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(孝蔵)<ベルリンオリンピックを目指していた我らが韋駄天。しかし ヨーロッパにて第一次世界大戦が勃発>
(治五郎)オリンピックは中止だ。
(四三)悔しか。な~し 戦争せんといかんとだろか?
(スヤ)四三さんが金メダルば取ったらどぎゃん顔して喜ぶか…。そん顔が見たかけん 応援ば しとります。
金栗!
<再び走り始めた韋駄天は日本初の駅伝を成功させます>
<以降 四三君の快進撃はますます拍車がかかりもはや 暴走機関車>
<オリンピックの中止でヤケを起こしたのか極東選手権 東西対抗戦 富士登山競走と立て続けに出場。日本中を駆け巡ります。その間に なんと…>
(幾江)ご懐妊たい!(実次)ご… ご懐妊!?
こっで池部ん家は安泰じゃ~!
<妻のスヤが めでたく懐妊>
でかした~!(シマ)わっ! ええっ?
あ~ すいまっせん。 独り言ばい。でかした~!
おはようございます。
明日から自分でするけん。
決めたことですけん やります。
頑固やね。
よし…。
<四三君が全国を駆け巡る中私の方はようやく長旅から東京に戻ってきた>
ヨーロッパ諸国が他国の権利を奪う!権利を奪う!
無益な戦争を続けている!
♪~
「よ~うっ!」(太鼓の音)
♪~
♪~
♪~
♪~
♪~
♪~
「よ~うっ!」(拍子木の音)
(清さん)いてっ!(孝蔵)よう 清さん 帰ってきたぜ。
お~ 孝ちゃん 帰ってきたか!
そっか… 帰ってきちまったか…。
田舎の水は合わねえや。やっぱ 東京が一番だ。
・お~ どけ どけ どけ!おい どうだい 清さん久々に一杯引っ掛けて 吉原にでも…。
隠れろ 隠れろ…。な… 何? えっ?
どけ どけ!
えっ?
何だい? あいつら。捜してんだよ 孝ちゃんを。
この人気者。
あっ そうなの? えっ?
俺が何かしたのかい?
小梅だよ 銘酒屋の。苦みばしった女。
女も苦みばしんのかい? えっ?
おい 酒くれ。
小梅のやつな変な野郎と駆け落ちしたんだよ。
ごめんくださ~い。
(小梅)ちょいと… ねえ ちょいと!
(美川)ごめんくださ~い!(辛作)聞こえてるよ。
おい…。
これ 何だと思う?
足袋?
だよな。 よし。 …で 何の用?
かなぐりって人 いる?
かなぐり?
(美川)いや~ 久しぶり 金栗氏。
はっ? 美川君 何ね… な~し?
小梅。どうも。
待ってくれよ。 小梅は独り者だろ?
誰と くっついたってそれは 駆け落ちとは言わねえや。
そこだよ。小梅のやつ いつの間にか徳重って やくざ者の これになってた。
痛いって…。頼むから!
兄貴 連れてきやした。
(清さん)徳重の方が ぞっこんであれで 小梅は浮気っぽいから気に入らねえことがあるとぷいっと出てって よそに男 作っちゃう。
(徳重)今度の相手は誰だ?言え。
言え~!
朝太だよ 朝太。三遊亭朝太って売れない芸人。
あたしゃ 朝太に ほれてんのさ!
はあ!? とんだ濡れ衣だ。
よせって!離せ! 冗談じゃねえよ!
せっかく東京 戻ってきたっていうのによ。
今は出歩かねえ方がいい!
話は つけてやっから。しばらく どっか隠れてな。
そんな訳だから おにいさんこの人 かくまってちょうだい。
わたしゃ 旦那んとこ 戻るよ。えっ 旦那って… 大丈夫かい?
大丈夫。 隙見て 会いに来るから。
きっとだぜ。フフッ。
停車場 分かります?
ぎゃん行って ぎゃん行って ぎゃんばい。
そぎゃんたい。
阿蘇のおなごさ。情が深くて ほれっぽいのさ。
美川君…。会いたかった~ 金栗氏~! ハハハハ!
残念だったね~。
せっかく 僕のおかげでオリンピック選手になれたのに。
あ~ アハハハ…。
その後 どうだい?教職に就いたと風のうわさで聞いたが…。
うん。 今は 獨協中学に勤めとるばい。
とつけむにゃあね~。 君って まっこととつけむにゃあね~。 あっ 僕?
(窓を開ける音)うん?うん?
あっ 美川君!
絵描きになろうと思ってる。はっ?
知ってる? 竹久夢二。 絵描きっしょ。
ローマンチシズムっしょ。 どう?女性っしょ。これからは 女性の時代っしょ。
ヘ~イ! 近いよ~ 金栗氏。
まるで ロミオとジュリエットじゃないか。
もうよか! 俺は ほとんど外ば走っとって家におらんけんこん部屋 好きに使ってよか。
(美川)本当に? フフッ。ロミオ。 どうして あなたは ロミオなの?ロミオ!
お静かに!
♪~
(深呼吸)
回想 (弥彦)日本も いずれ西洋のように女子のスポーツが盛んになるかもしれん。世の中が変わればな。
♪~
(シマ)女子の参加選手は いないのですか?
(吉岡)遊びじゃないんだよ。こっちは真剣勝負なんだよ。
女子だって真剣に走れば負けません!
(治五郎)君たちは いずれ健やかな子どもを産まないといかん。
無理したら 壊れるぞ。
(志ん生)「ってわけで本日の『オリムピック噺』はですね知ってるようで知らない女子体育の歩み」。
(拍手)
(ざわめき)
(五りん)「えっ 師匠 師匠?」。
さあ 待ってました。えっ!?さあ いこう。
えっ!? 俺?
(拍手)
改めまして 古今亭一門の若えので五りんと申します。
(拍手)
いや~ どういうわけかね 師匠が引っ込んじまったようで。(笑い声)
え~ 女子体育。女子体育なんですが …の前に当時の一般的な美人を紹介します。
よっ! よっ 待ってました!(拍手)
よっ 美人!
(五りん)<大正時代 美人といえば 花顔柳腰花のように美しい顔と柳のように しなやかで細い腰色は白く 痩せて儚げな姿が殿方の心をくすぐったんですね~。体育に対する興味はというと…>
フフ… 体育? 何それ。
運動? アハハハ… しない しない。ブスになっちゃう アハハハ。
あっ これ 私が言ったんじゃないですよ。(笑い声)
ただ 実際 芸者さんなんかは不細工になるからといって運動を厳しく禁止されていたんです。
「え~ まあこういう時代の女子体育ですから服装も 今とは だいぶ違います」。
<半袖 短パンのような露出の多い服装は もっての外!>
(知恵)五りん 五りん。
どうしたの?恥ずかしいよ。
だって これ テレビで流れてるんでしょ?
(五りん)大丈夫。ちーちゃん かわいいから。
何 着ても似合うから。 ねっ?
♪~あっ ほら 鳴っちゃった。
あ~ どうも。(拍手と歓声)
(拍手)
歩いて。
<袴に革靴 たすき掛け!なんと これが女子の体育着だったんです>
どうですか? ちーちゃん。動きづらいし 息も苦しい。
これじゃ ツイストも踊れません。(笑い声)
<これに新風を吹き込んだのが二階堂トクヨ!>
(トクヨ)和装には 7つの罪がある。
胸は 襟で十文字に締めつけられる。はい。
腰は 袴で ひもまみれ。はい。
そのくせ あんどん包みのだらしない下半身。はい。
家事をやれば 袖が水浸し。はい。
たすきを掛ければ 猫背になる。はい。
腕を上げれば わきが丸見え!
極め付けは この帯! 腹を締めつけられるから深い呼吸ができない。
だから 日本の婦人は若くして バタバタ死ぬんです!
着物が体育に向かないことはよ~く分かりました。
(トクヨ)まずは うちのクラスの30人分。あとは 追って発注します。
あの~ うちは職人の足袋や…。
では お願いいたします。
先生?
<イギリスの名門 キングスフィールド体操専門学校に学んだ彼女はチュニックを奨励>
(拍手と歓声)
♪~
いやいや いやいや…だいぶ進化しましたね。
どうですか?全然動きやすい。
おいおい… 脚上げんな 脚を。
あっ パンツはいてますよ 大丈夫です。(笑い声)
当たりめえだ バカ野郎。(今松)はいてなかったら事件だよ バカ野郎。
<その授業も ダンスを取り入れ優雅にして軽やかです>
♪~
(トクヨ)手首は やわらかく~。
(トクヨ)膝は上げて。
(トクヨ)ステップは音を立てず 茶の湯の心で。
(永井)な… 何だ これは!? おい!
君たち 気は確かか?
君は 私のクラスの生徒じゃないか。
(トクヨ)月の雫のように~。
君も! それから 君も!
(笛の音)直れ。
何ですか? 永井先生。 授業中です。
授業? これが?この扇情的で破廉恥な舞踊が?
(トクヨ)エクスキューズ ミー。
(トクヨ)お話 長くなるようでしたら生徒たちに別の体操をさせてもよろしいかしら?
(笛の音)
♪~
永井先生。 私は 永井先生の「学校体操教授要目」に感銘を受けスウェーデン体操こそ体育の神髄だと信じてまいりました。
しかし それは誤りでした。
3年間のイギリス留学…。
永井先生の教えが いかに偏った旧態依然の女性の体の特性を無視したものかと。
ちょ… ちょっと待ってくれ。この奇妙な盆踊りもどきをやめて…。
盆踊り… ハッハッハ~。
英国仕込みのメイポールダンスを盆踊りとは… フフフフ。
クレージー! あなたは もう古い!
女子の体育は女子の手で。子を産み 母となる体を作るために優雅なるダンスを学ぶのです。
♪~
苦しい!
♪~
(スヤ)すっごい楽チン!
差し上げますんで どうぞ。
助かります。 着物は帯で締めつけるけん苦しかばってんこれは 妊婦にもよかたい。
ところで奥さん これは足袋かね?
足袋でしょう。
そうかね~?俺には もう分かんねえんだよ。
実は コハゼを外した…。
妊婦!?はい。 あれ? 聞いとらんですか?
聞いたか? いいや 聞いてねえよ。聞いたら忘れねえよ そんな大事なこと!
何で言わねえかな? 金栗さんも。
あの人 「スッスッ」と「ハッハッ」しか言わねえんだからよ。
ああ ああ…。
これはこれはどうも おめでとうございます。
知らんふうば装って下さい。
あん人なりに考えのあってのことかもしれませんけん。
今日だって奥さん来るの分かってたわけでしょ?身重の体で熊本からわざわざ来たってのに…。
じきに帰ってくっでしょう。
金栗氏なら帰ってきませんよ~。
(辛作)美川 てめえ!
あっ ちょっと…。 数日前秋葉という弟子が訪ねてきましてね。
弟子?
(美川)その弟子と この夏下関から東京まで1,200kmを走る計画を立て夜遅くまで練習しております。ご覧なさい この足跡を。
知らんかった そぎゃんこつ。
手紙には ひと言も。
(美川)そのかたわら 著書「ランニング」の出版記念講演会で全国行脚。その間 僕はお留守番。ここで 横になってます。
ライイング。 たまに絵を描いてます。
こぎゃんこつ美川さんに言うてよかろか?
言って下さい 奥さん。
何ば考えとっとでしょうね あん人は!
もともとが普通の結婚じゃなかけん負い目のあるでしょうがこぎゃん ひた隠しにせんでも。
大家さんしか知らんとですよ?うちらんこつ。
ほかにゃ誰にも言うとらんですよ。
子どもの生まれるとですよ!?
もうすぐ臨月だけん不安でしかたなかです!
美川に言っても しょうがなかばってん「夏は必ず帰る」って手紙ば よこしたとですよ?
美川に言っても しょうがなかばってん考えてしまうばい。
あん人は マラソンばするためにうちと一緒になったとだろか?
マラソンばやめたら うちは…こん子は どぎゃんなっと!?
美川に言っても しょうがなかばってん本人には聞かれんけん。
ねえ 美川さん どぎゃん思います?
(美川)ここに 金栗氏の日記があります。
読んだとね?
葛藤は… ありました。
「二月」…。わ~! わわわ!
すみまっせん。 葛藤が。
どうぞ。
「二月七日 スヤの夢ば見る」。
自分で読みます。
「二月七日 スヤの夢ば見る。やはり オリムピックは開かれたのだ。おるは金メダルを獲りその祝勝会か何かだろうか」。
マラソン日本の面目躍如だ!
「嘉納先生 岸先生 武田先生可児先生」。(可児)金メダルおめでとう!
ありがとうございます!みんな 来てるぞ~!
「永井先生 高師のみんな 野口君一緒に ベルリンオリンピックを走った選手たち」。
乾杯!
(四三・ドイツ語で)
(どよめき)
「スヤは人形のような西洋のドレスば着て音も立てず スススッと近づいた」。
妻の スヤです。
(拍手と歓声)
「我 晴れて スヤを皆に紹介し大いに祝福を受ける」。
スヤ。
♪~
(スヤ)フフッ…。
「スヤの励ましと支援に応えるに金メダルより ふさわしきものなし」。
「目が覚めて思うこの夢をいつか かなえん。スヤと生まれてくる子のために」。
ただいま戻りました。
何やってんだよ。奥さん 今 帰ったとこだよ。
ばば~!
♪~
スヤ!
スヤ~!
スヤ~! スヤ~!
スヤ!
ああ~!
ハァハァ ハァハァ…。
さすが金栗選手 市電より速かね。
スヤ…。
スヤ…。
何ね?
どぎゃんね? 体ん調子は。
悪かったら来とらんけん。
そぎゃんね。
あっ…。
金メダルね?
フフッ フフフフ… アハハハ。
ハハハハ…。
泊まらんね?
帰ります。
そぎゃんね。
あっ 俺も夏には帰るけん。
そぎゃんね。うん!
いや… うん。
♪~
吸って吸って 吐いて吐いて。ハッハッ。
吸って吸って 吐いて吐いて。ハッハ~。
スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ…。
(四三 スヤ)スッスッ ハッハッスッスッ ハッハッ…。
大きく吸って吸って 吐いて吐いて。ハッハッ!
吸って吸って…。ハッハ~!
スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ…。
はい…。
(産声)
スヤ…。
「大正8年4月28日。スヤは無事 男の子を出産。大正の『正』に 明治の『明』で正明と命名す」。
(孝蔵)<その夏 四三と秋葉は下関・東京間1,200kmを二十日間で見事 走破>
<結局 夏にも熊本へは帰らなかったんですね。ひでえ父親ですな>
すみません!
下関までは来たばってんが…。
し~っ し~っ。えっ?
今 寝たばっかりですけん。
走って東京に帰ったようで。
もうよかです。
スヤさん…。
逆らわずして勝つ!し~っ。
調子に乗んな。 こん あんぽんたんめが。
あっ… ばってん 四三も親になって 心ば入れ替えたか近頃は 便りの頻繁に送ってくるそうで。
問題は宛名ばい。 見なっせ。
以前は 「幾江殿 スヤ殿」だったばってんいつからか 「幾江殿」「スヤ殿」と2通に分かれるようになってしまいにゃ 「幾江殿 正明」になった。
もう スヤ宛ての手紙は読めんばい。
いや… 読んどりますよね。封の開いとりますもんね。
当たり前たい。 うちの手紙には絵しか描いとらん。 ほう。何とも言えん 山ん絵と…これは? 犬? キツネか?
(実次)足袋じゃなかですか?
駄目だ 駄目だゴム底だけは受け入れられん。
いやいや いやいや… そこをなんとか!
今まで どんな注文も受けてきた。
だがな ゴム底だけは… その一線だけはどうしても越えられねえ。
底が布じゃ 一日もたんです!
下関の時も途中で足らんようになって宿に送ってもろたけん。
いいか!? 底がゴムで ひもで結んだらそれはもう足袋じゃねえ。 靴だ。
運動靴だ!足袋職人の俺に靴作れってのか?
だったらな 靴職人に足袋作ってもらえ!
それじゃあ 駄目とです!
辛作さん 日本中探しても播磨屋のマラソン足袋に勝るシューズはなかです!
シューズじゃねえ! 足袋だ!
<そのころ 自動車の普及に伴い東京の道は徐々に舗装されつつありました>
いってえな! なにが舗装道路だよ。
足が痛くて走れねえや。
おい おい… で どうなんだ?まぬけなやくざは何つってんだ?
徳重とは これで話がついたよ。
おい… 濡れ衣で 指まで持ってかれたんじゃ たまんねえよ おい。
違った 違った。 これじゃねえ これだ。徳重も本音は終わりにしたがってる。要は体面さ。 てめえの女 寝取った野郎がのうのうと寄席に出てるようじゃさすがに やくざの面目も丸潰れだ。
寝取ってねえけどな。つまり ほとぼりが冷めるまで東京から離れてなってこと。
そのほとぼりが冷めるにはどれぐらいかかるんだ?
これ。 1年だよ。
(ため息)
まっ 寄席に出らんねえんじゃ東京にいたって しょうがねえや。
すまねえな。清公は悪くねえや。
小梅だって 昔から苦労した仲だ。恨みはしねえ。
いろんなやつがいて いいんじゃねえか?
俺が言えた義理じゃねえけどよ孝ちゃん…。何だい?
腐るなよ。
うん。
ねえんだろ?うん…。
出世払いでいいよ。
お前 俺が出世すると思ってんのかい?
するよ。 三遊亭朝太は日本一の噺家になるんだ。
そんなこと言ってくれんのは お前だけだよ。
俺だけでもいいじゃねえかよ。
おい… ちょっと どいてくれ どいてくれ。
きっと偉くなるよ。
そりゃ 今はお前より うめえやつが何人もいる。
だけどな いつか お前の方がうまくなる。
そう俺は踏んでる。だからな 孝ちゃん…。
な… 何だよ? えっ 何? うそ…。
走れ!(徳重)朝太!
♪~
離せ この野郎! 離れろ!
♪~
行け… 行け! 早く行け!
♪~
(志ん生)その足で 私は東京を離れました。
小円朝師匠に 二ツ目の許しを頂いて晴れて 私は三遊亭円菊と名乗り…。
違いますね。 円菊は2度目の旅から戻ったあとです。
ちゃんと やって下さいよ自分の話なんだから。
しょうがないじゃんおじいちゃんなんだから。
さっきから ずっと パンツ見えてるよ。
フフッ これが一番楽。
(りん)結婚前のことはねあんまり覚えてないのよ。
ねえ おとうちゃん。
じゃあ そこからお願いします。
(美津子)昔話もいいけどさ 五りんあんた 噺のお稽古は ちゃんとしてんの?
お父ちゃんに べったりじゃなくてたまには あにさんたちに落語の稽古つけてもらわなくっちゃ。
こいつはね これでいいの。
そういうことでね置いてるわけじゃねえんだから。
そういうのはいいんです。僕 フラがあるんで。
自分で言ってちゃ世話ねえや。
よし…。
(孝蔵)<大正8年 パリ講和会議を経て第一次世界大戦は終結します>
(野口)「驛傳 對 マラソン」ですと!?
日光から東京までは 130km…。
<暴走機関車の四三君。今度は 日光から東京130kmの無謀なレースを思いついた。生徒たちは駅伝。 なんと四三君は…>
一人で走りきる。
(野口)130kmをぶっ通しで!?
こぎゃんなったら人間の持久力の限界に挑戦するばい。
(辛作)だったら… これ履いて走んな。
ばっ!
これ… ゴム…。
足袋のせいで完走できなかったなんて言われたくねえからよ。
辛作さん… ありがとうございます。
せいぜい頑張んな。
はい! 絶対 勝ちます!
<一方 女子体育を巡る戦いは第三勢力の登場により更に面倒なことに。文部省の要請で アメリカに留学していた可児先生が2年半ぶりに帰ってきたのです>
カニ歩き カニ歩き…。
アメリカと比べ我が国の体育は2歩も3歩も後れておる。
黙れ 半かじり。
はい 大臀筋。 え~ 女性は大臀筋の発育が盛んである。
骨盤が バ~ン 臀部が デ~ン。
女であることに自信を持ちなさい。
私は 女だ!
(学生たち)私は 女だ。はい 声が小さいよ。 もう一度いくよ。
私は 女だ!(学生たち)私は 女だ!
(可児)それが どうした!それが どうした!
かかってこいよ。(治五郎)いい加減にしたまえ!
戦争が終わったというのにいつまで もめてるんだ!
これじゃ スタジアム建設計画は遅々として進まん。
(可児)ワ~オ!(治五郎)3万人から5万人を収容する競技場。 これを神宮外苑に建設するんだ。
(武田)えっ 神宮外苑!?
反対意見は聞かんぞ。 我が国のスポーツの発展 体育の向上のために今 必要なものはそれら全てを受け入れる容れ物だ。
人々が集い 体を動かすための競技場それさえあれば運動会も ダンスも 兵式体操もそれから… オリンピックも!
(野口)オリンピック!
(治五郎)アハハ… 野口君。ご無沙汰しております!
お~ いいところへ来た。世界に恥じないスタジアムを造りいずれ ここで…オリンピックだ!
(拍手と歓声)スッスッ ハッハッ スッスッ ハッハッ…。
金栗さんが帰ってきたぞ~!(歓声)
金栗さ~ん! 金栗さ~ん!
<130km 20時間の連続マラソン。さすがの韋駄天も駅伝には勝てませんでした>
(拍手と歓声)
やりましたね! やりましたね130kmですよ 金栗さん! 金栗さん!
(辛作)ちょっとどいてくれ。 ごめんよ。ごめん ちょっとどいてくれ。
あ~ 辛作さん…すいまっせん 辛作さん…。
勝った… 勝ったぞ!
負けました。あんたは負けたが 俺は勝った!
最後まで もったじゃねえかよ 1足で!
播磨屋の足袋が130kmの道のりに勝ったんだよ!
ああ~!
金栗さん ありがとう!ああ~!
<日光・東京間を走り終えた韋駄天はこんな言葉を残しています>
燃え尽きた。
あれ? これ…。(岸)どうした?
いや 校長宛てに フランスから手紙が…。何でしたっけ? このマーク。
督促状じゃないのか? 借金の。
校長?
(可児)校長…。うるさい!
<それは クーベルタン男爵からの親書>
ハハハ…!
<1920年 夏 8年ぶりに オリンピックを開催するという知らせでした>
韋駄天を呼べ! 韋駄天を!ハハハハ…。
箱根駅伝ばい!(治五郎)我が国において マラソンは今や 国民的スポーツである。自分は 金栗さんには なれません!
<みんな大好き 箱根駅伝>
走れ~! この道はオリンピックにつながっとるばい!
頑張れ~! 頑張れ 頑張れ もう少しだ!
<何これ めっちゃ泣ける>
金栗にこれに勝るものはないと言わしめた黒坂辛作の足袋。
足袋にゴムソールをつけることで始まったハリマヤシューズはその後 日本のマラソン選手にとって欠かせないものとなっていきます。
谷口浩美さんはハリマヤシューズを履き箱根駅伝で3年連続 区間賞を取りました。
今からでしたら もう40年前ですか。…の時代は播磨屋さんが すごく全国の陸上界のシェアは取ってたんじゃないかなと思いますね。まあ 私たち選手はただ走ることだけなのでそういう身の回りの技術的なものとかはお願いするしかありませんのでそのお願いを聞いてくれたっていう播磨屋の黒坂さんは逆言うと すごいなと思いますね。
今はなき 播磨屋。
選手と二人三脚の靴作りは孫の代まで継承されていました。
選手と職人の絆が東京・大塚の地に今もなお記されています。