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【社会】

外国人の親拘束、子は児相に 入管の家族分離急増

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 子どものいる非正規滞在外国人を入管当局が拘束、施設に収容する際、子どもを親から分離し児童相談所に保護を依頼したケースが二〇一七年に急増、引き離された子どもは全国で二十八人に上り前年の七倍になったことが分かった。法務省が野党議員に開示した資料を共同通信が入手した。

 入管施設は現在、子どもを受け入れない。入管当局は従来、親子別離による子どもの精神的負担を考慮、子を持つ外国人は原則、拘束せず退去強制手続きを進めてきたが、近年の非正規滞在者対策の厳格化で配慮が揺らいだ可能性が示された。

 米トランプ政権は非正規移民の親子分離収容で批判を受けたが、日本でも親子分離が引き起こされているといえそうだ。

 資料によると、保護者の収容を理由に入管当局が児相に保護を依頼した子どもの人数は一三年と一四年が二人、一五年一人、一六年四人、一七年は二十八人。出入国在留管理庁は「児相に保護を依頼した子どもの人数は公表情報ではない」とし、急増理由を明らかにしていない。一八年分は未集計だが公表予定はないという。

 外国人の人権に詳しい弁護士らは「子どもを放って逃亡する親は通常おらず、不必要で無意味な収容だ」と批判する。

 入管庁の担当者は「米政権は不法移民の親子は分離されてしかるべきだとの立場だったが、日本は子どもに配慮している。児童の収容は好ましくなく、親も原則、在宅(拘束しない)で退去強制手続きを進める」と説明。「養育放棄のように親の監護能力がない場合などは親を収容せざるを得ず、児相に子どもの保護を依頼する」と話した。

 だが、成田空港で一七年、入国を拒否され、すぐに拘束されたトルコ出身の男性(29)は妻(24)と別々に収容され、未就学の子ども二人が児相に送られたと証言、監護能力と無関係に親子が分離されており、外国人支援者らは入管庁の説明を疑問視している。

 児玉晃一弁護士は「日本も批准した国際人権規約の自由権規約や子どもの権利条約は国家による家族への介入や親子分離を禁止している。入管当局の対応はこれらの趣旨に反する」と指摘する。

◆帰国に追い込む政策

<国士舘大の鈴木江理子教授(移民政策)の話> 在留資格のない非正規滞在外国人の家族分離が急増したことは、法務省が帰国を促すため外国人を追い込む方針を強化したことを示している。子どもと引き離される親の精神的苦痛は計り知れず、分離させられるのならば帰国を選ばざるをえないと考える外国人もいるだろう。非正規滞在でも、母国で迫害の恐れのある難民申請者や日本で地域社会に根ざし長期間暮らす外国人もいる。そして何よりも、子どもの成育に親の存在は欠かせない。個々の事情を考慮し、人権尊重の原則のもとで在留特別許可の是非を判断すべきだ。

<非正規滞在外国人> 在留資格を持たずに日本に滞在する外国人の総称。査証(ビザ)などが定める滞在期限を過ぎた不法残留や、偽造旅券による不法入国などが含まれるが、母国での迫害で命の危険があり日本政府に保護を求め難民申請中の場合もある。非正規滞在でも一般社会での生活を認める「仮放免」の扱いを受けられるが、就労は禁止されるほか、強制送還の恐れが常にある。政府は「不法滞在」と表現するが、実質的に日本の労働力など社会の機能を支える一部になっているとの見方もあり、近年「非正規滞在」との呼び方が増えている。

 

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