ・オン・アイス』という、荒川静香選手が中心となり開催されている、アイススケートショウです。
よくTVのスポーツ番組で、選手が記者会見する背景にいろんな企業のロゴが並んでいることがありますよね? あそこに『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のロゴを出しました。「こういうことしたら面白いだろう」「絶対に目立つはずだ」。
正確には、この打診をくださったアニプレックスの宣伝担当さんと大盛り上がりしてGOした企画なのですが……いざ二〇一二年の『フレンズ・オン・アイス』に出稿をした結果は……『俺の妹』の実売数は、ピクリとも上がりませんでした。
まったく顧客層(電撃文庫やラノベを読む層と、アイススケートショウを見に来る層)が被っていませんでしたから、話題に上がるどころか、気づく人すら皆無でした。うーん、やっぱり当たり前だったかな(汗)!!!
「宣伝効果」というのは、最終的には数字(売上、実売数)でしか測ることができません。いくら『フレンズ・オン・アイス』の出稿で多くの人に『俺の妹』存在が伝わっても、その人たちが実際に本を買ってくれない限り、宣伝効果はまるでなかったという結論になるのです。
『フレンズ・オン・アイス』への出稿は、そういう意味で大失敗でしたが、宣伝の難しさを再認識する良い機会でもありました。おしまい。いっぱいツイートして申し訳ございませんでしたm(_ _)m
『桐乃黒猫ツイッター』と、『原作禁書14巻とGC1巻とレールガン1巻を07年11月10日に同時発売したこと』ですね。前者はプログレスに。後者は瞬発的に効果ありました。 twitter.com/gawaaaaa/statu…
@kazuma_miki2016 いつもNoteなど面白く読ませてもらっています。質問なのですが、逆に少ない宣伝費で思った以上の効果があった!というような例はありますか?
刊行予定と立ち読み公開してはい終わりというレーベルも多いけれど見どころとか裏話とかをブログに掲載すれば新作に興味を持ってもらえる確率が上がると思うしそういったことをどんどんして欲しいな
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2ちゃんでステマしたり
アフィブログに金渡して記事作らせたりな