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2019-05-11

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・<年をとった灰色ロバのイーヨーは、森のなかの、アザミ
 のはえてるすみっこで、前足をぐっとひろげ、頭をかしげ
 ながら、たったひとりで、いろんなことをかんがえていま
 した。どんなことをかんがえるかといえば、あるときはか
 なしげに「なぜ?」とかんがえ、またあるときには「なに
 がゆえに?」とかんがえ、またあるときには「いかなれば
 こそ?」とかんがえーーまたあるときは、じぶんが、なに
 をかんがえているのか、よくわからないのでした。そこ
 で、クマのプーさんが、バタンバタンやってきたときは、
 いんきな声で「ごきげんよう」をいうあいだ、ちょっとか
 んがえごとをやめていられるので、たいへんうれしく思い
 ました。>

 これはもちろん岩波少年少女文庫の『クマのプーさん』
 (A・A・ミルン作 石井桃子訳)の一部抜粋です。
 ぼくが子どものころに、なんだかこの本が好きで、
 好きなのだけれど、ちょっとわからない言い回しや、
 ふだん耳にしないことばがあることを気にしながらも、
 それでもいいやと読んでいたものでした。
 そのちょっとわからなさも含めて、好きなのでした。
 それから半世紀も過ぎて、その「わからなさ」が、
 どんなものだったのか、あらためて知りたくなって、
 『クマのプーさん』を、買ってみたのです。
 なんとなく開いたページを、ちょっと目で追ったら、
 もうさっそく「子どもにわかるのだろうか」という文が、
 へっちゃらで記されていることに気づきました。

 断言しましょう。
 どのページを開いても、このくらいむつかしいです。
 裏表紙に「小学4・5年以上」と記されていますから、
 小学校高学年なら読めますよということでしょう。
 もしかしたら、ぼくの読解力がいまだに
 弱いままなのかもしれませんが(そうでもないとしても)
 上記の12行ばかりの文章、けっこうむつかしいですよ。
 (おかあさま方に向けて)実を言えば、文の内容に
 「ナンセンス」という味付けがなされているので、
 そこをたのしめないと、おもしろさに至らないのです。
 この登場人物たちの存在や思考、発言には、
 「なんだかわからない」ことが表現されているのです。
 この本で育ったこどもたちが幸福でありますように。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
作者ミルンさんもすごいだろうが、石井桃子さんがすごい。


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