<社説>米軍基地負担の陳情 公正負担の国民的議論を

 全国青年司法書士協議会が、在日米軍基地負担の国民的議論を求める陳情を全国の都道府県議会と市区町村議会に提出することを決めた。画期的であり、歓迎したい。

 協議会は普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設の即時中止や普天間飛行場の運用停止と併せて、米軍基地や普天間の代替施設が国内に必要かどうかを国民が議論することを求めた。米軍基地負担に関して「一地域への一方的な押し付けとならないよう公正で民主的な手続きで解決する」ことも掲げた。
 若手の司法書士が所属する同協議会は、これまでも全国を普天間の移設候補地とするよう求める会長声明などを出してきた。陳情の提出は、沖縄への基地偏在の本質を問う契機となろう。真摯(しんし)な取り組みに敬意を表したい。
 日米安保は国土面積の0・6%の沖縄に全国の米軍専用施設面積の70%を置くことで維持されているが、軍事的な必然性からではなく、政治的な理由で沖縄が過重な負担を強いられていることを改めて指摘しておきたい。
 沖縄の米軍基地は、74年前の沖縄戦で米軍が住民の土地を奪い建設された。戦前は集落が点在する農村だった現在の普天間飛行場の一帯もその一つだ。沖縄戦を戦った米海兵隊の部隊の多くは戦後沖縄を離れたが、1950年代に山梨や岐阜から沖縄に海兵隊の第3海兵師団が移り、69年には海兵航空群が山口県の岩国基地から普天間に移った。
 「反米基地運動が燃え盛ることを恐れた日本と米国が、米国の施政下にあった沖縄に多くの海兵隊部隊を移した」「本土から沖縄に基地が集約する形で今日の姿ができあがった。このことを決して忘れてはならない」
 安保政策に明るい石破茂自民党元幹事長は昨年、自身のホームページでこう解説した。まさにその通りである。
 発言が報じられると当該部分は削除されたが、政府が沖縄への米軍基地集中の理由として説明する「地理的優位性」に説得力がないことは明らかだ。安倍晋三首相が昨年2月に国会で答弁した通り、「移設先となる本土の理解が得られない」から沖縄に基地を置いているにすぎない。
 こうした差別的な政策は民主主義や正義に反し、住民の合意に基づいて成り立つはずの国防・安保の基本理念からも懸け離れていることは言うまでもない。辺野古の新基地建設は軟弱地盤の問題などで完成が見通せない中、工費は最大2兆6500億円に膨らむと試算されており、環境保全や財政負担の観点からも疑問が噴出している。
 全国青年司法書士協議会の半田久之会長は陳情提出について「一人一人が自分ごととしてとらえ、考えていかなければならない」と語った。基地の公正負担や持続可能な安全保障政策のありようについて、根源的な議論をぜひ全国の各地で深めてほしい。